第292話 予想外のジョブ変更。

「ふー。食った食ったっての」


「お粗末様です。それじゃマネさんもジョブを変えましょうか」


「おう、すまないね。それじゃ、あんたの判別晶をちょっと借りるよ。かーっ、しっかしあんたの言うとおりにエクレア達もジョブを変えただけでああも力を見せるとはね。ははっ、アタイも楽しみだよ」


 マネに渡すのは判別晶ではなく勿論森羅の鏡。

 彼女が昼食を食べている間と、ヘキドナ、エクレア、シューとライムは次のジョブに変更している。

 ヘキドナはやりかけであったソードマンにジョブを戻し、エクレアは【デュエリスト】に変更。

 シューは新たに出た【ローグ】を選択している。

 ライムは先程までトトがやっていたウォーリアーだ。

 そしてマネの新しいジョブは【ソーズマン】。

 これは【ソードマスター】への近道する為のジョブである。

 ミツもソードマスターにはなれるが、それは彼のステータスあってのジョブ表記である。

 窓の外を見れば、早速スキルの試しとエクレア達が動き回っている。

 武器の変更をせずに同じ様に午後も彼女達には戦闘をやってもらう事を伝えてある。

 さて、魔力の枯渇を起こしてしまったミーシャとローゼだが、ジョブレベルはローゼが7他の皆は5になっている。

 スキルの効果があったのか、ローゼだけは1.25倍程の経験増加を得ているのだろう。

 午後も彼女達にはゾンビの相手をしてもらうが、戦闘にも慣れたころなのでゾンビのレベルを少し上げておくことを告げる。

 着実にレベルが上がっていることを伝えれば仲間たちはやる気に、ドンと来いと声を出してくれた。

 うん、やる気があるうちに色々と押し込んであげよう。

 そんな中、午後の戦闘を始めて1時間経った頃であろうか。


《ミツ、ファーストジョブ、偽造職のセカンドジョブ、サードジョブ、フォースジョブの四つのジョブレベルがMAXとなりました。ジョブを変更してください》


(はっ?)


 ユイシスのその言葉に思わず彼は首をコテンっと横に向け、大きな疑問符を頭に浮かべるしかできなかった。


(いや、ユイシス、自分全然戦ってませんけど?)


《ご説明します。ミツの持つスキル〈仲間の戦果〉それと〈成長率増加〉こちらの二つのスキル効果にて経験を取得しておりました。その場で戦闘訓練をしておりますミツの仲間達には貴方の持つスキル〈絆の力〉こちらが発動しております。それにより、14人の戦闘経験をミツが受け取る形となっております》


(はあぁぁぁぁぁぁーーー??)


 説明はユイシスの言葉通り。

 彼は知らず知らずと仲間達の戦闘経験を分けもらった状態の位置に立っていたのだ。

 そしてこれは仲間達にも良い効果を出していた。

 戦う相手が各々と違うが、司令塔がミツの為、プルン達が倒したゾンビ分の経験が、ミツを通してヘキドナやアイシャ達にも流れている状態。

 勿論ヘキドナやアイシャが倒した敵の経験もプルン達へと流れているのだ。

 これにより、盾役としてあまり戦闘に参加できていないリックですらジョブレベルを上げることができている。

 ミツも彼らに支援をしているので寄生状態では無いとはいえ、無意識に経験を貰っていたことに驚きだろう。

 まー、何はともあれミツのジョブの変更である。


(こうなると、また選択したジョブも直ぐにMAXにできそうだね)


《はい。午後からの訓練には彼女達が戦うモンスターのレベルも上げていますので、ジョブをMAXにすることは可能です》


(おー。なら更にスキルが増えるね。ありがたやー、ありがたやー)


 ミツはウィンドウ画面を開き、新たなジョブを選択する。


(えーっと。おっ、条件スキルの【スカルド】が出てるね。でもこれは上位だから後回しだな。ダークロードが終わってからにしよう。って言ってもダークロードのレベルはまだ3だけどね。他に増えたのは……無さそうだな。まぁ、これと言った経験はしてないからね。それならそれで上位じゃない奴をやっていけば良いだけなんだけど。よし、ユイシス、次のジョブは上から【ゴットハンドシェフ】【ポエット】【エンチャンター】【キャスター】をお願いするね)


