第298話 ヤッタヤッタのジョブ変更。
仲間達のジョブ変更が終わり、最後にミツの番となった。
彼は何時もの様に、ユイシスへとジョブ変更をお願いする。
《ミツ、新たな上位ジョブが出ておりますが、如何されますか?》
(あっ、それはまだ伏せておいてもらえるかな。前に決めた通り下位のジョブをできるだけ済ませておきたいから、寄り道は無しで行くよ)
《了解しました。それではジョブを変更します。ファーストジョブ、偽造職であるセカンドジョブ、サードジョブ、フォースジョブをお選びください》
(えーっと、前はゴットハンドシェフ、ポエット、エンチャンター、キャスターをやったから、次はね【ヒーロー】【シェーファード】【トレーダー】【アルケミスト】でお願い)
《了解しました。選択により、ファーストジョブ【ヒーロー】偽造職のセカンドジョブ【シェーファード】サードジョブ【トレーダー】フォースジョブ【アルケミスト】がジョブに登録されます。ファーストジョブ【ヒーロー】がジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルが選ばれます。既に習得済みのスキルは非表示となります》
※ペガーズ・エール
※ホワイトパニッシュ
※カオスフレーム
※信頼の結果
※先手必勝
※愛と勇気
《以下のスキルを取得しました。条件スキル〈ヒーローポーズ〉を取得します》
ペガーズ・エール
・種別:アクティブ
膳の気持ちが力となる。相手に与えるのは物理ダメージではなく精神ダメージ。
※憎しみの心では発動しない。
ホワイトパニッシュ
・種別:アクティブ
非道な者には捌きの光が降り注ぐ。
カオスフレーム
・種別:パッシブ
相手からの好感度によってゲージの変動。
平均を上回ると治療系魔法の効果二倍。
平均を下回ると攻撃魔法の威力二倍。
信頼の結果
・種別:パッシブ
相手からの高い信頼を得るとステータス全1の増加。
先手必勝
・種別:パッシブ
先制攻撃こそが勝利の一歩、相手の口上中でも攻撃ができる。
愛と勇気
・種別:パッシブ
友達は言葉だけ、ソロでの戦闘をするとステータスが20%上昇する。
ヒーローポーズ
・種別:アクティブ
刮目して見よ、これがカッコイイヒーローポーズだ。※ポージングを見ると敵は確実に動けなくなる。勿論ポージング中は自身も動けなくなる。
(戦隊や仮面みたいに目立った必殺技を出す訳じゃ無いんだね。ユイシス〈愛と勇気〉のスキルって精霊や分身も対象になるの?)
《はい。これは周囲に仲間は勿論、精霊達のフォルテ達や、分身体が側にいては発動することはありません》
(あー、だとしたらこのスキルは塩漬けスキルだね……。基本仲間達と一緒にいるし、自分一人の時はフォルテや分身の力借りてるからなー。自身のステータス20%なら分身出した方が力になるし、フォルテ達も五人居ればそれ以上の力にもなるからね。まー、思わぬところで発動するかもね。ユイシス、次お願い)
《はい。続きまして偽造職【シェーファード】がジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルが選ばれます。既に習得済みのスキルは非表示となります》
※羊の群れ
※レントゲン
※ワクチン
※アニマルの言
※飼育の心得
※応急手当
《以下のスキルを取得しました》
羊の群れ
・種別:パッシブ
動物に言う事を聞かせやすくする。
レントゲン
・種別:アクティブ
対象を透かし、骨の状態を見る事ができる。
ワクチン
・種別:アクティブ
対象の動物に最適な薬が作れるようになる。
アニマルの言
・種別:アクティブ
動物の言葉が分かるようになる。
飼育の心得
・種別:パッシブ
動物の世話が得意になる。
応急手当
・種別:パッシブ
対象が怪我をした際、最適な治療法を思いつく。
(見た感じ獣医さんみたいなジョブだけど、ユイシス。この対象ってのはもしかして獣人や人も対象なのかな?)
