第24話 お使い/ラッキースケベ
教会の屋根を修理する為に材木と釘を買い出しに出かけた先の事だった。
「確かこの裏手だったよな」
「離せ、このガキ!」
「やめて! 返して!」
「ん?」
人気は少なく周りには誰も居ない、けれど何処からか声が聞こえてきた。
「テメーには勿体無い品物だ、オレ様が使ってやるから感謝しな!」
「うわっ!」
声のする方へ行ってみるとスキンヘッドの大男が見た目子供であろう少年に乱暴を働いていた。
それはひと目で恐喝まがいごとだと言うことは直ぐに解った。流石にそのまま放っとく訳にも行かない。
「おっと、大丈夫かい君」
「んっ? 何だテメーは」
「うっ……ううっ……」
「これは酷いな。今治してあげるからね、ヒール」
争い場に駆け寄り、スキンヘッドの男に突き飛ばされた少年、その少年を倒れそうな状態を受け止めたが顔を殴られたのだろう、涙を出しながら口から少し血を出していた。
自分は直ぐに少年顔に手を当て傷口を回復する事にした。
「んっ……あっ」
「何だ、治療士か。邪魔すんな! テメーも同じ目にあいたくないならさっさと消えな」
後ろの大男が何か言っているが今は少年から事情を聞こう。
「君、どうしたの?」
「あ、あいつが父さんの形見の腕輪を……」
「そっか……」
「あ~? これはオレのだぜ~」
やはり恐喝か、少年が抵抗した事で手を出したのか、とんだクズもいたもんだ。
大男は手に持った腕輪をチラチラと見せ、自分の物だと言っているが、そんな訳が無い事ぐらい自分にも解る、と言うかここに来るまでに俺が使ってやるって自身で言ってたよね。
「嘘つくな! それは父さんの腕輪だ!」
「すみません、それをこの子に返してあげてください」
「あ~、ハッ! 治療士様がいきがるじゃねーか」
「まぁまぁ、こんな下手に人気のないところで、問題は止めましょう」
力ずくでやっても良いが、先ずは冷静に話し合いを。話だけで済ませれるならそれに越した事はない。
「ハッハッ! これはオレのだぜ~、欲しかったら力ずくで取ってみな」
「力ずくならいいんですか?」
「お、お兄ちゃん……」
「おっ? いいぜ~、なんなら1発食らってやるよ、治療士様の貧弱な攻撃が通るならな」
「そうですか」
何か段々ムカついてきた、と言うより子供に手を上げてる時点で自分の中ではこのハゲを許すつもりなんて無かったのだから。
(腹に1発でいいかな)
《注意、今のミツの本気での攻撃では相手を殺してしまいます》
(まじかよ……なら)
見た目は大男。しかし、予想以上にこの男が弱い事に怒りの次に呆れると言う感情が湧いてきた。
「どうした~? 怖くなっちゃいましたか~」
「なら歯をくいしばって下さい」
「はぁ?」
バッチン!
