第205話 嘘である。

名前 『ミツ』     人族/15歳


メインジョブ  マジックファイター Lv5。


偽造職     ルーンナイト    Lv5。


サードジョブ  ダークメイジ    Lv5。


フォースジョブ ワァテス      Lv5。


フィフスジョブ ダークプリースト  Lv5。


転職可能 new


【弓術】

【支援術】

【魔力術】

【剣術】


鉄の弓orドルクスア 黒鉄の鎧 

天使の腕輪(ステータス+20%の表記)


HP ______1658+(165)


MP______4495 +(165)


攻撃力___1418+(315)


守備力___1452+(250)


魔力_____1534+(395)


素早さ___1608+(255)


運 _______1254+(225)


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


ジョブレベルMAX23職


【ノービス】All+5

【アーチャー】All+5 運+20

【シーフ】All+5 素早さ+20

【クレリック】All+5 魔力+15 守備力+15

【ウィザード】All+5 魔力+25

【エンハンサー】All+10

【ヒーラー】All+5 魔力+20 守備+20

【ソードマン】All+5 攻撃力+20

【忍者】All+20 攻撃力+30 魔力+30 素早さ+20

【モンク】All+5 攻撃力+20

【料理人】All+5 素早さ+10 運+10

【ジョングルール】All+5 運+20

【アストロジャー】All+5 魔力+20

【ペドラー】All+5 攻撃力+20

【アポストル】All+5 魔力+20

【イリュージョニスト】All+5 攻撃力+10 魔力+10


【タクティクスシャン】All+5 攻撃力+10 素早さ+20

【クルセイダー】All+5 攻撃力+10 防御力+20

【パスター】All+5 魔力+10

【サマナー】All+5 魔力+20

【ハウスキーパー】All+5 運+10

【魔法剣士】All+20 攻撃力+30 守備力+30 魔力+30

【マジックハンター】All+20 魔力+30 素早さ+20 運+20


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


Level upスキル一覧


ブレイクアーマーLv4

波斬り     Lv3

剣の舞     Lv2

二段突き    Lv4

コールドブレス LvMax

体力強化    LvMax

肉体強化    LvMax

魔力増加    LvMax

速度強化    LvMax

攻撃力上昇   Lv6

守備力上昇   Lv6

魔法攻撃力上昇 Lv6

魔法防御力上昇 Lv6

攻撃速度上昇  Lv6

ブレッシング  Lv6

ミラーバリア  Lv6

エンジェラス  Lv5


Newスキル一覧


パワーチャージ   LvMax

ノックバック    LvMax

大絶斬       LvMax

ミラージュステップ Lv1

スリープ      Lv1

フィーリングダウン Lv1

サイレンス     Lv1

マジックキャンセル New

ツイストアタック  Lv1

クレセントスラッス Lv1

戦場理解      New

馬術        Lv1

祝福の盾      New

ディプロクション  New

毒爪        LvMax

悪食        LvMax

アシッドプレス   LvMax

重圧の叫び     LvMax

牛歩の進み     LvMax

祈りの言葉     New

ホーリーサイン   New

エジュケイション  New

幻獣召喚      New

精霊召喚      New

主の呼び声     New

デコイ       New

モンスター予知   New

メイキング     New

異物感地      New

リフレッシュ    New

ウォッシュ     New

オートマジックバリアNew

天地創造      New

グラビティーボマー Lv1

サモン       New

フレイムブレス   Lv1

状態異常無効化   New

属性耐性Ⅴ      New

龍の息吹      New

龍神の力      New

ウォータージェイル Lv1

エアスラッシュ   Lv1

オーバーソール   New

クラッシュソード  New

スネークシューティング Lv1

ダークフレイム   Lv1

ダウンフォース   New

デーモンズアタック New

テンペスト     New

バーンナックル   Lv1

ビックバンバスター Lv1

ファントムクラッシュLv1

ムーンマッシャー  Lv1

メテオスウォーム  Lv1

ライトセイバー   New

魂魄        New

慈愛        New

信頼心       New

足跡        New

代弁者       New

秘め恋       New

魔言        New

魔力エッセンス   New

予知夢       New

視覚感覚強化    New

嗅覚追尾      New


スキル合計数266個


※※※※※※※※※※※※※※※※

称号 『救い人』

加護 『創造神の加護』『豊穣の加護』『破壊の加護』『女神の加護』


※147話から203話まで(204話の分身の戦いは含まない)ステータス。


 分身と別行動を取り、目的の場所に到着前と自身のステータスを確認。

 試しの洞窟内でのジョブ変更からヒュドラの討伐などがミツのステータスを大きく上げている。

 更には今、彼が腕に身につけている天使の腕輪効果は、彼にとってはベスト装備なのかもしれない。


(魔力がもう少しで5000に到達する。やっぱりさ、ステータスにはカンストがあるのかな?)


