第66話 養父・萬願亭道楽師匠 『新作古典落語集』より しかし……

  おきげんいかがですか?


 孤雲庵主人でござます。 


 わたしの養父は“どデカイ癇癪玉”を持っていまして、普段は一見穏やかな人なのですが、一旦癇癪玉の導火線に炎がついて、何かしらの拍子で大爆発してしまうと、回りのお客さまに大変なご迷惑をおかけますしましますし、高座の主催者さまにも大迷惑をかけることがよくありまして、よくわたしがお詫びに回ることがあります。ところが血が繋がっていないはずのワタシにも養父と同じ大きさの癇癪玉がございまして、二次爆発が一回や二回でなく、いつも損な役回りをしている槌楽師匠がお詫び行脚をする羽目になります。普段ですと、酔客や稀に寝てる客がいましたら、プィッと高座を降りるだけの養父ですが、癇癪玉が破裂した日には恐ろしい光景が見られます。とてもここでは言葉に出来ません。のちになると養父はわたしに「言葉の力で相手を[心理的に廃人]にしてしまうことも出来ますよ」とぞっとするようなことを平気で言うのです。さらに「これは『言葉の暴力』じゃねえよ。『力技の話芸』だと言うんだ!」と喋りながら、煙管に『禁煙パイポ』を突っこんでいました。「あたくしはこう真剣に思っているのですよ。『落語に日本人は向いていない』もちろん、これは極論です。でもね、いくら日本人が言葉のイマジネーションに長けていたとしても、わたくしだって、言葉だけで全てを表現しきるのはかなり不安ですし、新作を高座にかけるのはいつも相当に命懸けなんです」


 ……ところが、先だってこちらで予定されていました、養父の公演は無期延期なりました。


 養父はご皆さんご存知の通り、わたしと同じ病である(養父とわたしは本当に血は繋がってないんですよ。あくまでも作者の設定上はですけれど)『双極性障害Ⅰ型』と診断されており、一般的には「精神病」の扱いになっているのすが、わたしは大いに疑問です。この病気は要旨は、脳内の伝達物質である、ドーパミン、セロトニン、アドレナリンたちが、言い方は悪いですがね『ドバドバー!』と出てしまうわけです。自分はもちろんのこと、医者の処方薬さえもほとんど歯止めが効きません。結局、自然に元の状態に落ち着くのを待つしかないのです。


 八年前、養父が初めて大発症した時、本やネットで調べた結果、この病気は『完治しない病気』『出来るだけ、寛解に近づけるようにしましょう』という、要は「手がつけられないと言うことですね」としか思えない要旨でした。そんな病気があるんですねとも思いましたよ。まさか、自分が同じことになるとは思いませんでしたがね。今もそうは医学的には変わりません。進歩がないと言えます。鬱にはよく効く薬があります。完治もします。一方、双極性障害の躁状態には『炭酸リチウム(リーマス)』くらいしか処方薬がないのです。度胸が座りすぎている、わたしの養母ですら『なんか恐ろしいものに取り憑かれているの?』と、少々ビビっています。普通の女性ならとっとと逃げ出していますよ。その一方で、養父が語る言葉は、とんでもない宇宙スケールの説法を受けているようで、何を言っているかはよくわからないはずなのに異論、反論が一切出来ないのです。だって、みんな事実で真実なんですよ……怖いです。


 一方、ここを境目に病状はぐんぐんとハイテンションに突き抜けて行くのです。


 初めまして、九代目・萬願亭苦楽の孫娘、初代・萬願亭茶茶楽(ちゃやちゃらく)でございます。現在は道楽師匠の付き人を努めさせていただいています。ガンバリます。……しかし、肝心の師匠がアタマがおかしくなって、倒れてしまったんです。ワタシって、弟子入り早々、ツイてませんね。苦楽の血統は昔からツイていないそうです。ワタシの実母、つまりは九代・萬願亭苦楽の長女、萬願亭快楽は『歌謡落語』で人気が出てきたところで悪い男に騙され、のちのワタシを産みました。