路地裏に響く高い音、それと同時に壁側へと飛んでいく物体。
「ぐへばっ!」
「えっ? えっ!」
スキンヘッドの男が差し出してきた顔の頬にビンタを一撃。
突然のことに殴られた本人は何が起こったのか理解できないようで起き上がってこない、少年は驚きにこちらも声が出ていない。
「さて、それはあの子のですよね?」
倒れたスキンヘッドの男に近づき〈威嚇〉のスキル発動。
〈威嚇〉スキルを、大男に向けて使うと、スキンヘッドの男の足はガクガク震えだし。頬を叩かれた事も含めてまともに喋れないのか顎が震えている。
考えたら人相手にスキルを使うのは初めてだったのでは無いだろうか。
「それ、返してもらえますか?」
「どどどうぞぞっ!」
倒れたスキンヘッドの男は手に持つ腕輪を震える手で渡し、直ぐに後ずさりして離れた。
吹き飛ばされてもそれを手放さなかったことには少し褒めてあげたい。
「どうも……。はい君、もう行っていいよ」
「うっ、うん、ありがとうお兄ちゃん!」
「いえいえ」
腕輪を取り返せた事に喜ぶ少年、手を振りながら見送る後は残ったゴミ掃除だ。
「さてと……」
「あわあわわわ」
「どうしたんですか? もしかして先程の一発で顎外れちゃいました?」
「あっ、あん、あんた、治療士じゃねーな」
「あっ、良かった喋れるみたいですね。ええ、違いますよ」
「痛えっ、くそっ!」
「そんな、勝手にあなたが言ってた事じゃないですか。それと」
自分はスキンヘッドの男に掌を向けて〈ヒール〉を一度だけ唱えた。
赤く腫れ上がった頬は先程の汚いない肌に戻り、痛みも引いてるだろう。
スキンヘッドの男は自身の頬を触り、驚きの表情でこちらを見ていた。
「くっ……。覚えてやがれ!」
「はい、忘れました」
(変な奴も居るもんだな)
もう二度とこんな事をさせない為にももう少し説教(物理)をするつもりだったのだが、スキンヘッドの男は捨て台詞を残してバタバタと逃げてしまった。
追いかける気も無かったので見送ったが、また見かけて同じことをしていたら今度はビンタを二発食らわせてやろう。
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
ミツから逃げる様にスキンヘッドの男は一軒の店に駆け込んだ。
「ヒィヒィ……」
「いらっしゃい、どうした? 血相かえて」
「とっとんでもねー奴に手を出しちまった……ハァ、ハァ」
「お前がチキンなのは皆知ってるぜ! ハハッ」
「「「ハハハハッ」」」
客は昼間から酒を飲んで陽気に騒いでる、この店の雰囲気はいつもこの様な感じだ。
「うるせぇ! 俺は相手をちゃんと見極めて仕事してるんだ!」
「見極める相手が子供や女ばかりだったな、ハハハッ!」
カウンターに座ったスキンヘッドの男。まだ震えているのかマスターが何があったのか気になり話を聞いてみた。
「でっ? 何がやばかったんだ?」
「わかんね……目が……目が合っただけで……体が震えてきやがった」
「武道大会も近いからな、出場者か何かに出くわしたんだろ。相手を選ぶなら見た目でわかるだろうに」
「いや……。見た目は13~15のガキだった」
「「「……」」」
「「「ハハハッハ!!」」」
再度酒場に沸き起こる笑い声。
「あっ、ハハッ……おっお前、お前ガキに脅されたのか!」
「くっ! オヤジ酒をくれ!」
ガキと思った相手、そんな相手に睨まれて震えている自身にも怒りがこみ上げ、更には自身から言い出したとはいえガキに一撃もらったと言う屈辱な気持ち、スキンヘッドの男は酒へと逃げるしかなかった。
「おっ、おう」
「あのガキ、絶対許さね!」
その話を店の傍らで聞いていた1つのパーティーがいた、アイアンランク冒険者チームのヘキドナ達だ。
「やれやれ、あれじゃ逆恨みもいいところじゃないか」
「アホだシ」
「フン……行くよ……」
「姉さん、待ってくださいよ」
バタン
(ガキね……)
「姉さん、今回の武道大会はガキにも注意ですね」
