第252話 善

「あっ、やられた。本陣を狙われた」


「マスター、いかがなされますか」


 ミツが旧王都に入って直ぐの事、本陣から大きな土煙が上がったことに敵襲に襲われたことに気づく。

 戦略ゲーム等では強者が出払った後に本陣を攻撃して総大将を討ち取るなどよくある手ではあるが、まさかモンスターがその策略を使うとは思っていなかった。


「うん。直ぐに戻ってアベル王子の安全も確保しないと行けないけど、あっちもそのままにできないしな。かと言って更にあの靄も放置してたら被害は増える」


 あちらを立てればこちらが立たず。

 優先すべきは王族の二人と兵士達の人命であるが、王城からの靄を止めなければ更に被害は増えてしまう。

 しかし、二兎を追うものは一兎も得ずという言葉もあるだけに、一人で解決すべきではない時は素直に援軍を呼ぶべきである。


「ここは分身にお願いするかな〈影分身〉」


 民家の屋根に降り立ったミツは〈影分身〉を発動。

 影の中から出てきた二人の分身。

 一人は顔を上げた瞬間、彼が今まで出したことのないような高笑いの後、突然戦隊物のヒーローが決めるポージングを見せる。


「ワハハハハ! 困った時は僕を呼べ! 救いのヒーロー、ここに見参!」


 もう一人はそんな分身の行動も気にしてはいないが、鼻息一つ、目元にアイシャドウを付けたように見える黒い影を見せる。


「フンッ……」


「あっ……。ごめん、やり直すわ」


 これは面倒くさい性格の二人が出てしまったと直ぐに思ったのか、ミツは分身を一度消し、性格を変えてもう一度出そうと思ってしまった。

 しかし、折角格好良くセリフも決まった登場をしたと言うのに、直ぐに消されてはたまらんと、本体のミツの肩を取っては攻められている本陣へと指を指す分身。


「待て! 今はえり好みしてる暇では無いだろう! 今この一時、一刻と苦し悲しむ人々が僕達をあそこでは待っているのだから!」


「……。やり直すのは構わねえが、こいつの言う通り、確かにこの間も何処かで誰かが無残にも死んでるかもしれねえぞ」


 二人の言うことも確かと、話し合っているこの時間も勿体無いとミツはため息一つに二人へと協力を求めることにした。


「うっ……。はぁー……。分かった……。それじゃ悪いけど、二人にお願いするよ」


「同士の言葉、引き受けた。大船に乗ったつもりと任せよ!」


「それで、振り分けは」


「うん。本陣のアベル王子の護衛、王都に入ったレオニス様の護衛、最後にあの王城から出てる靄を止める、これの三つだね」


「なら俺はレオニスの方に行こう」


「僕はアベルさんの処へ行かせてもらおう!」


「えっ? いや、ここは平等にジャンケンを……」


「時間が勿体ねえ。終わったらお前のとこに行くからな。それと現状報告は〈念話〉を飛ばして教えろ」


「うむ! 承知した! それでは行くぞ!」


「えっ……あっ……。は、はい……」


 本体とは違い、二人は即断即決とレオニス、アベルの元へと行く事を告げた後、目つきの悪い方の分身は〈電光石火〉を発動して直ぐにその場から離れ、ヒーロー口調の分身は〈トリップゲート〉にて本陣へと救援に戻ってしまった。

