第59話 前回の続きと言う予定調和な物語であってはいかん

 まあ、なんとなく物語の展開や文章がおかしくなっているとお気付きの方もいらっしゃると思いますが、特に、このところ文体・語調の重要な部分が、例えて言いますならば、日本のどこかの美しい名刹の中にひっそりと本堂がある、かなりお偉いところのお寺さんの大阿闍梨さまが一般人には難解なる漢文的な口調で言い放つ説教くさい上に、聴いていても眠くなるだけですので、もう聴いているのも面倒くさくて、かなりキツイ加齢臭まみれの老いぼれた文章になっています。ただこの問題の全責任および刑罰の対象者はただ一人、諸悪の根源かつ地獄の極悪人でもある作者の毎度おなじみの宿痾にあります、どうも最近、作者のキチガイの病状が躁病方向に向かっているのではと、実はわたし、かなり心配しておりまして、本日上演します茶番劇のお稽古を途中で中座させていただいて、先生の仕事場兼ご自宅へお見舞いを装った風の、単なる病状偵察に伺いまして、もし作者の口から意味不明な言語がお経のようなリズム感になって連なっていたり、意味があるのかないのか奇怪なおしゃべりを半永久的に続けているようだったりしましたらためらうことなく、大至急、精神救急車を特急のごとく迅速かつ猛スピードで来ていただけますよう、電話の向こう側のオペレーターさんに深くお願いをしようという心づもりで伺候しましたところ、案外と作者は普段のように落ち着いているように見え、とりあえずは我々の創造者でもある作者の顔に少しばかりのすこやかさの色が見えましたのでかなり安心し、形ばかりの安堵の表情を見せてやりました。そうすると、作者は「まあ、だいぶさ心の揺らぎは納まって来たのだが、まだ少しばかり頭か体だかが揺れていてね、寝床に横になってると、絶えずどこかが揺れているようで、こりゃあ地震でも来たかと怖くなって飛び起きてはみたが、俺以外の家財道具なんかに揺れているものは全くないんだ。なんだか妙なことでどことなく気色が悪いんだが、結局さ、どうも揺れてるのは俺の太っ腹のようだって知れたので、それより以後は、少々の揺れが起きてもこの揺れは俺だけのことだと思って、もう面倒だから起き上がらないようにしたんだよ。ところがさ、先日あたり千葉県が震源の少し大きめの地震が起きんだがね、俺は毎度のごとく自分の太っ腹が揺れていると早合点をして、そのまま眠っちまたんだよ。でもモノホンだった。あの程度の大きさの地震ならまだいいんだけれど、今後とんでもなく大きな地震が来てもいつも通り自分が揺れていると思い込んだりしていたたら、ここなんぞ所詮はあんたさんのウチとあんまり変わらない、安普請の木造ボロクソ心理的瑕疵アパートでしょ? 俺がイビキかいて寝くたばっているときに夜な夜なご訪問にいらっしゃる幽霊みたいなのがひょいとこんちは時候の挨拶回りですなんて辛気くさい声出すのさ。明るい声の幽霊も考えもんだけどな。とにかくあいつにはもう慣れちゃったよ。怖くはねえ。だけどさっき言った大震災の時に、あいつがここに来てさ、悪いタイミングで、ここの上の二階がドスンと言えばすぐ落下、なんか『龍角散』のCMみたいだな。まあいいや。とにかく二階が落っこちて来てしまったらさ、俺と通りすがりの縁もゆかりもないただの地縛霊方面出身の幽霊みたいいなものが折り重なってさ、お互いさまに、ぺちゃんこに潰れてお陀仏したりなんかしたら、ああもっとも、幽霊ぽいやつはもうとっくにあの世の先輩だがね。そのあとしばらくしてようやく救助活動に来た自衛隊の皆さんがここの瓦礫の山を桜満開になんてすることなく、エッチラホイと、ごく普通に掘り起こしたりしたところでさ、俺と幽霊のようなもんのくっついた死骸を発見したら、どう言うとあんたさんは思う?」

