第23話 塵も積もれば山となる

 いつもの様にギルドに入る二人。


 違うと言えば教会からここまで来るのにお互い一言も喋れなかったくらいだ。


「こんにちは」


「いらっしゃい、二人ともローゼさん達は今上でエンリエッタさんと話し中よ」


「丁度良かったニャ。……終わるまで待つニャ」


「そうだね……」


(ううっ……空気が重い)


「?」


「ねぇ、どうしたの? プルンなんか変よ」


「あ〜、朝少しトラブルがありまして……」


「大丈夫?」


「はい、後はプルンの機嫌が良くなるのを待つだけと言うか……」


 今は怒ってると言うかお互いに何か気まずくなっているだけだと思う。


 そうで無ければここまで歩いてくる時も普通に隣を歩く事はしないはずだ。


「そう、パーティーなんだから仲間内のトラブルは避けときなよ」


「はぁ、そうします」


「あっ! 君達来てたのね」


「こんにちはローゼさん、皆さんも」


 声のする方を見ると2階の方からローゼと他のメンバーが階段を降りてきた。


「皆さんは酷いな〜。ミーシャって名前で呼んでよ〜」


「!」


 突然背中にのしかかるミーシャ、胸の重みが最高なんですけど、ここは驚かずポーカーフェイスを維持する。


「こんにちはミーシャさん」


「はい、こんにちは」


「どっどうも、あっあの……。昨日はありがとうございます」


「ミミさんこそ昨日はお疲れ様です。昨日のミミさんカッコよかったですよ」


「そっそそそそんな! わたっ、私、私なんて」


(オドオド系の人って何だか癒やされるな)


 ミミはローゼの従姉妹。


 両親の父と母を亡くし、親戚の家に連れて行かれるところをローゼが引き取ったらしい。


 ミミの性格は通常こんな感じだがモンスターを前にしたり仲間の危険な時はまるで別人の様な働きを見せる、トトとは幼馴染だ。


「ニャ!」


「よう、昨日はお疲れ」


「こんにちはトトさん。昨日は避難誘導助かりました」


「いいって事よ。それにあの時はあれくらいしかできなかったしな」


「いえ、トトさんの避難誘導もそうですけど、昨日一般人に被害が出なかったのは皆さんのご協力あっての物ですからね」


「そ、そうか。へへへッ!」


「トト、調子乗らないの」


「なんだよ! 褒められてんだから素直に喜んじゃ行けねーのかよ!」


「最初ミツ君の誘いの言葉に噛み付いたのは誰かしら〜」


「うっ……」


「はははぁ……」


 トトは最近冒険者になったのだ。


 モンスターに対する恐怖心は勿論まだあるだろう。ミミとは昔ながらの幼馴染、ローゼとミーシャに頼み込んで同じパーティーに入ったようだ、解りやすいなトト。


「ねぇ〜ミツ君、私には無いの?」


「えっ?」


「私結構頑張ったんだよ〜、MPキツかったな〜、頑張って氷壁出してアースベアーの足止めやったんだけどな〜」


「はい、ミーシャさんのおかげでキラービーに集中する事ができましたし、避難誘導も落ち着いてできたと思います!」


「あらあら、そこまで褒めてくれるの、ならお礼を〜」


「はいはいミーシャそこまでね」


 流石にベタベタされるのは他の冒険者の視線も痛い。


 ミーシャは見た目以上に綺麗ながらスタイルが整っている。この見た目だ、他の男性冒険者からも人気があったのだろう、ローゼとは小さい頃からの姉妹のように育っているのでお互いに気が合うのだろう。


「何よ、ローゼだって褒めて欲しいんでしょ」


「私は無いわよ」


 ローゼは性格は厳しい系ではあるがミーシャと並んで容姿は美人系だ。二人だけで冒険者をしてた頃は、他のパーティーからの勧誘やナンパが酷かったのだろう、妹分と弟分のルルとトトが入る事で勧誘が減った様だ。