 ゲーム等のキャラクターステータスには必ずと言ってもいいが、999、若しくは9999のステータスの数値がカンストだ。

 今の自身のステータスを見る限り、999のステータスがカンストでは無さそうだ。


《ミツはバルバラ様より加護を授かりし者となりますので、ステータスのカンストはありませんよ》


(バルバラ様の加護はステータスには、大きく影響してるからね。さて、そろそろかな?)


《はい、その場で構いませんので、降下してください》


「(了解)シューさん、目的の場所に到着しましたのでおりますよ」


「分かったシ!」


 ティシモ達に指示を送り、下へと降下する。


「ミツ、ジャーマンスネークは蛇だよ? あれは」


「はい。シューさんの言うことは分かります……。あれは蛙ですね」


 地上に降り立ち、茂みを少し歩く先には木々も生えていない野原が広がっていた。

 そこにジャーマンスネークが居るものだと身構えていたのだが、居たのは蛇ではなく蛙。

 しかも莫迦みたいにデカイ蛙であった。

 

「えーっと……(鑑定しとくか)」


ジャイアントトード

Lv18

スキル無し


「スキルが……無し……。……ふー。シューさん、早くジャーマンスネークを探しましょう」


「えっ? あ、うん」


 スキルを一つも持っていないジャイアントトードは、ミツの興味をスッと消し、目的であるジャーマンスネークの捜索に足を向けさせる。

 シューは見つけたモンスターをそのままにしておくのかと疑問に思うが、元々モンスターの討伐を当たり前とする冒険者であるミツでも、向こうの方から手を出してこない限りは、彼から手を出すことはしない様にしているのもある。


「それじゃ、捜索には皆も上空から探してもらおうか……!?」


「ミツ、如何したシ?」


 精霊たちには上から捜索してもらおうと指示を出す時、少しばかり地面が揺れる感覚が足を伝わり、ミツの警戒を高める。


「マスター! 敵が来ます!」


「ああ、来てるね」


「えっ? あっ!」


 野原の先にある森の方から顔を出すこれまたデカイ蛇。ミツが狙っていたジャーマンスネークが口から舌先をチョロチョロと出し、森から出てきた。

 ジャーマンスネークの姿を見た瞬間、シューも警戒心を上げたのか、彼女は腰を落とし、いつでも戦闘のできる状態と構えを取る。

 直ぐにでも戦闘が始まるだろうとミツも〈マジックアーム〉を使用し、属性の武器を出そうかとしたその時、ジャーマンスネークの顔が出た後、また新たなジャーマンスネークの顔が姿を見せた。


「あれ、頭が二つ? 二体いるのか」


《ミツ、貴方の見ているジャーマンスネークは進化を遂げています。いまは、ツインへッド・ジャーマンスネーク亜種となっております。増えたのは頭だけではなく、力などが増加し、その力は獲物を締め付けると、簡単に岩などを砕く力があります。ですが、見たとおりその大きな口で獲物は丸呑みがツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種の食事方です。今はジャイアントトードを獲物として狙って来たようです》


(やっぱり蛇の食べる物は蛙なんだ……)


 ミツは姿を見せたツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種に鑑定をする。


ツインヘッド・ジャーマンスネーク・亜種


Lv44  毒蛇


毒液   LvMAX

鱗針   Lv6

蛇の眼  Lv8


 鑑定結果は蛇独特のスキルが表示されている。

 毒蛇と出ている為、戦う冒険者は毒攻撃には注意しなければ行けないだろう。

 しかし彼には〈状態異常無効化〉スキルがあるので彼にとってはこのスキルは脅威ではない。

 でも共に戦ってくれるシューには注意を向けなければ。


「シューさん、あのジャーマンスネークは進化して頭が二つになっている分、危険性も上がっています。ですので……」


「分かったシ! ならウチが囮役になるシ」


「はい……。えっ? いや、シューさん、囮役なんて危険ですよ!」


「何言ってるシ。ウチも冒険者、足の速さはチーム一番だシ!」


「ですが……」


《ミツ、彼女なら問題ありません。例えツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種に食べられたとしても、飲み込まれた彼女を助け出すことは可能です》


