第236話 逃げ場無し。
謁見の間にて、急遽呼び出された数名の貴族たち。
その者達は国に古くから忠義を見せ、長くから国を支えてきた貴族たちであった。
しかし、彼らは長く国を支えてきた事に、欲を強く持つ者達でもあった。
ミツがこの国に来たことに、自身の利を損失させると思ったのか、何を血迷ったか事もあろうにミツを毒殺しようと暗部を送り込んだ奴らである。
彼らはミツが生きていた事に驚き、昼間の謁見中にミツに気絶させられ、気づいたものは城から逃げ出す思いと馬車を走らせていた。
しかし、王族の騎馬部隊からは馬車で逃げ切ることは不可能であったろう。
早々とクリフトの部隊に捕縛され、今は王族の全員と、マトラストとダニエル、そして王宮神殿の巫女姫を前に頭を垂れていた。
つれて来られた者の中には無理やり引きずられた者もいたのか、顔には殴られた跡に口元には血をにじませていた。
本来なら騎士兵が連行の為とそんな事をしては問題だが、王命に誰も逆らう事は許されない。
その者は同行を拒んだばかりに痛い思いをしたのだろう。
最後の一人も来たのか、頭を垂れた者達の列に無理やり座らされる。
「ローソフィア様、揃いました……」
「……」
「皆、面を上げよ!」
「「「「……」」」」
「まずは貴殿達に二足と足を運ばせた事に手間を取らせた」
「いえ……」
「では時間も取らせるのも悪かろう……。これより貴殿達の査問会を行う」
「「「「「!?」」」」」
「女王陛下! 査問とはどう言う事でしょう! 我々が何をしたと申されましょうか!?」
「黙れ! 貴様、女王の言葉に反論の言葉を口にするとは! この場で首を落とされたいか!?」
「ひっ!」
レオニスの一喝の言葉とくすみあがる面々。
彼がその気になれば、本当に首を切り落とされるとガクガクと全身を震わせる貴族であった。
「それと、この場に呼ばれた意味をお前らが解らぬ訳ではなかろうが!」
「「「……」」」
沈黙。
その緊迫とした沈黙にて、今回集められた目的が冒険者ミツへの暗躍を仕組んだことが王族の耳に入ったことを嫌でも理解する貴族達。
目に見えない何かに心臓を掴まれる思いと、彼らに緊張が走る。
「残念です。貴方がたは、前王エミルの頃より国の為に勤しみ、忠義に満ちた者だけにこの様な場を作るとは……」
「「「……」」」
震えが止まらないのか、カチカチと誰かの歯を鳴らす音が聞こえる。
「巫女姫……」
「はい……」
ローソフィアは静かにルリを呼び、彼女は静かに女王へと膝を折る。
「今からこの者達、全員の口から本性をさらけ出させて頂きます。貴女には少々手間を取らせますが、協力を望みます」
「はい。ローソフィア様の望むままに……」
「結構。それでは……。これより、冒険者ミツ殿に毒を盛った犯行、その主犯と手を貸した者の罪状を明らかとする! 今回の行いは、我が国に矢を引いた物と同等以上とみなす。事が発覚しだい、その者の貴族としての権限を全て剥奪、一家連座処分と致す」
「「「「「!!!」」」」」
「「「はっ!」」」
女王の判断は貴族達が想像していた以上の処罰が告げられた。
この国の連座処分はとても重い重罪人へと当てられる罰である。
それは寝耳に水とばかりに愛する妻、息子や娘、そして幼き孫は当たり前と、その貴族に仕える執事、側仕え、メイドから下働きの者全員が対象となってしまう。
悪事にて贅を肥やした場合は全員が容赦なく打ち首である。
しかし、今回の件は難しい判断となるのは間違いない。
被害者であるミツは毒を盛られた。
だがその毒は彼には効かず、今もピンピンと生きている。
更にはまさかのミツ本人からの今回の犯行の訴えは無く、処罰の判断は全て王族に任されている。
これは王族がミツと言う存在をどう見るか、そして目の前に未だ頭を垂れ続ける者達をどうするのか。
その為に連座処分を何処までの処分にするのか。
と言っても、ルリがこの場に来ている以上、査問にかけられた者は逃げる事もできず、殆どが重い罰を受けてその人生を終わらせている。