「あぁ。しかし、そのガキが出場するかも解らないからね」
「ウチが調べるシ?」
「そうだね、大会出場者もそろそろこの街に集まって来てるだろうし。それに……」
「それになんだシ?」
「いや、気にしないでいいよ。取り敢えず出場しそうなリスト調べときな」
(それに、もしかしたら他国から来たシルバーランク並の強者かもしれないしね……)
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
「まいどー、またよろしくね!」
「ありがとうございます」
材木売り場で一通り買い物を終わらせ、材木は全てアイテムボックスに収納する。
後は、ガンガの店へ釘を買って帰るだけだ。
「こんにちはー」
「おう、小僧じゃねーか。今日はどうした?」
一声上げると店の中にはガンガは何やら荷解きの作業をしていた。
「はい、釘を売って頂きたくて」
「釘? そんなもんお前がどうするんだ」
「はい、教会の屋根が雨漏り起こしたみたいで、修理するために。ありますか?」
「教会、そうか……。ちょっと待ってろ」
ガンガは少し考えた後、店の奥へと向かい、戻って来た時には丸々とふくれた皮袋を持ってきた。
「ほら、持っていけ」
「ありがとうございます、おいくらですか?」
「いいってことよ、持っていけ」
「えっ! こんなに、そんな事できませんよ」
ざっと見ても袋の中には200以上の釘が入っている、この世界の釘がどれくらい貴重なのかは解らないが、機械の無いこの世界で釘を作る事がどれだけ大変な事を思うとタダで貰うのも申し訳ない気分だ。
「いいから、早く持っていけ!」
「そっ、そうですか……。それなら、ありがとうございます!」
「あっ……あのよう」
ガンガに頭を下げお礼を言って、帰ろうとしたその時だった。
ガンガのボソりとした声が聞こえてきた。
「はい?」
「……エベラは元気か?」
「エベラさんですか? はい、ちゃんとご飯も食べてますので元気ですよ」
「そうか……」
そう言ったガンガの表情はホッとして何か安心した様な顔だった。
「何か伝言でもあれば伝えときますよ?」
「むっ、そうか。なら、無理すんじゃねぇ、とだけ言っといてくれや」
「解りました、お伝えしときます。釘ありがとうございます」
「小僧もじゃじゃ馬も無理すんなよ」
「プルンにも伝えときますね」
「ガッハッハ! 解ってるじゃねえか。 後、武器の素材も忘れるなよ!」
「はい! では、失礼します」
「おう!」
ガンガから釘の入った皮袋を受け取り、改めてガンガにお礼を言って教会の方へと帰ることにした。
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
「只今戻りましたー」
「おかえりニャ、少し遅かったニャ?」
「ごめん、ちょっとね」
プルンは教会の屋根の修理を始めていた。
悪い部分は削ぎ落とし、新しい板を貼る準備をしていた
「まぁ、いいニャ、早く済ませるニャ」
「おかえりなさい、お使いありがとうね」
「いえ、買い出しって言っても、行きも帰りも手ぶらですから」
「そうニャ、エベラは気にし過ぎニャ」
「もう、プルンったら」
「ははっ、あっ、そう言えばガンガさんから伝言がありますよ」
「ガンガから?」
「爺が珍しいニャ」
「無理すんなよ、だそうです」
「そう……ガンガも相変わらずね」
ガンガから受けた言葉をそのまま伝えると、エベラは嬉しそうに言葉を受け止めていた。
「あの爺、エベラには優しい癖にウチには厳しいニャ!」
「あっ、そうなんだ。そう言えば、教会修理する為にって言ったら釘もタダで貰えたよ」
「ニャ!」
「あらあら、こんなに釘を、何かお礼しなくちゃね」
アイテムボックスから出した釘の入った袋を見せると、二人は驚きプルンの顔が膨れてきた。
「爺も婆も、ニャんで皆エベラにそんな優しいニャ!」
「えーと? ギルドマスターの事?」
「そうニャ」
「うふふ、皆私の大切なお友達ですもの」