(うん、ユイシス、全然安心できない言葉だね)


 ユイシスの言葉に思わず頭を抱えるミツ。

 そんな彼に近づくダカーポ。


「マスター、言葉を告げることをお許しください。私めがシュー様の足となります。さればマスターのご心配も改善されるかと」


「んっ? ダカーポ、何するの?」


「?」


「シュー様、おみ足を失礼します」


「「!?」」


 ダカーポはシューの前で膝をおり、彼女はシューの膝へと手を触れる。

 するとダカーポの身体が白く光、シューの膝に吸い込まれるように彼女は姿を変えていく。

 シューの太ももから下の足が白く光った後、光が収まると、シューは銀色に輝くグリーヴを装着した姿になる。

 

「す、凄いシ……」


「へー。ダカーポはこんな事もできるのか」


 側にいるティシモから詳しい話を聞くと、彼女たちは仮装的に姿を変え、主を守る為の翼、足の他にも様々な姿に身の姿を変えることができるそうだ。

 今回シューにその力を使ったのは、マスターであるミツがシューに対して心の壁が無い事が一番の理由である。


「おおっ! ミツ、見てだシ! 凄く足が軽いんだよ」


「はい、そうですね……。(シューさん、分かりましたからそんなに足を上げないでください。貴女が足を上げるたびに、ズボンの隙間からチラチラと見えては恥ずかしい物が見えちゃってますよ)」


「マスター、ダカーポがシュー様の足となりましたので、シュー様の戦いには彼女がサポートをします。後の戦闘で彼女の働きにより判断をするのはいかがでしょうか」


「うん。それじゃ……シューさん。引きつけるだけで良いですからね。無茶は無しですよ」


「分かったシ」


 二人が拳をぶつけ合った後、彼女は動き出す。

 

「行くシ!」


 シューのかけだすスピードはミツも眉を上げる程だ。

 〈電光石火〉などのスキルを持たないシューがその速さを出すのは、グリーヴとなったダカーポのサポートあってだろう。


「おお、早い!」


 シューはジャイアントトードの間を駆け抜け、ジャーマンスネークの前に直ぐにたどり着いた。


「こっちだシ!」


 シューは足元に落ちていた石を投げ、ジャーマンスネークの意識を自身に向ける。

 二つの頭に睨まれたシューは一瞬くすみ上がるように動きを止めてしまうが、ジャイアントトードが逃げ出す際に大きく跳ねた事に起きた振動にシューも反応。

 彼女はジャイアントトードとは別の方角へと走り出す。


「うわっ、付いてきた! ミツ、早く倒すシ!」


 ジャーマンスネークは食べごたえのあるジャイアントトードから狙いをシューに変えたのか、シュルルと蛇の鳴き声を出した後にその大きな身体をうねらせながら逃げるシューへと動き出す。

