第58話 武道大会の申し込みへ。


 防具屋前、そこには買い物に疲れそして呆れ呆然と立ち尽くす五人がいた。


「はぁ〜」


「何よ」


「いや、俺もだけど……お前らもあの店員にやられたんだなと思ったらな」


「あはは……」


 弟妹である二人が持つネックレスと鍋を見ながら深いため息しか出せないリックだった。



「フンッ。ミツ、この鍋アンタのボックスに入れといて。何だったら使っても良いわよ」


「うん、解った。またお昼作る時があれば使わせてもらうよ」


「これで2つめニャ」


「んっ?」


 プルンの言葉に疑問を持ちながら自分の買った鍋と同じ物を手渡すリッコ。

 後に同じ物を既に購入しアイテムボックスの中にある事を知るのだった。



「そう言えばリッケ、お前武道大会出るなら登録に行かないとな」


「そうなんですよ。予選の登録に僕はこれから行ってきますので、また少し皆と別行動になります」


「んっ? 武道大会のエントリーって当日じゃ駄目なの?」


「ニャ?」


「えっ!? まさかアンタも出るの?」


 武道大会出場を流れで決まってしまったリッケ。

 自分も元々出場するのは創造神たるシャロット様から神託? いや指示?

命令? 取り敢えず受けているので決めていたのでリッケの申込みと言う言葉に疑問を返すと、出場する事を知らなかった三人からの驚きの視線を受けた。



「リッコ、ミツ君の実力なら出てもおかしくは無いと思いますよ。先程父さんから聞いてきたんですが、大会当日だと人数が多い場合は参加できないこともあるそうです。ですので前もって登録しといた方が良いそうですよ」


「んー、まーそれもそうね。この街だけじゃなくて他の場所からいろんな人が来るんですもの」


「そうなんだ。なら自分もリッケと一緒に申し込みに行こうかな」


「おう、そうしとけ。ってかお前は出るなら先に言えよな」


「ニャハハ、ウチもこの間聞いたばかりニャよ」


「は〜、なら皆で大会場まで行ってみるか。確かあそこの入り口で受付やってるはずだぜ」


 リックが発案をだすと、プルンは何処かに行きたいのだろう。

 軽く手を上げ皆の進む足を止めた。



「あー。ウチ、新しいナイフ欲しいニャ。せっかく転職したから何か武器を新調したいニャ」


 プルンは今ナックルを着けて戦っている。

 ただ、それもスケルトンなど殴りすぎたせいか、所々破け指を通す穴の一つがひび割れを起こしていた。

 このままこれを継続して使用していくとプルンが攻撃の際に思わぬ怪我をするかもしれない。自分の使うドルクスアナックルを渡しておく事もできるが、この世界の人達の考えなのか、転職後には装備を新調する習慣があるのだろう。



「なら私が付き合ってあげる。アンタたち男三人で大会の申込みに行ってきなさいよ」


「ん〜、ではそうしますがプルンさんとリッコの二人で大丈夫ですか?」


「大丈夫大丈夫。それに女の子の買い物に男が付き合うのは無粋よ」


「へいへい、なら俺達だけで行ってくるわ」


「待ち合わせはそうですね……あの中央にある銅像前でいいですか?」


「はいはーい。さっ、プルン、行きましょう」


「解ったニャ」


 リッケの指差すのは馬に乗った騎士の銅像前。

 それを確認するとリッコはプルンの背中を押しながら、また目的とする店の方へと急ぎ足に行ってしまった。



「ありゃ〜、後に食い物の店巡る気だな」


「僕もそう思います……」


「あはは……この後も洞窟行くんだけど、大丈夫かな」


 武道大会数日であっても街では既にあちらこちらに店は出ている。

 地面に商品を並べて即席の露店を出す人、または仮設のお店を作り出店として商売をする人。日本ではフリーマーケットに出される店を露店、縁日などの屋台を使う店を出店と言うそうだ。

今ライアングルの街は少しずつ一時期とはいえ商売の街となっていた。


∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴


 街の中央から人混みを進み少しずつ周りの人柄が変わって行くのを楽しみながら武道大会に使われる大会場までたどり着いた。

 この世界に重機などは勿論無いが、外壁は大きく、魔法のあるこの世界だからこそできる様なドーナツ型を綺麗に作り上げた闘技場がドドンッと建設されていた。

 残念ながらまだ中には入れないみたいなので大会当日を楽しみにしとく事とした。




「結構並んでますね」


「いや、多すぎだろ……」


「武道大会っていつもこんな感じなの?」


 申込みの為と大会場へと来たのだが受付からズラーッと並ぶ人々の数々。人族の冒険者だけではなく亜人や騎士、先程あったライムと同じ鬼人族等など幅広く列を作り並んでいた。



