第295話 三日会わずば刮目して見よ。
ドカーン! ババババッ! ゴーーー!!
「「……」」
今日は昨日突然来訪してきたベルガーとナシルへと、リック達が村で冬の間にやる訓練姿を見せる為と見学をしてもらっている。
元冒険者の二人としては、目の前に突然現れた無数のアンデッドに警戒心を上げるのは仕方ない。
しかし、リックが城壁のスキルを使い、それを守りとして仲間たちが前と同じ様に後方やアリーナ席からの遠距離攻撃にて次々とゾンビを倒していく光景に言葉を失っている。
「リック! しっかりと守りなさい! リッコちゃんに怪我をさせたいの!?」
二階にあるアリーナ席からローゼの激と声がリックへと飛ばされる。
「分かってるよ! リッコ、リッケとプルンの方に居るゾンビ共の減りが遅い、お前もそっちに火力を回せ!」
「あんたへの攻撃が強くなるけど、それでも良いの?」
「へっ! 根性で守りきってやるよ!」
「なら、任せたわよ! プルン、リッケ! 二人は私が倒しそこねた奴に攻撃を仕掛けていって。さー! 火力上げるわよ!!」
その言葉にリッコは〈精霊の呼び声〉を発動し、身体を光らせ自身ソックリな光の分身体を呼び出す。そこに魔法で召喚した〈ファンネル〉を出現した分身が新たに魔法を発動する。
ファンネルのスキルは訓練中に使用し続けたことに、スキルレベルが5に上がり、放射口が二つ増やし火力を上げている。
更にリッコがファンネルへと魔力を強く込めれば、吹き出す炎も豪火と吹き出し、アリーナ席からの視界を火の海と変え、熱い熱量をプルン達は肌で感じる。
「ニャ! アチチッ、熱いニャー!」
「リッコ、やる気を見せるのは良いですけど、魔力の枯渇には注意してくださいよ」
「あら〜。ローゼ、リッケ君がしれっと私達の失敗をなじってきたわよ〜」
「えっ!? すいません! 僕、そんな気持ちで言ったわけじゃ!!」
リッケの言葉を拾うミーシャは、フフッと笑みを見せつつローゼへと話を振る。
慌てるリッケだが、ゾンビを倒す手を止めないのは立派だ。
「ミーシャ、リッケさんもそんなつもりで言ったわけじゃ無いの分かってるでしょ」
「フフッ、分かってるわよ〜。でも、ローゼ、貴女も気おつけてね。ミミちゃんが魔力を渡す事ができるようになったからって、また無茶しちゃ駄目なんだからね〜」
「それはあんたもでしょ。でも平気よ。なんか前よりもスキルを発動するのがズッと楽になってるのよ」
「あら〜。生理終わったの?」
「いえ、まだよ……って!? 何言わせんのよ!」
ローゼがスキルを発動するのが楽になったのはただ単にスキルのレベルが上がっただけで、彼女の生理うんぬんは関係もない。
「良いわね〜。ローゼは軽めみたいで〜。私なんてその日から四日は魔法が上手く使えなくなっちゃうんだから」
「べ、別に私のは軽くは無いわよ。ただ初日と二日目がキツ過ぎで後がそれと比べたら楽ってだけよ」
「ちょっと、二人とも。男共が居る所でそんな話止めときなさいよね。それに今はゾンビに集中しといてよ。お昼ご飯が遅くなっちゃうのよ!?」
「そうニャそうニャ! ごはんは大事ニャ! それで……ミツ、あと何匹倒すニャ?」
プルンの質問に視線をゾンビの方へと向けるミツ。
「えーっと、昨日のペースで今の皆のレベルだから……。うん、今のゾンビなら後は2000体だね」
「「「「「……」」」」」
後2000体。
その言葉に思わず戦う手を止めてしまうアタッカー役の五人。
ゾンビのレベルは35とミノタウロスと同等なのだが、レベル=取得できる経験値がモンスターによって異なるのは当たり前である。
更に彼女達は自分たちの分の経験ではなく、その場にミツがいる事で、自動的にヘキドナやアイシャ達にも経験が流れているので、事実上彼女達が倒しているゾンビの1/10しか経験が入っていない。