《はい。説明にあります動物の対象は生命あるもの。人間、獣人だけではなく、モンスターも対象となります》
(おっ、ならラルゴ達も怪我や病気になった時には教えてくれるから助かるね。あっ、あの子達の言葉は分かるから使わないや。まぁ、村の草牛に試しに使ってみよう)
《続きまして、サードジョブ【トレーダー】がジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルが選ばれます。既に習得済みのスキルは非表示となります》
※目利き
※販売上手
(おっ、これは)
《以下のスキルを取得しました。既に取得済みスキルが4つありましたので、経験済みジョブより、未取得のスキルをお選びください》
(来た、商人関係のジョブだからもしかしてと思ったけど、これは狙い通り!)
表記されたスキルは二つ。
元々【トレーダー】には〈交易術〉〈交渉術〉〈ディスカウント〉〈オーバーチャージ〉が表記されていたが、ミツは既にそれを取得済み。
代わりに彼が選んだのは【ダークメイジ】の際に選べなかった魔法を選択する。
(ユイシス、ダークメイジの奴が確か4つ残ってたよね?)
《はい。〈ファイヤーバレット〉〈アイスバレット〉〈サンダーストーム〉〈ウインドジェイル〉ですね》
(そうそう、その四つをお願い)
《了解しました。選択により4つが選ばれました》
目利き
・種別:パッシブ
価値のある物を見極めることができる。
販売上手
・種別:パッシブ
物を売り込むのが得意となる。
ファイヤーバレット
・種別:アクティブ
無数の火玉を放出する、レベルが上がると数が増え、大きさも変えることができる。
アイスバレット
・種別:アクティブ
無数の氷玉を放出する、レベルが上がると数が増え、大きさも変えることができる。
サンダーストーム
・種別:アクティブ
雷撃を降り注がせる、レベルが上がると威力が増す。
ウインドジェイル
・種別:アクティブ
風の檻を作り出す。
《以下のスキルを取得しました、条件スキル〈マルタプレクスマジック〉を取得しました》
マルタプレクスマジック
・種別:パッシブ
魔法を多重に発動することができる。
(うんうん。〈販売上手〉のスキルは今度ギルドに行くから、ネーザンさんに村の特産となる餅とかの売り込みに使えそうだな。ねぇ、ユイシス。この〈マルタプレクスマジック〉って〈分割思考〉とは違うの?)
《はい。【ウィザード】若しくは【ウィッチ】にて取得可能となります〈分割思考〉と違い、こちら上位ジョブに当たります【ダークメイジ】の条件スキルとなります。分割思考は魔法の発動に数が限られていますが、マルタプレクスマジックに限りはございません》
(なるほど。なら試しにやってみたい事が出来そうだね。それは今度の検証で試してみようかな)
《最後に、フォースジョブ【アルケミスト】がジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルが選ばれます。既に習得済みのスキルは非表示となります》
※錬金術(薬)
※製薬
※メディカルドック
※採取
※ラーニングポーション
※薬効強化
※薬学の知恵
《以下のスキルを取得しました。条件スキル〈ポーション効果増加〉を取得しました》
錬金術(薬)
・種別:アクティブ
錬金術にて薬が作れるようになる。
製薬
・種別:アクティブ
オリジナルの薬が作れるようになる。
メディカルドック
・種別:パッシブ
薬や食物と様々なアレルギーが理解できる。
採取
・種別:パッシブ
採取が得意となる。
ラーニングポーション
・種別:パッシブ
離れた者にポーション投げ与える事ができる。※ミツがやると危険なので使いません
