第296話 仲間達のジョブ変更2 前編
「それじゃ、始めようか」
「よっ! 待ってました!!」
「早いもんだねー。もうアタイ達もジョブを変えるなんて」
「流石ミツ君の訓練場でしたね」
「ありゃ一種の変態的な戦闘法よ」
ベルガーとナシルがライアングルの街に帰った後、ミツ達は広く造ったリビングにて各々と椅子に座り円を囲む。
彼が出した森羅の鏡に拍手と歓喜に迎えるリック達の声が飛び交う。
「それじゃ、誰から使う? いつもの様にリックから回していく?」
「おっ!? 良いのか?」
「どうせ皆に回すんだから、先でも後でも一緒だもん」
「別に、俺は逆に皆が如何なるかも見たいからな。ジョブを変えるだけだけども、人のジョブってそんな見ることも無い機会だしよ」
「トト、覚えておきなさい。あんまり女性のジョブを覗いたら失礼なのよ」
「そ、そうなのか? なら俺はリックさんとリッケさん、後ミツのだけ見る事にするわ」
「トト、別に俺は気にしねえが、ミツのは見れねえぞ?」
「えっ? 何でですか? ミツ、お前もその判別晶使ってジョブを変えてるんだろ?」
「ああ、そう言えばトトさん達には言ってませんでしたね。自分はこの森羅の鏡や、判別晶を使わなくても頭の中で考えればジョブを変えれるんですよ」
「「「「はっ!?」」」」
ミツのさらりとした発言にトトだけではなく、それが初耳とマネ達からも驚きの声が出る。
「まー、その反応が普通よね」
「私達もその話を聞いた時は驚いたもんよ」
「坊や、そんな話おいそれとしても良かったのかい?」
「問題ありませんよ。ギルドのネーザンさんとエンリエッタさんも知ってる話ですし。それに、自分がジョブを変えれるって話で、他の人がどうこうできる内容でもありませんからね」
「ああ、そうかい……。確かにそれはそうだね……」
驚きに思わず声を出すヘキドナに、ミツはさもありなんと当たり前の様に答えを返すのだった。
「それで、リック。取り敢えず使って見て出た項目から後を考えようか」
「そうだな。俺がこのパーティーのガーディアンってのは決めてるしな。……えっ」
「如何したの、リック? おおっ」
リックに手渡した森羅の鏡から何時もの様に虹の靄が文字として並びだす。
彼が出した項目の一覧に、使用したリックだけではなく、ミツを含む全員が驚きに目を見開く。
彼が以前なれるジョブは【ソードマン】【ライダー】【アーチャー】【ウォーリアー】、それと既に経験済みの【ファランクス】の五つであった。
現在セットしてある【カタフラクト】を選択する時は見ていなかったが、今の状態でなかったのは間違いない。
そう、今のリックのジョブ一覧には先程告げたジョブとは別に【モンク】【クレリック】【ガード】【ナイト】【ローグ】【ペドラー】【アサシン】【釣り人】【ジョングルール】が追加された数となっている。
14種類ものジョブ一覧に驚きもあったが、よく見るとその中にはやはり上位ジョブは見受けられなかった。
それよりも、ジョブ一覧の中に【釣り人】が入っている事にミツの頬が少し引きつく。
このジョブは条件ジョブであり、その条件が一定時間の内に魚を30匹釣り上げると言う、ミツには達成不可能なジョブであった。
デルデル魚を釣り上げた際に、無意識とその条件をクリアーしていたのだろう。
その時のプルンのドヤ顔も今では懐かしい思い出だが、何となくムカついたミツは今度またプルンに仕返しをしようと考える。
はい、ただの八つ当たりである。
「凄えな。なんか前見た時よりもジョブの数が倍近くまで増えてやがるぜ」
「うん。この中で上手く選択すればまたリックは上位ジョブが選べるようになるね」
「そっか。俺の予想だと、ガードとナイトのどっちかを選べば行けるんじゃねえか?」
「えーっとね、ちょっとまってね(ユイシス、この一覧から選んでリックが上位になれるものってある?)」
《はい。お答えします。現在のリックの経験済みのジョブを含めますと【クレリック】【ガード】こちらを選択することに条件上位ジョブと上位ジョブの二つが選択権に入ります》
(おっ! リックにも条件上位ジョブが来たね。その条件ってどっちのジョブで、条件って何だったの?)