ならば自動で経験を分配してしまうミツが席を離れれば良いと考えるだろうが、ミツがその場に居なければ〈絆の力〉スキルの効果を失い、更には魔法を発動しているローゼ、ミーシャ、リッコ達の火力は〈魔速章印〉〈魔紋章印 〉や、他にも様々なミツのパッシブスキルにて底上げされている。
アクティブスキルの効果も彼が途中でかけ直さなければ切れてしまうのだ。
グールキングの八兵衛や精霊が側に付いているので彼らに危険は無いだろうが、著しく戦闘の効率を下げてしまうのだ。
でも仲間達の戦うペースならば、後3時間もかからずに目標が達せられるのは間違いない。
なんたってサポーターのユイシスが答えを教えているのだから。
「莫迦、お前ら! 手を止めるなよな!? この状態でお前達が手を止めたら、流石に俺の壁も長くは持たねえぞ!!」
リックの声にハッと我に戻り攻撃を再開する面々。
八兵衛もそれを理解してか、召喚するゾンビは一度止めていたのだろう。
リックの城壁が壊されることはなく、持ち直して戦闘を続けている。
息子達の戦闘するその姿に唖然と言葉を失った父と母。
その中、助、格、八兵衛と三人の大人達へと指示を出しつつ、少し離れた場所で同じ様にモンスターと戦う冒険者へと支援魔法をかける少年の姿。
彼の指示一つでモンスターの強弱が直ぐに変わり、指示を受けた者は召還士であろう、格達三人の動きが変わる。
休憩を入れるとミツの言葉が訓練場に響き、プルン達の手が止まる。
格達も一度モンスターの召喚を解除し、全てのアンデッドは魔法陣の中へと消えていった。
「あー。おっしいー、倒しそこねたってばよ!」
「マネが大振りして倒しそこねただけだシ。リッケの親に良い所見せたいのは分かるけど、それだと逆効果だよ」
「べ、別にアタイはそんな事思ってた訳じゃ……」
図星をつかれたのか、マネは言い訳をするも、シューに見抜かれている為に姉のヘキドナも口を出す。
「……マネ、後半あんたはライムと立ち位置の変更だよ」
「なっ!? 姉さんそんな摂政な」
「ガッハハハ! マネ、お前の分もウチがモンスター共を弱らせてやるっちゃ」
「ぐぬぬっ」
笑いながらバシバシとマネの背中を叩くライムは彼女と反面して前を任されたことに上機嫌。
少しでもナシルの印象を良くしようと思っていたマネの考えは崩されてしまった。
「お疲れ様です皆さん。はい、ちゃんと水分補給しといてくださいね」
ミツは労いを兼ねて、シュー達へとビタミン栄養ドリンクとスポーツドリンクを混ぜた飲み物を手渡していく。
「ミツ、ありがとうだシ。んっ! 美味いシ!!」
「ホント、甘酸っぱくて美味しい!」
シューとエクレアはそれをゴクゴクと飲み干し、おかわりを求める程に気に入ったようだ。
「はい、マネさんもどうぞ」
「おう……すまねえってばよ」
「マネさん、立ち位置を変えたとしてもマネさんは前衛にポジションは変わりませんよね?」
「んっ?」
差し出した飲み物にも口を付けないマネ。
気持ちが落ち込んだ状態では、休憩してもその効果はなく、開けの訓練に影響が支障が出てしまう。
そんな事を思い、ミツのマネへとアドバイスを送る。
「ライムさんの一撃は確かに強いですけど、別にライムさんの攻撃が終わるのをマネさんが待つ必要は無いんじゃないんですかね? ライムさんが右から攻撃するなら、マネさんは反対側に回り込んで攻撃したり、その大きな大剣で突きの攻撃と立ち回りは色々できますよ」
「おおっ! 確かに!」
そうだそうだなと気持ちを立て直すマネ。
「ヘキドナさんは別にマネさんの攻撃チャンスを減らしたんじゃなく、逆に追撃のチャンスを与えてると思いますよ。ねっ、ヘキドナさん」