薬効強化
・種別:パッシブ
薬の効果が増加する。
薬学の知恵
・種別:パッシブ
様々な薬の知恵を得ることができる
※本を読めば更に知恵は増える。
ポーション効果増加
・種別:パッシブ
自身が作ったポーションの効果が増す。
(ギーラさんが持ってないスキルもやっぱりあったか。オリジナルの薬って何かやばい気もするけど、ある意味特効薬が作れることだよね。魔法があるこの世界でも、薬に頼る場所もあるし、結果的には必要なスキルなんだろうね。それと〈ポーション効果増加〉は〈魔力エッセンス〉と相性が良さそうだ)
《ミツ、ご主人様がお呼びです。こちらに来てください》
(おっ!? シャロット様のお呼びがかかったか。分かった)
ユイシスの言葉にミツは少し昼寝をすると皆に伝え、アンを抱き枕と大部屋の和室にてゴロンと一眠り。
その間、彼は分身を出し、ライムやしてへとガランド達との戦闘を見せる為と試聴会を始める。
新たなスキルなど取得したばかりの皆も、折角ならとその戦いを見聞する事になった。
∴∵∴∵∴∵∴∵∴
「シャロット様、入りますよ?」
〘ええ、良いわよ〙
「失礼します。 えっ!?」
眠りに入って直ぐ、気づけば見慣れたふすまが目の前にある状態。
中に入る前に声を掛ければ創造神の声が聞こえる。
スッーっとふすまを開く音の後、中にはいると驚きの光景。
いつもは狭い和室の部屋にこたつに入った神々がお出迎えしてくれるのだが、今日はその光景ではなかった。
〘ほら、さっさと入りなさい〙
「は、はい」
ふすまを締め、シャロットの言う通りにと指示のあった場所に座る。
部屋は和室に代わりはないが、目の前にあるのはこたつと言うよりかは長いテーブル。
そこに座るはいつもの面々のシャロット、バルバラ、リティヴァール、ユイシスだけでは無かった。
「し、失礼します……」
ミツが恐る恐ると椅子に座る間も注目を集める。
「「「「「「「……」」」」」」」
「あ、あの……、シャロット様、こちらの皆様は……」
ミツの疑問の言葉に、そうねとシャロットが口に付けていた湯呑みを離す。
〘うむ、紹介するわ。リティヴァールの隣から順に、水の女神のルサールカ、火の女神のアグニ、風の女神のニンニル、土の女神のキシャール、武神のサーノス、魔法神のレノ、技能神のグリムよ〙
「あっ、やっぱり神様でしたか……。えーっと。始めまして、ミツと申します」
長いテーブルを前にともに椅子に座るは神々の七柱。
先ずは私ですねと紹介された順に神々が口を開く。
「始めまして、私は水の女神のルサールカ。ルカって呼んでね。シャロット様の言う通り、面白い子」
水の女神ルサールカ。
彼女の髪の毛は根元が深い青から毛先は水色と鮮やかな色を見せ、少しおっとりとした雰囲気を見せる女神である。
服はふよふよとまるで水の中に泳ぐ生き物の様に動き続けている。
「は、始めましてルカ様。シャロット様、面白い子って、いつも何言ってるんですか?」
〘良いじゃない、別に変な事は言ってないんだから〙
「……驚いた。本当にその人間の子を気に入られてるんですね……。失礼……。俺は火の女神のアグニ、よろしくな。しっかし話半分と思って見に来たけど、お前、本当に創造神様のお気に入りだったんだな」
活発な言葉遣いを口にするは火の女神アグニ。
彼女は火の女神まるでメラメラと髪の毛が燃えているのではないかと思わせるような赤い髪。
頬や肩口にかけて肌色が所々と違うのは、傷後であろうか。
白と朱の服は紅白とおめでたい服にも見えなくもないが、なんか巫女服にも見えなくもない格好をしている。
「始めまして、アグニ様。お気に入りかは分かりませんが、よくはしてもらってますよ」