「えーと、ローゼさんのおかげで……」


「言わなくてもいいから」


「はい……」


 ローゼから掌を差し出されストップをかけられた。流石に今の流れで褒めたりするのはお世辞に受け取られてしまうかな。


「ところでさ、君の相棒さん? 何でこっち睨んでるの?」


「ほんとね〜、それに何が機嫌悪そうなんだけど」


 フッと言われた方を見てみるとプルンがものすごく此方を凝視していた。


 周りの冒険者の人達も怖がって少し距離を開けてるじゃないか。


「ミツ君何があったの? プルンのあんな顔初めて見たわよ」


「え〜と……実は……」


 別に隠す事でもないので朝あった出来事をそのまま伝えた。


「あっはははは」


「ぷっぷぷ……。そっそれは災難だったわね」


「プルンも女の子だもんね」


 自分の説明を聞いて笑い出す三人、内容は兎も角三人とも理解してくれたようだ。


「まぁ……睨んでる理由はわかりませんが、機嫌が悪かったのは多分朝の自分のせいかと」


「ふ〜ん……フフッ」


「ミーシャさん?」


 ガバッ!


「「「「!!!!」」」」


 ミーシャのいきなりの抱擁に周りの皆も驚きの顔だ。自分は避けることはできたが避けなかった……男だもん。


 ミーシャの溢れだす胸の谷間に顔がすっぽりと入り男としては幸せなのだが、余り長くジッとしてるのも皆に怪しまれるため仕方なく苦しむ振りだけをしといた。


「ふがっ! んん! んんん!」


「キャッ! やんっ……ウフフ」


「ニャ!」


「お〜可哀想に〜、ミツ君朝から辛かったのね〜、お姉さんが癒やしてあげるからね〜」


「あんた何やってんのよ……。それに私達とミツ君それ程歳変わらないでしょうに」


「良いじゃない〜。年下なのにあの強さよ、今のうちにツバ付けといても損はしないわよ」


「ちょっ!」


「ミーシャさん不潔ですよ!」


「ミーシャ、そろそろ放してやれよ、ミツ苦しがってるぞ」


「あら、大丈夫?」


「ぷはっ!」


(トト、タイミングナイスだ。これ以上このままだと後ろの睨んでる娘さんからの正拳突きが来そうで怖かったからな)


「ごめんねミツ君。ミーシャの言ったことは本気じゃないから気にしないでね」


「私は本気よ?」


「あんたは黙っとれ!」


「えーと、皆様、他の冒険者の方にご迷惑になりますので……」


「すみません」


「ごめんねナヅキさん」


「いえ、プルンも怖い顔してないでこっちに来なさいよ」


「……別に、怖い顔なんてしてニャいニャ」


(いや、怖いよ)


「あ〜、ミツ君、さっき上で話を聞いたんだけど、昨日の討伐したモンスターの素材報酬を分けてくれるって本当かな?」


「あっ、はい、その話もする為に今日皆さんがここに来ると聞きましたので」


「助かるわ〜、貧乏冒険者には嬉しい話よね」


「詳しい話はあっちでしましょう」


「そうですね」


 話をする為にギルドの奥にある談話場へと移動した。と言っても、大きな樽を皆で囲む形の即席場だ、だがファンタジー感出てるので自分は少し嬉しい。


「早速だけど、私達としては消耗した矢とミーシャの使った回復薬代さえ貰えればいいのよね」


「そうそう、地味にMP足りなくてね〜、貴重な青ポーション飲んじゃったのよ」


「それだけでいいんですか?」


「そうニャ、皆結構頑張ったニャ」


「頑張ったって言われてもな〜」


「わ、私達、基本足止めと避難誘導しかしてませんし……」


「でも、ローゼさんはキラービーを数匹程倒してましたよ」


「ん〜……。キラービーって、素材自体はそれ程高くないのよね……。だから欲を言わずに使った分が戻ればラッキーかな〜って」


「それによ、ローゼは最初しか手伝ってないし、残りはお前が倒してるからなー」


「むしろね、他の冒険者の証言があるから、キラービーもアースベアーも両方とも君に取得権があるのよ〜」


「そうなんですか……」


「ローゼ、ミツは元から報酬は山分けするつもりだったニャ」


「「「えっ」」」


 驚きの顔とは此の事を言うのだろう。


 ローゼの他にもミーシャとトトが驚きに声を合わせる様に出してきた。


「プルンの言う通りですよ。まず自分ら二人じゃあの人の数で被害無しなんてまず無理でしたからね」


「でっでも……。モンスターの討伐が無ければもっと被害が出てましたよ」


「ミミさんの言う通り、今回のモンスター討伐は片方のパーティーがいなければ昨日みたいな結果は無かったんですよ! 結果この素材は皆で分けるべきなんです」


「「「「……」」」」


「君は変わった子だね〜」


「そうですか?」


「そうだよ、強さを自慢しないし、報酬も独り占めしない、相手のことを優先してる」


「ニャ、ニャ」


 ローゼの言葉にプルンが頷き返している。


(日本で住んでるときも、この性格だったからな……、遠慮がちな性格は転移しても治らないか)


