第131話 ここは桃源郷。

 ここは日々の疲れを癒し、汚れた身体を癒やす場所。

 日々の労働、モンスターとの戦い。

 人は何かをすると身体は汗などで汚れていく。

 労働の汗は美しいと言った台詞をドラマなどで聞いた事はあるが、事実、人は何もしなくても汗をかく生き物である。

 なら、その汗も美しいのかと疑問に思ったことがあった。


 また、風呂は心の洗濯と名言も残した何処かの酒飲みお姉さんが言っていたが、それは間違いないだろう。

 ここには人族以外にも、多種多様の者が湯に浸かりながら、心の毒素を吐き出す様に大きくため息をしている。


 さて、なぜ突然この様な汗のかいた等の話をしているかと言うと、自身の顔や体中から出ているこれは労働の汗ではなく、只の冷や汗である。

 いや、危機感を感じているのだからこれは脂汗ではないのか?

 そんなに汗をかいているなら自分こそ風呂に入るべきではないだろうか……。


 とある名画の如く、目の前には仲間達の素肌が並んでいる。疚しい心を振り払う気持ちに、自分は頭の中では先程からこの場に関係ない事ばかりを思い浮かべていた。

 しかし、それでも見えてしまうのは仲間達の裸。

 一人一人と彼女達の背中や頭を流すたびに、心の中ではバレませんようにと叫び続けていた。

 こんな状態に追い詰められるのは、ほんの数分前である。


 リッコ達は汚れた衣服をカウンターの人に渡した後、脱衣場の方に先に行っているミミとローゼと合流していた。

 二人の衣服は三人程に汚れてはいなかったようだ。


「やっぱり凄い人の数」


「本当に。お湯の入れ替えの日に当たったのは嬉しいけど。これじゃああまりゆっくりする事もできないかもしれないわね」


「でも、ウチこの泥汚れはしっかりと落としたいニャ」


「ホントね。まったく、リックのあの莫迦。守るならしっかりと守りなさいよ」


「ふふっ。お兄さんはしっかりと守ったと思うわよ。ねっ、ローゼ」


「……んっ。そうね。ミーシャの言うとおり。私とミミが無事なのも、確かにリッコさんのお兄さんのおかげよ」


 今回の護衛依頼。

 二つのパーティーを合わせた八人。

 その八人で臨時でパーティーを組み、無事に依頼をこなして来た面々。

 だが、やはり護衛依頼と言うものはモンスターに襲われることが前提であり、トラブルも起こりやすい依頼である。

 それでも今回の報酬は一人金貨二枚。

 護衛依頼としては中々羽振りの良い依頼である。

 街を一つ過ぎ、山を超えた先にある村が、今回依頼人の目的の場所であった。

 行く道中は互いにまだ心に距離があったリック達。

 唯一互いの繋がりとなる架け橋はプルンただ一人。

 彼女は道中、気まずい空気を作り出すことも無く、上手く話のキャッチボールの中継をこなしてくれていた。

 馬車を守る護衛は、前をリックとリッケ、後衛をリッコとローゼ、他の四人は戦闘に応じて攻めと守りのポジションをとる位置を取っていた。

 護衛の初日は他の護衛で守られている商人などが間隔を開けて同じ道を進んでいた事もあり、無事に最初の街へとたどり着き、依頼人が馬車の荷物を送り届けることができていた。

 

