第242話 ノワール。
冒険者ギルド内酒場にて。
「んー」
「「……」」
「どうすっかなー」
腕組みをし、ある事に頭を悩ませる兄の姿に声をかける弟妹。
「リック、まだ考えてるの?」
「そろそろ決めてもらわないと、ギルドでの登録がやり直しになりますよ」
「分かってるよ! でもよ、あー」
「「はぁ……」」
いつもなら即決で物事を決めてしまうリックだが、今回ばかりはとある事で珍しく頭を悩ませ続けている。
そこにパーティーメンバーとなったローゼとミーシャ達が合流とやってきた。
「こんにちは。おまたせ、準備できたわよ。って、あら?」
「リックさん、如何したんですか?」
「あらあら、もしかして〜」
「まだ決まってないんですか?」
「んー」
返事も返さず、悩ませたままテーブルに突っ伏したリックを見てはローゼ達は直ぐに現状を理解したのだろう。
「んー。あっ? ああ……ローゼ、来てたのか」
「ええ、さっきね。所でリック、まだパーティーの名前決まらないの?」
先程からリックが頭を悩ませる理由、それはパーティーの名前の件であった。
リック達の三人、ミツとプルン、そしてローゼ達四人の九人のパーティー。
ゲームによっては15人や30人パーティーもできるゲームもあるのだから、九人が多いかどうかはその人の考え次第だろう。
「まあ……。ズッと使う物だからな。どうもこれだと言う奴が来ねえんだよ」
「何よ、変な名前のパーティー名をポンポン口にしてたじゃない。えーと、確かスリートライアルとか、爆発のスラッシュ三本の剣、他には最強無敵敵無しの三兄妹だったかしら」
「なっ! リッコ、それは子供の頃の話だろうが!」
「わお、随分と活かしたネーミングセンスね。でもリック、流石に三とかの人数が表すのは止めといたほうが良いわよ。フフッ」
「そうね〜。できれば私達も入れて欲しいわね〜。なら爆発スラッシュ九本の剣と杖かしら」
「ミーシャ、それは長いぜ」
「長い以前に、本人が納得しないと思いますよ……」
「うがー! そもそも何で俺がパーティー名を考えなきゃいけねんだよ!」
「何でって……ねえ?」
「リックがこのパーティーのリーダーですからね?」
二人の弟妹が顔を見合わせた後、このパーティーのリーダーはリックである事を改めて言葉にする。
「いや、おかしいだろう! 誰がどう考えてもリーダーはミツだろう?」
「そう言われてもね。本人がこのパーティーのリーダーはリックがいいよって言ったときに、リックもそうか? ならやってやるぜって、意気込み高く言ってたじゃない」
「いや……なんか今考えれば、その時はあいつに上手く乗せられた気もするぜ……」
リックがパーティーを作ろうと発言した際には、既にミツは彼らから離れる事を事前に告げていた事もあり、ならばこのパーティーリーダーはリックが良いとミツの言葉である。
「そもそも仕方ないわよ。あいつのランクじゃどの道暫くは一緒に依頼も受けることできないんだし。それだとリーダー不在のパーティーになっちゃうわよ」
「なら、代行でよくねえか?」
「リック、それだとパーティーのリーダー変更の際、依頼を受ける度に名義変更分の手数料がギルドに取られますよ?」
「その分をあんたの報酬から引いていいならそうするけど?」
「いや……止めとこう。それこそ無駄な金だ」
この世界にパーティーに副リーダーと言う概念は無い。
それは司令塔は一人にしなければ、いざモンスターと戦う時、リーダーと副リーダーの二人から指示が出ると、戦う者に動きに判断ミスを起こしてしまうからだ。
リッケの言う名義変更と言うのは、パーティーのリーダーが不在の際、代理人としてパーティーとして依頼を受ける事ができ、更には依頼金を受け取ることが出来る権限を持てる話である。
しかし、その代理人システム。
ギルドの信頼を預かる意味として、何故かお金が取られてしまう。
金額は手数料程度の銅貨五枚程度だが、仕事を受ける度に手数料を取られたらそれまた無駄な金となってしまう。