 残されたミツは渋々とまた上空に飛び上がり、旧王城へと向かうのだった。


 これよりミツと分身の二人、三人の視点の変更となります。

 ここで今回出した分身の性格をお伝えします。

 一人はセリフや言動でお分かりかもしれませんが、正義感の高い善人の分身。

 もう一人はその反対。性格に難ありというレベルではなく純粋に性格の悪すぎる分身体。そう、後者は今回で三度目の登場です。

 それではお話の続きとなります。


 スケルトンキングに奇襲を受けた本陣。

 負傷したアベルを逃がす為と、二人だけで足止めを試みるコーク将軍とドナルド将軍。

 二人の実力は冒険者ランクではシルバーに当たる程の実力者。

 襲いかかるスケルトンなど彼らの攻撃で振り払う事はできたとしても、数の暴力にはやはり不利なのか。

 戦い続けることに二人の体力もジワジワ無くなる一方、疲れ知らずの死者であるスケルトンや苦戦するボーンビートの攻撃に彼らはすでにボロボロ。

 そこにジャイアントスケルトンの追撃に、今は二人はその大きな骨の手に握り締められ、身動きが取れない状態となっていた。


「うっ……ううっ……」


「ゴハッ! はぁ……はぁ……」


 普通の兵士ならば既に意識を手放しそうな状態にも関わらず、二人は苦痛の中に耐えていた。

 ジャイアントスケルトンが両手に掴んだコークとドナルドを持ち上げ、スケルトンキングの視線に合わせる。


「愚か……愚か……愚かな行ない……。吾輩、理解不能な愚かな行ない。主君の為に自身を盾として戦う姿は褒めにあたいする。しかし、自身よりも力が上と理解した相手。そう、吾輩に挑むその行ない、激しく愚か。貴様達の戦いは、守ろうとした主の屍と同じ地面に倒れる時に無意味と知るだろう」


「ぐっ! 糞がああぁぁぁ!!!」


「おのれ骨風情がぁ!!!」


 二人の苦しむ声を聞く事を楽しんでいるのか、カタカタと鳴らすスケルトンキングの口元から陽気な音が聞こえてくる。

 ジャイアントスケルトンはゆっくりと握りこんだ二人を潰そうと骨が圧迫していく。

 メキメキ、メキメキと二人が身につける鎧が音を出し、最後は肉の潰れるぐちゅっとした音が響くだろう。


「さぁ、お前達の死後、永久の忠誠を吾輩に! ……んっ?」


「エリアヒール」


 人間の断末の声が聞こえるその時を楽しみとしていたその時、気がつけばいつの間にかジャイアントスケルトンの片腕に乗る人間の姿。

 死体でも飛んできたのかと思ったその時、眩い程の緑色の光が周囲一体に広がり、地面に居たスケルトンやスカルドッグの集団は砂の様に骨粉と代わり、ボーンビートもドサリと地面に突っ伏してしまう。

 アンデッドに回復魔法は有効過ぎる攻撃なのか、勿論ジャイアントスケルトンの腕もボロボロと崩れ、掴んでいた二人は地面へと落とされる。

 更にその光を受けたスケルトンキングも意表を突く攻撃にキャラを忘れた声を出してしまう程だ。


「ホギャーーー!!! 痛い痛い痛いですー! だ、誰ですか! お、俺、じゃなかった、吾輩にこの様な攻撃を仕掛けるとは!!」


「ぼ、僕は別に攻撃するつもりじゃなかったんだけど……。まぁ、いいか。フハハハハ! 苦しむ人々を目の前と放って置くことなどヒーローは許さない! 救いのヒーロー、ここに見参! 覚悟しろ、骸骨男爵! 貴様が人々に与えた痛みと苦しみ、その骨、頭蓋から指先の骨まで教えてやろう!」


「誰が男爵だ! 吾輩はスケルトンキング! いいか、キングだ! キング=王様だからな! その無知たる頭に死ぬ時まで刻み込んでおれ!」


「えー、普通骸骨って言ったら骸骨男爵でしょう」


「そんな普通知らんわ!」


 特撮ヒーロー物では確かに骸骨は男爵の地位が多いが、分身が相手するのはスケルトンキング。

 分身の勝手な思い込みは、またスケルトンキングの口調を素に戻してしまう。

 地面に落とされたコークとドナルド。

 二人は叫び合う二人の声に起き上がり、ミツの姿に驚く。


「はっ!? ミ、ミツ殿!?」


「くっ、救援感謝しますぞ」


「二人とも無事ですか! あっ! まだ怪我してますね〈エリアヒール〉っと」


 分身は一度のエリアヒールで二人が治りきってなかったことにもう一度回復を発動。

 流した血はヒールでは戻らないが、二人の痛みと古傷は綺麗に治すことができたようだ。


「おおっ! 受けた傷が……カミさんに噛まれた跡まで消えておるぞ」


「助かりました!」


「良かった。いえ! 困った時は助けましょう! それが僕の役目です!」


 シュバッとポージングを決める分身。

 本人的には決まったポーズをしているつもりだろうが、見てる二人からしたら言葉を失うには十分だったのだろう。


「「……」」


 ポーズが決まったことに満足しつつ、分身がスケルトンキングの方へと振り向くと、彼は何処を見ているのかカタカタと顎の骨を鳴らし、口から漏れる声が今にもかき消えそうだ。