 なんか作者は一見まともそうなことを言ってはいるようですが、早口でペラペラとちょっとズレてる言葉をまくし立てています。わたしの心に設置されている、危険察知信号機が黄色ランプに変わりました。しかもヘンテコなクイズの答えをわたしに求めて来ています。これはどういう意味合いのあるものなのでしょうか? しばし、無言でいましたところ、短気の世界最短記録保持者の作者がしびれを切らしたようで「いつまで回答を待っていなちゃいけないんだ? こっちはA.D.さんから『オシ』のスケッチブックを見せつけられててんだよ。相変わらず『とろいの木馬』みたいな男だよ、あんたさんはよう。あんたさんを作り出しした戯作者さんのツラを一度くらい見て見たいもんでぜ。全く」

 と訳のわららぬ理由でわたしに嫌味を言いつつ、煙管に「禁煙パイポ」をくっつけて、スーハーと一服やっています。わたしを作った作者の顔をこちらの作者が見られる可能性はほぼ0です。自分の顔を自分が見るためには幽体離脱するしかありません。話を「禁煙パイポ」問題に戻しましょう。ちょっと面白いでしょう。まずもって、いまどき「禁煙パイポ」などどこのお店で購入出来るのでしょうか? 未だ生産はされてるのでしょうかね? メーカー名を失念しました。根本的問題として最近の若い人たちは「禁煙パイポ」や、そのちょっとおかしなCMなど全く知らないでしょうね。ごく簡潔にCMの内容を言うと二人のおっさんが「禁煙パイポ」で喫煙をやめられて自慢げに「禁煙パイポ」を立てて見せ、オチのおっさんが不倫がバレて会社をやめさせられたと言いながら小指を立てている。これのどこがおかしいかとはつけないでしょう足しに対して論理的に責められましてもねえ。わたしだって全くわかりませんよ。ああ、作者の出題した先ほどのクイズの答えを聞き逃していました。ということで、早速作者に尋ねると「なんのことはない。ジョーク好きの自衛隊員が俺と幽霊みたいなやつのくっいたまま潰れた死骸を見て『おーい、みんな。大デブの圧死体の上で……幽霊が腹上死してるよ』だってさ。なあ、おかしいかい? この小噺」はあ、作者は落語の前座噺の創作ものでも書いていたのでしょうか? そんなヒマがあるならば『悪の権化』の続きを書けと、ご贔屓さんからクレームがつきますよと、わたしは作者を厳しく叱責しました。「ああ、ご贔屓さんね。どこのどなたかはお顔も性別も知りようがないので、いい具合のさ、小股がキュンとヌレヌレの……失礼。最近ね、法令遵守の範囲内という制限付きで、出来るだけ可能な限りにおいて自己の本能のおもむくままに生きることにしたんだ。どうもこいつが案外と愉快でさあ。ただね、本能むき出しで生きてるとエロい方面も当然のごとく本能優位だからさ、なんだかじゅんじゅんしてくるのよね、みたいなさ」ああ、やっぱり作者は狂っていますわ。でなければ故川上宗薫先生あたりの亡霊に取り憑かれているのでしょか? しかしこの作者には霊感はありません。ただ山勘と第六感はありましたかね? ああ、無意識のうちに、フランキー堺先生司会のクイズバラエティーショーの名前のようになっています。ああ、昭和時代の名コメディアンであり、名俳優、名ミュージシャンに映画監督までなされてね、多彩な才能だったなあ、フランキー堺先生。いまの若い人は、ある意味ではかわいそうですよね。昭和の時代には大勢の巨大なスターたちや個性的な脇役陣など、どちらにしても最近の俳優より、スケールがコロボックルと天空を貫く大巨人ほどに違うのです。違いすぎて、昭和と令和のメートル原器の尺度に大きな誤差があるのではと、若気に至りですが、世界各国のメートル原器を再確認する放浪の旅に出たことを懐かしく思い出しなすよ。あれ? ああ、中田英寿とかいう、小僧が「アニキ、おいらもご一緒させてください」なんて、子どもみたいなことを言いつつ、くっついて来ましたので、笑って同行を許してやり、完全なるパシリに使っておりましたが、帰国してからすぐでしたか、のんきにテレビを観ていたら、わたしのパシリの特集番組を再放送しておりまして、いやあ、その時初めてあの小僧がサッカーのすごい選手だったと知り、膝が震えて三日くらい歩くことも出来ませんでした。慌てて携帯の2ショット写真や、彼の電話番号やメルアド等を全て消去して、以後、街で偶然であっても断固、人違いと言い張ることと決めました。だって国民的大スターと知り合いだなんて他人に知られたら恥辱的敗退ですよね? あれ? いつの間にか作者の姿が消えています。まずいですね。じっとしていられずに出歩いてしまう徘徊癖は作者の病気の特色の一つです。しかも、さっきまで雲ひとつなき快晴でした天空が一気に黒い暗雲に覆われ、大地を揺るがす雷鳴と土砂降り以上台風未満という、やや欲求不満気味の暴風雨が地面を叩き受けます。まるで首の骨を複雑骨折したYOSHIKIの狂気にまみれたドラムスティックの生み出す、わたしにはただの騒音にしか聴こえませんが、ファンが聴いたら失禁、脱糞臭で満ち溢れた地獄のライブ会場が大炎上することでしょう。ああ、近所のカレーやさん、ご面倒ですができる限りたくさんの消防自動車を大至急、出前お願いします。ええ、それとサイドメニューに『超大激辛死し死に必死カレー』を五万人前お願いします。