「どうだろうな? 俺も参加したことないからわかんねえわ」


「リックは参加しないの?」


「……」


「あれ?」


 自分の言葉に怪訝そうな目になりながらもため息1つにリックは言葉を返した。


「はぁ〜、俺は参加しねえよ。リッケみたいに親父から強制されてる訳じゃねえし、それに買ったばかりの防具を駄目にもしたくねえし」


「そっ、そうだね……」


 リックの言葉にポリポリと頬をかきながら納得するしかなかった二人だった。

 ゆっくりとだが並ぶ列も進みもう少しと思っていると、自分達の立つ後ろから興味深い話し声が聞こえてきた。



「なぁ、今回の大会には王都から巫女様がいらっしゃるって噂聞いたか」


「ああ、何でも去年もいらっしゃった第三王子と一緒にご訪問して下さるとか」


(巫女様? 巫女って聞くと神社しか思い浮かばないな〜)


「しかもよ、その巫女様が新しく最近巫女を引き継いだらしんだよ。更によ、若くてメチャクチャ美人だとよ」


「まじかよ!? ガキの頃に見た婆さんの巫女じゃねえのか!?」


「お前、何年前の話しをしてるんだよ?」


「いや、だって王都なんてそんな簡単に行けるところじゃねえし……」


「まあそうだな。それよりよ本題はこれからだ。これは噂だけどな、今回の大会で実力を見せた奴は王都、その巫女様の近衛兵になれるってよ!」


「何だそりゃ! 王都で働けるだけじゃなくて美人巫女様の近衛兵にかよ。は〜、将来安泰じゃねーか」


 二人の声を聞いたのか周りの並ぶ人々も、ソワソワと自身の得物を握りしめたりと、やる気を出したりと皆思うことはあるようだ。



「巫女様ね……」


「んっ? どうしたミツ」


「いや、後ろで話してる人たちの内容がね」


「巫女様ですか? 僕も見たことないのでどんな人か気になりますね」


「まあ、美人って言うくらいだしな。俺も顔くらいは見てみたいかな」


 二人も話を聞いていたようだ。だがリックが喰いついたのは美人と言う言葉だけの様だった。


「もしかしてさっきの内容で今回の大会出場者がこんなに多いのかな?」


「あー、なるほど。大会で実力を見せた者ですから、必ずしも優勝者って訳ではないですからね」


「出れば誰にでも近衛兵になるチャンスがあるって事か」


 並ぶ事また半刻程、時折並ぶ列で喧嘩や怒声の声が響いていたが、問題がよく起きる場所だけに近くに衛兵などのいたのか直ぐに沈静され、また待つ間に商人が飲み物や食べ物を駅弁状に販売を行ってきたりと、そんな事もあり暇を持て余す事もなかったのであっさりと自分達の順番が来た。



「次の方どうぞ」


「おっ、呼ばれたな、二人ともちゃっちゃと申し込んで来い」


「はい。ではミツ、君行きましょうか」


「うん」


 仮設テントから大会関係の人が声をかけてきた。

 中は外からは見えないように動物の革をなめした布で隠されている。

 リックは参加はしないということなので外で待つことに、自分とリッケ二人が中に入るとそこにはお爺さんと先程呼び声を出した男性の二人が机の前に立っていた。



「二人お願いします」


「はいはい、お二人ですね。冒険者カードとこちらの判別晶に表示されたジョブをこちらの紙にご記入下さい。また大会での負傷は自己責任となりますので参加される際はその事もご理解の上こちらの承諾書にもご記入下さい」


 指示された先には羊皮紙と判別晶が置かれていた。

 記入する場所と判別晶は別々のテーブルに置かれていたので、効率良く自分が記入からリッケは判別晶から使う事になった。


「ミツ君、先に僕が判別晶使いますね」


「どうぞ〜」


 リッケがテーブルの上に置かれた判別晶の前にたち、恐る恐ると手を触れた。先程セーフエリアにて既に森羅の鏡にて【クレリック】から【ソードマン】に転職をしたリッケ。兄や妹見体にスキルでは自身の代わり映えが解らなかった為に未だに自身がちゃんと転職ができているのか不安でもあったのだろう。