「あがっ……あがっ……ああっ」


「あれ? 如何したの?」


「ぐっ!? 如何したのじゃねえですよ! お前の回復魔法でこっちは激痛に襲われてんだよ! 莫迦、莫迦! いきなり話の途中に相手に石を投げるような事すんなです! はっ!? カタカタカタ……。吾輩、不快、心底不快なり。お前を絶対に死に導き、お前の骨は必ずや家具に変えてやるです! 行け! バンプッサーよ! その小さきゴミムシ共を死の鉄拳をあたえよ! って、手の骨が無いじゃないですかー! 仕方ない、先に元に戻すです! ちょっと待つですよ!」


「はいはい、早くしてね」


 バンプッサーの手は、ドナルドとコークの二人を握りしめていたが、分身の回復にて一部が骨粉となり失っていた。

 近くに居たスケルトンは全て骨粉になっていたが、バンプッサーは一部を崩したが、スケルトンキングは流石に骨粉にすることはできないようだ。

 スケルトンキングはまた新たにスケルトンを地面から出し、それをバンプッサーの失った手の代わりとスケルトンを形を変えさせる。

 その様子を当たり前と、何も手も出さずに見ているだけの分身へとドナルドが強く言葉をかける。


「ミツ殿!? 何を見ておりますか! 今こそ追撃のチャンスではありませんか!?」


「えっ? ドナルド将軍、それは駄目ですよ」


「えっ……」


「だって、相手の変身シーンに攻撃するのはルール違反ですからね」


「ルール……貴殿はなにを!」


 味方であろうと敵であろうと、変身シーンに手を出してはいけない。

 これは特撮ヒーロー物だけではなく、美少女戦士達が変身する時も手を出してはいけない、それは絶対的な暗黙のルールだ。

 しかし、相手の戦力をおめおめと戻す事など、本当の戦場を知るものにとっては信じられない行動なのだろう。


「フハハハハ! 愚か! 愚かな人間よ! その一時の迷い時、絶好のタイミングを逃すその愚かさ! 貴様の明日の光はこの時潰えたと思うがよい!」


「くっ! コーク! 動けるな!」


「おう! ミツ殿、貴殿のご助力感謝いたしますが、貴殿は戦場の場を読み取るにはまだ浅はか過ぎます! ここは我々に任せ……えっ?」


 ドナルドとコークは改めて剣先をスケルトンキングへと向ける。

 分身へと叱咤発言をするコークだが、そちらに振り向けば分身が〈トリップゲート〉を出し、その先にいる人物へと声をかけていた。


「えーっと、あっ、居た居た。おーい、アベルさん! クリフトさーん!」


 彼らは襲ってきていたモンスターを振り払ったのか、それとも避難時に他の兵と合流したのか、クリフトの周りには先程共に走り出した兵よりも周りの人の数が増えていた。

 分身が手を振りクリフトの名を呼べば、その声に気づいた二人がゲートの方へと近づいてくる。


「なっ!? 御使い様!?」


「ミツ殿、来てくれたのかい! 良かった、コーク、ドナルドも無事だったか」


「なっ、なっ、なっ!?」


 分身の行動に驚いたのはドナルドとコークだけではなく、スケルトンキングも驚きにあんぐりと口を開けている。


「急ぎですみませんが、お二人をそちらに送りますので皆さんはこの場から離れてもらってもいいですか?」


「「!?」」


 分身がゲートを出した理由として、ドナルドとコーク、二人が側にいては戦闘の邪魔だと判断したのだろう。

 適当な場所に送り込むよりも、主であるアベルの元であればと彼の考え。


「お二人がいては邪魔……ゲホンゲホン! えーっと、二人の使命は主である彼をお守りする事! ならばここは僕に任せ、二人はそちらに行くが良い!」


「えっ、ワシら邪魔者扱い……」


「嫁さんに休日に家に居ると掃除の邪魔だと言われておるが、まさか戦場でも同じことを言われるとわな……」


 分身の言葉は誤魔化せてなかったのか、ドナルドとコーク、二人の目が細められた。