 彼が選んだのは上から料理人、教師、付与魔術師、魔導具製作者である。

 どれも村を発展させるには必要となるジョブを選びつつ、付与魔術師のエンチャンターは仲間と自身の戦力アップの為。

 はい、ネタ的なジョブをやりたい気持ちもありましたね。


《選択により、ファーストジョブを【ゴットハンドシェフ】偽造職を【ポエット】サードジョブを【エンチャンター】フォースジョブを【キャスター】が登録されます。ファーストジョブ【ゴットハンドシェフ】にジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルをお選びください。既に習得済みのスキルは非表示となります》


※腐の根絶やし

※タイムマジック

※ゴットオブタン

※万能包丁

※まな板の上の食材

※ビューティフルマックス


(あー、分からん。スキル名から予想が付かない……。と言う事でユイシス、説明お願いね)


《はい》


腐の根絶やし

・種別:パッシブ

時間が経過し、腐っていたとしても包丁を通せば鮮度や質が食べれる状態に戻る。


タイムマジック

・種別:アクティブ

自身の魔力を使い、物質の時間を進める。

一時間=MPの消費は1。


ゴットオブタン

・種別:パッシブ

食した物、使用された全ての素材が理解できる。


万能包丁

・種別:パッシブ

様々な包丁(料理道具)を使いこなす事ができる。


まな板の上の食材

・種別:パッシブ

まな板に乗せた様々な食材を万全な状態で調理できる。


ビューティフルマックス

・種別:パッシブ

自身が手を加えた料理を食べた者のステータスを一時的に向上させる。


《【ゴットハンドシェフ】のスキルを全て取得しました。条件スキル〈太陽の手〉を取得しました》


太陽の手

・種別:パッシブ

自身が触れた食材を最高品質にまで向上させる。調理された料理には様々なバフが作用する。


(料理人と違って戦闘に使えそうな物は無いかな? でもこれで更に美味しいご飯が作れるようになった)


《続きまして偽造職を【ポエット】にジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルをお選びください。既に習得済みのスキルは非表示となります》


※師の導き

※問の極意

※仲裁の義

※言葉遣い

※誇りと護り


(折角子供たちの為に学び場を作ったからね。このスキルも役に立てば良いけど)


師の導き

・種別:パッシブ

他者に物事を教える際、対象者の理解力を向上させる。


問の極意

・種別:パッシブ

問題を対象に与える際、最適な問題を与えることができる。


仲裁の義

・種別:パッシブ

自身が話し場にいると口論になりにくい。


言葉の信

・種別:パッシブ

荒い言葉遣いでも嫌悪に取られることが無くなる。


誇りと護り

・種別:パッシブ

対象と約束をすると、相手はその約束を守ろうと気持ちが動く。


(先生っぽいスキルだね〜。〈仲裁の義〉〈言葉の信〉〈誇りと護り〉これはローガディアでの話場でも使えそうだから取得できたのは運が良かった)


《続きましてサードジョブを【エンチャンター】にジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルをお選びください。既に習得済みのスキルは非表示となります》


※攻撃属性ウエポン

※属性耐性ウェポン

※カルレジオ

※エクステンダー

※エレメンタルトライアル

※チェンダー


(属性付与と言うのは何処までできるのかね? まっ、それもスキルの説明を見てからかな)


《ご説明します》


攻撃属性ウエポン

・種別:アクティブ

自身の持つ魔法属性を対象に付与できる。


属性耐性ウェポン

・種別:アクティブ

自身の持つ魔法属性を耐性として対象に付与できる。


カルレジオ

・種別:アクティブ

スキルを発動し、自身が触れた場所を離れた場所から爆発させる。

※発動者の魔力が少ないと効果は直ぐに切れる。


エクステンダー

・種別:アクティブ

風属性の無数の針を飛ばす。


エレメンタルトライアル

・種別:アクティブ

雷属性のトライフォースをぶつける。


チェンダー

・種別:アクティブ

対象のステータスを一時的に変更できる。


(思った以上にサイコパスなジョブだな……。なに、この〈カルレジオ〉のスキルは。ある意味時限爆弾仕込まれてる状態じゃん。あと〈チェンダー〉のステータス変更ってのはどう言う意味なの?)