 その後は父親の名人・苦楽がボケちゃって、その介護が忙しくて噺家などやっていられません。ワタシの師匠の道楽もかつて母から受けた精神的圧力がトラウマになって、今だに疎遠な状態です。なのにワタシを弟子にしてくださいました。師匠は滅多に弟子を取らないので有名なんだそうです。母を救ってくれたのはただ一人、北海道から上京して真打を目指したものの芽が出ず、夢敗れて北海道に帰った途端、悪徳不動産屋に騙されて買わされた原野商法の土地に呆然としていたところに、彼の愛犬『パチョレック』が「ここを掘るがよい」とアメリカ産のワンちゃんなのに『花咲か爺い』みたいなことを言った飼い犬のことを素直に聞いちゃって、ボーリング調査をしたその結果、日本最大、世界有数の油田が発見されちゃったという奇跡の主人公、元萬願亭来楽こと吹雪丈一郎氏がご贔屓になってくれたおかげで、道楽師匠が隠遁してしまったために風前の灯火となった萬願亭一門が生き延びられたという唯一無二の幸運。

 そこに一門の総意と熱意で隠遁していた道楽がおそらく仕方なく戻って来ます。十代目苦楽襲名興行は千秋楽にアクシデントなのかワザとなのかいまだに真偽不明の大チョンボでオジャンとなりますが、今回は師匠は不思議なことに隠遁・失踪をしませんでした。苦楽襲名がぶっ飛んで、逆に高座を楽しんでいるようです。師匠がいるだけで、萬願亭の高座は盛り上がります。だって一門で唯一世間から認められている『天才』ですもの。


 再び、孤雲庵でございます。

 ああ、そうだ。忘れていました。ここは横浜スタジアム。今日は横浜開港記念日です。『初代・萬願亭道楽 横浜スタジアム夏の噺』お楽しみいただけていますか? まあ、本人はまだ出てきていませんけれど。だいたい両翼のウィング席の方に声は届いているのでしょうか? うわー、すごい声援。マイクなしでも聞こえているのですね。自分に自信が持てました。だいたい普段は百人もお客様がいれば満員でしょ? それが四万人近いんですからねえ。天文学的スターですよ。もっともわたしは高座に上がったことはないことになってますけどね。テヘヘ。


 ただねえ、えらく長いので、休み休みお聴き(お読み)いただくか、そんなもの、端っからなかっらと思って、高座の後についでに開催される(?)ベイスターズ対スワローズという二弱の試合をお楽しみに。……昔のセ・リーグには、この二弱に、一番外地というものがありました。広島カープですよ。当時は本当の意味で市民球団だったために、カープには選手補強のための資金がなかったのです。広島駅前に大きな鍋を置いて、お金を募っていたのですよ。今のカープは野球が大好きなMAZDAがオーナー企業でうらやましいです。DeNAさんに悪いですけどね、今のベイスターズは金儲けのコンテンツの中心の一つにしか考えられていませんね。コーヒーだとか、特製のビールを目当てに来る観客で満員だからって大喜びしていますけど、あんなの本当のベイスターズファンからしたら、悪業にすぎませんよ。プロ野球はいい試合を見せてくれて、勝ってこそ意味があると思いませんか?

 一方のスワローズの小川淳也監督はあまりにも根暗ですよ。いいときは当然、いいのですが、あなたは逆境に弱すぎますな。一度落ちると歯止めが効かず、テンションも恐ろしく低下します。お育ちが良すぎるのと違いますかね? 