「それとアベルさん、ちょっと足を見せてもらえますか」


「えっ? あっ」


 一言添え、分身はアベルの足へと手を伸ばす。

 王族であるアベルの身体に触れるなど不敬たる行動だが、アベルを抱えるクリフトが何も言わない事に周りの兵達は口を継ぐんだようだ。

 血を止めるためとアベルの太ももには布が巻かれているが、それでも出血はまだ続いている状態。!

 分身は〈ハイヒール〉を発動し、一先ず出血死を抑える。

 しかし、大量の血を失ったアベルは危険な状態であることは変わらない。

 ここで分身が〈ハイヒール〉ではなく〈再生〉を使用した方が良い事を後に知ることになる。

 何故なら〈再生〉のスキルは創造神と豊穣神の二柱の加護の効果によって大きく効果を上げているのだ。

 実は、再生は失った血すら戻す事もできるようになっている。

 

「はい、傷は癒えたからもう大丈夫だよ」


「う、うん。ミツ殿、感謝する。この礼は必ず」


「ああ、お礼とかいらないから。ヒーローは無償に戦うことが運命だからね! と言いたいとこだけど、アベルさん、魔力回復薬持ってない? ここに来て回復ばっかり使ってたから魔力が減っちゃってね。カッコ悪いとこ見せて悪いけど、ハハッ」


 一応アイテムボックス内にはギーラから貰った青ポーションが一つあるのだが、それは本当に魔力を必要な時に使おうと決めている為、もしアベルに持ち合わせが無いのなら別の方法で戦えば良いや程度に聞いたまで。

 それに、彼の持つスキルの中にはMPを回復させる手段はいくつかあるのだから。

 アベルに持ち合わせがなかったのか、申し訳なさそうに返答すると、彼を抱えていたクリフトが自身の腰のポーチから水色のポーションを取り出し、分身へと差し出す。

 

「で、では、御使い様、これを。これは私の母から貰い受けました魔力回復薬にございます。私は魔法は使えませんが、魔物との戦いの際、魔力の枯渇に襲われる時の為に持っていた品にございます」


「おっ、青ポーション。クリフトさん、ありがとうございます。これで僕は万の悪と戦う事ができます! (うんっ、不味い! もう1杯……はいらないわ)」


 分身は躊躇いなしとクリフトから青ポーションを受け取り、その場でゴクリと飲み干す。

 それは見た目通り薬なのだから、味の配慮も無い青ポーションは例えるならストレートの青汁である。


「そ、それは頼もしいことで……」


「それじゃ、悪いけどもう少しだけ走ってね」


 分身はゲートを出し、アベル達をどこかに送ろうかと思ったがそれは止めた。

 何故なら、数も増えた兵士達を何処かに送るよりも、目立ったほうが他の兵達がアベルの元に集まり、逃げ遅れたり、手負いの者を救護しやすいと判断したからだ。

 事実この判断は吉と出たのか、アベルは医療部のミッドが仕切る医療班と合流し、何人もの兵を助けることができ、安全な場所まで避難することができた。


「はっ! 必ずや殿下をお守りいたします!」


 クリフト達兵は分身へと感謝の気持ちと騎士の礼を取る。

 ゲートを閉じた後、振り返ればスケルトンキングが身を縮ませ何故か頭を抱えている。


「お待たせ。んっ? 如何したの?」


「えっ? いや、別に! 貴様がまた回復を使おうとしたので痛みが飛んでくるかなとか、その……身構えてたとかそんなんじゃねえですからね!」


「ああ、さっき使ったのはハイヒールだから、単体にしか効果がないよ」


 その言葉にスケルトンキングは露骨に安堵のため息を漏らし、気を引き締め、仕切り直しと高笑い。


「そ、そうですか……。フハハハハ! しかしお前は莫迦だ! 治療士一人、ここに残って何ができる!? 先程の二人が居れば我の体に些細な傷をつけれたかもしれないと言うのに。そのチャンスを逃がす行い、浅はかな行いが自身の死を導くものだとその身に刻み込むが良い!」