 しかし、二日目の山越えは思わぬ肉体労働。

 新たに積み込んだ荷物が重く、馬車が地面に足を取られてしまい、車輪が動かなくなってしまった。

 馬車を捨てるわけにも行かないので、そこは皆の力を合わせて何とか山を越すことに。

 辿り着いた村で一泊し、朝日が登る前と村を出発。この時点で護衛依頼は終了となるので、馬車では通れなかった川沿いの道を通りつつ、ライアングルの街へと帰ることに。

 その道中、ウッドランクであるトトとミミの採取依頼もこなす効率の良い帰り道となった。

 トトとミミの採取はヒエヒエ草の採取依頼。

 プルンとリック達が出会うきっかけとなった依頼だけに、皆はその時あったトラブルを談笑混じりに話していた。

 オーガの事は伏せられていたが、リックがさらりとその事を暴露してしまったのでローゼ達にもその時の戦闘を話すことになってしまった。

 だが、今更ミツの強さに驚く者も少なく、それもまた笑い話となり皆でヒエヒエ草の採取を済ませ帰ることに。

 この場にいなくても印象の大きい少年の姿。

 移動の際も、食事中でも寝る時でも。

 話題に出るのはミツを中心とした話ばかり。

 彼らにかけられた能力上昇系のスキルは既に効果を失っていたが、彼の話をすれば、仲間たちは少年に守られている気持ちになっていた。

 護衛依頼と採取依頼、共に無事に終わったことに安堵していたが、ここでトラブルが発生した。

 やはり来たかと、皆は武器を構え、林の中から出てきた猪の様なモンスターと戦うことになった。

 結果は前衛であるリックとトトが少し怪我をする程度で他の皆は無事であった。

 いや、彼女達の今の姿を見たら無事と言う言葉は違うのかもしれない。

 猪の様なモンスターがトトの攻撃を跳ね除け、後衛であるローゼとミミへと突進攻撃を仕掛け走り出した時だった。

 ローゼは咄嗟に手に持つアーバレストで矢を放つ。

 飛んだ矢はモンスターの肩に刺さるが敵が止まらない。

 ローゼはミミを守ろうと自身の身体を盾のように前へと出す。

 だが、二人を守るように先に立った人物、それはリック。

 ガツンと激しい鉄を殴りつけたような音。

 モンスターがリックの持つ盾に打つかり、少しだけ敵が仰け反るが相手は怯まない。

 リックを盾ごと吹き飛ばそうと、また突進を仕掛けてきた。

 ローゼはまたアーバレストに矢を取り付け、近距離での射撃を行う。

 矢はモンスターの目元に刺さり相手を怯ませることができた。

 ここがチャンスと、リッケは剣を構えモンスターの胴体へと剣の先をズブリと深く突き刺す。

 まだ暴れるモンスターへと、ミーシャは〈アイスランス〉である氷槍をモンスターへと突き刺し、リッコの〈ライトニング〉が氷槍を通してモンスターへと大ダメージを与え倒すことができた。

 足場が水辺に近かったこともあり地面は泥だらけ。

 モンスターがリックに体当たりした時、蹴りだした足で土を蹴り飛ばし、暴れる際も周囲に泥をバラまいていたモンスター。

 リックは飛んでくる泥などを、盾で自身と後ろにいるローゼとミミを守ったが、周囲は衣服や体を泥に汚し、リッコが最悪と口走る程に彼女達は散々な目にあっていた。

 思わぬモンスターとの遭遇。

 リック達はミツの様にアイテムボックスは持っていない。なので最低限のモンスターの部位と皮や牙などの素材となる物を回収し、夕方にはライアングルの街へと到着していた。


「リック達もギルドに依頼の報告と手に入れた素材の引き渡しが終われば、真っ直ぐにここに来るでしょうね。それより行きましょう。プルン、身体を洗う用の布借りて来て」


「あー。リッコさん、布ならここにあるわよ。でも、今日は人が多いから人数分は借りれなかったわ」


 ローゼの言うとおり。彼女の手には二枚の布しか握られていなかった。

 今日は利用客も多く、タオル等の消耗が早かったようだ。


「あら。なら皆で使い回すしかないわね」


「ウチは汚れてるから後でいいニャ」

 