「フンッ。お喋りな男は嫌いだよ」
苦笑にジト目をミツに向け、受け取った飲み物を一気に飲み干すヘキドナ。
妹想いな気持ちを彼に見透かされた気分と、彼女はそっぽを向いてしまった。
「姉さん!! ありがとうございます! アタイ、姉さんの気持ちに応え、次はしっかりと動きます!」
「ですって。ヘキドナさん、良かったですね」
「まったく。男に現を抜かしてるからドジ踏むんだよ」
「それはそうと、ヘキドナさん、今のジョブが終わったみたいですので次に変更しますので、こっちに来てください」
「んっ。そうかい。早いもんだね……。マネ、次も同じヘマする様なら、見学に回すからね!」
「は、はい!!」
ヘキドナの今のジョブはソードマンをセットしてある。
元々ジョブレベルが5を超えていた事もあり、一刻でMAXにすることができた。
残り一つのジョブ【シーフ】これもヘキドナは中途半端な所で変更していたのか、レベルは3と中途半端な始まりとなる。
だが、それはヘキドナに取っては幸運な結果になっていた。
本来、ジョブを変更した際、【ソードマン】から後衛の【マジシャン】に変更したとする。
当たり前だがジョブを変更したら以前のジョブ、ソードマンのスキルを覚えることはできない。
今のジョブ、マジシャンのジョブなら日常生活や、戦闘にて頭の上に電球を光らせ閃くかもしれない。
改めてその人がジョブをソードマンに戻せば、ソードマンのスキルを閃くだろう。
ここで森羅の鏡を使う事で、ヘキドナは周りの妹達よりも多くのジョブを得るチャンスが訪れた。
ヘキドナは妹のティファとの戦闘スタイルに合わせていたこともあり、いくつかのジョブをやってきたが、ティファが前衛に立つ事に、ヘキドナは戦闘スタイルを中衛に変えている。
その中衛もシューが入った事にサポート中衛に立場をまた変えている。
今迄浅く経験していたジョブにまた森羅の鏡を使用した事に、彼女は改めてジョブスキルを選択できる状態となっているのだ。
しかもミツが側にいる事に当然とスキルを全部選択取得。
これを見たミツは思った。
これができるなら今迄自分が選択して、取得できなかったスキルも選べるのではないかと。
しかし、その考えは果たせなかった。
何故なら、今回のヘキドナのジョブを戻す事とミツがジョブを戻すとして違いが一つ。
彼は既にジョブレベルをMAXにしてしまっているのだ。
そう、森羅の鏡で再度スキルが選べるのはジョブレベルが未達成の者だけになってしまう。
そもそもミツはユイシスを通してジョブを変えているが、森羅の鏡にやり方を変えても、彼のジョブがMAXになった瞬間、新たなジョブやステータスの補助などの、見返りにスキルを取得できなくなっている。
その事に内心項垂れるミツだが、彼が獲り損ねているスキルは、別のジョブを選択するか、若しくは既に取得済みの枠をユイシスから貰うことに得られるチャンスは十分にあると告げられる。
ジョブを変更したヘキドナだが、戦闘スタイルは変えずに彼女は鞭を手に握り訓練場へと戻っていく。
そこにリックが額の汗を拭いながら近づいてきた。
「なぁ、ミツ。トト達は今のジョブを済ませたら上位をやらせるんだろ?」
「うん。アイシャを除けばあの二人は次は上位ジョブを経験してもらうよ」
「俺達は如何なるんだ? 俺もリッコ達も今は上位だけどよ、また別の上位をやらせてもらえるのか?」
「いや、リッケは恐らく出てると思うけど、残念だけど他の皆は続けて上位ジョブはできないよ。前回ジョブを変更した時にはリック達には項目が出てなかったからね」
「そうだったな。なら、俺達は何からやればいいんだ?」
「んー。何をやればと言うか、リックは何になりたいの? ジョブのオススメやアドバイスはするけど、結局はリックのジョブだからね」