「先ずは貴様、フラッグ!」
「!? お、お待ちくだされ、私は!」
カインが貴族の一人の名を呼ぶと、フラッグと呼ばれた男は顔を上げ、顔を歪ませ言い訳を口にし始める。
その言葉に冷たい視線を向けるアベル。
「少し言葉が五月蝿いね……。巫女姫の言葉が、君達の雑音に消えて聴こえないと困るじゃないか」
アベルは兵の方へと視線を向ければ、そこにはクリフトが数名の近衛兵と共に立っていた。
彼らは白い布を取り出し、声を出せないようにと貴族達の口へと結んでは彼らを黙らせる。
「フグッ!?」
「おまちおっ!?」
「それでは、フラッグ様。私の言葉に耳を背ける事のなきよう……」
「はひっ!」
そして、王宮神殿、巫女姫のルリのスキルがフラッグへと向けられる。
彼女のスキルからは嘘の答弁は無意味。
最初こそ知りませんの言葉を口にしていたフラッグであったが、それも直ぐにルリのスキル効果にて自身で否定。
自身も参加した暗躍の会議、そして次々とその場にいた者達の名前が彼の口から吐き出されていく。
聞き取る人数も人数。
ルリには魔力的に辛い作業だが、急遽用意されたMP回復ポーションを彼女は幾度も口にする事になった。
その場全員の聞き取りが終わると、ミツの言ったとおり全員が黒。
暗躍に加担した者は膝から崩れ落ち、後に待つ連座処分を待つしかなかった。
この場に居る最後の一人の悪事も白状させた後、連絡を回す兵が謁見の間へと入室。
兵は場の雰囲気に一度驚くが、改めて報告すべき言葉を出す。
「!? し、失礼します! コーン伯爵様をお連れいたしました!」
コーンの名が出た瞬間、また場の雰囲気が重くなる。
それは今回の計画された暗躍の主犯。
それを誰もが口を揃えてコーン伯爵の名を口にしたのだから。
「入れ」
「はっ!」
「!?」
既に詰問が終わった貴族たちの項垂れた姿を目にしたコーンは一瞬にして顔色を変える。
貴族たちと同じ様にコーンもローソフィアを前に膝を付き頭を垂れる。
「コーン伯爵、随分と遅かったではないか……」
「はっ、レオニス様。以前より少々妻と周遊の予定を立てておりまして、その準備に……」
「そうか。ご婦人との楽しみとしていた事の前に、気分を害させてしまったかな?」
「いえ……」
「では手短に話を済ませるとしようか。お前の横に並び、無様な姿を見せておるこ奴らの口から面白い話が聞けたものでな。是非とも我が国に長く忠義を見せてきたコーン伯爵に聞かせてやりたいと貴公を呼ばせてもらった」
「そ、それはお心遣い、感謝いたします……」
「いやいや、感謝など不要だぞコーン伯爵。貴様の感謝など、この場の誰も望んでおらん。勿論……女王もな」
「!?」
「コーン伯爵……貴方には、冒険者ミツ殿に対して、殺意ある毒殺計画を立てた主犯としての罪が課せられています。勿論巫女姫の力にて証言はその場に居る貴族全員の言葉として証明済み」
「そ、それは!」
「口を慎みなさい、コーン伯爵。この場で貴方の弁解の言葉は不要。その口から吐き出される言葉は真実のみとします!」
「くっ……」
ローソフィアの言葉の後、ルリがコーンの前へと立つ。
彼女は今まで裁いてきた人数の疲れも見せず、彼女が見せるはコーンに対しての怒りであった。
冷たく、そして刺すような視線が向けられたコーンは、ルリの言葉を聞き入れるしかできなかった。
そして告げられる真実。
コーンに対してはルリは今回ばかりは強くスキルを発動したのだろう。
今回の件を別とし、ルリはコーンの今までの悪事と自覚している事を全て吐き出させる思いと喋らせた。
その内容だが、物資の横領、社交界などの経費水増し等々。
コーンはダニエルやマトラストの様に領 地を持たぬ貴族だが、国や城の経済関係に係る者だけにこの様な罪を重ねてきたのだろう。
マトラストが代表と告げられた金額をまとめれば、ざっと億単位の不正が発覚となった。