 身体を洗う石鹸等は大量に置かれている。

 これだけでも彼女達にとっては運が良かったのかもしれない。


 皆が揃ったということで、浴室へと入る。

 すると数日前と違って床や壁、またささくれが出ていた柱や休むためのベンチ。

 全てがピカピカに磨かれ、触れても怪我をすることのない程にツルツルに磨かれている。

 床は自身の姿を映し出すほどに、浴室内は外から入る光で輝き、女性達はおーおーと感嘆の声を洩らしていた。


「うわっ!? お湯が綺麗。凄い、全然お風呂場も泥臭くないわね」


「ピカピカニャ〜。あっ、リッコ! あっちが空いたニャ」


 リッコは流れる湯の透明度に驚き、浴槽の中に溜まったお湯を遠目に見ていた。

 湯を張り替える時は利用者数もふえるのだが、この湯が暫く続くとなると、明日以降もここは人で混み合うかもしれない。


「プハー! お湯だけでも気持ちいいニャ〜」


 身体を洗う場所は全て壁沿いに取り付けられている。

 水道のパイプライン等の複雑なものが無いこの世界。

 まるで流しそうめんのように、上から下へと目の前に流れるお湯を桶ですくい上げ、お湯を浴びる仕組みとなっている。 

 流れるお湯は40度前後と人の肌には丁度いいのかもしれない。

 プルンは頭からお湯をかぶり、体についた泥汚れを流していく。

 ポタポタと彼女の肌から滴り落ちる水は、排水路へと流れていく。

 お湯で落ちる汚れはあるが、やはり新しいお湯を張った湯船に入りたくなったのか、髪の毛や背中についた汚れを早く落としたくなったのだろう。

 プルンは周囲をキョロキョロと見渡した後、黙々と掃除をしている人物へと目を向けた。

 

「ニャ! リッコ、ミーシャ。あの人に背中を流してもらうニャ」


 この臨時に展開されているお風呂場では浴室内での商売が行われている。

 水を販売する者、食べ物売る者と様々に。

 今プルンが言っている人物の様に、お客の背中や頭を洗ってくれる三助の様な人物もいる。

 通常、三助とは男性を示す言葉なのだが、女風呂には女性の三助的な人が数人働いている。

 しかし、今日は頼む人も多いのか、手の空いている人が目の前の人物しかいなかった。 

 三助など使わずに、背中や頭ぐらい自身で洗えと思うだろう。

 だが、それもこの世界の文化としていつの間にか根付いた事なので、態々深く突っ込むこともあるまい。

 背中流しは銅貨1枚と安値の為に庶民としては頼みやすい金額。


「ええっ? ああ、あの人ね。まあ、臨時的に少しだけお財布も膨らんだし、私は良いけど?」


「私もお願いするわ〜」


 プルンは手首に取り付けている小さな袋から、銅貨三枚を取り出す。


「なら三人分ニャ。お姉さん、こっち頼むニャ〜」


「……」


 プルンが周囲に聞こえるほどの声を出すが、掃除をしている人は掃除をする手を止めず、黙々と人が使った洗い場を洗い続けていた。

 声が聞こえなかったのかと思い、プルンは銅貨数枚を彼の前に見せる様に前に立つ。

 すると彼はビクリと大きく反応を見せ、慌てるようにキョロキョロと周囲を見渡した後に自身へと指を指す。


「そうニャ。三人分の背中流しお願いするニャ」


「……」


「あっ。ウチら布が無いからお姉さんの持ってるやつで頼むニャ」


「……」


 まったく言葉を発しない相手に、プルンはきっとこの人は喋ることが苦手なのだろうと勝手に解釈し、身振り手振りで自身の身体を洗うモーションを相手に見せる。

 すると相手は自身の手で顔を隠すように抑え、コクリと頷き返してくれる。

 

「じゃ、頼むニャ〜」


 身体を洗う為に背を向ける三人。

 その背後に石鹸の入った桶をもってくる。

 モコモコと泡をたたせ、先にプルンの背中が洗われていく。


「ニャ〜。気持ちいニャ〜」


 ゴシゴシと洗われてる背中の気持ちよさに少し甘い声を漏らすプルン。

 彼女の声にビクリと反応を出す三助の人だが、プルンが振り返ると直ぐに洗うのを続ける。


「あー。そこそこ。そこニャ。うひぃ〜。背中の痛みもなんだか癒やされている気分になるニャ〜。あっ、お姉さん、ついでに頭も頼むニャ」


「!?」


 彼女は頭も洗って欲しいと正面を向き、少し頭を下げる。

 三助の人物は手が小刻みに震え出し、何故か少し前かがみになり、洗う手を止めてしまった。

 どうしたのかと彼女が顔を上げると、対面する人物との身長の差がありすぎて、頭が洗いにくいのだろとプルンは思ったのだろう。

 彼女は待ってと言葉に出し、掌を相手に向けた。

 どうしたのかと思っていると、プルンは休憩用のベンチを持ってきて、彼女は仰向けに寝て自身の頭に指を差してきた。

 なるほどと納得したリッコとミーシャだが、三助の人はその光景に固まっていた。

 