「さー、それはどうかな。言っておくけど僕は強いよ。そのジャイアントスケルトン、バンプッサーだっけ、君の力も見させてもらうからね」


「フンッ! 虫の様に潰れてしまえ!」


 駆け出す分身。ジャイアントスケルトンの攻撃を掻い潜りつつ、鑑定を使用する。 


バンプッサー

Lv80  鬼骨


シャドークロー

サモン


(サモンのスキルは既にあるから、取れるスキルは一つだけか……。周りにいるスケルトンはあのバンプッサーからの〈サモン〉での召喚したモンスターだけに、どれもスキルは持ってないみたいだね。もしかしたらサモンで召喚したモンスターはスキルを持ってないのかな? これは後で本人にユイシスに聞いてもらおう)


 分身は新たに出てきたスケルトンにも鑑定を使用。

 〈サモン〉で召喚されたスケルトンはスキルを持っていないのか、どれもスキル無しの表記である。

 ちなみにLvはどれも高めのLv25。

 試しの洞窟で見たスケルトンはLv8や高くて10ほどだったが、これは召喚とスポーンしたモンスターの違いだろうか。

 これもまたユイシスに聞くことだろう。

 

「ちょこまかと地面を動くそれは正に虫! 吾輩が手を加える事もなく、お前はその無駄な命を消し去るのだ! バンプッサー、殺れ! シャドークロー!」


 バンプッサーの腕が分身へと振り落とされた。

 それを避ける事もせず、分身は迫るバンプッサーの拳へと自身の拳を打ち込む。

  

「タアァ!」


 腰を入れた分身の一撃は代用品として作られたバンプッサーの拳を内側から破裂させた。

 彼の拳には、ガンガから作ってもらった竜の素材で作ったナックルを装着した状態。

 バンプッサーからの攻撃の衝撃も緩和させ、更には自身が放つスキルの攻撃の衝撃も抑えてくれる優れ物。

 

「!?」


 スケルトンキングはまた顎の骨が外れる程に驚きを隠せていない。

 彼は本当に分身を治癒士かと思っていたのか、自身の傑作に攻撃を与えるなど思ってもいなかったのだろう。

 しかもそれが拳での打撃ならば尚更に。

 周囲に骨をばら撒きながら後ろに倒れそうな体制を何とか持ち直すバンプッサー。

 

「ムムッ……。バランス崩して倒れそうだけど、まだスキルが取れる状態じゃないか……」


 スケルトンキングの驚きなど分身は気にもしてもいない。

 彼が気にしているのはバンプッサーとスケルトンキングの持つスキルだけである。

 

スケルトンキング

Lv140  骸骨王

ソウルコール

王の導き

死者の宴

死の晩餐


「攻撃スキルは無し……。これなら接近戦も構わないか。よし、先にデカイ奴から! あっ、その前に二人にも報告しておかないと」


 分身は旧王都の方に視線を向け、〈念話〉を使用。

 アベルを救えたこと、自身の戦闘相手の事などを本体ともう一人の分身に伝える。

 連絡を終えた分身はスピードを上げ、バンプッサーへと打撃の攻撃をヒット&アウェイに与える。

 攻撃が当たる度にバンプッサーの骨が欠けたりヒビが入ったりとダメージを蓄積していく。

 次第と動きを鈍らせていく姿を見て、バンプッサーをもう一度鑑定。

 

「よし、時は来た! 邪悪なる悪の秘めた力は、これ以上の人々の悲しみを招くのみ。ならば僕が貴様の力、ここで絶つ!」


 分身はバンプッサーへと手を向け〈スティール〉を発動。

  

「ええいっ、この役立たずめが! バンプッサーよ、何をしておるか! その様なゴミムシ、早う踏み潰してしまうが良い! いや……。ふー。吾輩、落ち着け、落ち着け……。相手はゴミムシ一匹ではないか……。先程はスケルトン程度の雑魚をけしかけた為にあの愚かな結果を見せてしまったのだ……。うむ……。フハハハハ!」