 バクッ、バクッと二つの頭が口を開きシューをひと飲みしようと頭を動かすが、シューの動きの速さに食べられる事はなかった。

 だが今にも食べられるかもしれない恐怖は勿論シューに襲いかかっていた。


「ひえー! ミツ!」


「シューさん、飛んで下さい!」


「!? くっ! たあああああ!」


 その場から幅跳びをする感覚と大きくジャンプするシュー。

 彼女が飛び越えた先の地面にジャーマンスネークが差し掛かった瞬間、地面が形を変え、ドプンっと泥土が沈む様な音を出す。

 ミツの〈泥沼〉スキルにて足を止められたジャーマンスネーク。

 シューは突然地面が沼の様になり、ジャーマンスネークが暴れ沈んでいく姿に驚きと足を止める。

 しかし、暴れ動いていたのは長い胴体のみで、頭はそれほど動いてはいなかった。


「シューさん、離れて!」


「えっ? !?」


 ジャーマンスネークの二つの頭が大きく口を開け、口から毒々しい色の体液を放出。

 あわやシューにその体液がかかってしまうと思われたその時、彼女を包み込む球体の光が彼女を守る。

 光の先を見れば、メゾの槍先から出ていた光だということが直ぐに分かった。

 ミツはメゾに向かって親指を立て、ナイスメゾと声を出す。

 その声が聞こえたのか、その場で悶えるように下半身をモジモジと動かす彼女だが、ミツの視線は既にジャーマンスネークに戻されていた。


「さっきのが毒液かな?」


 ツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種の身体の模様は赤と黒、そして緑のまだら模様。

 毒々しい色であり、その皮を見る獲物は恐怖に動きを止めてしまうかもしれない。

 今は泥沼に地面の泥でドジョウやムツゴロウのように次第と土色に変えてしまっている。

 その暴れる迫力にジャイアントトードは逃げ出し、周囲から他のモンスターの気配も次第と逃げ出すように消えていくのがよく分かる。

 周囲の警戒はフォルテに任せ、ミツはヒュドラの時と同じ様に〈水鎖〉を発動。

 泥沼の中から水鎖が出てきてはジャーマンスネークを捕縛。

 だが、ヒュドラと違い、ジャーマンスネークは鰻のように鎖をスルリと抜けてしまう。

 何度も水鎖を発動するも、ジャーマンスネークはヌルヌルと体液を出しているのかそのヌメリにて捕縛から幾度も抜け出してしまっている。


「これが駄目なら違う奴で捕まえるまで!〈粘液糸〉」


 ミツは〈粘液糸〉のスキルを発動し、近くにあった石にそれをくっつける。

 粘液糸のレベルはMAXなだけに、瞬間接着剤も顔負けな程に糸に触れた物は直にくっついてくれる。

 一つのジャーマンスネークの下顎に投げ、コーンっと音を鳴らしペタリとそれをくっつける。

 舌顎に走る痛みにジャーマンスネークが大きく頭を上げると、それに引っ張られる様にミツが中を舞う。


「うわーー! フォルテ、自分の翼になって!」


「はい! 喜んで!」


 空中に放り出されたミツへとめがけ、その場から喜び飛び出すフォルテ。

 彼女は光の粒子と姿を変え、ミツにぶつかるように光が当たる。

 ミツの背中がバサリバサリと翼を羽ばたかせれば、彼は掴んでいた糸に力を入れ、ぐるりと旋回飛行を行う。

 また大きく口を開こうとした所を空かさずと糸を使い結び、空中に八の字を描くようにもう一つの口も結ぶ。

 蛇は口の中にある肋骨を開き呼吸をする生き物である為、今の様に口をふさげば窒息にて倒す事も可能だろうと、彼の考えであった。

 しかし、暴れるジャーマンスネークは息ができずに暴れているのではなく、口を塞がれたことに対して暴れているようにしか見えない。

 おかしいなと考えていると、やはり相手はモンスター。

 まさかの尾の方からも呼吸していることがユイシスによって知らされた。


「捕縛も駄目、窒息も駄目か……。なら麻痺の〈パラライズ〉若しくは睡眠の〈スリープ〉でも試してみるか……。んっ? なんかあれ、鱗が震えてない?」


 次の手を試そうとミツが少しばかり空から降下し始めると、ジャーマンスネークの身体がブルブルと小刻みに震えだす。

 と、その時、ジャーマンスネークの身体の鱗が逆立ち、鱗が四方八方と放出し始める。

 ジャーマンスネークのスキル〈鱗針〉が発動。


「えっ! 回避!」


「うわわわっ!」


 飛び出した鱗は近くにあった木々をなぎ倒し、岩などに突き刺さり威力を見せる。

 直に回避行動を取った事にミツとシューたちには被害は無かったものの、周囲は荒れ、ジャーマンスネークは飛び出した鱗を使い泥沼から出てきてしまう。

 だがその大きな口はミツの粘液糸が巻きついたままなので、ジャーマンスネークの得意とする牙や毒液での攻撃はまだ封印した状態だ。

 それでも泥沼から出てきた事に尻尾での攻撃や、締め付ける等の危険性もあるので注意だ。

 しかもよく見れば先程放出した鱗だが、本体には既に新しい鱗を再生させたのか、打撃や斬撃に対する対処がなされていた。

 