この場の全員から向けられる視線から逃げるように、弁解の言葉は無意味と、コーンは頭を下げ続けるしかできなかった。
頭を下げたままのコーンは絶望の中、怒りに満ちていた。
自身の計画した事が側に居る莫迦共のせいで露見してしまった。
いや、元を正すなら近くにいる巫女姫が原因だろう。
まあ、その考えは明らかな八つ当たりであり、これは自業自得が招いた結果でしかない。
しかし、コーンは自身のする事、全ての発言は正しいと勘違いする貴族だったのだろう。
今までの行いが偶然にもコーンの地位を上げ、彼に伯爵の肩書を与えたのだろう。
これで終わりと、いつもならばルリは裁いた者に対しての情の言葉をかけるのだが、彼女にも疲れが来てしまう。
息を切らせ、ヴァイスとシュバルツに体を預け後ろへと下がっていく。
MP回復薬を飲み続けた彼女であっても、回復薬の効果が追いついていないのか、彼女は魔力の枯渇状態に足を踏み入れていたようだ。
その時、コーンの血走った目に入るのは、疲れと魔力の消耗に弱々しく下がるルリの姿であった。
彼は後の自身の末路を既に覚悟している。
覚悟していたらこそ、思わぬ行動に出てしまうとは、この時誰も思わなかった。
「くっ! 己小娘ふぜいが!」
「なっ!?」
コーンは懐に隠していたナイフを取り出し、ルリの方へと駆け出した。
側に居る兵は彼の動きを止める事ができなかった。
「そやつを止めろ!」
「どけい!」
「「キャッ!」」
「!?」
コーンはルリを支えていたヴァイスとシュバルツの二人を押しのける。
そしてルリへと手を伸ばし、彼女の首元へとナイフをあてる。
「お前さえ居なければ!」
「止めろコーン伯爵!」
「黙れ! 動くな! 動けばこの娘の首など直ぐに切り落としてくれる!」
ダニエルの言葉にイラつきながら声を張り上げる。
その興奮がルリを締め付ける腕に力が入る。
「うぐっ……」
「姫様!」
「お止めなさい! コーン伯爵! 直ぐに巫女姫からその手を離しなさい!」
「これはこれは、ローソフィア様の言葉としても聞き入れがたいお言葉ですね」
「貴様! 自身で何をやっているのか分かっているのか!?」
「お怒りを抑えくださいませアベル様。巫女姫には妻の代わりと少しばかり私と周遊に同行して頂こうかと思いましてね。勿論皆様のご同行はご遠慮とさせて頂きたい」
「コーン……貴様、後悔するぞ」
「カイン様、後悔など私はいたしません! この娘を生かしたまま死ぬ事こそが後悔です!」
「うっ!」
また腕に力を入れるコーン。
ルリの力ではコーンの腕から逃げ出すこともできず、彼女はうめき声を出す事しかできなかった。
「さあ、姫君。私の最後の願い、貴女様の身体にて奉仕くださいませ」
「……こ……りし……す」
「相変わらずこの娘は何言ってるか分かんねえな」
口調を変えたコーンは苛立ちをルリへと向けると、この場に居ない人物の声がホールに響き、周囲の人達の耳に聞こえる。
「では自分が代弁いたします。ルリ様はこう言ってますよ。お断りしますと」
いつの間にかコーンの拝後に居たミツ。
彼は苦しむルリの首に回るコーンの腕を掴み、ボキッとコーンの腕の骨を折る。
「なっ!? 貴様! 何処から!? うっ、うぎゃーーーー!!! うっ、ううっ!! うあっ、腕が、私の腕が!!!」
「それはルリ様に刃を向けた罰です。そして、これは自分に暗部を向けた分です」
「ああああ!!!」
痛みに蹲るコーンを見下ろすミツの冷たい視線。
彼を中心として足元に魔法陣が光として浮き出す。
「ミツ殿!」
「誰に喧嘩を売ったのか、死ぬまで覚えておいてくださいね!」
周りの声も聞こえないのか、今の彼は怒りに満ちていた。
創造神シャロットが態々自身とルリの容姿を同じにした事もあり、彼にとって、この世界にとってもルリは守るべき人物になっている。
驚きに足を止めていたローソフィアの手をレオニスが引き寄せ、その場から退避。
続けてアベルは周囲の兵へと指示を回す。
「母上! こちらへ!」
「近衛兵! 女王を守れ!」