「お姉さんが頭を洗っている間に、前は自分で洗うニャ。タオル貸して欲しいニャ」


 彼女はそうお願いすると、差し出されたタオルを受け取り、自身の胸やお腹を洗っていく。

 すると彼女は驚いた。

 三助の人から受け取った布はまるで泡立ちも良く、肌触りも滑らかなボール状になった布であった。

 言葉では伝わりにくいので、この布をボディウォッシュボールと例えよう。ってか思いっきりボディウォッシュボールだ。


 これはどういった原理でこんな形になっているか気になったが、自身で身体を洗う心地よさと、いつの間にか洗われていた頭の気持ちよさに、彼女の口から甘い声が漏れ出していた。

 

「ニャ〜。お姉さん上手いニャ〜。髪を洗いながらマッサージニャンてサービスがいいニャ」


 ボディウォッシュボールを受け取り、ヘッドスパを受けながらとろける顔をしているプルンをみていたリッコとミーシャ。

 二人もプルンの持つ布と彼女の頭を洗う光景を興味津々と、近くでマジマジと見ている。

 時折プルンの顔にミーシャの豊満な胸が当たりそうになる程に揺れるが、彼女の興味は三助がおこなっている髪の洗い方だった。

 ただ単にゴシゴシと髪を洗うのではなく、肌に傷をつけない様に優しくもみ洗いをしている。

 時々ピタリと動きを止めるのはそれも洗い方の一つなのではと彼女は考えていた。

 身体を洗い終わり、頭もスッキリとしたプルン。

 リッコとミーシャも先程まで背中だけのつもりだったが、先程プルンが体験した気持ちよさに心動かされたのだろう。

 背中流しだけではなく、頭も同じように洗ってくれと頼んでいる。

  

「あっ……良いかも……。はあ〜、気持ちいいわね……」


 リッコの背中が流された後、プルンが持ってきたベンチへと彼女も仰向け状態になる。

 同じように前は自身で洗い、頭はマッサージも含めて三助の人が洗っていく。

 

「これ、良いわね……。新作の布かな? 何処で売ってるのかしら?」


 リッコがボディウォッシュボールをみていると、それをプルンが取り、ワシャワシャと泡を立てていく。

 ニヤリと笑みを見せたプルンをリッコは止めることができなかった。


「リッコ、ウチが洗ってやるニャ!」


「えっ!? ちょっとプルン、待って! まって……あははははっ。く、くすぐったい! あはははははっ」


「ゴシゴシニャ〜、ゴシゴシっとニャ〜」


「ふふ。リッコちゃんの肌はピチピチね〜」


「ちょっ!? ミーシャ、あなたは何処を触ってるのよ! プルンも洗うなら普通に洗って。あはははっ!」


 身体を洗いつつ遊び始める彼女達。

 それを止めたのが先に身体を洗い終わったローゼだった。


「二人とも止めなさい。まったく、リッコさんが苦しがってるでしょ」


「はあ……はあ……。た。助かったわ。……危うく漏らすところだった……。うっ……少し出ちゃったかも……」


 リッコはザバッとお湯を自身とベンチにかけ、泡をお湯で洗い流す。

 フンッと彼女が鼻を鳴らすと、何でベンチにもお湯を流したのかとプルンが聞くと、リッコは顔を赤くして次に使うミーシャの為よと告げた。

 リッコの本心も知らずと、ミーシャはありがとうとベンチに座る。

 彼女が背中を流されると、プルンやミーシャとは違ったまた色っぽい声が彼女の口から漏れる。

 三助の人も困ったのか、先程よりも背中を洗うのが早く終わった気がする。

 

「んー。ついでだから、私は前もお願いするわ。身体を洗ってもらうのって、楽なのよね〜」


 ミーシャがベンチに仰向けになり、そう言葉を三助の人へと告げると彼は大きくビクッと反応を示す。

 それは彼女が仰向けになっても型くずれを起こさなかったハリのある胸が原因なのかは定かではない。

 

