第60話高い

10階に上がり、角部屋の実家に入った二人は、先に外を窓越しに眺めていた。

「晴斗くん、ベランダに出て見たら。」

「…え、遠慮する。」


晴斗は、晩御飯が出来るまで、1人で違う部屋からも眺めていた。

…あぁ、眺めがいいなぁ。


またリビングに戻ると眺めていた。

「…晴くん外に出て見ないの。」

「あぁ、ここで満足してる。」


凜が小首を傾げてるのが見えたのか、優樹姉が教えていた。

「晴は昔から、高い場所が嫌いなの、だから二人暮らしで、2階を勧めたのよ。」


凜は聞くとニヤニヤして、声に出さないように笑っていた。

「だからさっき、最上階かよって嫌な顔してたんだね。」

「知らん。」

「…可愛いね。」



父さんに近付くと、サッと写真を渡し、凜を膝に座らせ抱き締めると、渡した物を見られないようにしていた。

「…ちょっと‥恥ずかしい。」

「いいから、高いと怖いから。」

「…なんで、笑ってるの。」

「お、落ち着くから。」


父さんを見てると、こっちを見て少し頭を抱えていた。「晴くん、この写真‥どうしたらいいのかな。」

「あげるから、帰ったら飾っといてほしいな。」

「いざ見ると、複雑だね。」

「娘に、悪知恵教えるからだよね。」

「まぁ、そうだよね。」


女性二人も気になって見ようとしていたが、抱き締めている凜だけ見れなかった。

優樹姉は見ると苦笑いをした表情を見て、晴斗は嬉しそうに笑っていた。

「晴、飾っとくね。」

「ありがとう、嬉しいよ。」

「…私にも見せて。」


優樹姉は凜に渡そうとしていた。

「凜ちゃん、破らないって約束してね。」

「絶対に‥破らないよ。」


見ると2人がキスした写真だった。

凜はポケットに入れようとして、晴斗が取り上げ、投げると、父さんが拾って笑っていた。


凜は晴斗を抱き締め、小声で聞いていた。

「…いつ、撮ったの。」

「覚えてない、あげたらダメだったかな。」

「…親だから‥いいよ。」

「良かった。」

「…晴くんは鬼畜で女たらしの意地悪だから。」

「ありがとう。」

「…褒めてないからね。」


夕食の準備が出来ると、久しぶりに家族揃って食べていた。

「二人はお揃いのブレスレットしてるね。」

「凜に初めて貰ったからね。」


晴斗が嬉しそうに言うと、凜は照れていた。


ご飯を食べ終わり、ソファーから両親の姿を眺めていると、凜は晴斗を見て心配していた。

「…また四人で暮らしたいの。」

「少し思ってた、でもこんな場所絶対住まないけどね。」

「…高い場所が怖いんだね。」

「…怖くない。」

「甘えていいからね。」



二人は実家で入浴後、凜の隣に座り、晴斗は目を閉じていた。

「…20時だけど、眠たいの。」

「違う‥凜の匂いが変わった事が気に食わない。」

「…晴くんが決めた事だからね。」

「知ってるよ、買い物間に合うかな。」

「…まだ間に合うよ。」


また来ると言って、スーパーまで手を繋いで歩いていた…買い物をして自宅に帰ると、冷蔵庫に食材を直し、寝る準備をして、寝室にいた。

「実家より、落ち着くなぁ。」

「…高い場所だったからね。」

「違う、二人暮らしだから‥だ。」

「…そう言うことにしとこうね。ふふっ」


テレビを見ながら横になると、晴斗を抱き締めていた。

「テレビ見んのか。」

「…今日は色々あって、私が好きなんだなって思えて、嬉しいから見ないよ。」


晴斗は、テレビや電気を消すと抱き締め返し、眠りについた。

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