《【クレリック】を選択し、ジョブレベルをMAXにする事に条件上位ジョブ【聖盾士】が開放されます。条件はアンデッドの攻撃を3000回受け流すになります。先程までのゾンビを使用しての訓練にて、リックは〈城壁〉スキルにてそれをクリアーしております。また【聖盾士】は盾職としては最高の位置に立つジョブとなり、彼の希望とするパーティーの要となるでしょう。因みに【ガード】こちらを選択されますと【ランサー】との組み合わせにより【ライガー】が表記されます》
(なるほど。ありがとうユイシス)
ミツはリックへとユイシスの説明をそのまま伝えるように彼にも条件上位ジョブの話を告げる。
そこはあえて彼が予想していた【ガード】こちらの話を先にしてからだ。
その方が無意識とはいえ、自身の努力が条件を満たしていると言う高揚感を与えるためでもある。
案の定、リックは【ライガー】の話の時よりも【聖盾士】の話の方が喜びの声は一回り大きく感じた。
「マジかよ!? おっしゃ! 聖盾士だ! 俺はそれに絶対になってやるぜ!!」
「はー、貴方が盾職の最高ジョブにね。まぁ、なれるのはミツ君の協力あってかもしれないけど、貴方の努力もあってなのは確かよね。しっかし……ププッ」
「ローゼ、何でそこで笑うんだよ?」
「いや、だってリックがリッケ君みたいに回復を使う所のイメージが付かなくて」
「えっ? あっ、そうか。クレリックなんだから俺もリッケやミツと同じ回復が使える様になるのか!」
「リック、今気づいたんですか?」
「ああ、聖盾士の事しか考えてなかったわ」
「良いんじゃない。エンリエッタさんも盾職だけど【クルセイダー】って確か回復も使えたはずだよ。盾職で守りながら自身も回復できるのって、支援職の人からの位置から見ても回復の手間も減るから助かるもんね」
ミツは昔やっていたネットゲームの知識を踏まえて、前衛が回復を使うか使わないかでの支援のMPの消費量を話し出す。
すると経験者であるリッケとミミからは、強い共感を得られてしまった。
「そうですね……。戦闘時の立ち位置にもよりますけど、大体は前に立つリックには回復が届かないときもありますし」
「それ、凄く分かります! 私もトトが怪我しても近づけない時もあったので」
「支援をする立場だからこそ、見えてる物もあるからね。それで、リックは聖盾士を狙う方で良いんだよね?」
「ああ、構わねえ、やってやるぜ!」
「うん、頑張ってね」
リックは聖盾士のジョブを目標とし、選択項目から【クレリック】を選択する。
ズラリと並ぶスキルをポンポンと選択しては選び、リックにもクレリックの限定スキルまでを全て取得する。
取得したスキルは〈ヒール〉〈ブレッシング〉〈ミラーバリア〉〈速度増加〉〈速度減少〉〈シャイン〉エンジェラス〉〈回復力増加〉〈MP消費軽減 〉の9つのスキルである。
続けて次はリッコの番なのはお決まりなのか、よく見れば皆が座っている順番がリック、リッコ、プルン、リッケ、ミーシャ、ローゼと順番になっている。
何だかんだとこの順列が馴染んでいるのだろう。
「それじゃ、リッコ」
「うん。借りるわね。えーっと次は何にしようかしら。あらっ、私も選べるジョブが増えてるみたい」
「んっ。あっ、本当だ。でも残念だけどやっぱり上位はこの中には無いね」
リッコの手元に握られた森羅の鏡。
彼女の以前の表記ジョブは【クレリック】【ハイウィザード】【アーチャー】【サマナー】【ブレイズナイト】と、経験済みである【ヴァルキリー】であった。
そして新たに出たジョブは【モンク】【ソーサラー】【シャーマン】【ケミスト】【ワテス】【ペドラー】【釣り人】の7つのジョブである。
「んー。仕方ないわね。それで、ミツ、私はこの中からどれを選べば上位のジョブを出せるの?」
「んー。リッコはウイッチを経験済みだから、遠距離のアーチャーをやって【マジックハンター】をやるか、若しくは接近戦のモンクをやった後に【マジックファイター】の何方からかな」
ミツの場合は【ウィザード】+【ハンター】にて【マジックハンター】を出し【ウィザード】+【モンク】にて【マジックファイター】を出している。
リッコの経験済みの【ウイッチ】は女性限定の【ウィザード】と思ってください。
「んー。弓と拳か……。弓も良いけど、このパーティー、ミツとローゼとアイシャちゃんの三人も弓が居るから、私の弓での出番なさそうなのよね」
「んー。確かにマジックハンターは基本弓での攻撃だもんね。なら、マジックファイターの方に……」
《ミツ。対象者、リッコですが、彼女にも条件上位ジョブを取得ジョブがございます》
「あっ、リッコ、ちょっと待って」
「んっ?」
(ユイシス、そのジョブって何?)