「おっ、そうだな。悪いな」
「ううん、良いんだよ。それで、リックはこのまま盾のジョブを貫くの?」
「……まぁ、その方が役にたつしな。リッコもリッケも強くなってるとは言え、あいつらは守りが甘いだろ。仲間も増えてるし、お前が居たとしてもやっぱりパーティーにガードは居るだろ」
「そうだね。リックの考えはいいと思うよ。火力だけのパーティーはいざ攻められると弱かったりするからね。なら、リックはこのパーティーのガーディアンになってもらおうかな」
「ガーディアン? それが俺の次のジョブか?」
「いやいや、ガーディアンってのは立場的な名前だよ」
「ああ、なるほどな」
「ねえ、あんた達、もしかして次のジョブの話ししてるの?」
二人で話しているとリックの背後からヒョッコリと顔を出すリッコ。
「んっ? ああ、俺もお前達も次の上位は何にするかミツに相談してたんだよ」
「なら私達も呼びなさいよね。ねえ、ミツ、私達もまた上位になれるのよね?」
「んー。さっきリックにも話したんだけど、リッコ達には次の上位ジョブが森羅の鏡に出てなかったから、皆にはまた別のジョブをやってもらう事になるかな」
「そうなんだ……。まー、良いわ! 時間は十分あるんだし、急ぐことないわね」
「それに僕達はミツ君から最高の訓練場を貸してもらってますから」
「私、今のマジックダンサーも好きなんだけど、やっぱり色んなジョブもやってみたいわね」
そこに話に参加してきたミーシャ。
彼女の発言はミツの考えと同じだけに、彼は珍しくもミーシャへと顔を近づかせる勢いと彼女の言葉に同意する。
「そうですよね! やっぱりジョブは色んな物を経験した方が楽しいんですよね」
「う、うん///」
訓練後だけに汗を流して匂いも気になってしまい恥ずかしくなったのか、彼女はそそくさとローゼの後ろに隠れてしまった。
「ミーシャ、あんた不意打ちには弱いわね」
「だ、だって〜」
「取り敢えず今のジョブを終わらせないと次はありません。次に何になりたいかは終わってから考えましょう。リック、考え事して壁を甘くしちゃ駄目だよ」
「へっ、俺がそんなヘマするかよ」
「ホント、序によそ見も止めてよね」
「えっ? リッコ、俺がいつよそ見してたってんだよ?」
「あー、無意識なのね……。別に、気づいてないなら別に良いわ」
「??」
リックは疑問符を浮かべているが、後ろに位置を取っているリッコからは、兄が無意識とローゼの方へと視線を向けている事に気づいていた。
勿論リックはローゼがまた魔力の枯渇を起こすのではないかと心配を向けていたのだが、それならば近くにいるミーシャや妹のリッコにも視線を向けないのは彼の無意識の行動なのだろう。
休憩後、改めてミツはリック達へと支援をかけ直す。
その際、おまじないとして使用し続けていた〈攻撃力上昇〉〈守備力上昇〉〈魔法攻撃力上昇〉〈魔法守備力上昇〉〈攻撃速度上昇〉の5つのスキルのレベルが全てLv7となった。
そして努力は実り、予定通りと彼らは目標のゾンビ2000体の討伐目標を達成し、訓練場ではリック達の喜びの声が響くことになった。
上位ジョブのレベルMAXに得られる恩恵は大きく、通常のジョブのレベルMAXよりもステータスへのプラスが大きい。
ただ一つ。
ここでユイシスと森羅の鏡でジョブを変更する場合では、違う事が判明してある。
ミツが上位ジョブにジョブをセットする際、恩恵として既に取得済みスキルのレベルを3つ上げることができる。
勿論森羅の鏡でジョブを変更したリック達にもその恩恵は起こるも、彼らは自身でそれを選択することはできないようだ。
これもユイシスをサポーターとして付けたシャロットの神の気まぐれである。