《はい。〈チェンダー〉こちらのスキル、正しくには対象のステータスを交換する効果を持ちます。例えますなら攻撃力の少ない魔術士であるリッコに使用した場合、攻撃力と魔力のステータスを一時的に交換することができます》


(おお、凄いスキルだったわ……。なら、魔法を撃ち続けてたリッコにもし敵が近づいたとしても、直ぐにステータスを変えればリッコでも相手を殴り飛ばす力に変えることができるんだね)


《はい。発動後、効果は600秒は持続します》


(10分か。戦闘では結構長く思えるけど、持久戦となれば逆に短いのかな。これは面白そうだから後で誰かで試してみよう)


《最後にフォースジョブを【キャスター】にジョブに登録されました。ボーナスとして以下のスキルをお選びください。既に習得済みのスキルは非表示となります》


※解読

※高説理解

※精密加工

※秘訣

※魔導具の知識Ⅰ

※魔導具の知識Ⅱ

※魔導具の知識Ⅲ

※匠の神業


(やっぱり魔導具って生産職にはいるみたいだね。あー〈精密加工〉で腕時計とか作れないかな? 冒険者にはそう言う物もウケると思うんだけど)


解読

・種別:パッシブ

困難とする文字や文書、図面を読むことができるようになる。


高説理解

・種別:パッシブ

魔力と魔導具の倫理を知る。


精密加工

・種別:パッシブ

糸を針の穴を通す程の細かい細工が得意になる。


秘訣

・種別:パッシブ

高品質な魔導具を作ることができる。


魔導具の知識Ⅰ

・種別:パッシブ

魔導具製作の基本を知る。


魔導具の知識Ⅱ

・種別:パッシブ

魔導具製作の難しさを深く知る。


魔導具の知識Ⅲ

・種別:パッシブ

魔導具製作の面白さを知る。


匠の神業 

・種別:パッシブ

最高品質の魔導具を作ることができる。


《条件スキル〈魔導具の叡智〉を取得しました》


魔導具の叡智

・種別:パッシブ

まだ作った事もない魔導具の完成図を思いつくことができる。


 思わぬスキル効果にて彼は突然27個のスキルを得ることができた。

 疑問符を浮かべていた数分の彼は何処へやら、今の彼は壁に背を預け、一人ニコニコ、ニヤニヤとした不気味な笑みと笑いをこぼしていた。

 勿論側に居るフォルテ達にも笑い声が聞こえているが、彼女達はマスターの喜びに私達も嬉しく思いますとそれしか思っていない。 


(おお、凄い……思い付く……。多分〈魔導具の叡智〉の効果だろうけど、いくつもの道具の設計図面が頭をよぎってる!)


「こりゃ今夜は徹夜かな……ふふっ。っと、早速覚えた属性付与を試してみようかな。えーっと、リッコ達は魔法で倒してるから、アイシャかな。おーい、アイシャ」


「ふーっ……。んっ? ミツさん、なあに?」


「手を止めさせてごめんね。ちょっとアイシャの持ってる武器に付与をしようかと思って」


「付与?」


「えーっとね……。(んっ? 弓矢ってどっちに付与すればいいんだろう?)」


《ミツ、攻撃属性ウエポンは弓の方に使用してください。されば矢を放つ際に弓の属性が自動で矢に付きます》


(なるほど。ありがとう)


「アイシャ、弓をちょっと貸してもらえるかな?」


「うん、はい」


「さて、ボーンバーの弱点は……水なんだ……火かと思ってたわ。それじゃアイシャの武器にっ……(攻撃属性ウエポン!)」



「よし、アイシャ、できたと思うから撃ってみてもらえるかな?」


「分かった。……えいっ!」


「「「!!」」」


「おー、矢が貫通して刺さったね」


「凄い! さっきまでは当たっても刺さる事が無かったのに!?」


「ミ、ミツ、俺の武器もその付与ってのやってくれよ!」


「勿論」


「偉大なる主様。でしたら新たに彼には別の配下を当てますので、それにあった付与魔術をおすすめいたします」


「あー、そうだね。スケルトンキング、次は何出す?」


「はい。折角なので彼とそちらの二人の女人様お二人を合わせた三人で戦ってはと思いますので、スカルレンジャーなど如何でしょう」


「スカルレンジャー……聞いたことないモンスターだね。ちょっと見せてくれる?」


「はっ、直ちに。いでよ! 我が配下、スカルレンジャー!」


 スケルトンキングは何もない空間に魔法陣を発動。 

 その中から出てきたのは身体は人形、胴体は馬型のスカルレンジャーだ。


「ああ、なるほど、こんな感じね(ケンタウロスを骨にした感じかな)」


「はい。しかし、スカルレンジャーは下半身の骨でできた獣と上半身だけのスケルトン。こちらはニ体に見えますが、意思一つですので彼ら三人で一体を相手にするなら十分かと」