「うわっ、普通蛇の鱗はさ、何回も脱皮してもとに戻すもんだろう!? 流石モンスター、ズルい……。よし、さっさと状態異常にしてスキルを奪わないと」


《ミツ、待ってください。ツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種となったモンスター相手には、あなたが試そうとする状態異常の〈パラライズ〉それと〈スリープ〉は効果は低い物となります。瀕死にするならば、頭の一つを切り落とす事に瀕死にすることも可能です。しかし、この策は注意があります。今の状態で首を落としてしまうと、モンスターはショック死を起こしますので、スキルを奪うならば〈重圧の叫び〉と〈牛歩の進み〉この両者を使用して自身の死を認識を遅らせてください》


「なるほど。分かったよ、ユイシス。なら、ザクッと行きますか」


 ミツはユイシスの指示通りにスキルの〈重圧の叫び〉〈牛歩の進み〉二つを発動。

 ミツを見つめるジャーマンスネークの瞳が灰色と色を失い、その動きを鈍くする。

 今がチャンスと、彼は〈嵐刀〉を両手で握る。

 緑と青の色を見せる嵐刀は彼の魔力に反して、その鋭さは飛んできた木の葉を触れただけで細切れに変えてしまう。 

 ユラユラ、ユラユラと何処を見ているのか、また動きをスローモーションの様に頭を動かすジャーマンスネークは既に運命は決まっていた。

  ミツは素早くジャーマンスネークの頭の下へと移動。

 腰を落とし、狙いを一つの首元へと向け、嵐刀を振る。


「ムーンマッシャー!」


 スキルの合わせ技、嵐刀とムーンマッシャー。嵐刀を勢い良く振りぬく。

 空気を切り裂く音に続き、青く光る三日月状の斬撃がジャーマンスネークの首を切り裂く。

 

 余りにも速い斬撃は一瞬ジャーマンスネークの首を通り抜けただけだと思ってしまった。

 だが、ズルッと首と頭がズレ、一つの頭はドシンッと大きな音を出し地面に落ちる。


「やったシー! はっ!? ミツ、まだそれ生きてるシ!」


 ドピュッドピュッっと頭を切り落とされた首の断面からは、次第と血があふれ出している。

 一つの首を落とされたがスキル効果にてもう片方の頭は何事も無い様に首を左右に振る。

  スキルをかけているとはいえ、急いでスキルを抜かなければユイシスの言うとおりモンスターがショック死を起こしてしまうかもしれない。 

 彼は掌を向け、スキルを奪い取る。


(スティール!)


《スキル〈鱗針〉〈蛇の眼〉を取得しました》


鱗針

・種別:アクティブ

自身の鱗を放出することができる。

※鱗が無い時は毛が鱗の代わりとなる。


蛇の眼

・種別:アクティブ

眩しすぎる光を抑え、視界を自然に見せる。


 スキルを奪い取った後、ミツはその場から離れる。

 モンスターにかけたスキルを消すイメージを浮かべると、ジャーマンスネークの目に色が戻る。

 だが、自身の首の一つが切り落とされた事に気がついたのか、直に蛇の身体が大きくビクンと動き、その後頭は地面に倒れ、ツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種は亡骸となった。

 

 シューは自身の事のように喜び、ミツの元に駆け寄る。

 

「ミツはやっぱり強いね! アネさん達が見たらきっと驚くシ」


「シューさんのサポートもナイスでしたよ。予定通り素材も手に入りましたので、早くヘキドナさんたちの待つ場所に戻りましょう」


「うん」


 ミツは倒したモンスターに近寄り、アイテムボックスへと収納しようと手を差し伸ばしたその時。

 フッと疑問に思った事をユイシスへと質問してみる。


(そう言えばユイシス。今幻獣召喚にヒュドラを登録してるけどさ、登録できるモンスターって一体だけなの? もし目の前のツインヘッドに進化したジャーマンスネークを登録したらヒュドラは使えなくなるのかな?)