「チっ……」


「饅頭が食べたくなってきたニャ……」


 彼女の胸を見たリッコとプルン、二人の反応はまた違ったようだ。

 しかし、やはり前は自身で洗ってくれと思っているのか、フルフルと強く首を振る三助の人。

 ならばと先程の仕返しとリッコが不敵な笑みを見せ、ワシャワシャとボディウォッシュボールを泡だてる。

 ミーシャはヤバイと思ったが、その反応は遅かった。

 足をガシっとプルンに抑えられ、ゴシゴシとリッコがミーシャの身体を洗い出したのだ。

 泡の隙間から見え隠れするミーシャの胸部に視線をそむけながら、笑い暴れるミーシャの頭を洗い出す三助だった。


「サッパリしたニャ〜」


「はあ、なんか無駄に疲れたわ」


「も〜。リッコちゃんたら……。ずっと私の胸ばっかり洗うんだもの。少し先端がヒリヒリしちゃったわよ」


「フンッ、あなたの身体を洗うのに、そこが一番私にとっては邪魔だったのよ」


「ニャハハハ。さっ、お風呂につかるニャ。身体洗ってくれてありがとうニャ〜」


 ヒラヒラと軽く手を振り浴槽へと行く彼女達に、頭を下げたまま、ペコリと器用に頷き返す三助だった。


「ふ〜。気持ちいいニャ〜。こんな気持ちいいお湯久し振りニャ〜」


 浴槽に浸かると同時に、プルンの口からオヤジのようなセリフが出てくる。

 だが、彼女の気持ちも分かると、共に入浴する四人人の口からも吐息が漏れ出していた。


「なに? プルンの家にお風呂でもあるの?」


「ニャ? うん。ミツが井戸を教会に作ったあと、小さなお風呂場も作ってくれたニャ。でも、お湯を沸かすのが面倒くさいからまだ数回しか使ってないニャ」


「つ、作ったって。……彼、冒険者よね?」


「フンッ。贅沢ね〜。家にお風呂だなんて。私の家なんて大きな盥に私かお母さんがお湯を沸かした奴しかないわよ」


「普通はそんな物よ。リッコちゃんはまだいいじゃない。わたしはリッコちゃんと違って火の魔法が使えないから、お湯を沸かすのも大変なのよ〜」


「でも、私が火の魔法使えるからって、いつも私を火種扱いのように親は呼ぶのよ。もう、自分でも火の魔法使える癖に、何が貴女の起こす火は火力があって助かるのよって言うのよ」


「ニャハハハ」


「フフフッ」


「私はミーシャの水魔法が羨ましいわ……」


「あらっ? どうして?」


「だって、冬場とか寒い時期に井戸の水汲みしなくて済むじゃない!」


「それを言ったら、私が魔法を使えたら、絶対土魔法がいいと思うわ。冷たい風を土壁で防げるじゃない」


「あー。分かる。せっかく部屋を薪に火をつけて暖めてるのに、隙間風ってたちが悪いわよね」


「そうそう!」


「な、なら。ミツさんはその問題を一人で片付けちゃいますね」


「「「……」」」


「確かにそうニャ。ミツは自分でお風呂に水を満たして、火を付けてお湯を沸かせるニャ。隙間風も土壁を出すなり、壁を修理すれば問題ないニャ」


「あいつ、日常生活でもズルいわね……。今度から冒険中の火起こしはミツにやらせようかしら?」


「「「アハハハハッ」」」


 一度苦労を共にした事に、彼女達の心の壁はいつの間にか消えていた。

 その際、笑いのネタとして使われるのがミツであるが、彼女達はそれが当たり前と笑いあっていた。


 さて。プルン達がフリフリとお尻を振りながら洗い場から去った後であるが、彼はプルンが持って来てしまったベンチを片付けようと踵を返すと、そこに既に次の人が座っていた。


「あっ。次、私をたのむよ」


「……」


 そこには掃除を終わらせて帰ったはずのヘキドナが裸状態にベンチに腰掛けていた。 

 戸惑う三助の人のお尻にパチンッと衝撃が走る 

「その次は私お願いね〜」


 先程とは違い、鍛えられ引き締まった身体、綺麗に実った果実が目の前でふるふると揺れ動く。

 マネとシューは何処に行ったのかは分からないが、三助としていま彼女たちの背中を流そうとしているミツの視点に戻して続きの話をしようと思う。

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