銅貨五枚。日本円で500円だ。
庶民的な彼らには、それまた大事な金である。
「それで、お前達のパーティー名はまだ決まって無いシ?」
「そうなんですよ。ここと言う時に優柔不断な兄なんですよ」
「シシシッ。男ってそんなもんだシ」
「「「……」」」
「如何したシ?」
「い、いえ。お疲れ様ですシューさん。皆さんもご一緒ですか?」
「「「「お疲れ様です」」」」
いつの間にか共に席に座るシューに驚く彼らだが、彼女の神出鬼没な登場に流石に慣れたのだろう。
リックに続き、リッコ達が声を合わせシューへと挨拶をする。
見た目は彼らより幼く見えるシューであっても、彼女は彼らにとって先輩として慕われている。
多くの後輩からの挨拶にご機嫌なシューは鼻をすすり、彼女は笑みを見せる。
「フフン。後輩達は元気があって良いシ。うん、ちょっとウチは依頼の掲示板を覗きにね。マネとライムはカウンターだよ。姉さんとエクレアはちょっと別の所に行ってるシ」
「って!? リッケの野郎、もうカウンターの方に行きやがったぞ!」
「は、早いわね……」
彼らが視線をカウンターの方に向ければ、リッケが嬉しそうにマネへと話しかけている所であった。
「二人ともニッコニコ顔じゃない」
「ははっ……隣にいる鬼の姉ちゃんが少し不機嫌に見えるのは俺の気のせいか」
「いや、私もそう見えるわ……」
「所で話は戻すけど、チーム名ならお前達の統一したもので決めればいいシ。無理に決めた名前は逆に笑われるシ、身の丈に合わない名前は笑われるよ」
「へー。因みにそれってどんな名前だったんですか?」
シューは軽く首を傾け、視線を上に向ける。
「そうだねー。ウチの知ってる奴らでは、まずドラゴンスレイヤーって名前の奴らだシ。ドラゴンスレイヤーって名前つけてるけど、そいつらは一人もグラスにもなってない普通のアイアン冒険者集団だシ。勿論竜どころか、ワイバーンすら戦ったことのない名ばかりの奴らだシ」
「ドラゴンスレイヤーか……。確かに名前はかっけえな」
「リック、止めてよね。ミツは兎も角、私達がその名前を名乗るなんて、絶対に吹かした奴らって赤っ恥をかくだけよ」
「ハハハッ。他には断空の剣って奴らもいたシ」
「おお、断空の剣か。空も切り裂く凄い技持ちの剣士の人がいたんですか?」
「いや、そもそもそのパーティーの中に剣使いが居なかったシ。居たのはお前と同じ盾使いと後衛職の女ばっかりだったよ」
「えっ?」
「最初の頃は真面目に期待された奴らだったシ。駆け足にアイアンになって、その時はグラスも見えた奴らだったんだよねー。でも、調子に乗りすぎたのか、次第とギルドへの報告はぞんざいになって、依頼の失敗が連続に出たシ。更に男が一人だっただけに、その男を取り合うように女同士の揉め合いも度々見られてたんだよ」
「うっ……」
シューの細められた視線が向けられたと思ったのか、リッコは顔を引きつらせる。
「男もアイアンになってから周囲の評価に浮かれてたのかもね」
「それで、今その人達は?」
「最後は仲違いして解散したシ」
「そ、そうですか……。リック、あんまり目立つ名前は止めときましょう……」
「おう……。でもよ、やっぱり名前考えようとすると、あいつのイメージを入れてえなって言うか、思いついちまうんだよな」
リックの気持ちはこの場の全員が思ったかもしれない。
この場にいる誰もが大なり小なりとミツに世話になった覚えもあり、仲間となったきっかけをくれたのも彼だと。
ならば自身がいるこのパーティー。
ミツをイメージさせる物を言葉として残したいと言う気持ちに、彼の言葉に周囲は口を開く。
「イメージって……意外性かな?」
「お人好しじゃない?」
「常識知らずとか〜?」
「ありえねえ力じゃね?」
「な、仲間思いじゃないかな……?」
「シシシッ。それ、半分は姉さんも同じこと言ってたシ。なら、ノワールで良いんじゃない? ミツもお前達も同じ黒のマント羽織ってるし、何より黒は強さもイメージさせるよ」