 すみません。よく考えたら、この高座は今日のゲームの賑やかしでしたね。南部オーナーがいくらでもやっていいとおっしゃるもので。オーナー、諫言までさせてもらってすみませんね。笑って許してくださいよ。ここからようやく噺の始まりなんです。もう飽きました? ムリに読まなくてもいいですよ。なんなら、試合はテレビ神奈川さんでご覧になれば……


 演芸 初代・萬願亭道楽。


(出囃子・大漁豊漁ボヤキ船 歌・木村洋二&船泉洋三)


 ああ、すみませんね。足元がまだどうもおぼつかねえもんで。若いのに、手伝わさせております。……ああ、これね。わたくしの師匠苦楽の孫娘で、こう言っちゃなんですけど滅茶苦茶可愛いです。落語協会と落語芸術協会が「両協会でのイメージキャラクターにして、落語界を盛り上げたい」とか言いやがるんで、愛蔵の『坂本龍馬の刀』の鯉口をそっと切りました。小遊三が青くなって帰っていきました。あいつ『笑点』の衣装で来やがったんですよ。失礼にもほどがねえ。


 毎度、有り難うございます。弟子を取らないと決めていた、わたくしがついに弟子をとりました。茶茶楽は外面も美人ですが、その内面も美しすぎます。あと三十年遅く生まれましたなら……オイッ! 計算ちげえも甚だしいんてんだ。俺が七十過ぎだと……バーカ! 俺はまだ五十だ! 還暦にもなってねえ。若い衆、あの、通ぶったキツネ面のガキをこっそり、山下公園の氷川丸に乗せとけよ。あとは特に何もしなくていい。どうせ、氷川丸は動かないんだからな。


『首都スポーツ紙主催の英雄・バカ決戦』という催しがありましてね。まあ、あの夕刊紙にはわたくし連載を持っておりますので、ゲストで呼ばれたのですよ。


 授賞式には、毎回新鋭が来ます。今回の主役は埼玉西武ライオンズ・山川穂高内野手。近年稀に見る日本人長距離大型打者だ。

 一方バカ代表は丸山穂高という真性のバカ。わたくしは、日本国憲法様に明記されている『思想・表現の自由によりこのバカを全世界から抹殺する』を行使しました。もう、あいつのことを誰も知りません。


 わたくし、ほんの一時間前には約四万人のお客様を相手に噺をすることになるとはね、聞いてなかったんですよ聞いてたらもちろん逃げていましたけどね。

 で、怒ったんですよ。「なんだこれは! ツンボ桟敷か!」ってね。

 そしたらテレビ神奈川さんが、いけねえ、また怒らせちゃった。言っちゃダメなんですね。「ツンボ桟敷」うまく消しといてください。ああ、生放送ではムリなんですか。今から録画にしましょうか?……噺家は普通、ホール公演で約百人くらい相手の商売なんですから今日みたいのはやめて欲しいですね。ウチの一門は寄席に出られませんので、先輩師匠方の噺を聴くためには電車に乗って東京に出なくちゃいけません。交通費も木戸銭も自腹です。確定申告なんて面倒なことは弁護士雇ってますから知りません。レシートと領収書だけはきっちり書いてもらってますよ。それが芸人の粋ですよ。寄席に行きますと、たまに気の利いた木戸番さんがいて「師匠どうぞ」ってタダで入れてもらえるんですがね。まあ、そういう時も木戸銭払ったことにしてもらうんですけどね。節約ですってよ。しかし、最近は滅多にありません。あとは一門とか協会など全く関係なく、後輩の噺家がいればそいつらに飯が食わせたくなりますのでね。ええもちろん、あいつらの財布の口は絶対に開かせませんよ。ただし、壊れてない時だけですよ。仮に、自分が空腹でも現金が一人分足りなかったら、クレジットカード? 噺家が審査に通るわけないでしょう。それはそうと、そういうときには、もうわたくしは歯噛みしても後輩におごりたいんですよ。しかも、無理にでも笑ってやんなきゃダメですよ。空腹だとバレちゃったり、やせ我慢していると後輩に知られちゃったらもう粋じゃないですね。私たちのように伊達と酔狂と話芸だけあれば、もうあとは無理に栄養摂取なんてものすら必要性ないですね。まあ、その点でわたくしは、なんか、いつからかは覚えてはいないのですか、普段から三日に一遍しかも、最高二食で十分なのです。ええ実にエコノミーな胃袋ですよ。