「そうだよプルン、ギルドマスターも言ってたじゃない、友達の娘を大切にするのは当たり前だって」
「あらあら、嬉しいわね」
「そのお陰でウチは何処に行っても子供扱いニャ」
「好かれてる証拠だよ」
「そうよ、あんまり困らせちゃ駄目よ」
「ニャ~、もう! 早く修理始めるニャ!」
自分の親が他の人から好かれてるのは勿論気分が良いが、納得できないプルンは釘の入った袋を受け取ると修理の為に屋根に戻っていった。
「そうだね、あっ、材木余ったのはどうする?」
「魚を干す為に新しく干し台作るニャ」
「ありがとね、二人とも」
「ニャ」
トントントン
カンカンカン
風も心地よい青空の下、日曜大工も良いものだ、トラブルもなく順調に修理を終え片付けを済ませているとエベラが屋根に上がってきた。
「二人ともお疲れ様」
「結構立派にできたね」
「材料があれば普通にできるニャ」
「ありがとうね、これで雨が降っても安心だわ」
「他に修理する所はありますか? せっかくなのでこのまま流れで修理しちゃいますよ」
「助かるわ。じゃ~、他にもお願いしちゃおうかしら」
「ミツはほんと人が良すぎるニャ」
「いいの、気にしない気にしない」
自分はそのまま教会を修理に、プルンは魚を干すための台を子供達と一緒に作っていた。
「ふ~、終わったニャ」
「おつかれ、明日はゼクスさんが迎えに来るから早めに起きないとね」
「そうニャ、ミツは起きるのが遅いからさっさと寝るニャ」
「いや、起きるのが遅い訳じゃ……。明日は大丈夫だよ」
食事も終えて、皆就寝の準備をしてあとは寝るだけだ。
「それじゃ皆、おやすみなさい」
「「「おやすみなさいー」」」
(明日は早いし今日は訓練無しで寝るかな。今朝みたいな事はもうゴメンだからね)
「あっ、武道大会の事をプルンに聞くの忘れてた……眠い……。明日でいいや」
ガバッ!
翌朝、勢いよく布団をどかし一気に目を覚まさせる、若い体だからできる事だ。
もしくはアレか、運動会とか遠足何かの行事毎にはいつも以上に目が覚める子供と同じ感覚なのかもしれない。
「良し、起きれたぞ!」
コトコトコト
早く起きたつもりでもエベラは既に朝食の準備を始めていた。ほんと、目覚ましも無いのにどうやって毎日早起きできるんだろうと不思議だ。
「おはようございます」
「おはよう、ミツさん、早いわね」
「おはーよー」
「おはようミミちゃん。ええ、プルンに朝起きれないみたいに言われたんで、意地で起きましたよ」
「うふふ、そうなの。なら、そのプルンを呼んで来てもらえるかしら」
「寝てるんですか?」
「いいえ、起きてると思うけど」
「なら、呼んできますね」
「あたしもネーネおこしいく」
コンコンッコン
朝、寝坊している妹キャラや、酔っ払ってまだ、寝ている姉キャラを起こすと言うイベントを、皆は経験したくはないか?
自分は今から猫耳の女の子を起こしに行くところだ。
「プルン、ご飯だよー」
「ネーネー、おきてー」
「んっ? ミツニャ? ミミ、ウチはちゃんと起きてるニャー」
しかし、そのイベントは相手が寝ていなければ発生しないのだ。
「何してるの、早く降りてきなよ」
「ネーネー、ゴハンだよ」
ガチャ
「あっ……」
「ちょっと待つニャ……。ニャ!?」
その時、その場の自分とプルンの時間だけが止まった。
そうか、今日はこっちのイベントが待ってたのかと一瞬にして自分は悟った。
目の前にはお尻を突き出し、今下着を履こうとしてる女の子がいる。
自分は瞬時に理解した、この後来るだろう頬の痛みを覚悟しながら、一秒でも長く目の前のラッキーを見ていよう。
だがその前に。
「ネーネーおきがえ?」
ミミの言葉で時間は動き出す。
プルンの真っ赤になった顔には少し涙を浮かべ、それでも怒った顔であるのは確かだった。
扉近くのミミを少し後ろに下げ自分は覚悟を決めてプルンの方へと顔を向けた。
その時の自分の表情はとても良い笑顔をしていたと思う。
「ニャ! ニャーー!!」
バチン!