「なら、報酬は半分でいいですね」


「それは駄目」


「なっ!」


「せめて私が倒したキラービーのぶんだけでいいわ」


「すると……。20〜30ですか?」


「ローゼがそんなに倒せるわけ無いだろ、10〜15だろ?」


「トトうっさい!」


「おぉ、こえー」


「コホン、えーと20匹分でいいかしら。後、君から貰った矢の代金も引いて頂戴」


「いえ、矢は殆ど自分が使った様な物なので気にしないで下さい。解りました、キラービーの分はそれで。アースベアーの分は?」


「じゃ〜私から〜、さっきも言ったけど青ポーション代貰えればそれで良いわ、もしくは……」


「?」


「ニャ?」


「ミーシャ、やめときなさい」


「何よ、まだ何も言ってないでしょ!」


「プルンさんがまた機嫌悪くなるから止めときなさい」


「ニャ?……っ!」


「プルン?」


「わかったわよ、じゃ〜気持ち少しくれたらそれで大丈夫よ」


「私達は避難誘導してたので言う事はありません」


「そうだな」


「わかりました、それでは素材を売却してきます」


「時間かかりそうだな。ルル、依頼見に行こうぜ」


「うっ、うん……」


「トト、良いのあったら教えてね」


「わかったよ」


 自分は素材を売却の為にその場から離れる事に。


 ミミとトトは依頼掲示板の方へと向かった。


 残された三人。


「さて〜、ここには女子が三人だけとなりました、少し気を抜いてもいいかしら〜」


「ミーシャ?」


「ニャ?」


「プルンちゃん、遠回しな話はしないわ〜」


「ニャんニャ?」


「あなた達〜、私達のパーティに来ない?」


「ニャ!」


「は〜……ミーシャあんたね……」


「だってだって〜! あんな良い子滅多にいないんだもん!」


「それは……無理ニャ……」


 ミーシャの勧誘を下を向きながらも二人に聞こえる様に返答をしたプルン。


「あら」


「だから言ったでしょ」


「なに? ミツ君盗られたくないから?」


「ニャ! 違うニャ!」


「盗っていいの?」


「うっ……」


「止めなさい」


 ペシ!