 ただね、水は一日十リットルは飲みますね。普通の水道の水です。でなきゃ日々の暮らしが成り立ちません。恥ずかしいことに、わたくしの稼ぎがひと月に……どう数えても、一億円には届かないのですよねえ。まあ、お客様は、一見多そうに思われるでしょうね。


 けれど、ウチには、ねこが五百匹もいるんですよ。考えてみてくださいよ。最前、倅がウチを出たから、夫婦二人だっていうんで、小さめのマンションにお引っ越ししたのですよ。それとほぼ同じ時期、妻がとてもかわいがっていた、ねこたちが二匹冥土に旅立ってしまったんです。それから急に妻がおかしくなってしまったようで、いわゆる「保護ねこ」ってんですか? あれに金を出してまで、何匹も引き取って来てしまうんですよ。お客さん、一概に「保護ねこ」とは言いますけど、実際には保護期間が過ぎてしまうと、保健所で殺処分されてしまうでしょう? わたくしだって可哀想だと思ってですね、つい許してしまうんですよ。こればっかりはどうも……


 こっちはさ、噺だけで、おまんまをいただいている人間ですからねえ。

 

 おまんまをありつくことができるのは僕もあたしも人間だよね? よしを。


「よしを」さんねえ。ねこだっておまんま食うよ。第一、あんたも、そろそろ苗字くらい教えなさいな……愛惰……おおっ、でましたよ。あいだ・よしをさんね。

 いいんだけどこの惰って「怠ける」そうか! 怠けているからああいう詩が出来るのですね。はあ、なんで声だけで苗字の漢字がわかるのか?

 もうそういう芝居はやめましょうよ。わたくしもあなた文章だけで生きられるよね? もういい加減、虚勢を張ったり、他人を騙すのはやめましょう? えっ、私がいつも嘘をついてる? ふふふ、笑わせていただきましたよ。わたくしが本当のことを言ったら宇宙が崩壊するって知らねえのか! 一昨年来やがれ! バーカ! 


 わたくしの妻は『キャットリーヌ聖子』という名前で保護ねこやら野良ねこや、ドラえもんまで連れて来てしまって、しかもねえ、それが……『本物のドラえもん』だったるするんですよ。わたくしは妻が藤子・F・不二雄先生のミュージアムにもいないものまで連れて来ちゃって、焦りました。しかもですね、本物のドラえもんってのが、ここだけの話にしておいてくださいよ……相当にタチがが悪いんですよ。「ボク、ドラえもんだから、毎日、どら焼き一万個食べるよ!」っ尊大なこと言い出すんですよ。だって、どこへ行ったら、どら焼きを一万個も売ってるのでしょうか? 野比さんちは庭の裏の方に、とんでもなくでかい「どら焼き工場」でもあるのでしょうか? それもパートの奥さんやらなんやらをわざわざ、雇ってまでですよ。利益が出るわきゃないですよね。ドラ公が一万個ただ食いするんだから。お魚加えたどら猫の方がエコノミーです。それじゃあ、借金の海で溺れますよ。セワシくんの代まで持ちません。あんまりアタマに来たんで「てめえのご自慢のひみつ道具ってやつでも使って自分でどら焼きくらい作ったらどうだ。確か無限大まで栗饅頭が増殖する回があったよな? てめえとのび太くんは、宇宙倫理も何も知らねえでそいつを不法投棄したんだよな? 今だにあれは増えてんだろ? いずれ宇宙は栗饅頭で崩壊するんだ。遠い向こうの、ブラックホールよりタチが悪いぜ!」と怒鳴ってやったんですよ。宇宙教育的指導だ。


 そしたら、ドラ公のやつ「あんなものが現実にあると思う?」とか言いやがるんですよ。ここでさあ、わたくしの百寸の癇癪玉が爆発しちゃって、スーターマイン! でさあ。「じゃあ、てめえは、なんの目的で未来からやって来たんだよ!」って言いながら、ドラ公のシッポぶち切る勢いでひっぱってやったんですよ。あれって非常停止用のなんかじゃないいですか? でもさ、こいつって、一番理論的に難しそうなタイム・マシンでここに来てるんですよね……結局はセワシくんが一番悪いですね。滅びた方がいいかも。