 その時、わたしのスマートフォンに茶番劇の舞台監督から電話が入りました。「はい、かしこまりました。また次回、気分を一新して頑張りはしませんけれどね。そういう生き方の指針を見つけたのです。それも自分自身の超思考ゲームの果てにですね」


 本日予定しておりました茶番劇公演第三幕は急な天候の荒変(すみません。必要に駆られておそらくは、ありもしない熟語を生みだしてしまいました)


 ああ、先生はあの大雨の中、ドラッグストアで大量のキャットフードを爆買いし、地域ねこたちを約五万匹も呼び寄せ、そいつらにまみれながら、愉快そうな寝言のマシンガン打線を連発して、雨中の大熟睡を敢行したにも関わらず、巡邏中の警官さんにも通りすがりの困ったちゃんにも誰にも気づかれることなく、地域ねこ問題による地域紛争にも巻き込まれないで、翌朝、雨あがりの天使たちに、見送られ、投げか無事に帰宅して「これから俺は俺流の新作古典落語を毎週書き下ろして、孤雲庵の養父たる大天才落語家にじっくり語らせて、聞き入ってやるぜ」などと、やはりどこかおかしいのは確かなのですが、決定的な証拠が不足していてどうしても、確かな立証が難しいため、閉鎖病棟に強制的連行刺さるための訴えは行政サイドから不許可決定ということとなり、止むを得ず、野放し状態だで当面は好き勝手にやらせております。それにわたしだって無精者ですので、それほどの恩義も感じていない作者の面倒などこれ以上見たくもないので『いっそ、孤独死セレナーデ』という曲を知り合いのシンガー、井上温水さんに依頼し、完成しだい、どこかの割と聴かせる歌い手(おそらくはぺこりキャラクターファイルプロフィールに一人くらい神のごとき歌声の歌手がいるはずなので、そいつをこっそり具現化させて、デビュー記念日本武道館ライブと完全ドーム球場制圧コンサートを強硬に挙行いたします。


 さあ、物語はフリーズしたまま、次回へと話数のみが進捗しています。ちなみに私はいまのところですが狂ってはいません。

 

 逸脱したっていいじゃない僕もあたしも人間だよね。 よしを。

 

 ど、どなた様ですか? なぜ、こんな土壇場になって……また出て来たりするのでしょうか? ああ、ますます不条理の世界観のままになりますね。では。

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