「痛いー、殴ることないでしょ!」


「殴ってないわよ、叩い(はたい)たのよ」


「同じよなもんよ!」


「ミツは……」


「「?」」


「ミツは、今は一時的に一緒にパーティー組んでるだけの仲ニャ……。ウチに決める権限なんて、元々無い……」


「プルンさん……」


「ふ〜ん」


「それに、ミツは元々旅人ニャ……。いついなくなるか解らニャいから……」


「なら何であなたとパーティー組んでるの?」


「それは……成り行きと言うか……」


「成り行きね〜」


「それにミツ、昨日でアイアンランク冒険者になったニャ。もしかしたら……。他のパーティーに行くかもしれないニャ……」


 昨日ミツから(これからもよろしく)と言う言葉を聞いていても、やはりプルンの中に不安はある。


「「えっ……」」


「ウチもブロンズランクに上がったけど、招集依頼は一緒には行けないニャ」


「プルンさん、ミツ君アイアンランクなの!?」


「昨日なったニャ」


「アイアンランク……。はぁ〜、ミーシャ……諦めなさい」


「ア……アイアン」


「それも含めて、そっちのパーティーには入れないニャ。ごめんニャ」


「いいのよ、気にしないで。さっきの話はミーシャの思いつきみたいな物だから」


「……決めた」


「ミーシャ?」


「私、ランクアップ目指すわ!」


「ニャ?」


「アイアンランクになってミツ君とパーティー組むの!」


「ちょっと! ミーシャ!」


 ミーシャはバタバタとその場から移動しミミ達のいる掲示板の方へと行ってしまった。


「行っちゃったニャ」


「あの子がアイアンランクになれた時には、ミツ君が同じランクとは限らないんだけどね……」


「ウチもそう思うニャ」


「ねぇ、プルンさん」


「ニャ?」


「さっき、ミーシャがミツ君を、盗っていいって、アホみたいな事言ってたじゃない」


「ニャ……」


「あの時どんな気持ちだった?」


「嫌だったニャ……」


「そう……それがあなたの気持ちね」


「ニャ?」


「その気持ち大切にしないとね! 忘れちゃ駄目よ!」


「……うん」


 プルンの気持ちがハッキリと解るのはもう少し後の事になる。


 今はこの時間を大切にしようと心の中でそう思うプルンだった。


「ただいま、素材精算してきましたよ」


「おかえりなさい」


「あれ? 皆さんは?」


「あそこ、依頼掲示板の前よ」


「呼びますか?」


「いいわよ、勝手に分配しちゃいましょう」


「そうですね、んっ?」


「ニャ!」


「プルンどうしたの?」


「ニャんでもニャいニャ!」


 プルンがこちらの方を見ていたと思ったが、また下を向いてしまった。




(まだ引きずっているのかな? ん〜、帰りに美味しい物でも奢って機嫌直してもらえないかな……)


「そう? え〜と報酬なんですけど、今回は残念ながら緊急報酬とかは無しだそうです。その代わりにキラービーはボロボロの悪品だろうと統一して良品として買い取って貰うことができました」