〘アグニ、お前、我の言葉を信じてなかったのか?〙
「い、いえ! そんな意味ではなくてですね!」
〘フンッ、まぁいい。ほれ、後が詰まってるぞ〙
「コホン……。始めまして選ばれし人の子よ。私は風の女神、ニンニル。あなたに会えた事にシャロット様に感謝をします」
風の女神のニンニル。
彼女の方を見れば優しい風がミツの頬を撫でる。
緑と蒼の綺麗な髪は彼女の神々しさを引き立てているかもしれない。
フワリフワリと揺れる彼女の黄緑の服はきらびやかである。
ニンニルは話し方が他の女神と違い、ミツが無意識と崇めたくなる様な話し方をされてしまった。
「はい……。始めましてニンニル様。自分もお会い出来て嬉しく思います」
「フフッ、良い子ですね」
ニンニルの聖母のようなその笑み。
しかし、隣に座るアグニは呆れる者を見るような視線を彼女へと向けていた。
「なーに神様ぶってんだよ、いつもの話し方は何処行ったんだ?」
「なっ!? ほ、ほほほっ。アグニったら。私はいつもの通りよ」
「ニンニル、止めときなよ。変……」
「ああ、ルカの言う通り変だな」
「無理は止めとけ、長続きせんぞ」
「如何した? 腹でも下したか?」
「ニンニル、いつも通りにしておきなさいよ」
ルサールカ、アグニと続き、他の神々からも近い言葉が飛ばされる。
「くっ……お前ら……。フンッ! ミツと言ったわね! 取り敢えずよろしく!」
「はっ、はぁ……」
〘ニンニル。言っておくが、下手に第一印象で変なキャラをイメージさせると、今後こいつと会う時には毎回そのキャラ作りをしないといけなくなるぞ〙
「うぐっ……。分かってますよ。ちぇ、たまには女神っぽい神々しい姿の私でもいいじゃないですか……」
「ははっ……」
〘はぁ……。次〙
どうやらニンニルの性格はセルフィに似てるのではないかと無意識に感づいてしまうミツであった。
「どうも、人の少年。いえ、今の星に飛ばされる前は大人だったから少年は失礼かしら? 取り敢えず、私は土の女神、キシャールよ。豊穣神のリティヴァール様の部下と思ってちょうだい」
土の女神のキシャール。
四人の女神の中では一番の美しさを持つ女神様ではないだろうか。
茶色の髪の毛には艶があり、彼女からは全てを包み込む様に母なる大地と言われる雰囲気を感じさせる。
「はい。よろしくお願いしますキシャール様。自分は少年でも気にしませんので呼びやすい様にどうぞ」
〘こやつはそんな事をいちいち気にしないわよ。次は反対側〙
「はっ! 拙者は武神サーノス。貴殿の話はバルバラ様からも聞き及んでおる。人の子でありながら武に関するその探究心は褒めといたすところ。そこで拙者が聞きたいことであるが」
「サーノス、話が長い。話は端的に、内容はまとめておく!」
「ぬっ!? 待て魔法神殿! まだ拙者の挨拶が……」
「はいはい。ミツ、私は魔法神のレノ、よろしくね。こいつと少し話が被っちゃうけど、君、武以外にも結構魔法を覚えてるみたいじゃない。その話がしたくて私達はここに来たのよ」
武神のサーノス。
第一印象でサーノスをどの様な神と例えるなら侍である。
見た目は弥生時代に出てきそうな浅布で作ったような服を着こなしているが、彼の口調や考えは時代劇で出てきそうな侍が例えやすいかもしれない。
バルバラとは関わりがあるのか、やはり彼も戦闘オタクなのかもしれない。
魔法神のレノ。
サーノスとは対象で彼女は魔法に特化した神である。
数々の魔法を生み出し、今もミツと話し合っている間と新たな魔法を思考にて完成させている。
エメラルドのようなキラキラとした髪の毛が美しく瞳は漆黒と吸い込まれそうに思えるのは彼女の魔法なのだろうか。
プカプカと彼女の周囲を浮遊する二つの球体はまるで惑星が宇宙にて回転する姿のようにも見えてしまう。