「な、何!? いきなり笑い出すなんて、戦うことを諦めてくれたの?」


「なっ!? バーカ、バーカ! 誰が諦めるかですの! お前なんか袋叩きですよ! コホン……。吾輩の力の前に、弱者たる貴様はひれ伏すのだ!!!」


「もう……普通に喋りなよ」


「お前に言われたくないですの! 吾輩の声に立ち上がるが良い! 黒の騎士団よ!〈ソウルコール〉」


 スケルトンキング自体、実は戦闘能力はそれ程高くは無い。

 しかし、彼の持つスキルは支配者である者が持つべきスキルばかりであった。


 ソウルコール。

 敵を滅ぼし、自身を守る為に魂を失った者を召喚する。  

 スケルトンキングがソウルコールを発動した瞬間、紫の光が地面から放出。

 ただの光りかと思いきや、その光からは次々とスケルトン系のモンスターが姿を見せる。

 ボーンナイト、ボーンマジシャン、ボーンタイガー、ボーンバット、スケルトンウォーリアー、スケルトンアーチャー、スカルスピリット。

 更にそれらのモンスターの能力を上げる為のスキルを持つジェネラルスケルトンとボーンビショップ。

 最後にスケルトンキングの足元からスケルトンホースが姿を見せキングを背に載せた。


「なにっ!? この数を一度に召喚するのか!」


 目の前に現れたモンスターの数は軽く見ても数百の数。

 分身はヒーローがピンチな時に吐くようなセリフを口にしては、無駄に戦闘時の腕の構えを変える。

 その行動が動揺に見えたのか、再び高笑いをするスケルトンキング。


「フハハハハ! フハハハハハハハハッ! !? ゲホッ! ゲホッゲホッ! ず、砂が……」


 慌てて側にいるボーンマジシャンが魔術で水を出し、キングはその水でガラガラと喉は無いが骨についた砂埃を洗い流す。

 

「ゔ〜。空気が乾燥して喋りにくい……。ゲホンッ! 裁きの時が来た……。己の愚かな行い、今こそ死と言う言葉に貴様の首を捧げよ……。そして貴様の力、我が手に。如何してあの者たちをこの場から逃したのか、その方法も死後の魂に聞くとしよう。貴様が死すとき、逃げ出した者達の骸骨の山を共に作ろうではないか!!!」


 スケルトンキングの言葉に合わせたかの様に、ソウルコールで召喚された骸骨達はガチャガチャと骨を鳴らし高く腕を上げる。

 

 分身は直ぐにソウルコールで新たに出てきたモンスターを鑑定。

 そしてニヤリと笑みを作った後、スケルトンキングの口上に合わせ、分身も声を上げる。


「そうはさせない! 僕が守るのは多くの笑顔! 貴様の悪事に人々の涙は流させない! ヒーローはどんな時も諦めてはいけない。皆の笑顔が僕に力を与える! さー来てくれ! 僕の五つの光よ!」


 分身は決めポーズを決めたまま〈精霊召喚〉を発動。

 彼の中から出てきた五つの光は戦士の形と変わり、彼女達は槍先をスケルトン達へと向ける。

 分身のなんちゃってヒーローの性格はフォルテ達にもやはり影響したのか、光から人形へと形を変えた瞬間、彼女達もポーズを決める。 


「!? フハハハハ! 愉快。そう、非常に愉快なり。貴様の駒と我の駒、何方が優れた駒なのか勝負を使用ではないか! さぁ、闇のゲームを始めよう。殺れい!」


 スケルトンキングは腕を振るうとスケルトンウォーリアー、ボーンナイト、ボーンタイガー達が走り出した。

 後衛のボーンマジシャンも魔法を練りだし、スケルトンアーチャーも弓を引く。

 初手から激しい攻撃が分身と精霊達へと襲いかかる。


「勇気リンリン100%! 僕らの正義の拳が悪を滅ぼす! 行くよ!」


「「「「「はっ!」」」」」

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