「「「おうっ!」」」
全ての兵は、女王を守る為の盾となる。
更にダニエル、マトラストはルリの側仕えのタンターリ、ヴァイスとシュバルツを避難させる。
「あああ!!」
「ひいっ!!」
ゴゴゴッと地震でも起きているのか、揺れる城に怯える貴族たち。
ルリは腰にミツの腕を回されている為か、彼女に周りの者程には恐怖は無い。
「あいつ、この様な場所でなにをする気か!?」
「分からない、でも……。!? 引けぇ! 全員、入り口の方まで引けえええ!」
「莫迦な!? 報告は事実だと言うのか!」
疑問と声を出すカインの言葉に足を止めたアベルであったが、ミツの足元にある魔法陣からブワッと黒い煙が出てきた事に彼だけではなく、その光景を見た事のある面々は顔を青ざめさせる。
この場にいては危険と、いつもは出さない大声を出し、周囲に避難を促すアベル。
レオニスはその光景に絶望を感じていた。
何故なら、彼の見る先には物語に出てきてもおかしくない竜の大きな顔が姿を見せ始めていたのだ。
ミツの〈幻獣召喚〉にて召喚されたヒュドラ。
魔法陣の煙が謁見の間を埋め尽くし、周囲の建物を壊しつつその姿を現とする。
「「「!!!???」」」
「うぎゃーー!!!」
「だずげでぇーー!!」
「ずみばぜんーー!!!」
「あっ、ああ、ああっ、あっ……」
兵士は全てローソフィアを守る為と側に移動した為に、ルリに裁きを受けた貴族たちはその場から動くこともできずにヒュドラの恐怖を目の前で見る事になった。
五つの竜の頭が今にも自身を噛み殺すと心臓に響く唸り声を上げる。
「コーン伯爵、それと貴族の皆様。自分は貴方達を許せない。自分を毒殺しようとした事も、ルリ様に刃を向けたことも……。貴方達には地獄以上の恐怖をさしあげますよ! 行け、ヒュドラ! 目の前に居る者たちに絶望を!」
「「「!!!」」」
「グオオオオオッッッ!!!」
ミツの言葉にヒュドラの五つの顔が声を出す。
その声が聞こえなかった者はこの城……いや、王城には居なかっただろう。
ヒュドラが少し体を動かせば謁見の間は崩壊。
生き埋めではなんの罰にもならないと、ミツは貴族達をまとめて中庭の方へと放り投げる。勿論腕の骨を折っているコーンもぞんざいに外へポイッ。
放り投げられた貴族達を視線で追うヒュドラは身体を動かし、中庭へと移動を始める。
勿論中庭の方へ行けば城の窓から外にいるヒュドラの姿を目にする者は多くいただろう。
キャーキャーと悲鳴のような声、そして兵たちの怒号があちらこちらからと聞こえてくる。
誰もミツを止める事ができない。
いや、今下手に声を掛ければ彼が乗っているヒュドラがこちらに来るかもしれないと言う恐怖が王族貴族全員の口を閉じる。
外は既に暗くなってしまっているが、城から照らされる光にてヒュドラの姿は遠くの街門にも目視される事になった。
中庭に放り出された貴族たちは逃げ出すにもミツの〈威嚇〉スキルにて動くことができない。
突然現れた莫迦みたいにでかい竜。
その存在は城内に大混乱を招いた。
メイドなど非戦闘の人々は避難を始め、昼間の疲れを休めていた兵士全員が武器を持ち中庭へと走る。
ヒュドラの姿を見た者、皆が一度足を止めるが兵長の怒号が彼らを所定の位置へと移動。
兵士だけではなく、魔術士、弓兵、城にいる者は竜退治と全員出動である。
兵長は直ぐに攻撃を仕掛けようとするが、近くに王族が居ること、また竜の見つめる先には数名の上級貴族、更に更には竜の胴体の上には王宮神殿の巫女姫と彼が見たことの無い漆黒の鎧に身を固めた少年。
はい、一見どう見ても竜に乗ったミツが問題を起こしたと見えたのだろう。
しかし、それは内容の食い違いである。
兵士達からは今のミツは巫女姫を誘拐し、貴族たちへと牙を向けた犯罪者である。
半分正解、半分間違いの周囲の判断は、兵長の一言で全員が動き出すだろう。
そこに、王女ローソフィアが声を張り上げ、ミツへと武器を向けた者へと止めるように声をかける。