「因みにレベルは……40か……。んー、あれさ、三人にはちょっと強くない?」


 ミツがスカルレンジャーを鑑定するとLvは40と少し高め。

 それに意見するとスケルトンキングはカタカタと骨を鳴らし慌てた感じに言葉を返す。


「はっ!? 申し訳ございません!! 私とした事が当たり前と、お三方の力量以上の者を当てがえるなど。お許しを! この愚かな私をお許しください!!」


「いや、別にそこまで卑屈にならなくても……。んー、あのさ、先にあれ自分が戦ってもいいかな?」


「はっ! 勿論にございます! お望みであれば、あれ以上の品をご用意する事も可能でございますゆえ」


「あー、それはまた今度ね。トトさん達もちょっとだけ自分があれと先に戦っても良いかな?」


「ああ、折角だしよ、お前の戦いを参考にさせてもらうぜ」


「さ、参考にできるか分からないけどね……ははっ……」


 スケルトンキングが出したスカルレンジャー。ミツが鑑定すると彼が見たことの無いスキルを所持している事を確認。

 ユイシスにも確認したが、キング三体が召喚したモンスターのスキルは、ミツがスティールできる事を教えてもらっている。

 先ずはスカルレンジャーの耐久性のチェック。

 先程、エンチャンターのジョブ変更にて覚えたばかりのスキル〈エクステンダー〉を試してみる事にした。

 相手がカカシ状態ではトト達の教えにもならないので攻撃を仕掛けてもらう。

 スケルトンキングは恐る恐ると二度三度としつこいくらいに、良いのですか? 大丈夫ですか? 後で怒りませんか? などの念押しをしてきた。うん、本当にしつこいよ。


「おっ!? アネさん、ミツが戦うみたいだシ」


「なんだい、やっぱりミツも体を動かしたくなったのかい。ってか何だよあのでかい馬みたいな骨は!?」


「お嬢さん、あれはホネが出しましたスカルレンジャーですぞ。見た目以上にあれは力も移動速度もありますので、倒すことを考えますなら先ずあの足を止めなければいけません」


「うわっ!? ゴ、ゴーストキング!?」


「驚かせたようで申し訳ない。訓練とはいえ戦闘中によそ見をされては私の出しました下僕にお嬢さん達に大きな怪我をさせてしまいますので、戦闘を止めるために私が間に入らせていただきました」


「そ、そうかい。すまないね……」


 スカルレンジャーは大きな前足を馬の様に鳴らし、駆け出そうと姿勢を低くする。


「それじゃ、これから、エスクテンダー」


 ミツの手のひらがスカルレンジャーへと向けられる。

 すると無数の風の針がスカルレンジャーめがけて放出。

 ズカガガガガガガがッ、ズカッ! と骨を削る音に粉々と形を崩してしまい、スカルレンジャーはその場から一歩も動くことなく崩れ倒れてしまった。


「「「「!?」」」」


「流石です、マスター」


 ミツの一撃粉砕と言える攻撃に唖然とする面々。

 スカルレンジャーを出したスケルトンキングも顎の骨をあんぐりと明けては砕け落ちた残骸にボー然である。

 パチパチと精霊達の拍手とフォルテの言葉だけが聞こえるのだった。

 だが、ミツの目的はスカルレンジャーの倒し方と彼が持つスキルだ。

 両者をやり遂げる前と倒してしまっては検証としては失敗であろう。


「うん、失敗した。スケルトンキング、悪いけどレベルを少し上げて出してもらえるかい?」


「は、はい! 直ちに!!」


 スケルトンキングは直ぐに粉砕してしまったスカルレンジャーを魔法陣に片付け、新たなスカルレンジャーを出す。

 そのレベル、先程よりも高いレベル60。

 耐久性と攻撃力を上げているので先程のように一撃で落とされることは無いだろうと考えるが、これで大丈夫だと思う確信が得られないのは主の力を感じ取っている彼らが一番わかっているだろう。