「それはラッキーだニャ!」


「うん、キラービーは一匹につき銀貨5枚、ですのでこちらがローゼさんの20匹分金貨10枚です」


「わ〜ありがとう!」


「でこっちがアースベアーでのミーシャさんの消耗品代と色をつけた金貨10枚です」


「あら、こんなにいいの〜」


 肩に手を当てニコニコ顔のミーシャがそこにはいた。その後ろからはミミとトトが来ていた。


「おっ!」


「戻ってきたニャ」


「最後にご協力していただいたトトさんとミミさんにもこちらの金貨10枚づつです」


「えっ、俺達にもかよ、しかもこんなに」


「そっそんな、こんなに貰えないです……」


「いらないの〜? じゃ〜私が全部」


「いるよ!」


「そっそんな!」


「素直に貰えばいいのよ」


「ミツ君、本当にいいの?」


 流石に一人一人に金貨10枚は多過ぎると思ってしまったのだろう、ローゼは恐る恐る質問してきた。


「はい、個人的にはまだ渡し足りないくらいなんですけど……」


「そんな事無いわ!」


「これ以上貰ったらこっちが悪くなっちゃうわよ〜」


「ありがとうなミツ!」


「あっありがとうございます!」


「ところでミーシャ、その持ってる依頼何?」


 ミーシャの手には依頼の紙があった。


 それをヒラヒラと見せるミーシャ。


「ん〜? 新しい依頼見つけたから決めちゃった〜」


「あんたね……」


「だって〜早くランクアップしたいんだもの〜」


「ランクアップですか、皆さんも頑張って下さい!自分も頑張ります!」


「フフッ、ミツ君は頑張らなくていいのよ〜」


「え?」


「まったくもう……」


「ニャはは……」


 素材の精算も終わり、ローゼ達は先程ミーシャが受けた依頼へそのまま行くそうだ。


「じゃ、二人ともまたね!」


「今度はゆっくりと、夜にでも話しましょう〜」


「ミーシャさん不潔です!」


「じゃーなー」


 皆と別れた後、ギルドからの帰り道。


「ミツ、アースベアーは素材いくらになったニャ?」


「んー」


「?」


「金貨50枚」


「ニャ!」


 そう、銀貨5枚のキラービー170匹分だけでも十分な報酬だったのだが、アースベアーが思った以上に高値で買い取りして貰った。


 おかげでキラービーの金貨85枚、アースベアー金貨50枚。そこからローゼ達へと金貨40枚を渡しても、自分達の手元には金貨95枚と言う大金が手に入ったのだ。


 その事をプルンに伝えると、金額の多さに一瞬固まって動かなかった。


 報酬は基本二人で半分だ。


 最初プルンは流石に断ってきたが、教会の子供達やエベラの事を伝えると、この配分で渋々納得してくれた。


 ちょっとした高額収入で財布が厚くなった事とでまた、帰り道にお土産として食材を買って行くことにした。


 何を買うのかは、プルンの歌で直ぐに理解した。


「肉ニャ〜肉ニャ〜、今日はお肉ニャ〜」


「一昨日も肉じゃなかったっけ?」


「いらっしゃい!」


「オヤジ! 肉をくれニャ!」


「おっ、お嬢ちゃん、また来てくれたのか!」


「そうニャ!」


 以前買い物に来た時にはガラガラの商品棚しか置いてなかった肉屋にまた足をはこんだ。


 だが、今日も以前と同じ様にガラガラの棚しかない。


「あっ……プルン……」


「何ニャ?」


「多分……」


「お兄ちゃんの方は気づいたか。すまねえ、お嬢ちゃん、今日も肉は品切れだ!」


「ニャ!!!」


「また、大口ですか?」


「いや、今回は別のお客が買って行ったんだ」


「誰ニャ! ウチの肉を持っていったのは!」


「いや、別にプルンの肉では……」


「すまねえ、地主様の使いの人だけに断る事もできなくてな。元よりこっちは商売だからな、売れて困ることは無いんだ」


「そんニャ〜」


「地主さまって、フロールス家の人ですか?」


「そうだよ」


「あのジジー! 恩を仇で返すニャんて!」


「おいおい、流石に地主様の悪口はやめてくれよ」


「そうだよプルン、向こうにも買う理由があったんだよ」


「ニャ! ニャ! ニャ!」


 プルンは地団駄を踏みながら怒りを表にしてる、かなりご立腹のようだ。


「今日は細切れも無いんだ、すまねえな」


「全部売れたんですか?」


「あぁ、全部だ」


「ニ"ャーー!!!」


(あっ、壊れた)


 虚しく鳴り響く悲劇の叫び声、お金はあっても買えないんじゃ意味がない。


 ガックリと肩を落としながら教会へと帰りつく事となった。


「おかえりなさい、二人とも……んっ?」


「ただいま戻りました」


「ニャ〜〜」


「どうしたのプルン?」


「何でも無いニャ〜」


「はははぁ……」


「そうなの? そうそうミツさん、あなた宛にこれを」


「手紙?」


「何ニャ〜?」


「さっき地主様の所の馬車が来てね、ゼクスさんだったかしら〜、紳士的な執事さんがこれをって」


「ゼクスさんが?」


「ニャ! 肉を奪った奴ニャ!」


「奪ってないって」


「肉?」


「大丈夫です、ちょっとしたプルンの勘違いですから」


「それより、何ニャそれ!」


「あ〜、そうか」


 受け取った手紙は羊皮紙でできている高級感ある手紙だ。


 流石貴族となると手紙一つ拘るんだな。


「えーと……。ロキア君を助けてくれた事をお礼言いたいから来て下さい、後日お迎えに参ります。ってさ」


「あらまぁ、凄いわ、地主様からお呼ばれなんて」


「へっ! 礼言いたきゃそっちが来るニャ」


「プルン……えーとプルンも来て下さいって」


「何でウチが……。いや……行くニャ」


「えっ、どうしたの」


「肉を買い占める悪行に怒鳴りつけてやるニャ!」


「悪行って……」


「プルン、お願いだから地主様を怒らせないでね」


「それは向こうの態度しだいニャ〜」


「「はぁ〜」」


「ミツさん、プルンの事よろしくね」


「はい、できるだけ何かする前に止めます」


「ミツ! 早速行くニャ!」


「えっ、今から行くの?」


「別に、いつ来てとか書いてないニャ」


「でも、手紙には後日お迎えに上がりますって書いてるよ」


「ニャ、そうかニャ」


「プルン、あなた今日は依頼には行かないの?」


「流石に連日はきついニャ、今日は休みにするニャ」


「自分もそうですね」


「あら、丁度よかったわ。なら、屋根の修理をお願いしても良いかしら、どうも雨漏りしてるみたいなのよ」


「解ったニャ」


「プルン、手伝うよ」


「ニャら、材木買ってきて欲しいニャ。ミツはアイテムボックスあるから買い出し要員で便利ニャ」


「あはは、確かに」


「こら、プルンそんな失礼な事は言わないのよ」


「いいんですよ、事実ですし」


「ごめんなさいね」


「いえ、ところでどれくらい買ってくる?」


「多めに買ってもいいニャ、余ったら何か作るニャ」


「解った、市場方面に売ってるかな?」


「爺の店は覚えてるかニャ?」


「ガンガさんのお店ね、覚えてるよ」


「あの店の裏手の正面に材木が売ってるニャ」


「わかった」


「ついでに、爺の店で釘も買ってきて欲しいニャ」


「以上でいいかな?」


「ニャ」


「じゃ、行ってくるね」


「ミツさん、お願いします」


「はい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る