ノワール。言葉の意味としては黒と言う意味であり、黒は彼女の言うとおり、聞くものが聞けば強さをイメージさせるだろう。
この提案に皆は顔を見合わせた後、無意識と首を縦に振る。
「ノワール……。うん、悪くねえな」
「なによ、結局他の人の考えた名ジャない。……うん、でも良いかも」
「おっしゃ、それじゃ早速登録してくるぜ!」
ズッと悩んでいた事が無くなったことにスッキリしたのか、リックはカウンターに居るナヅキへとパーティー名の登録に向かう。
その際、リッケにもパーティーはノワールに決まった事を告げると、彼は直ぐにミツを思い浮かべたのだろう。良いですねと彼も直ぐに賛成してくれている。
「はいはい。これでやっと名乗れるパーティーになったわね。シューさん、アドバイスありがとうございます」
「シシシッ。これくらい朝飯前だシ」
「おまたせニャ〜」
「プルンも来たわね。それじゃ、リックが戻ってきたら依頼主の所に行きましょう」
彼らの今日の依頼は飲食店の手伝いとして、護衛と店内の手伝いである。
護衛はリックとリッケが担当して、残りの娘達はホールスタッフと清掃係だ。
トトとミミはウッドからブロンズになる為の依頼がこれをこなせば残り10回を切る。
ミツが街から離れた後も、彼らは短期的な依頼をいくつもこなし、先にウッドである二人をブロンズにしようと話し合い街中の依頼をこなし続けていた。
彼らがギルドを出た後、暫くしてヘキドナとエクレアがマネ達と合流。
彼女達はご機嫌にとある場所へと向っていた。
そんなヘキドナの腰にはキラッと陽の光を反射させる鍵がぶら下げられている。
何処の鍵なのか、彼女達はギルドから歩いて暫く、民家の住宅が並ぶ場所に到着。
「姉さん、それで、その場所って何処ですかい?」
「ちょっと待ちな。えーっと……」
ヘキドナはマネの言葉に周囲を見渡す。
ヘキドナの肩を叩き、後ろに控えたエクレアがとある場所の方へと指をさす。
「リーダー、あの木のある家じゃないですか?」
「ああ、あれだね。まだ道を覚えてないから忘れそうだよ」
「目印になる木があって良かったですね!」
「シシシッ! ウチ、先に見てくるシ!」
「あっ!? 待てシュー! うおぉー! アタイが一番だっての!」
「二人とも、待つだっちゃー」
「「……」」
少し坂道になった道を走る三人。
小さくなっていく三人を見つつ、ポリポリとヘキドナは軽く頭を掻いた後、ヘキドナは反対の道に指をさす。
「エクレア、こっちだよ」
「えっ!? あっちじゃ無いんですか?」
「あっちは外壁、入り口はこっちだよ。まあ、あいつらはぐるっと外周を回って入り口の方に来るだろうさ」
「あー、なる程……」
二人は少し歩いた後、民家を幾度か曲がる。
すると見えてきたのは周囲よりも少し立派な家の門であった。
二人がその先の道を見ていると、タッタッタと軽快に走ってくるシューの姿。
そして既に息を切らし、何とか門の前に到着するマネとライムだった。
「ゼェ……ゼェ……」
「はぁ……はぁ……。ぐっ、シュー、あんたのせいで遠回りしちまったじゃないか!」
「えっ? ウチは木を見てくるって言っただけだシ」
「なっ!? こ、こんにゃろ……」
「それよりマネ、アネさんが待ってるシ」
「あっ、やべっ!」
「競争は満足かい?」
「へへっ、すいません。はい、お願いします!」
「ああ……」
少し呆れているのか、だが今のヘキドナの意識は門の前に向けられていた。
一見なんてこともなさそうな人が住んでいなさそうな空き家。
この場に何故彼女達が足を向けたのか。
ヘキドナは閉じていた目をゆっくりと開け、錠を開ける。
キーッと蝶番に使われた部分から音がなり、彼女達が足を踏み入れる。
「リーダー、いよいよですね!」
「くーっ。やっと姉さんの夢が叶う時が来たんですね!」
マネの言葉に小さく返答し、頷きを見せるヘキドナ。
そう、ここはヘキドナが購入した家である。