「それじゃ次は衝撃に耐えれるかなっと」


 ミツは素早くスカルレンジャーの足元に移動。

 驚きつつもスカルレンジャーは前足の片方を上げ、ミツの頭上へと足を振り落とす。

 ドシンッと訓練場に響く音。

 その間とミツは反対側の足へと〈カルレジオ〉をセットする。 

 砂煙から姿を見せたミツはスカルレンジャーから距離を取ったことを確認後、先程カルレジオを触れた場所へと意識を向ける。

 するとその瞬間。

 

 ボカーン!


「「「「!!」」」」


 突如として爆発したスカルレンジャーの前足の一本。

 自身の重みも加わり、爆発にヒビを見せた前足はボキッと崩れ落ちる。

 ドシンッと前倒れになったスカルレンジャーへとミツの追撃。

 

「発射!」


 その言葉と同時に正面に展開していた〈エレメンタルトライアル〉が放出。

 クルクルとその場を浮遊していたエレメンタルトライアルの一つがスカルレンジャーの一部をぶつかりその場を粉砕。

 一撃でこの威力。二発目にて半壊状態。

 まだ二発残っているが、ユイシスからす既にスキルがスティールできる状態と言葉を受ける。


「おっと!? 回収、回収」


《スキル〈地鳴らし〉〈牙突〉を習得しました》


地鳴らし

・種別:アクティブ

周囲一体に地震を起こし対象の動きを止める。※浮遊している対象に効果無し


牙突

・種別:アクティブ

剣先に集中させたオーラを竜の頭部に模し、それを伸ばして攻撃する。


「よし、スキルの方は取れた。後は残りの攻撃を当てるだけ! ……あれ?」


 瀕死状態と体を崩していたスカルレンジャー。

 エレメンタルトライアルの攻撃には雷属性の追撃ダメージが入るので、そのダメージにてスカルレンジャーはその姿は砕け落ちた。


「あら……。よしっ! トトさん、さっきみたいにできるだけスカルレンジャーの足元に移動した後に片足に攻撃を仕掛けてください。ミミさんは中距離から〈エリアヒール〉にて無理せずに攻撃を。回復魔法でもあるのでトトさんの回復もこれで可能です。アイシャは二人のサポート。自分みたいな戦いはしなくても良いから、できることからやってみて」


「「「はい!!」」」


「おっ、いい返事だね」


「なんだかねー。あいつの戦ってる所を見てると、相手がそれ程強くないじゃないかと勘違いしそうだよ」


「ホントそうだシ……」


「まぁ、今お嬢さん達が戦われてる私の下僕と比べましたら、主様が倒されました二倍程の強さの差がありますね……。いやはや、我が主としても恐ろしいお方です……いや、マジで」


「それじゃ、スケルトンキング、スカルレンジャーのレベルを下げて新しいのを出しといて。トトさんとアイシャはこっちに」


 スケルトンキングはレベル15のスカルレンジャーを召喚。

 その間とトトとアイシャの二人に武器属性ウエポンを発動。

 支援を改めてかけ直し、駆け出すトトはミツの指示通りと片足を集中攻撃を始める。

 スカルレンジャーも抵抗を仕掛けるが、アイシャの攻撃がそれを止める。

 回り込んだミミのエリアヒールがスカルレンジャーの動きを止め、更にダメージを与えることができた。

 その光景にウンウンと満足げに見るミツ。

 彼は次にヘキドナ達へと同じ様に攻撃属性ウエポンを付与。

 戦闘効率も上がり、一体の討伐に5分を切るスピードに上がっている。

 今日だけでも、訓練で仲間達は思った以上の効果を出した。

 続けて後も頑張ろうと言いたいが、明日は子供たちの入学式がある為、その準備も必要な為午後は午前中の半分の訓練時間で終了である。

 プルン達は疲れた疲れたとボヤキつつ、ミツの家にある浴場へと皆で移動。

 フォルテ達にプルン達の相手を任せ、ミツは訓練所を直し明日の準備を始める。

 