《はい。【クレリック】を経験することに【アルカナウイッチキャスター】の項目が表記されるようになります。こちらは【ウイッチ】を経験し、火属性魔術の所持、更には1000体のモンスターを一つの属性にて討伐するが条件となります。リッコは訓練中にて戦闘時の条件を満たしております。また、【ソーサラー】を選択したとしても条件上位ジョブ【エイジメイサー】が選択権が得られます。こちらは【フレイア】のジョブにて一定のモンスターの討伐数が条件となります。二つのジョブに違いを上げますなら、アルカナウイッチキャスターは攻撃特化型、エイジメイサーは万能型となります》
(凄いな。自分もモンスターを数多く倒してきた積もりだけど、リッコは条件上位ジョブを二つも出せるなんて)
リッコの成長振りに驚きつつも彼女へとユイシスの説明を伝える。
「リッコ、少し訂正するね。さっき言った二つの他にも、君にもリックと同じ様に条件上位ジョブが選べるジョブがあったよ」
「えっ!? ミツ、それってどれ!!」
彼女は兄と同じ条件上位ジョブになれる話に食い気味に質問してくる。
アルカナウイッチキャスターとエイジメイサー、この二つの条件とジョブの変更後の戦闘スタイルを説明。
一応スキルの説明も聞くかと質問するが、彼女は戦闘スタイルの話を聞いた時点で、次に何を選ぶのかを決めたようだ。
「大丈夫、私はこっちのアルカナウイッチキャスターになるわ」
「攻撃特化か。まぁ、良いんじゃねえか?」
「それにパーティーの中ではバランスがいいと思いますよ。リックが守り特化ですから、リッコが攻撃特化にするのはいいんじゃないでしょうか」
「そうなるとリッコもヒールが使える様になるニャね」
「なぁ、ミツ。アルカナウイッチキャスターが攻撃特化って話なのに、何で治療士のクレリックをやるんだ?」
「えっ……それはね(ユイシス、何でなの?)」
《はい。お答えします。ミツのいま居る世界でのジョブは、全てがご主人様の創造にて作られました。その際、生き物へと生きる糧としてジョブを作る時に、ご主人様の気まぐれにて無差別にて選択されたのが条件上位ジョブの枠となります》
(えっ、無差別……。つまりは適当……)
〘ちょっと、適当とは言葉が悪いわね〙
(シャロット様。でも、無差別って無意識ですよね?)