《はい、お答えします。ミツの疑問と持つヒュドラの消滅はございません。また、幻獣召喚にて登録数の制限数はありません。ですが、召喚するモンスターによって使用するMPが異なりますのでそこは注意です》


 それを聞いたミツはなるほどと納得し、目の前に倒されたツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種に〈主の呼び声〉を発動する。

 

「おいで」


 その一言に亡骸となったモンスターの身体から黒い炎が出てきた。

 見るのは二度目だが、やはり突然亡骸となったモンスターから火の気が出てくるのは少し驚く。

 ヒュドラの時よりも出てきた火の玉は小さい。

 大小の大きさ、それはモンスター自体の強さを表しているそうだ。

 ミツの前でユラユラと浮遊するその火の玉。

 それに触れると、ミツの体の中へとその光は吸い込まれるように消えていく。


《〈幻獣召喚〉にツインヘッド・ジャーマンスネーク亜種を登録します》


「よし。この大きさなら使える事もあるだろう」


 亡骸をアイテムボックスへと収納したミツは、シューと共にヘキドナ達のいる場に戻る前にと、分身と別れた場所にゲートを開き合流する事にする。  


「「!?」」


 ゲートを開き、二人は目にした物に唖然と言葉を失ってしまった。

 すす焦げた建物、燃える木々、そして大量の亡骸を前に座る分身と五人の精霊の姿。


「マスター。来られたようですよ」


 色めかしい声に分身から離れるフォルテ。

 分身は一度軽く鼻を鳴らした後にミツ達の方へと歩み始める。


「こ、これは……」


「落ち着け。と言ってもこれを見たらそれも無理な話だよな」


 ミツが言葉を探すように周囲を見渡していると、分身はなんてことは無いと返答する。


「ねえ、ここで何があったの……」


「……」


 ミツの問に、彼は説明をし始める。

 しかし、その内容は修正(嘘)が入った物だった。


「ここがモンスターの集落だった事は分かっていたよな」


「……うん」


「モンスターの亡骸を見て分かるだろうが、ここはオークとゴブリンの巣窟だったんだよ。しかも既に捕まっていた人が居たみたいでな……。相棒なら分かるだろ? 相手はオークとゴブリン、そこに捕まっていた女が如何なっていたか……」


「まさか……」


 ファンタジー小説など、ゴブリンやオークが出てくる物語やアニメを見ていた事もあり、ミツは更に苦悶とした表情を作り周囲を見渡す。

 そこで彼が目を止めたのは今も燃えている人と思える形の物。

 それがゴブリンなのかどうなのか、質問することを躊躇わせてしまう。


「ああ。流石の自分も頭に来ちまってな……。助けようと思ったけど……」


「そう、なんだ……。それで生き残った人は……」


「今は気絶してるからお前が出したフィーネに見てもらってる。助かったのは一人だけだけどな。」


 分身の見る森の先には小屋が一つ。

 周囲が燃えた家屋ばかりだというのに、そこだけがまるで新築の家がポツンと一つ建てられていた。

 どうやら分身が周囲の木々を切り倒し、それを家として〈物質製造〉のスキルを使用して作ったようだ。


 視線を戻すミツの先。

 フォルテ達と違う姿に彼は疑問符を浮かべる。


「あともう一つ、彼女達は?」


「あいつらは自分が怒り状態で出した奴らだよ。あの人に後で聞いただろ、使用時の気の持ちようで出てくる奴らが変わるって。あいつらも手伝ってくれたんだ、感謝しといてやれ」


 嘘である。

 本当は陽気に殺戮ができる事に笑みをこぼし、出したのが彼女達である。


「うん。ありがとう……。そう言えばユイシスがそう言ってたね……」


 黒翼のフォルテ達に警戒しているのか、ミツの出した白のフォルテ達が彼女たちを見る視線は険しい。

 だが、彼女達も分身と共に戦ってくれたことは間違いない。

 ミツが礼を述べる姿を見て、分身は少しため息とボソリと言葉を漏らす。


「……。お前が居なくて良かったよ……」


「えっ?」


「いや、その……。ああ、動物もかなりの数が犠牲になってたからな。お前も居たら、この辺一帯は大変だったろうなと」


「……ああ。君の言うとおり、暴れてたかもしれないね」


 取り敢えずこの場に残るモンスターは居ない事を確認するためにと、精霊達に周囲の捜索を頼む。

 その間と、分身はオークキングを使用しての検証内容をミツへと説明をする。

 彼の前に放り出されたオークキングの亡骸。

 それと切り落とされた多くの部位の数々。

 流石にミツ本人もキング本体一つに対して、数多くの手足がある事に疑問に思ったが〈再生〉スキルの検証を兼ねたことに納得したのだろう。

 流石にやり過ぎではないかと彼はそれを口に出そうとするが、分身は犠牲になった人々や無害な動物を話に上げ、ミツの言葉を黙らせる。

 