「さて、三人にはまだ手伝ってもらうよ」


「「「はっ! 主様の望むままに」」」


「……」


「い、いかがなされましたでしょうか……主様?」


 黙ったままにこちらへと視線を向けるミツに怯える三人。


「いや、さっきの訓練中、三人の名前を呼ぶときに毎回スケルトンキング、ゴーストキング、グールキングって種族名で呼んでたけど、こうして話せるなら名前があった方が良いのかなって」


「「「!?」」」


「えっ!? ま、マジで!?」


「な、名を! 名を頂けるのですか!? いや、しかしその様な……」


「待て! ホネ、これは主様のご意向だぞ。それに背いては逆に失礼ではないか!?」


「確かに……。ガスの言うとおり」


「よし!」


「「「主様! どうか我々に名を!!」」」


 人の念や怨霊として形をもしたキング達だが、既にモンスターとして形を作り、更にはミツに幻獣として召喚された身。

 召喚主であるミツの魔力量が高い事に十分な程に彼らはミツに倒される前よりも格段と力を与えられている。

 しかし、名と言う物はフォルテ達もそうだが、主との繋がりが一気に太くなり、意思疎通と阿吽の呼吸も可能な程にミツと親密にもなれるのだ。

 名を受ける効果は絶大であり、正に一生に一度の喜びを受け取る程の事なのだろう。


「はいよ。それじゃスケルトンキング、君はこれから助さんね。ゴーストキング、君は格さんで。グールキング、君は八兵衛ね」


「「「……」」」


「あれ? やっぱり駄目かな?」


 ミツの気まぐれに付けた名前は有名なお供三人の名前であった。

 スケルトンキングのスケから助さんを考えると、後は格さんと八兵衛さんしか思いつかなかったのもある。

 黙り込んだキング三人が顔を伏せていると思いきや、ガバッと三人は腕を上げ歓喜の声を上げた。


「「「うおおおおおおっっっっ!!!」」」


「何たる喜び! 何たる感謝! 格さん! 我は格さん!!」


「素晴らしい! 八兵衛! 我の名が永久に刻まれるこの八兵衛と言う名! 歴代的暦書にも書き示すべき名ではございませんか!!」


「カタカタカタカタ……。助さん……フフフッ。お前達の名も素晴らしいが、我の助さんと言う名、お前達よりも我にピッタリな名ではないか!!」


「「「うおおおおお!!!!」」」


「助さん!」


「おうっ! 格さん!」


「ああっ! 八兵衛!」


「そうだ!」


「「「うおおおおお!!!」」」


「ははっ……。そりゃスケルトンキングから考えた名前で、それにちなんだ名前を選んだからね……。気に入ってもらえたならそれでいいや」


 未だ三人で円陣を組み、叫び続けるキング達。

 そんな光景に苦笑を浮かべつつ、早速と明日の入学準備をするミツであった。


 入学準備と早速三人には人手を召喚してもらうことにする。

 その前に先ずは訓練にて荒れた体育館の掃除である。

 荒れたのは地面だけなのでそこは〈物質製造〉スキルでちゃちゃっと修繕。

 次にアイテムボックスから次々と鉄と布を取り出し、折り畳みの椅子を作りまくる。

 作った椅子は助さんが召喚したスケルトン達がガチャガチャと音を鳴らしながら綺麗に並べていってくれる。

 次に紙を取り出し、色の付いた鉱石を混ぜて作った折り紙。

 お祝い事なので赤と白の紅白の花を作っておく。

 これは格さんが召喚したゴースト達が壁や天井に飾り付けを行う。

 八兵衛の召喚したゾンビは保護者席やアリーナ席へと椅子にカバーを付けるお仕事だ。

 綺麗になっていく体育館にミツは満足しつつ、最後に垂れ幕と入り口に置く看板に文字を書いていく。


「よしっ! 【入学式】 うん、完璧だね。 ……曲がってないよね?」


「はい、素晴らしき作品にございます。文字で美を表現するなど、主様だけができる匠の技にございます」


「あー、そう言えばこんなふうに看板出してるお店って見たことないな……。パメラ様とエマンダ様にも今度聞いてみようっと。さて、最後に一つ。助さん、格さん、八兵衛さん、こっちにおいで」


「「「はっ!」」」


 ミツは最後に彼らにある事を伝え、その日の一日が無事に終わった。

 明日の入学式も賑やかになるだろう。

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