「へぶんっ!」
昨日より痛かった……。
「プルン、あなたね……」
「今日はミツが悪いニャ!」
「ニーニ、痛い~?」
「ははっ……大丈夫だよ。まぁ今回は自分が悪かったのかもしれません」
「でも、プルンを呼んでくるように言ったのは私だし、ドア開けたのはミミなんでしょ?」
「見た時点で罪ニャ! 有罪ニャ! 極刑ニャ!」
「は~ぁ」
反省の意味も込めて頬の痛みは回復せずに食事が終わるまでそのままにしておいた。
朝食も終えて、迎えが来るまでに準備を終えて教会の前でプルンと共に待つ事にした。
ゴトゴトゴト
「ミツ、来たニャ!」
「あの馬車?」
教会の方へと向かってくる馬車は他に走っている馬車とは違い、4匹の馬を付けているので一回り大きい馬車。
飾り付けはランタンと旗しかないが、それでも気品を漂わせてるのは流石貴族の馬車だ。
馬車が目の前に止まり、降りてきたのはゼクスだった。
以前会った服装とは違い、白と黒の執事服に身を固めていた。
「おはようございます。ミツ様、プルン様、本日は当主人の招待を受けいれ頂き、誠にありがとうございます」
「ゼクスさん、おはようございます」
「おじさん、おはようニャ」
「ミツ様、プルン様、先日はボッチャまを助けていただき、誠にありがとうございます。改めてお礼を申し上げさせて頂きます」
「いえいえ、それより様は止めてくださいね」
「ウチもプルンでいいニャ」
「ホッホッホッ、ありがとうございます。お二人は本日、当主のお招きさせて頂きましたお客様でございます。フロールス家としての最高のおもてなしをさせて頂きます」
「プルン、失礼の無いようにね」
(既にゼクスさんをおじさん呼びした時点でワンストライクだよな)
「エベラママ。プルン姉にそれは無理じゃない?」
「そうだよね」
「ダネ~」
「うるさいニャ!」
「ホッホッホッ、お二人の事は我が当主にお伝えしてますのでご安心下さい」
「エベラさん、ちゃんと見ときますから心配しないで下さい」
「ミツ!」
「ホッホッホ、では参りましょう」
「「「いってらっしゃ~い」」」
「行ってくるニャ~」
ゴトゴトゴト
ゆっくりと動き出す貴族馬車。
車内も広く大人が6人は乗れるほどの広さがある。
フカフカの椅子に少し戸惑いながらも座るプルン。
その気持ちはまるで、飼っている動物に良かれと買ってあげたペット用クッションを差し出し時の落ち着きの無さだ。本人が馴れるまで待つしかないものなんだよね。
昨日乗った馬車とこれには同じ様にサスペンションやバネがないのか馬車が動くとかなり揺れている。
椅子が柔いおかげで昨日ほどにお尻は痛くならないだろう。
「ゼクスさん、ロキア君はあれから大丈夫ですか?」
「はい、ボッチャまもモンスターに襲われた事を後に引くことはなく元気に過ごしております。実はあれからロキアボッチャまが直ぐに弓を始めまして」
「えっ、弓ですか」
「ええ。ミツさんが目の前でキラービーを射抜いたのを見て、自分もやってみたいと言うことで」
「そうなんですか、少し恥ずかしいですね」
「でも、あの子ウチの弟のモントと変わらない歳のような気がするニャ?」
「はい、今年で4歳となりました」
「4歳で弓って難しくないですか?」
弓は地味に弦を引く力を必要とする。
日本で過ごしていた時にTVで見た事があるが。ゴム弓だったか、見た目はパチンコのような物で最初はそれで練習するはずだ。
「そうですね。しかし、貴族の子供は7歳から剣を学ぶのが普通でございます。早めに武術に興味を持たれた事はフロールス家としても喜ばしいことですよ」
「へ~、貴族って大変なんですね」
「はい。後、失礼ながらミツさんのアースベアーとの戦いを旦那様にお伝えしたところ、大変旦那様が興味を持たれまして」
「そうなんですか」
「まっ、ウチはその戦い見てないから何も言えないニャ。ミツの戦いはどれも唖然とする物ばかりニャ」
「そんなこと無いよ」
「ホッホッホッ、それで1つお願いがございます」
「なんですか?」
「それは、当主人がお伝えしますので」
本の物語とかの貴族なら、家に使えないかとか言ってきそうだな。その時は旅人を全面に自重して断るとしよう。
「あっ! 思い出したニャ!」
「どうされました、プルンさん?」
いきなりプルンがゼクスに向かって叫びだした、何か忘れ物でもしたのか?