〘いやー、なれるかなれないか分からないジョブに、正直一つ一つ条件考えるのも面倒じゃない〙
(まぁ、確かに……)
〘でも、私も頑張ったのよ!? 一つ一つのスキル考えて、バランス調整を決めて、尚且つジョブの名前まで考えてるんだから〙
(あー、確かに。既に用意された物ではないですからね)
〘まぁ、その娘がなろうとしてるアルカナウイッチキャスターを考えてる時、くしゃみしちゃって、クレリックのジョブが紛れ込んだのが事実ね〙
(なっ!? 神のくしゃみでリッコは余計にジョブを経験しなければならなくなったって事ですか……)
〘大丈夫大丈夫。そもそもアルカナウイッチキャスターをやってる種族はこの世界に一人も居ないからね〙
(何が大丈夫なのかは分かりませんが、そりゃ魔術士が支援ジョブに変えるなんて、自分みたいに物好きじゃないと変えないでしょうからね。更にはモンスターの討伐の際に同じ属性しか使えないなんて……。これ、自分でも言われなかったら達成は無理ですよ)
〘だからの条件なのよ! はい、分かったなら説明してあげなさい。神の気まぐれって事よ〙
(神のくしゃみの間違いでしょうに)
「えーっと。リック、リッコがなろうとしてる条件上位ジョブには意味もわからない物もあってね。恐らくだけどクレリックで取得するスキルが関係するんじゃないかな」
「スキル? 回復のヒールか?」
「あっ、いや、えーっとね……あっ。多分だけど、リックもリッケも【クレリック】で持ってるスキルなんだけど〈MP消費軽減〉ってのがキーだと思う。あと、やっぱりリッコは【ウイッチ】も経験があるからそれが重なったんじゃないかな」
「なる程な(何でリッケがそんなスキル持ってる事をミツは分かるんだ?)」
(へー。僕そんなスキルも持ってたんですね。まぁ、ミツ君の事ですから、相手が何のスキル持ってるのか見るスキルを持ってそうですから、僕はツッコみませんよ)
「それじゃ、選ぶわね」
ミツのさり気ないポロリ発言も気にせずとリッコはクレリックを躊躇いなく選択する。
取得したスキルはリックと同じ物である。
「ふー、これで兄妹皆がクレリック経験者になったのね」
「僕は既に終わってますけどね。あっ、二人とも、回復で分からないことがあるなら教えますよ」
「フンッ。言っておくけど私はお母さん譲りの高い魔力を持ってるのよ。今は回復量ではリッケに負けてるかもしれないけど、直ぐに追い抜いてあげるわ」
「さー……それは如何でしょう。僕は15の時からお父さんとリックの(主にお母さんからの)怪我を治してきてますからね。ちょっとやそっとでは僕を抜けませんよ。寧ろ前に立ってるリックが先に回復量が上になるんじゃないですか?」
「えっ?」
「確かに。リックは前衛だけに切り傷やダメージを受ける事が多いからね。それを自身で治して行けば、恐らくリッコよりもリックの方が治療士としても成長は早いと思うよ」
リッケの発言は予想通りの結果と後に分かることであった。
バンバンと魔法攻撃をくりだすリッコと比べて、自身が倒れては後方の仲間達に被害を出してしまうリックは、後の戦闘時も自身で回復を行ったりと彼はヒールのレベルをMAXにするのは早かったりする。
「次はウチニャ!! ミツ、鏡借りるニャ」
「はい、どうぞ」
次に森羅の鏡を使用するのは元気な声を出すプルンとなる。
彼女にも新しいジョブの選択項目は増えて入るが、やはり上位ジョブを選べる状態ではなかった。
【ソードマン】【武道家】【ヴァルキリー】に加えて、新たにプルンには【ライダー】【アマゾネス】【ストライカー】【バーサーカー】【釣り人】が追加されている。
やはり魔術士や治療士のジョブはプルンには出てこないのか、前衛となる戦闘ジョブのみとなる。
それでも選べる項目が増えた事に、本人がニャニャっと嬉しそうに喜んでいるようなので気にもしていないのだろう。
ユイシスにアドバイスを貰いつつ、プルンに最適なジョブを教えてもらう。
そして今回プルンが出した【ストライカー】それと【バーサーカー】。
この何方かを選択することに、次の上位ジョブを出す事ができるそうだ。
【モンク】を経験しているプルンが【ストライカー】を選択すれば、新たなジョブ【拳王】が出せる。
更にその際【拳王】を経験することに【修羅拳王】とその先に隠された条件上位ジョブを選択することができるそうだ。