 ああiPhone4Sに『呼び戻し』されちゃった。

『呼び戻し』てえのは、横綱・初代若乃花幹士の必殺技。横綱・二代若乃花幹士は初代の娘と結婚したがのちに離婚。そのため二子山部屋を継承できず。大関までの四股名・若三杉壽人時代は女性に人気があった。横綱・隆の里俊英と青森から一緒の列車に乗って上京したのは有名。三代は若乃花勝は幹二ではないので、本当に三代なのでしょうか? しかも、タレント・花田虎上だし。誰も「虎上」を「まさる」とは読めん! こいつが『二子山部屋』を継承していれば、横綱・貴乃花光司も、あんなことにならなった。あの笑顔に騙されないで! と言ってもわかんないでしょ?


 ああ、呼びもどしたかったのは、水って本当に0カロリーなのですかねえってこと。だって、わたくし水しか飲んでいないのに、大デブですよね? まあそれだけのことなんですが……疲れてません? あたくしは出番の前から疲れ切っていますよ。何役やってると思ってるんですか?


 さすがにわたくしも記憶力が衰えて来ましてね、若い頃は古典を一日百話覚えてたのです。現存している古典は約五百話と言われていますから約五日で全部覚えちまったのですよ。

 当時は諸先輩方の嫉妬がひどかったですねえ。陰でわたしの事を「週休二日制・噺家」ですって。まあ、わたくしも怠けののですからねえ、あながち否定することもなかったですねえ。さすがに諸先輩噺家の悪口は頓知が効いていて可笑しいですね。約四十年前の事なのに、今だに、笑いが止まりません。はははは。あれ、止まちゃった。でもあの頃の諸先輩たちは、もう、全員、鬼籍に入られましてねえ。しかも、わたくしが「名誉住職」をお勤めさせているお寺さん眠っておられます。

「死してなお、後輩の財布の口は開けさせぬ」という格言などないですがねえ。


 わたくし、この世に生を受けてから、老いぼれになったいままで財布自体を持ったことがないんでございます。

 まあその代わりに、ウニクロさんで購入したジャケットをウニクロさんの横浜駅西口のどこだったかな。

 まあとにかく、そいつがオープンの日に、落語界一、気が短いわたくしが、なぜか十時間も並んで買ったんです。私には付け人も弟子もいませんし、妻は自立してますし、倅は病弱でおもてに出ない。自分で買うよりないんですよ。仕方がないです。ただですねえ、小銭がポロポロ落ちたりしますと、とっても恥ずかしいのでポケットだけGUCCIさんのお店が横浜高島屋にありますので。付け替えていただきました。これは大人の男性のさりげない遊び心ですよ。皆さんだってGUCCIさんなんかは。月一くらいで行きますよね? 


 最近ニュースを見たくないですな。いや、もう見ていらないような、悲惨な事件や事故が多いですねえ。つい先だってもイヤな気分にならざるを得ない事件がありましたよね? 

「通り魔」ねえ。出来たら「通らない魔」でいて欲しかったですよね。


 今回のように、無関係な人たちの命を奪ったり、心身に多大な大怪我をさせてから、犯人が自殺することをることを「拡大自殺」言うそうです。毎週日曜、朝八時のニュースショーで張本勲さんが仰っていましたよ。わたくし、あの方がとても苦手なのですがねえ。いやあ、よく勉強してしるなあと感心しました。あの方って、昔の浪商、今は大阪体育大学浪商中学校・高等学校とずいぶんご大層な学校名になりましたな。

 ええ、あの方、張さんと言われているようですが、この「さん」言う「さん」は、我らが誇り、人間国宝・五代目・柳家小さん「さん」と同じ意味ですか? それとも、アグネス・チャンや、レスリー・チャンたちの「チャン」を日本風にしたのですかね? まあ、どうでもいいことなんですけどね。気になって眠れなくなっちゃあですよ。