「そうだったんですね。サーノス様、レノ様、こちらこそよろしくお願いします」
「うむ。よき挨拶である!」
「こちらこそ」
「最後に僕だね。始めまして、僕は技能神のグリム。早速だけど君に言いたい事があってね。皆には悪いけど、言わせてもらうよ」
技能神のグリム。
見た目はミツと変わらない年子の少年と思えるその姿。
赤い帽子に緑色と白のラインが入った服を着ている。
童話に出てくるようなピノキオ姿のそんな神様。
彼は開口一番と少しご立腹感を出しつつ、ミツへと厳しい視線を向ける。
「始めまして、グリム様。は、はい、何でしょう……」
「君ね、技術の複製は駄目だよ。それは同族他種族と他の者が考えた品だ。少し見させても貰ったけど、君、スキルを使って色んな物を増やしてるよね? 自身が作った物ならそれはいいさ。でもね、技術を使った物を無断に増やしちゃいけない。灯りをつける魔導具もそれを考えた者の努力を君は盗んでる事になる。大体さ〈増殖〉スキルなんてズルすぎるよ。あんな物は世界の技能を止めてしまう事だからね!」
「は、はい! すみません、生活の為と思い、その事を懸念していました」
「うん、分かってくれるなら良いんだよ。あっ、でも君の行った通り必要な分は僕も目をつむるよ。今の所、君は増やした物を売ったりして富を得てないからね。富が欲しいなら自身で作れ! 自身で作れないなら金を稼いで品を買え! わかったね? 大体君は既に創造神様のお力にて魔導具くらい作れるんだから、創造神様の化身であるユイシスに質問すれば直ぐに作れるだろうに、まったく。それに関してスキルを使う事に口は出さないけど。くどくど、くどくど……」
「は、はい! おっしゃる通りです」
グリムは技能神だけに物を作る者に対しての慈愛が深い神である。
職人の子供が親に認められたく、頑張って何かを作っている姿などをいつも見ている彼にとっては〈増殖〉スキル一つで複製品を生み出すミツの存在は邪道であり、言葉の通り他者の努力を盗み取る行為に許せなかったのだろう。
他の神々も自身に関係する事をもしミツがやってしまったとしたら、グリムの様に同じように彼を叱咤したかもしれない。
〘あー、グリム、気は済んだか?〙
くどくどと初手の挨拶よりも小言が多くなっているグリムをシャロットが何とか静止させる。
彼女も創造神だけにグリムの言いたい気持ちは分かるが、ミツが使っているスキルに関しては自身が作った事だけに、遠回りに自身が責められている気分となっているのだろう。
「はい。創造神様。場を頂きありがとうございます」
〘いいのいいの。さてと、挨拶も終わった所で、今日あんたを呼んだ理由は分かってるわよね?〙
「はい。お陰様でスキル数が500を超えました」
《正確には523個のスキル数となります》
「「「「「「「!?」」」」」」」
ユイシスの言葉にミツへと神々の視線が集まる。
それは驚きが大半だが、中には人族であるミツがそれ程のスキルを持つ事に感心する神もいた。
〚カッカッカ! 小僧、相変わらずお前は物好きな事をしておるな〛
「いえいえ、それ程でもありませんよ」
別にバルバラは褒めたつもりではないのだが、ミツの返しにニヤリと笑みを深めるバルバラである。
〚こやつは、言いよるわ。ハッハッハッ、シャロットの使いっぱ、やはり主も主ならお前もお前だな〛
〘おい、バルバラ、こいつのスキル集めは完全な趣味趣向だぞ。私の創造と言う造る力とは別物だ〙
〚でもよ、ある意味お前のやる事も趣味だろ?〛
〘なっ!?〙
[シャロットちゃん、バルちゃん、そう言うお話は戻ってからね。実りの子、今日この娘達がここに居る理由が知りたいでしょ?]