【修羅拳王】これは拳を使う戦闘ジョブとしては1位2位を争う強さを持つジョブだと教えられた。
次に【バーサーカー】を選んだ際は【ジャック・ザ・リッパー】が表記される。
これはナイフを中心とした戦闘ジョブとなる。
名前の通り切り裂きジャックの由来となるジョブには特殊なスキルがあり、モンスターや肉などを切ることに躊躇いを出すことはなく、血を見る程に戦闘能力を大きく跳ね上げることができる。
この説明をそのままプルンに伝えると、彼女は珍しく苦笑いを返してくる。
周囲の仲間達も頬を引きつらせたり、考え込むような素振りだ。
ミツとしては別にどちらを選んだとしてもプルンの性格が変わるわけないと思っていても、やはりジャック・ザ・リッパーのジョブは受け入れがたいのだろう。
それならばと条件上位ジョブが見えた拳王の方にプルン本人の意識が強くなるのは仕方ない。
と言う事でプルンの選択はストライカーとなった。
選べるジョブの一覧は、名前のストライカーと言われる程に打つ者を思わせるスキルばかり。
〈乱撃〉一定確率にて通常攻撃が4回攻撃になる。スキル使用時は発動しない。〈連撃〉 スキルの上位版。
〈残拳〉攻撃を与えた後、相手へのダメージを持続させる。
〈無手波砲〉気合と共に衝撃の一撃を与える。
〈ワンツースマッシュ〉タイミングを合わせてのワンツーパンチ。綺麗に決まると相手の意識を飛ばす。
〈追い打ち〉ダメージを与えた際、同じダメージ量を追加で相手に与える。
〈打撃耐性〉打撃での攻撃に強くなる。
続けてリッケの番なのだが、彼は既に【ソードマン】それと【クレリック】のジョブを経験済みだけに【パラディン】の上位ジョブが選べる状態となっている。
しかし、パラディンは前衛としては守りが強い前衛ジョブ。
最愛とするマネが【ソードマスター】を目指している為か、リッケ本人も彼女の隣に並べる程のジョブを望んでいた。
と言っても、相手が【ソードマスター】にはリッケのステータスなどの問題もあり、頭を悩ませるミツ。
まぁ、悩んだだけで答えはちゃんとユイシスから貰ってるのだが。
それはリッケが表記させたジョブの一覧から説明する事になる。
リッケのジョブ一覧。
以前は【ソードマン】を除いて【プリースト】【ヒーラー】【ウィザード】であった。
今は新しく【ライダー】【スレイヤー】【アベンジャー】【キャヴァリアー】【釣り人】が表記してある。
この中にあるキャヴァリアー。
これのジョブをリッケが経験すれば【聖槍王】を出現させることができる。
しかし、これを出すには条件があった。
そう、これも条件上位ジョブなだけに、その条件がハッキリ言って無茶苦茶な条件である。
その方法だが、聖職者と剣士を経験している状態、それとリッケが槍を背負い、馬などに乗馬した状態を24時間保つと言う、中々のハード条件であった。
その事を伝えると、周囲から呆れかえった視線が向けられる。
「「「「……」」」」
「少年、鬼畜ね……」
「ミツは鬼畜野郎だな……」
「えっ!? いや、エクレアさん、マネさん、これは自分が決めたことでは無いので」
ミツの慌てぶりに二人は笑いを吹き出す。
茶化されてる事に気づいたミツはスネた感じにそっぽを向けば、二人から悪かったと笑いながら言葉が送られてくる。
そんなやり取りも気にせず、リッケのジョブの話が続く。
「そうか……。よし、リッケ、取り敢えず槍は俺のを貸してやる。後は馬だな。その時は村に居る馬を貸してもらえねえか相談しにいくか?」
「そうですね……。まぁ、ミノタウロスをまた60体近く倒せと言われるよりかは、かなりマシと思えますし」
「二人の感性がミツ君に染められてるわね……」
「ローゼ、その内私達もそうなるわよ」
「その予感、絶対当たるわね」
「じゃ、リッケは【パラディン】じゃなくて【聖槍王】を狙う方で良いのかな?」
「はい。ミツ君、その聖槍王は槍の言葉が入ってますけど、剣が使えなくなる訳じゃないんですよね?」
「うん。槍使いでも接近戦では剣を使う人は居るからね。リックの持つ短槍か長槍、何方を使うかはその時に決めればいいよ」
「いや、盾を持たねえなら短槍は無えよ。リッケ、長槍をやるとしても数種類の槍もあるからな。必ず自分にあった奴を選べよ」
「はい、分かってます」
話は決まりと、リッケは聖槍王を目指す為とキャヴァリアーを選択する。
リッケが取得したキャヴァリアーのスキルは以下の通り。
〈ランスロッド〉衝撃を纏わせ、強突きの一撃