 手を触れ判別晶が表示した【ソードマン】の文字を確認すると嬉しそうにこちらに笑顔を向けてきた。うん、別に良いんだけどいきなり自分に笑顔を向けたリッケを見て、受付の人が自分達の関係を怪しむ様にこっち見てるからそこまで見なくても良いんだよ。その笑顔はマネにでも向けてあげなさい。



「はい、貴方は【ソードマン】ですね。戦闘職ですが貴方はまだブロンズでお若い。無理せず戦い無理だと思ったなら直ぐに降参しなさい。腕試しは結構ですが大会で将来を潰す事はしないように」


「はい、ありがとうございます!」


 リッケがまだブロンズランクであり【ソードマン】と言う正に駆出しであるために、受付のお爺さんは厳しくも、またリッケの将来を思って言葉を続けて言い聞かせていた。


「では次に君ですね」


「はい、登録お願いします」


「えーと、これは間違いなく君のギルドカードでしょうか?」


「はい、間違いなく自分のです」


「はぁ……少々お待ちください」


 自分のアイアンランクの冒険者カードを受け取ったお爺さん。それが自身の物であることを確認すると一言残してテントの外へと出ていってしまった。

 残された受付のお兄さんもテーブルに置かれた自分のギルドカードを見ながら自分の顔をチラチラと怪訝そうな表情を浮かべて見ていた。


「あれ?」


「どうしたんでしょうか」


(まあ、洞窟でもあったけど直ぐには信じられないよね)


 そして少し時間をおいて、2〜3分程立ってからテントに受付のお爺さんが戻ってきた。

 そして、別に一人の人物がテント内にへと入ってきた。



「失礼……あら?」


「あれ」


「奇遇ね。二人も大会に出るのね」


「はい、お久しぶりですエンリエッタさん」


 テント内に入ってきたのは冒険者ギルド、副ギルドマスターのエンリエッタだった。

 冒険者ギルドも今回の武道大会にはギルドスタッフを臨時として借り出されている状態であるために、たまたま大会関係の話し合いと近くにいるエンリエッタをお爺さんが確認の為と連れてきたようだ。


「お忙しい中申し訳ございませんエンリエッタ様、この少年の提示したギルドカードの確認をお願いしたく」


「少年の? ええ、この子が持つギルドカードは私が承認して渡したものに間違いありませんよ。それと判別晶はまだ使ってないみたいですので、私も確認します。それは問題ありませんね?」


 エンリエッタの証言にてギルドカードは確かに自分の物だと確認が取れた。

 冒険者ギルドの副ギルドマスターからの言葉だ、これ程の承認の言葉は無いだろう。

 エンリエッタは自分が判別晶をまだ使っていないことに少しホッと息をもらし、自身も判別晶に表示されるジョブを確認することを伝えてきた。


「はい、それは問題ありません。ただ私達も審査員であり審判でもあります、不正防止に数名この少年の判別晶を確認する義務がございますのでご了承を」


「ええ、少し待ってね。ちょっとミツ君、こっちにいらっしゃい」


「はい?」


 一言受付の二人へと言葉を飛ばすエンリエッタ。すると自分の腕を掴みテントの端の方へと引っ張って行くと。



「あなた、今何のジョブになってるの?」


「えーっと、今は料理人ですね」


「えっ? 料理人? あなた冒険者辞めるの?」


 エンリエッタの質問は今自分の登録しているジョブだった。自分が判別晶を使わずともジョブを変更できることを知っているエンリエッタは恐る恐ると質問してきた。

〈偽造職〉にセットされたジョブ、今は【料理人】であることを伝えると、えっ?、っとした顔に驚くエンリエッタ。



「いや違いますよ! ほら、休憩の時とかご飯美味しい方がいいじゃないですか。皆と洞窟に入ったときに思ったんですよ、料理人のジョブって便利なんじゃないかなーって」


「そう……。なら良いわ」


 訝しげな顔のまま納得の言葉を残すエンリエッタ。しかし、エンリエッタは突然自分の頬を片手で摘むとまた顔を近づけてきた。


「ふぁ!?」


「ミツ君、あなた私が言ったこともう忘れたの? 冒険者ギルド以外では判別晶を使わないようにって」


 エンリエッタは笑ってない笑顔のままに、摘んだ指をうにうに動かしてきた。


「あ〜、ふぉめんなしゃい、すっはっりわふれてましゅた」


※あー、ごめんなさい、すっかり忘れてました。


「まったく……」


 はぁ〜、と溜め息まじりにつねった手を放すエンリエッタ。

 