「はい。いつもの茶の間出ない事も驚きですが、こんなにも神様達を目の前にするとは思ってなかったので」
〘あー、こいつらを呼んだのは私よ。さて、話をしましょうか〙
気持ちを切り替えたのか、シャロットの言葉に姿勢を正す神々。
それに習い、ミツも無意識と背筋を伸ばす。
〘改めて紹介するけど、私が造った星の欠片の一部として繋の活動してるミツよ〙
「ほー。創造神様が星の繋がりに人を選ぶとは知りませんでしたな」
「本当に。シャロット様、短命種を選ばれるのもなにか深い意味がございまして?」
武神と魔法神の言葉に創造神がコクリと頷き答える。
〘そうね。強いて言えば欲深な所で選んだって所かしら。勿論短命種である人族なら誰でもいいってことは無いわ。皆の者も知っている通り、こやつはスキル集めが趣味でね、人族としては異例と言える程のスキルを持ってるわ。それに、スキルが趣味になってるから、その為なら素直に動いてくれるわね。恐らく別の人を当てが得たとしても、使い難い者か、早々と人として壊れるかのどれか。それを思うと繋にこやつを選んだのは運が良かったわ〙
「まー、最初は驚きましたけどね。でも今となれば地球で住んでいた時よりも自由に動けてますし、自分自身でも楽しんでいるのは分かってますからね」
「じゃ、地球に未練とかは?」
「全く無いです」
「ほう、言いきったな」
「寧ろ今はこっちの世界で仲間も家族もできてますからね。今更戻れと言われてもそっちの方がキツイです」
キシャールとアグニがミツの言葉に眉尻を少し上げる。
「仲間は分かるけど、家族って?」
「精霊達のフォルテ達とテイムしたウルフのアン達です。一応幻獣召喚して出してる助さんたちも意思があるので家族に慣れたらなと思ってはいます」
「ハハハハッ! こりゃ面白え。精霊や魔物が家族かよ! アッハハハ!」
「アグニ、笑いすぎよ。そう言えば君は創造神様と豊穣神様から天命を受けてるのよね? 荒れた大地や湖をもとに戻すって役割を」
「はい、キシャール様。他には枯れた井戸や畑もですね。この間もやってきましたよ」
「ええ、それはここの全員が見させてもらったわ」
「なるほどね……。創造神様、この場に私達が呼ばれた理由はこの子で間違いないですか?」
ルサールカが何かを見極めたのか、視線をミツから隣に座るシャロットへと移す。
〘そうね。それは私から頼むわ。ルサールカ、アグニ、ニンニル、キシャール、サーノス、レノ、グリム。ユイシスと同じ程度で構わないから、こやつに力を与えて頂戴〙
「「「「「「「……」」」」」」」
創造神であるシャロットに直接に頼まれたその言葉。
勿論これは強制ではないが、創造神であるシャロットの信頼は他の神から厚く、この場で反対の意を唱える者は誰もいなかった。
[私からもお願いね。キシャール、特に貴女は私の直属だから、皆よりも頑張ってね]
「はい。それがリティヴァール様のお望みならば」
「?」
神々はミツを中心とした話をしているのだが、当の本人に説明もなしに進んでいく会話にキョトン顔。
「ヘヘッ、創造神様、当の本人は全く分かってないみたいですね。ミツ、今からお前に俺達の加護をくれてやるよ」
「えっ!? 加護って、皆様からですか!?」
アグニの言葉にやっと自身がなにをしてもらうのかを理解するミツ。
既に彼は三柱と女神から加護を貰っているが、更に加護を付ける理由を説明される。
〘あんた、スキルが500を超えたじゃない。さっきも言ったけど、それはもう人としてはありえない数なのよ。そこでそのスキルを維持するためにもこの娘達の加護が必要となってくるのよ〙
〚うむ。小僧、恐らくだがこのままお前がスキルを集め続けても使いこなす前とそのスキルを失うかもしれん〛
「えええっ!!」
「おいおい……俺達から加護が貰えるって分かった時以上の驚きじゃないかよ……」
「アッハッハハハ!! 良き良き。武人としてはそれも結構!」
「まあ、私も魔法関係なら同じ反応を見せるかもね……」
ミツの反応に、アグニの様に呆れる神もいれば、サーノスとレノの様に気持ちは分かると同意する神も居る。