〈ダブルスピア〉連続での突き攻撃。
〈馬上バランス〉馬の上ならばバランスを崩さない。※落馬はする
〈槍術上昇〉槍の技量が上昇する。
〈ターンゴー〉騎馬が走った状態でも対象に攻撃を繰り出せる。
〈馬術〉馬に乗り、操る技術が身につく。レベルが上がると上達が上がる。
限定スキルは〈人馬一体〉馬の気持ちが分かるようになる。
次にローゼだ。
彼女は弓を極めたいと希望を出したので上位の【スナイパー】を狙う事になった。
その為にも彼女には項目に出てきた【シューター】を極めてもらう。
何だかローゼが一番早く決まってしまった。
シューターのスキルはハンターやボウマン寄りも技に注視とした物ばかり。
〈早撃ち〉弓を引くスピードが上がる。※早気では無い。
〈弱点狙い〉対象の弱点に当てやすくなる。
〈無弓〉放つ矢の音が消える。
〈ホーミング〉追尾型の矢を放つ。
〈口笛〉近くに居る魔物を呼び寄せることができる。レベルに応じて遠くに居る魔物を呼び寄せることができる。
ローゼはミツに感謝を告げた後、鏡を返してはリビングに置いてある大きな姿見鏡の前に立っては弓を引く動作を見せる。
ミーシャはリッコにジョブに関しては対抗心を抱いているのか、私も水と氷系の魔術士の頂点を目指したいと強い意思を伝えてきた。
ミーシャの言葉にそれは私に対する挑戦ねと、笑みを浮かべては流し目を送るリッコ。
別に争う雰囲気では無いが、魔術士としてライバル心は共にあるのだろう。
それならと、ミーシャには是非ともリッコのアルカナウイッチキャスターと肩を並べる程のジョブになってもらいたい。
(えっ? ユイシス、本当にそれだけでいいの?)
《はい。ミツが先程話しました事ができるのは、ミツの高い幸運の結果です》
(それが事実なら、本当に運が良かったね)
ユイシスに相談すると、彼女はなんて事は無いとミーシャが進むべき道を指し示す。
「ミーシャさん、一先ず鏡を使ってもらっても良いですか?」
「あっ、そうね。それじゃ使わせてもらうわ」
ミーシャが森羅の鏡を使用した事に表記されるジョブの一覧。
【ハイウィザード】【サマナー】【シャーマン】【セージ】【ソーサラー】【ウィッカ】【キャスター】【クレリック】【釣り人】が表記される。
因みにミーシャが希望する水と氷に優れたジョブは【アークメイジキャスター】である。
このジョブにするにはミツの力が必要となる。
その協力とは、ミツが使用できる魔法の一つ〈アイスシールド〉これをミーシャの水魔法、若しくは氷魔法にて破壊できれば表記されるそうだ。
その際、その時にミーシャにセットされているジョブに指定は無いとの事。
先程表記されたジョブであれば、何でもいいと言う、条件さえクリアーするだけで良いジョブだ。
しかし、ミツが発動する〈アイスシールド〉は〈アイスウォール〉の上位版。
しかもミツの魔力も高い為に、ちょっとやそっとでは破壊することは難しいかもしれない。
それでも彼女はやる気を見せているのか、やってやりましょうと豊満なお胸がゆんゆんっと弾み揺れる。
選ぶジョブは何でも良いと告げたが、数内あるジョブを適当に選ぶことはしないのか、彼女は悩みつつもミツへとアドバイスを求めてきた。
「なら、ミーシャさんもクレリックをやりませんか? リックとリッコ、二人がクレリックにジョブを変更した際ですが、スキルの〈MP消費軽減〉このスキルは魔法を使う者にとっては最高と言えるスキルですよ。他のジョブにすれば別のスキルを得られますが、魔術士としては、枯渇を抑えると言う大きなメリットも見えます」
「うっ/// そうね、ポーション買うお金も浮かせる事もできそうだし、それにリッコちゃんも今はクレリックだもの。これで公平と言えば公平かしらね」
魔力の枯渇の言葉に、ミツから魔力を流し込まれた時の事を思い出したのだろう。
彼女の頬はボンっと顔を赤く染めてしまうが、なんとか話題を変え話を進める。
「べ、別に気にしなくてもいいのよ。また魔力を枯渇したら、前みたいにミーシャはミツに魔力を貰えば良いんじゃない」
「リッコ、それはお前もだな」
「「///」」
ミーシャは黙ったまま森羅の鏡に表記されたジョブから【クレリック】を選択し、素早くスキルを選択してスッと鏡をミツへと返し下がってしまった。
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