 はい、昭和の名話芸、今回は春日三球・照代ご夫妻のくすぐりでございます。

 ああ張さんは浪商時代もプロ野球のパ・リーグの東映フライヤーズ、いまの北海道日本ハムファイターズね。あの頃は子分の大杉勝男さんや、白仁天さんらを引き連れてしょっちゅう『大乱闘乱闘スマッシュブラザーズでした』

 でもね。

 ジャイアンツにトレードで、入った途端に大人しくなっちゃた。やっぱり、大正力(正力松太郎)さんの「巨人は紳士たれ」のお言葉には魂が宿っているんですかね。いや、大正力なんて力士はいません。

 わたくしは、永遠にもちろん、ベイスターズ一筋、八十年……すいません、大昔の吉野家さんのCMと公私混同正臣です。あのCM知ってる人はもう……


 はは、いい加減なんとかならないのですかね? おじいさんが川へ洗濯機落としちゃって、困っていたら、川の中から天照大神が出て参りまして「翁よ、あなたが川に落としたのは、黄金の洗濯機ですか? 白銀の洗濯機ですか?」と爺さにお尋ねにねりました。するとおじいさんは「はい。わたくしめが落としたのは、随分と昔、遠い銀河でしたか? まとにかく、若い頃に買いました、東芝さんの二層式洗濯機です」と答えたそうです。尋常ではありえない長持ち洗濯機ですね。認知工学的に考えれれば、この洗濯機にはすでに魂が入っているでしょうし、日本神道から見ちゃうと、もはや「洗濯機乃神」ですね。どんなに頑固な汚れも洗剤なしで落とせるでしょう。ただ、いまはもう誰も使ってなさそうな「二層式」ですので、脱水の時に、洗濯物を脱水機に移さなければならないので、お社の神主さんや禰宜さんたちには一仕事になりそうですね。


 一方そのころおばあさんは山へ柴刈りへ行きました。「しばかり」という発音ですけど、おたくのお庭の芝生を美しくカッティングするわけではありません。山で行う柴木の伐採や枝集めなどのことを言います。結構キツイお仕事なのです。そのために、おばあさんはぎっくり腰になって動けなかくなってしまいました。そこへ、たまたま巡業の途中で迷子になったという大きな力士が現れました。


 その力士は困っていたおばさんが視界の片隅を見つけると、すり足でおばあさんのそばに寄って来て、お腹の中まで振動が起きそうな声でこう言いました。「おばあさん。あなたは腰を痛めましたな。さぞ、お辛い事でしょう。わたしには治して差し上げることが出来ず、とても無念ですが、わたしもこの国の出身ですので、いい先生がいらっしゃる、町一番の総合病院までお連れしましょう。わたしの背中に乗ってください。おや、柴刈りの途中でしたか。ならば、わたしが柴刈りもやってしまいましょう。その方がこのお山のためになります」というや否や、まさに屋久島の「縄文杉」のような尋常でない右腕を「ブワーッ」と、この国一体に強風警報が発令さるほどの風の力で、この山一帯の全部の芝を刈り取ってしまいました。力士はその柴をまるで爪楊枝の塊のごとく、利き腕ではない方の左手の親指と人差し指でそれこそ「つまむ」とまるでSF小説に出て来る「ワープ」で病院へと行きました。


 さて、力士はおばあさんの入院費を「先場所の懸賞金が余ってしまって困っていたんだ。気にする事はありません。なんでも新しい時代には紙の銭が一般的になるそうですが、今はまだ大判小判がザクザクですから、わたしだってやはり人間ですからやっぱり重くてねどうもいけません」と言ってクレジットカードのリボルディングディング払いで精算してくれてくれました。


 まあ、当時はテレビもラジオもなく唯一のマスメディアが瓦版(新聞)でした。もちろん写真機もありませんよ。ただ、いまのメディアと一緒なところがありまして「この絵はどお子さまから見ても絵です」とういう注意喚起文ですね。

 さてこの力士。おばあさんが四股名を聞くと、恥ずかしげに高い山を指差す。おばあさんはびっくり。山は『常陸山』ですよ。それならば……あとは皆さんでお調べよ。ヒントは『角聖』です。