「全員、武器を下ろしなさい! 竜の出現に怯えず、冷静な判断を忘れてわなりません!」
ローソフィアの言葉に互いに顔を見合わせる兵士達。
少しづつ武器を下ろす者達を見ては、自身の武器も竜とミツから下げられる。
続けて、マトラストが声を張り上げた。
目の前で土汚れに顔や服を汚した貴族は罪人である事を声明する。
その言葉にレオニス、アベル、カインの三人の王子も証人と声を出せば多くの人から向けられる侮蔑の視線が貴族へと向けられた。
しかし、視線を変えたくてもヒュドラの存在が大きすぎて、多くの兵士達に震えが止まらずに、カタカタと鎧を鳴らしてしまう。
グルルと心臓に響くヒュドラの唸り声に今にも気絶してしまいそうな貴族達と、ミツに腕を折られた痛みと恐怖に涙や鼻水をダラダラと出し続けるコーンへとミツが視線を向ける。
彼は今からルリが側にいては少々使いづらいスキルを発動する為、近くに誰かいないか見渡すと、ダニエルの近衛兵の一人のトスランと視線が合った。
ミツはルリと共にヒュドラの胴体から下り、トスランへと〈念話〉を発動。
ルリを避難させるように促す。
最初こそ頭の中に聞こえてきた声に驚きを見せたトスランであったが、彼は直ぐに動いてくれた。
駆け寄るトスランへとルリを頼み、二人は直ぐにミツから離れる。
またミツがヒュドラの方へと振り向けば、一つの頭が彼へと近づく。
周囲から驚きの声がざわざわと聞こえるが、彼はその声も気にせず、ヒュドラの頭の上に乗ってしまう。
そして、中庭を見る貴族や兵士の全員に聞こえる声を張り上げる。
「貴族の皆さん、兵の皆さん、自分はアルミナランク冒険者のミツと申します! 先ずは皆さんを驚かせた事に謝罪を。自分は本日、王族であるアベル様、そしてカイン様のお誘いとこの城へと足を向けさせて頂きました。自分自身、お二人から城へのお招きを頂いた事に嬉しく思い、浮かれていた気持ちもあったかもしれません。しかし、城に来て自分が真っ先に受けたのは歓迎の言葉ではなく、王女、ローソフィア様が発言いたしました通り、そちらの元貴族の人達からの毒殺と言う残念なお招きでした……」
王族が招いた客に毒を盛るなど、貴族としても非常識過ぎる。
多くの兵達の中から、そんな声がミツの聞き耳スキルにて聞こえてきた。
ミツがやりたい事は多くの者の前で情を求めることなのか?
しかし、それが彼の望みと言うならば、あのヒュドラを出す必要はない。
カインは恐怖に耐えつつ、ミツだけではなく、ミツのスキルで動けない貴族たちへと聞こえる声を出す。
「ミツ殿、その事に関しては、我ら王族が貴殿の満足とする裁きをその者たちへと与えることを約束する! どうか、今は怒りを沈めてはくれないか!」
「……」
「あわわわ……」
「おた、お助けを……」
「すみませんカイン様。自分は友好を結ぶべき相手の元に、このような人が居て無視もできません。最終的な罰は皆様にお願いしますが、一つだけ。そう、そこのコーン元伯爵は許しては行けない事をしました。王宮神殿の神殿長に刃を向けると言う、一番の大罪を犯したことだけは許しちゃいけません。ルリ様は多くの人々を守る事のできるお人です。それを自身の都合で危険に晒すなど……絶対に、許しちゃ行けないんです!」
ミツは先程謁見の間で起こした事をもう一度貴族たちへと向けて行う。
〈王の威厳〉と〈威嚇〉を発動。
その瞬間、貴族の数名は意識を飛ばし、更には王の威厳の効果は兵士達へと十分すぎるほどの影響を及ぼした。
「「「あがっ!」」」
「ひっ!? ヒィィ!」
そこで動いたヒュドラの頭の一つ。
その気絶してしまった貴族へと近づき、その者をバクリ。
「「「「「!!!」」」」」
別に本当に食べてしまった訳ではなく、バロンとの模擬戦の時のように、ただ口の中に含んだだけである。
しかし、その行動に王族貴族、兵士含め、全員が驚きの顔を作る。
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