「オジサン! ウチの肉買い占めたニャ!」
「肉、でございますか?」
「……あぁ、忘れてたのね」
「そうニャ、ウチが買おうと思ったら店の肉全部買い占めれられたって言ってたニャ!」
「それはそれは、失礼しました。恐らくそちらで購入した肉は本日のディナーで出す予定の物ですね。いやはや、プルンさんには不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」
「ディナー?」
「晩ごはんのことだよ」
「ニャ! ウチも食べたいニャ!」
「勿論、お二人をご招待するためのディナーでございます」
「やったニャー!」
「ホッホッホッ、喜んで頂き嬉しく思います。お二人とも間もなく到着いたしますよ」
歓迎の為に店の肉を買い占めるとは、貴族の金の使い方が凄いな。ゼクスの説明を受け気分良くしたプルンは早く着かないかと外を見ながら機嫌良さそうだ。
暫く走ると街並み見たいなお店は見なくなり、お金持ちが住んでそうな住宅街を進んでいく。
更に先へと進み、1つの家と庭を鉄と岩で囲んだ豪華な家が見えてきた。
作の周りには雇っている兵士であろうか、数メートルの間隔を置いて家を守っている。
「うわっ、凄いな」
「ニャ~」
正門から馬車が入り、左右に広がる花々が道を示すように咲き誇っている。
庭師だけでも何人も見かけた。
屋敷の前に止まる馬車、降りた前には数十人のメイドさんと執事服を着込んだ人が綺麗に整列していた。
「「「「いらっしゃいませ、ミツ様、プルン様」」」」」
「ニャ~」
「どっ、どうも」
「おに~ちゃ~ん」
「あっ、ロキア君」
「こんにちは、お兄ちゃん」
屋敷の入り口でロキアが手を降って駆け寄ってきてくれた。隣にいるゼクスさんの顔がやばいくらいにニヤニヤ顔だ。
「こんにちは、ロキア君」
「ニャ! 元気してたかニャ」
「お姉ちゃん! うん、大丈夫だよ、来てくれたんだね」
「それは良かったニャ、お招きありがとうニャ」
「ボッチャま、ミツさん、プルンさん、こちらへどうぞ」
ゼクスの案内で屋敷の中に入ると屋敷内の凄さに二人して驚きの声を上げた。
地面には絨毯が敷き詰められ素人の目でも解る程の美術品の数々。
「うわ~、広いね」
「これでも伯爵貴族としては小さい方なのですよ」
「これでかニャ!」
「はい、当主人は貴族でありながらも市民への配慮が手厚く、自身の身を飾る事を致しません。その代わりに、市民の税を軽くしたり、市民に必要な施設は積極的に建築しておられます。飾られている品も、他者からの贈り物や、ご主人様ご自身でお作りになられた物ばかりです」
「そうなんですか! 立派な人ですね」
「そうニャ、ウチの教会も助けてもらってるニャ」
そう言えば教会の税も免除してもらってるんだったな、エベラさんがプルンの失礼を心配するのも解る気がする。
少し歩くと大きな扉の前にやって来た、ゼクスが止まると扉を叩いた、どうやら到着したようだ。
コンコンッコン
「お客様をお連れいたしました」
「入りなさい」
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