 はい、十秒の休憩だ。


 道楽、再び噺させていただきますよ。


 わたくしはデビ・スカルノというか、本当は根本七保子と言う名のジャパカラさんが大嫌いでね。さらに言えば、クーデター起こされて失脚したインドネシアの元大統領の第三夫人ですから、テレビ神奈川さんのポリシーに則り、正確に視聴者の皆さんにお伝えしなければならないですからね、あのお方のことを呼ぶ時には「デビ・スカルノ・日本名・根本七保子・クーデターで失脚した・元大統領の・元第三夫人」とさあ、まるで「寿限無」にたいな令和の新作・前座噺が出来ちゃった。


 最前、倅が言っちまいましたがね。ここが「横浜スタジアム」であり、いま、わたくしがいる日付は、西暦は言いませんけど、六月二日、すなわち日本ではこの日が土日でない平日にも。関わらず、横浜市民だけの祝日「開港記念日」なのですよ。今日はもともとここに横浜駅があったとされる「関内」ええ、いまはJR根岸線(JR京浜東北線のうち、東金が駅から大船駅までの、要するに神奈川県内の区間だけをいう。名前が二つあるなんてなんでも曖昧模糊にして最後は有耶無耶にしまいちまうっていう、なんとも日本人らしい想像力の産物ですね。だって大元の「日本」の国名の読みが「にほん」と「にっぽん」の二つあって、行政的は「にっぽん」しか使いはせんけど。行政さんも「出来たら『にっぽん』を使って欲しいな」って気持ちを表すことしか出来ないのです。だって、わたしが神棚に飾って神様として崇めさせて頂いている、現行『日本国憲法』さま、ええ、通り名は平和憲法ですね、あれにも、それに基づいて制定された「憲法の子孫たち」であるところの全ての法律を眺めても「にっぽん」という文字に送りがなどついてませんし「憲法」さま自体が、国民に向かって「表現の自由という条文がありますよ」と教えてくださってるんです。ねっ、わかりますよね。現在、あまたいる、特に新興宗教系の指導者より、よっぽど『日本国憲法』さまの方が神としての風格を感じますでしょ? さらに「憲法」さまはなんだか怪しい新興宗教でも「法令に反していないところなら、どんなどんな宗教を信じてもいいですよ」ですって。なんと慈悲深い。観音菩薩のようです。えっ、なんで「観音菩薩」とあたくしが呼び捨てにしているですって? イヤですねえ、いい歳こいて知識が不足しているなんて。でもですね「無知をはじいることはありません。どなたか知ってる人に教えを声ばいい。真に恥じるべきは己の無知を隠すことだ」と東京大学の偉い教授がおっしゃていたそうですよ。ただね、私がそのことを知った出典元は、Yahoo!ニュースさんだったのですがね。まあ、いいでがしょ。わたくしが「観音菩薩」お名前を呼ばせて頂いたのは「菩薩」というのが人間界でいうと「部長」などという敬称だから〜。ああ、チコちゃんパクちゃいました。えー! 下ネタではありませんよ……)


 爺婆逆走自信満々孫殺す。たいへんな時代です。幼な子・良い人・偉い人がじゃんじゃんなくなっちゃいます。


 テレビ神奈川さーん、あたしゃ、テレビに滅多に出ねえからさあ、放送倫理リンリンランランカンカンお偉いさんがお怒りのようですね。でもね、普通はオタクのようなロー・ギャランティーな番組には出ないんですよ。私が出演するのはNHKの『日本の話芸』とかね。


 長らくありがとうございました。


 このあと養父は、茶々楽としけこんでしまい、老いらくの恋を逹するのか、養母に耳を引っ張らて連れ戻されればはただのお笑いですが、養父と茶々楽の老いたる美男子と瑞瑞しい美女の間に出来る赤子のことが、養母には申し訳ないですがなんとなく楽しみです。


 八年ぶりに双極性障害Ⅰ型によろしくま・ぺこりがなりました。

 本当に困ります。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。


 2019.7.4改訂。

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