 以前、ジョブを変更後は必ず知らせに来なさいと言う言葉をエンリエッタに通達されていたが、すっかりとその言葉を頭の中から忘れていた為に、テント内にある判別晶を躊躇いなく使おうとしたことにエンリエッタのお怒りを食らってしまったのだ。

 まあ、美人のエンリエッタから頬をつまられるとか一部の人ならただのご褒美なんだろう。



「おまたせしました。君、判別晶に触っても良いわよ」


「は、はぁ……」


 踵を返したエンリエッタに先程の自分とのやり取りを言葉を出すことなく見ていたお爺さんは、どうぞと判別晶を前に出してきた。


「はい」


「【料理人】……ですか……」


「えーっと。はい、料理人です」


 判別晶に表示されたのは〈偽造職〉にセットした【料理人】で間違いなかった。

 それを見た自分を除くその場の四人は、驚きと呆れと疑問的な表情を皆浮かべ、三者三様に皆は判別晶に表示されたジョブと自分を見比べていた。



「本当に出場されるんですか? 料理対決ではなくて戦闘での武闘大会ですよ? 舞踏大会でもないんですよ?」


「はい、大丈夫です。危なかったら直ぐに降参しますから」


「……解りました。ではこちらにお名前を」


「はい、これで貴方の受付を完了とします」


 出された羊皮紙に今のジョブと名前を記入ご、受付のお兄さんに返すと武道大会の申込みが終わった。



「よし。リッケ、行こうか」


「は、はい……」


「あっ、後エンリエッタさん」


「んっ? 何かしら」


 テントを後にしようとした時、丁度エンリエッタが居るのだからと足を止め質問をしてみた。


「洞窟での素材をそちらに持っていっても買い取りとかしていただけますか?」


「洞窟って、試しの洞窟かしら?」


「はい」


「ええ、大丈夫よ。むしろ歓迎するわ」


「良かった、後ですね……」


「失礼します! 冒険者ギルドの方はいらっしゃいますか!」


 言葉を続けようとしたが突如と入ってきた大会関係の人だろうか? 慌てたように冒険者ギルドのスタッフを呼びにテントへと駆け込んできた。


「どうされました?」


「あっ、エンリエッタ様! 良かった。実は冒険者同士で問題がありまして! 私達では手に負えません、どうか」


「解りました、直ぐに行きます」


「お願いします!」


 何か問題があったのか? 冒険者同士のいざこざなどは大会では日常茶飯事なのだが、それでもやはり冒険者ギルドのスタッフでしか解決できない案件も出てくる。エンリエッタはテントに入ってきた関係者と共に急ぎテントを出ていってしまった。