今は亡き妹のティファとヘキドナが共に企画していたファミリー計画資金が貯まったことに、新築ではなく、何年間空き家となっていた中古物件を彼女は購入したようだ。
と言っても目の前の家と土地、両方を購入するには実はまだ資金不足であった。
しかし、ミツからシューへと渡された双頭毒蛇の討伐と素材代が決め手となったようだ。
それはシューがミツからパンパンに膨れた麻袋を手渡されたときは、彼女は驚き過ぎて思わずフリーズしてしまう程の金額。
討伐した時の状態が良い事、また品質が優品として判断された事に、ミツとシューの一人あたりには金800枚が手渡されている。
シューは受け取った麻袋の中身が多すぎるシと最初彼女は震える手で麻袋を突き返すが、それを言葉を添えてもう一度彼女へとミツは手渡す。
その言葉にシューは納得したのか、シシシッといつもの笑みを返事と金を受け取っている。
そして彼女はそのまま麻袋を姉であるヘキドナへと渡したのだ。
ファミリー計画はヘキドナとティファの二人で始めた計画だが、既に家族となっている彼女達にも関係の無い話ではない。
シューはヘキドナへと改めて自身をドブ川の橋から拾ってくれたこと、また家族として受け入れてくれた事に感謝を送り、ミツから受け取ったお金はファミリーに使ってくれと手渡している。
やはり最初渋るヘキドナであったが、シューはミツから言われた言葉を彼女に伝える。
するとガタッと音を出し、ヘキドナは机に突っ伏してしまった。
近くで聞いていたエクレアはアハハと笑っているが、小声に少年もやりますねの言葉はヘキドナの顔を上げさせ、エクレアへと睨みを向けさせる。
だが、少し赤くなった彼女の顔に恐怖心など湧くわけもない。
ミツはシューへとこんな言葉を伝えていた。
「シューさん、お金はあって困るものではありませんよ。ご自身の功績がこの結果となってシューさんの手元に来たんです。それに、別に無理して自分だけのお金にする必要もないんですよ? プルンのように家族の生活を楽にするために使えば、それはシューさんもこのお金は貰う事が荷になる事はないと思うんです。ヘキドナさん達も最初抵抗して突き返すかもしれませんが、あの人達は本当は根が優しいですからね。それに意地っ張りな所もありますけど、それはシューさんを大切にしてるからですよ。ああ、もしヘキドナさんが本当に突き返して来た時は言ってくださいね。自分が夜通しでも説得しますから」
その言葉にヘキドナは顔を上げ、部屋の天井を見ながらボソリと何かを呟く。
言葉はかぼそく、隣に立つエクレアですら聞こえなかったが、ヘキドナはフッと軽く笑いこぼした後、シューの気持ちを受け取ることを決める。
そして貯まったファミリー計画資金の金。
先程ヘキドナとエクレアは家の鍵を受け取るためと二人で手続きに足を向けていたようだ。
「シシシッ! アネさん、アネさん! ウチにも一人の部屋が貰えるんだよね! ならウチアネさんの部屋の隣が良いシ!」
「ちょっとシュー! 自分だけズルいじゃない! リーダー、私は、私は!?」
「……」
「アタイは階段登るのが面倒くさいから、一階に部屋があればそこで寝たいね」
「ウチもだっちゃ。寝ぼけて階段から落ちたら洒落にならないっちゃ」
「「「「アハハハハハ!」」」」
四人の笑い声が聞こえていないのか、先程からヘキドナは家の中へと足を踏み入れようとしない。
「まー。楽しみにしてくれるのは良いけどね……。悪いけど、ここに直ぐ住むのは……」
「えー! 何でですかリーダー! こんなに大っきな家なのに……」
「シシシッ。掃除なら皆でやれば早い
……シ」
「なんだいなんだい? 二人とも突っ立って。さっ、早く中に入り……ましょう……」
「うわ……。中はボロボロだっちゃ……。これ、今住んでる家の方がまだましっちゃね。あっ、天井に穴が開いてるっちゃ」
ヘキドナが家の扉を開けた瞬間、目に見えてきたのは火の光が入り込んだフロアだった。
しかし、その光は窓や扉からではなく、ライムの言う通りポッカリ開いた屋根から差し込む光であった。