〚そこでこ奴らの出番という訳だ。各属性の女神の娘の加護があれば、お前の中の属性が暴れる事も無く自由に使えるようになる。さらに他の者の加護も武、魔、技と、お前には必要なものであろう。今回お前のスキル数500を超えた褒美としてあやつが考えた事だ〛
「そうなんですね! シャロット様、ありがとうございます!」
〘毎回毎回スキルが褒美ってのも味気ないでしょ。あれよ、毎日食べる物が同じだと人って飽きるじゃない。変動よ、変動〙
バルバラは分厚い腕を組み、改めて7柱を呼んだ経緯を説明する。
シャロットにミツが改めて礼を告げると、彼女は満足げな表情と共にバリッと目の前に置いてあった駄菓子の煎餅を食べ始めた。
久し振りに見たが、いつの間にかパッケージのお婆ちゃんの絵が変更になってる。
[あっ、そうそう。実りの子、貴方が聖木の近くに埋めた魔石だけど、もう直ぐカセキになるから、新しいのと交換しといてもらえるかしら]
「えっ? もう魔力が尽きるんですか? 結構な大きさの魔石を置いていたつもりだったんですけど」
リティヴァールは茶菓子の羊羹を食べつつ、数日前にミツが聖木のある場所に魔石を埋めた話をする。
彼女の説明に続き、キシャールが補足説明を入れてくれた。
「それは聖木に全部吸われたわね。元々栄養が足りなかったのか、貴方の作った魔石が聖木に馴染んで吸い上げちゃったのよ。貴方はリティヴァール様の加護も貰ってるでしょ? その分聖木とも相性が良かったのもあるわね。次は倍以上の大きさの物を植えておくのが良いかしらね」
「なるほど。リティヴァール様、キシャール様、分かりました。戻りしだい直ぐに交換してきます」
[頼みましたよ、実りの子]
「よろしくね」
その後改めて7柱へとシャロットとミツの始まりから話をする。
所々と神々からはミツへと質問が飛ばされる。
何故あの時はああしたのか、如何してそこ迄スキル集めができるのかと。
これは詰問ではなく、ただの神々の気まぐれ的な質問である。
大体話の戦闘はユイシスが補足していたのでカットされているが、人や他種族と大きく手を繋げようとする人種は神々から見ても珍しいのだろう。
女神の四柱も遠い昔、一人の人間に加護を与えた話を思い出しつつしてくれたが、その人物もミツに似て人の良すぎる人だったらしい。
またミツが神様って他にどれくらいいらっしゃるのですかの質問には、もう指折り数える以上には居るようだ。
ルサールカも同じ水の女神はいっぱい居るわよと説明。
中にはミツの様に別の世界、パラレルワールドの世界の日本人と共に異世界に飛んだ女神も居るそうだ。
神様と共に冒険ですかと驚くミツだが、ルサールカの目が細められ、あの娘は異例よと呆れていたようだ。
他にも同種族の女神の話を出すが、どれも夢物語の様な事をやっている女神や神様だらけ。
宇宙に行って転生した者と共に今も商売をしている神。
転移した者の行いが楽しそうだと言って、恋愛神、武神、音楽神と次々とその者の家族と周囲に言っては共に生活する神等々。
逆に転移、若しくは転生させた者が邪神に取り込まれ、その者を移動させた責任を取って自身がその世界に行った者すら居るそうだ。
そんな話をしていると、壁掛時計の長針が何周したのか分からなくなる程に長話となっていた。
7柱もミツを気に入ってくれたのか、ミツに加護を与えた場合の影響を前もって教えてくれた。
「それじゃ、私から。ミツ、君が水と共に生きる事を願う」
「加護渡しなんて数百年ぶりだな。ミツ、火の暖かさが君を包み込む事を願う」
「それ言ったら全員が数百年ぶりよ。私は最後に渡したのって確か……誰だっけ? まー、いいっか。人の子よ、風の流れが君に生命を運ぶ事を願う」
「少年、君の働きは豊穣神様と一緒に見てるわね。大地を豊かに、心満たされる事を願う」
「ミツよ、今度こちらに来るときは、拙者直々と貴殿に稽古をつけてやろう! なあに拙者の稽古を付ければ貴殿の力も跳ね上がるという物だ」
「ちょっと、後がつかえてるんだから早くしてよ」
「おっと、魔法神殿よ、すまんな。では、貴殿の力は武だけではないが、武無しでは生きていく事は困難となる。他者を導き、導く先を貴殿が切り開く事を願う」