「再生には限界がある。これに注意すれば使いどころも更に増えるな」


「最初に切り落とした腕と、最後に切り落とした腕では差が分かりやすいけど、数回目までは違いはなさそうだね」


「ああ。それと恐らくスキルが強化された効果だと思うが、体内の血も戻ってる。でもそれも含めオークキングの体は痩せたんだろう」


「なるほど」


「それと後で幻獣召喚に関して姉ちゃんに聞いといてくれや。ヒュドラの他に登録しても、先に登録したヒュドラは上書きされないのかも知っておかないとな」


「ああ。それならさっきユイシスに聞いたよ。幻獣召喚は何体でも登録はできるって」


「そうだったのか……」


「これも一応登録しておく?」


「いや、無理だ。そいつのトドメは精霊達にやらせたから、スキルを使う条件は満たしていない」


「あらら……」


「フッ。気にする事も無い。そんな奴一体取れなくても、取り巻きのオークやゴブリン、それと勿論オークキングのスキルは十分取れたからな。俺が戻った後を楽しみにしといてくれ」


「自分としてもそっちが嬉しいかな」


「流石だな。分かってる」


 互いに不敵な笑みを浮かべる者どおし、何故か二人は強い握手を交わす。

 分身を消すのは後にして、最後の検証を試す事に。

 それはアイテムボックスに関しての検証である。

 例えば分身にお使いを頼むとして、進む道中にモンスターを倒したとする。

 その時勿論モンスターの中にはレア的なアイテム等を落す奴も居るかもしれない。

 分身がアイテムボックスにそれを入れた後、ミツ本人が知らずに分身を消してしまった時の入れたアイテムは如何なるのか?

 その答えは直ぐに判明した。


 分身がオークキングの腕を自身の出したアイテムボックスに入れた後、ミツがアイテムボックスの中に手を入れる。

 すると、先程分身が入れたオークキングの腕がミツのアイテムボックスから出てきたのだ。


 ここにも創造神シャロットから貰ったアイテムボックスと一般的にプルンが持つアイテムボックスに関して違いが現れる。


 彼の持つアイテムボックスはこの世界に来た時、アイテムボックスはスキルとしてではなく、ステータスと同等の位置に付けられていた。

 その為にミツのアイテムボックスは一つの袋として見るのではなく、筒抜け状態の筒として分身との経由が可能となっている。

 勿論分身が入れた物がミツが取れてしまうのなら、逆もあり。

 彼が入れてあるお金や武器等も分身は使用する事もできるのだ。


 アイテムボックスの検証も終わったので、取り敢えず倒したオークの亡骸を回収。

 その後、分身が作った即席に作った小屋の中へ移動。

 そこではフィーネの膝枕にて、羽毛100%のフィーネの羽に包み込まれ、温まっていたネミディアが寝ている。

 彼女の顔色は悪くないが、うなされるように眉間を寄せ寝ていた。


「マスター!」


「フィーネ、動かなくていいよ。そのままでいてあげて」


「はい」


 小屋の中に入ってきたミツの姿に思わず立ち上がろうとするフィーネを止めると、彼女はまたゆっくりと腰を落とす。


「フィーネ、その人の状態は?」


「はい。怪我などは既に治療済みです。ですが……」


「俺とオークキングの戦いを見て気絶したんだろう? まぁ、派手にやったから仕方ない」


「は、はあ……。そうですね……」


 ここでも分身は一つ嘘をついていた。

 確かにネミディアは分身とオークキングの戦いを見て足を震わせるほどにくすみ上がっていたが、彼女も王国兵士の一人。

 精神面も鍛えられているので、ちょっとした事では今の様に気を失うことはしない。

 分身はオークキングの検証を行うまえと、ネミディアに向かい〈威嚇〉のスキルを発動していた。

 彼女は自身に向けられた威嚇にギリギリに立っていた心も耐えることもできず、足元に吐き出した自身の嘔吐物に身を汚しながらも気を失う。

 彼女はここに運ばれる前に分身の〈ウォッシュ〉のスキルで汚れを落とし、後はフィーネに任せていたようだ。


 身分が分れば返すことができるかもしれないので、ミツはネミディアを鑑定する。


 鑑定表示にはネミディアの名前から歳、そして彼女のスリーサイズが表記されるがそこはスルー。

 それよりも、彼が目に止まったのは最後に表示された説明文であった。

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