洞窟内でリッコが試し撃ちと〈雷鳴豪華〉を使用したのだが、その時彼女がボーナスとして得たスキルポイントは全て雷鳴豪華へと振られていたのだ。
喜ばしい事にこの場にいる全員が次のジョブへとステップアップできる位置となった。
プルン達は勿論、ヘキドナメンバー、トトの新人三人組。
勿論全員の言葉の中にはミツも含まれている。
だが、残念だが【ダークロード】だけはレベルは13と少しレベルが足りていなかった。
ジョブの変更には時間もかかるのでお昼を済ませた後と皆と話しで決めている。
皆がやりきった顔を見せていると、それを見ていたベルガーとナシルはミツの方へと足を進める。
「ミツ君」
「はい。ベルガーさん、ナシルさん、お二人も折角なのでお昼を如何ですか? リック達の訓練を見たら帰ると言われてましたけど」
「ああ、君の所の飯はその辺の飯屋では食えないものだしな。その言葉には甘えようと思う。それよりも……。ありがとう」
「えっ!? お二人ともどうしたんですか!? 頭なんて下げないでくださいよ」
ベルガーは感謝の言葉に続いて、夫婦揃ってミツへと頭を下げる。
「いや、これは三人の親として言わせてもらいたい。君のお陰で俺達の息子達は確実に力を付けている。僅かな時間だが、訓練姿を見ただけだが、俺達も元は冒険者だけには分かっているんだ。君の指導なければあいつらはあれ程の力は得られてないと。本来ならこの言葉はもっと前に君に伝えるべきだったと今更だが痛感したよ」
「ミツさん。これからもリッコ達をよろしくお願いします」
親として子の成長を喜ぶのは、冒険者として力を付ければ生存確率が上がる事を十分に知っているからだろう。
ブロンズ冒険者は半人前の冒険者と言われる程に、冒険者として死亡率が一番高い位置に立たされている。
経験を積み、危機感を自覚出来たものがアイアンランクに昇格できるのが冒険者なのだ。
ミツは目の前の二人が心から感謝を伝えてきた事が伝わり、ハニカム笑顔にその言葉を聞き入れる事にした。
「はい。勿論ですよ」
ベルガー達もその言葉に安堵し、昼食の誘いに応じては昨日とは場の雰囲気も違う食事場となった。
「それじゃ、私達は先に帰るわね。たまには顔を見せに帰ってきていいのよ」
「分かってるわよ。寧ろその時はお母さんたちがこっち来てよ。その方がまた一緒にお風呂に入れるでしょ」
「あら、それもそうね。あなた、またお休みの日には伺わせてもらいましょうよ」
「ああ。俺は構わんが、あんまり足を向けてもミツ君に迷惑になるだろう」
「いえ、そんなこと無いですよ。リック達も何だかんだでベルガーさん達に良い所を見せたいと今日の訓練でも分かりましたからね」
「あんまり調子に乗らないと良いがな。弟妹の手前、あいつも無茶はせんだろうと思うが」
ベルガーの視線の先はナシルに何か言われてるリックの姿であった。
「お袋、また来るならそん時にでも俺の変えのシャツと下着持ってきてくれよ」
「あんたは……。自身の下着ぐらい取って来なさいよ! ミツが道を途中まで直してるんだから、走っても半日で帰って来れるでしょ!」
「なっ!? べ、別に良いだろう」
「はぁ〜」
「お袋、何でそんな露骨なため息出してんだ?」
息子のセリフに無意識とナシルはローゼの方へと視線を向けるが、まだ彼女からマネの様な反応が来ないことに、進展はしてない事を察する母であった。
「……いえ、兄妹の中では貴方が最後になりそうと思っただけよ」
「はっ? なんの話だ?」
「別に。貴方も頑張りなさいって事よ」
「痛ってえ!!」
バシッとリックの背中にナシルの平手が音を鳴らすのだった。
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