「ミツ、魔法に終わりは無いわよ。それを貴方が何処まで掴めるのか見聞させてもらうわね。求める者に新たな叡智がある事を願う」
「さて、最後に僕だね。改めて言うけど、作りたい物があるなら自身で作りなよ。それで作った品は必ず僕に見せること。それを君のスキルで増やすのは問題ないとその時言えるだろうさ。それじゃ、技術の発展は生物の好奇心から生まれる。その好奇心を君が絶えず求める事を願う」
《ルサールカ様より〈水の女神の加護〉。アグニ様より〈火の女神の加護〉。ニンニル様より〈風の女神の加護〉。キシャール様より〈土の女神の加護〉。サーノス様より〈武神の加護〉。レノ様より〈魔法神の加護〉。グリム様より〈技能神の加護〉を頂きました》
「ありがとうございます。皆様の加護、大切にさせて頂きたいと思います」
「ああ、無駄に済んじゃねえぞ」
「そもそも創造神様の加護を既に貰ってるから、そこ迄恐縮することも無いわよ」
「そう言えば、話を聞いていると思ったんですが、シャロット様って結構偉い神様なんですか?」
その言葉に周囲全員の驚きの顔を集めてしまう。
言われた本人は飽きれているのか、ズズズッと急須で入れたお茶を音を立てて飲み干し、ジト目を向けてきた。
〘あったりまえでしょ! あんたにも分かりやすく言っておくけど、私は会社で言う社長ポジションの椅子に座ってるのよ〙
「あっ、なるほど。それでその上、会長が大神様って事なんですね」
「ははっ……。知らない事とは言え、人の子の発言はヒヤリとするわね」
「ホントに……。怖いもの知らず」
「いやー、神様に降順を付けるのって失礼な事だと思ってまして、自分的には神様は皆様横一列なのかなと」
「その考えは間違いでは無いが、それは同種の神だけだよ。例えば僕の様に技能神の中では一応上に立ってるけど、武神や魔法神と比べたら同じ位置だね」
神々の話を聞いていると、神様の世界もなんだか会社みたいだなと無意識に苦笑いを浮かべるミツであった。
〘取り敢えず次も褒美が欲しかったらそのまま頑張りなさい。あっ、リティヴァールから言われた事忘れるんじゃないわよ〙
「はい、分かりました。皆様、改めて加護を頂きましたこと、ありがとうございます。皆様から頂きました加護も、シャロット様から貰いました加護同様に悪用せずに使わせていただきます」
ミツの誓の言葉に神々は頷きを返す。
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
「んっ……」
目を開け、気がつけば抱き枕としていたアンの他に、いつの間にかラルゴが枕となり、シャープとドルチェの二頭もミツにピッタリとくっついて寝ている。
「やべー。これ二度寝できるコースだ」
ボソリと呟いたその言葉にアンはミツが起きた事に気づいたのだろう。
彼女はミツがもう一度このまま寝るのかを一度聞くが、仲間達が見ているガランド達との戦いが終盤にかかっていることに気づいたので二度寝は断念した。
(んっ。主様、起きられましたか。二人とも、主様のご起床です、そこを退きなさい)
シャープとドルチェは渋々ながら起き上がるが、ラルゴは未だに爆睡してるのだろう。
フゴッフゴッと鼻音を鳴らしている。
呆れたものねと姉妹からの視線もあるが、ミツがそのままで良いよの言葉にラルゴはそのまま寝かされることになった。
映像に映し出されているミツの戦いに唖然としつつも、真剣にその戦いを目にする仲間達の後ろに彼は座って終わるのを待つ。
最後の決め手と、ガランドへとミツの〈獅子咆哮波〉が映像を明るく光らせ戦いが終わった。
息をのむ戦いの後、彼らはミツが起きていた事に気づく。
そして開口一番と誰からかミツを呼ぶ言葉が飛ばされた。
「ミツ、起きたのか」
「うん。分身、自分の代わりにありがとうね」
「いや、気にしなくても良いよ。それじゃ僕はこれで」
その言葉を残し分身はミツの影の中へと消えていった。
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