「あっ……まぁ、急ぎじゃ仕方ないか」


 洞窟内5階層で見つけた三人の女性の遺体、それも一緒に持っていくことを伝えようとしたのだがタイミングが悪かった。



「おまたせリック」


「おう、大丈夫だったか? さっきテントの中にエンリさんが入っていったと思ったら、また急いだ感じに出ていったのを見たけどよ?」


「大丈夫大丈夫、むしろエンリエッタさんが出場の手助けしてくれたんだよ」


「そっそうか、なら良かった。んっ? どうしたリッケ?」


「いえ、ミツ君の今のジョブを聞いて少し驚いてまして」


 テント内で自分が判別晶を使った後、リッケは唖然とした表情のまま固まっていた。


「……おいミツ、お前今何のジョブになってるんだ?」


「んっ? 料理人だよ」


「料理人か……。何でだよ!」


 バシッと両手を自分の肩を掴むように置くと、また自分のジョブを聞いてノリツッコミを入れてくるリック。彼は今日、後何回ツッコミを入れるんだろう。



「まぁまぁ、理由は後で話すからさ。急いで戻ろうよ」


「そうですね。待ち時間とかでかなり時間取られましたから、もうリッコ達が待ってるかもしれません」


「そうだな、早く戻らねえとあいつらがまた五月蝿いからなー」


「ならゲートで戻ろうか」


「おっ! いいな、人混み通るのも時間かかるしな」


「ははっ、何だかズルしてる気分ですけど僕も賛成します」


「じゃ、出すよ」


「待て待て待て待て!」


「ストップ! ストップですミツ君!」


「えっ? えっ? 何? どうしたの二人とも」


 移動する為にと〈トリップゲート〉を発動させようと手をかざした途端、言葉を聞いた二人は後ろから急ぎ自分の腕を掴み止めた。



「莫迦か! あんなもんここで出してみろ、人目につきすぎて問題になるわ!」


「そうですよミツ君! せめて場所を変えましょう」


「おっと、そりゃそうだね。あははゴメンゴメン」


「「はぁ〜」」


 ユイシスからこの世界では〈トリップゲート〉を使う人物は確かにいる。

 だが、それはその辺にいる人が使える訳ではない。

 突然ゲートなどを出したら、リックの言ったとおり騒ぎになるだろう。


 武道大会会場、その場へと凄い足の速さを出しながら一人の人物が近づいてくる。



「シシッ! オラオラ、シュー様のお通りだシ」


「おやおや、元気な子だね〜」


「お嬢ちゃん、そんなに急ぐと人にぶつかるからね。気おつけなよ」


「子供扱いするなシ!」


 ヘキドナの頼みを聞き、ライアングルの街へと到着後直ぐにとここまで走ってきたシュー。

 小柄な体型を活かし、混み合う町中を人にぶつかることも無く会場までたどり着くことができた。


「おや? ヘキドナさんところの嬢ちゃんじゃねーか。今日はどうしたんだい?」


「オヤジ、アネさんから頼まれて出場者のリスト貰いに来たし。後嬢ちゃん言うなシ」


「ガッハハハ、偉いな嬢ちゃん。でだ、これが今のところ申し込みに来た出場者の一覧だぜ嬢ちゃん」



「おー、オヤジ助かるシ! 後嬢ちゃん言うなシ」


「ヘキドナさん達皆で出るんだろ? 怪我の無いように気をつけろよ嬢ちゃん」


「へっ! アネさんもだけどあたい達を舐めるなシ! 後嬢ちゃん言うなシ」


 シューは以前貰った出場者リストと照らし合わせ、新しく増えた選手を見ていた。


「ん〜……。それ程凄いやつが入ったとは思わないシ。アネさんの感も適当だシ」


「どうした嬢ちゃん?」


「オヤジ、あたいが前来てからなんか強い奴申し込みに来たシ?」


「おう、それならな。これとこれと後この選手だな」


「っん? ラクシュミリア、バローリア、ティスタニア?」


「ああ、どうも王都の方から来たの貴族関係の選手だな。今回も第三王子もだが他にも色々な珍客が来るみたいだからな。後、そのラクシュミリア選手は王国騎士団の人だぜ。まさかの王城からも出場者を出すとは思ってなかったからな。いや〜、俺達も聞いたときは驚いたぜ」


「へー、アネさんの言ってたことってこいつらかな? ……んっ。あれミツ? 何でいるシ?」


 受付のオヤジの話を聞きながらも、シューはフッと人気の無い方へと歩いていく三人を見つけた。

 その中に洞窟内で世話になったミツの姿を見たのだ。



「どうした嬢ちゃん?」


「んっ、何でも無いシ。これ貰っていくシ!」


「おっ、おおそりゃ構わねぇが、まだ今日の申込者分は書かれてねーぞ?」


「いいシ、これで十分だシ。じゃーなオヤジ」


「元気な子ね〜」


「子供の元気な姿は儂らの生きる糧じゃな〜」


 自身でも人違いだと思いながらも、もしかしての思いを感じ三人の歩いていった方へと急ぎ向かうシュー。

 


「ここでいいかな?」


「おう、人通りから離れたしな。もう、周りには誰もいねーよ」


「お願いしますねミツ君」


「うん、じゃ出すよ」


 二人の了承をもらい〈トリップゲート〉を発動。

 ゲートをつないだ場所はまた先程と同じくガンガの店の向いにある材木屋の横だ。

 〈トリップゲート〉に三人が通った後、直ぐにゲートはシュッと消える。

 そして時間をおかずしてシューが来るも、シューは三人の姿を確認する事はできなかった。


「あれ? 何処行ったシ? ん〜、もしかして見間違いだったシ……?」

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