また壁は腐敗にボロボロ、床は抜けているのかそこから鼠のような生き物が出てきている。
空き家というか、これは廃墟の言葉が的確かもしれない。
「姉さん……」
「ネエさん……」
「リーダー……」
「アッハハハ」
妹達から向けられる細められた視線。
「フッ……。すまない。話では聞いてたけどここまでとはね……」
家を受け取る際、一応彼女もここに来てはいたが中を見るのはこれが初めてだったようだ。
ヘキドナが紹介されたこの家。
庭付き一戸建て、部屋数は十と大部屋二つ。
風呂付きトイレ別(排泄物処理スライム付き)等々、一般的な家としては豪華な屋敷と言っても可笑しくない間取りもしている物件である。
普通なら金貨3000枚を超える物件だが、それが金貨1000枚と言う破格の値段。
元々貴族が住んでいたが、貴族街に引っ越すと十年以上前に手放したようだ。
その際、使えそうな物は全て持っていき、使えない物だけが残されたようだ。
人が住んでいない建物というのは、目の前の建物の様に直ぐに至るところが腐敗し始めてしまう。
エクレアが階段につけられた手すり部分に手を触れれば、そこは簡単に倒れ地面に積もったホコリを巻き上げてしまう。
「ま、まぁ……皆でやれば直ぐに修理も掃除も終わりますよ!」
「そうだシ! 先ず屋根や階段、後抜けた床の修理して、その後部屋の全部掃除すればここに引っ越せば良いだけだシ!」
「それ、何ヶ月かかるっちゃね?」
「五月蝿え! ライム、そんな小せえ事気にする事ないっての! 姉さん、言っちゃなんですけど、此処まで大っきな家を持ってる冒険者なんて、ここらじゃ姉さんだけですよ! さっ、綺麗にして皆に自慢してやりましょう!」
「ああ、そうだね……。すまないねシュー、あんたにも金を出してもらったのにこんな事になっちまって……」
判断を誤ったか、ヘキドナは手で顔を隠すように下がる頭を抑える。
「えっ!? う、ううん。べ、別に気にしてないシ! あっ! 姉さん、あそこに井戸もあるシ! もしかしてその近くの小屋ってお風呂かシ!?」
「あ、ああ。前の住人が使ってたやつがあるって聞いたね。まあ、それもこの状態じゃ使えるかわからないけどね……ははっ」
「「うっ……」」
聞いたこともないヘキドナの乾いた笑い声に、妹達は顔を見合わせ困り顔。
「うわ〜。リーダー、露骨に落ち込んでるよ……」
「取り敢えず始めるっちゃ。やり始めればいずれ終わりが見えてくるっちゃよ」
「そうだっての! よし、取り敢えず部屋の窓を全部開けるっての!」
「おー!」
早速始めようと、彼女達は先ずは換気と部屋の窓を全て開けていく。
それだけでも外の風に室内のホコリは飛んでいき、光が部屋に入る事にどよんだ部屋の思い空気も変えてくれたようだ。
井戸は一度掃除しなければ使えないので、近くの小川から水を組んでは入り口の清掃から始める面々。
修理レベルに酷いところもあるが、屋根を塞ぎ、雨風がしのげれば今日からでもこの場で住むことは問題ないと彼女達は思っていた。
冒険者なんて野宿が当たり前の生活もしているので、これくらいで泣き言を言う彼女達ではない。
暫く掃除を続け、ひたいの汗を拭うエクレア。
「んー。リーダー、これは手数で戦うべき案件ですよ」
「戦うって……エクレア、あんたは一体何を」
「リーダー、物は相談なんですが、お金ってまだありますか?」
「……。まぁ、少しはね」
「分かりました。リーダー、そのお金、私に預けてください!」
「おい、エクレア! どう言うつもりだっての?」
「マネも他の二人も私を信じて」
「んー。ウチは別にいいけど」
「ウチもだっちゃ」
ヘキドナは金の入った麻袋をエクレアに手渡す。
中身はまだ結構お金が入っていたのか、これならとエクレアは頷きを見せる。
彼女は直ぐに戻りますの言葉を残し駆け出して行ってしまった。
「あいつ、何処行ったっての?」
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