第56話 しくじりの代償

 ごきげんいかがですか?


 前回はタイトル詐欺を犯した上に、後半はひさびさに下ネタの猛虎打線でしたね。この力強さがのちのち中華に大元帝国を作る素地となる、というギャグの要旨はご理解いただけたでしょうか?

 一つだけ言い訳をさせていただけるのならば、下ネタ、イコールセクシャルなことは人間の本能がもたらす欲求の一つなので、書き出すと案外ですね面白いのですよ。久しく起きなかった脊髄反射が発生しそうになりました。ところで脊髄反射とは医学的見地から言って、どういう意味なのですか?


 おっと、しくじりがぶり返さないうちに、本題へとまいりましょう。

 孤雲庵の最寄り駅、JR十日市場駅周辺には真っ当な書店どころか、真っ当でない書店すらもないのです。つまりここは書店番外地なのです。唯一あるのはブックオフのみなのです。しかし、ここはわたし的には、不要な本を買い取って貰う店であって、申し訳ないですけれど、ここで本を買うことはわたしの絶対的ポリシーに反しますし、それ以前に古本は生理的にムリなのです。しかし、両隣の中山と長津田は一軒ずつ書店はあるのですが、語るに落ちたる品揃えで失望のみを買ってしまいそうです。なにせ、当日発売のメジャーレーベルの新刊文庫がいくら探しても見つけられないのですから。どれほど低い配本ランクなのでしょう。

 これらは現在の書店・出版・取次業界が持つ諸問題の生中継みたいなものです。

 もちろん、横浜か町田へ行けば大型書店がありますが、そのうち町田という街は理由はわからないのですが、わたしと性があいません。寒気がします。同じ言葉を近距離で使ってしまいますが、生理的にムリなのです。町田は東京都と神奈川県の間を行ったり来たりしていた過去があるのですよ。神奈川所属の時は原町田と呼ばれていました。おそらく相模原の「原」でしょう。双羽黒のような強引なくっつけ方ですね。そのせいで土地も住民もぐらついていて、わたしの三半規管に負荷がかかるのですかね。それとも強力な字場あたりでしょうか? 知りませんよ。本当のところは。横浜は単純に交通費が高くつくので行かないだけです。


 そうすると、頼りの綱はネット通販ですけど、Amazonさんにもうこれ以上儲けさせる義理はありませんし、楽天は三木谷の顔を思い出すだけで、腹中の癇癪玉が疼きます。サッカーのヴィッセル神戸でしたっけ。大枚叩いて有名外国人揃えて何連敗してるところは。費用対効果を考えただけで笑っちゃう。いくら人気選手がたくさんいてもチームワークが皆無な上に、全くもって弱いのであれば、ファンはスタジアムに来ませんよね? 三木谷のバーカ。実に痛快ですね。


 なので、本やくらぶを利用することにしました。ここだとバカ書店の各店での店頭受け取りが可能なので、わたし専用宅配元妻の勤め先を受け取り店にして人間配送車に変幻させてしまえば、何時に来るかも知れない配送業者を待つ無駄な時間と余計なプレッシャーが消えるので、とてもメリットがあります。ただしこのわたし専用宅配元妻にわたしが当日発売の文庫などを口頭注文したりメモを渡した時、三歩歩くと脳みそがリセットされることがしばしば起き「ご注文履歴がございません」とか言い出しますので、生涯、注文本の名前を忘れないほどの拷問を必要としますので、わたしの方がかなり疲れますよ。早急なるMRIの手配・予約と、医学的見地に基づく催眠術のテクニックの習得が必要になりそうです。ところで、どこへ行けば催眠術が習えるのでしょうか? 真面目なやつですよ。


 でも、とてもメリットが多いネット通販ですが、デメリットもあります。まずは本の性格が全く見えないことです。例えば巷で大ヒットしている、新潮新書、眉村卓先生『妻に捧げた1778話』を購入したのですが、わたくしは愚かにも、1778話全てが読めると信じて疑わなっかったのです。しかし、カバーに書かれた端書きに「〜の中から厳選された19話も収録」のというようなことが書いてあるのです。「厳選された19話」も大ショックですが「も」というひらがなが意味することを想起して、わたしは脆くも崩れ去りましたよ。まるで砂糖菓子のようにね。つまりは新潮社という卑劣な詐欺師がタイトル詐欺でわたくしを騙し、騙されきっていたわたしに、端書きで悪意に満ちたネタばらしをしたよなものです。今ごろ新潮社の営業部のやつら舌を出して、わたしに向かって一斉に「バーカ」とか言っているようで悔しいというか、憤懣やるかたないと言ったほうがいいでしょうか? こうなったら、数多くの超売れっ子作家たちが強制入室させられ、脱稿するまで出られないという、別名を地獄の缶詰部屋と噂される新潮社別館に集結しているときに、建物中に、ガソリンをばら撒いて放火してくれましょうか? わたしのご贔屓作家さんたちには事前に避難勧告はしておきますから。わたしに後悔の文字なし。でも、面倒くさいからその道のプロフェッショナルに委託しましょうね。あいつら口が固いから黒幕であるわたしの名が警視庁に漏れることはまずありません。安心・爽快、健康雑誌。

 しかし、リアル書店で本書を立ち読みして入れば、余計な殺生関白になることもなかったのですよね。合掌。

 火災に巻き込まれ、火葬場のお仕事を奪うことになるような不幸に見舞われてしまった作家の皆さま、どうぞ天国で大ベストセラーを連発してください。近々、わたしもご拝読に伺います。その時版元は必ずや、新潮社・幻冬舎以外にしてくださいませ。もしあれでしたらわたしが「ぺこりパブリッシュ」という出版社を設立いたします。社長代行はパチョレックと言います。敬具。


 あとは予期しない本との奇跡も立ち読みせねばありませんね。特に目的もなく適当にぶらぶら歩きながら適当に立ち読みするという愉悦はリアル書店でしか得られません。あれほど楽しいお散歩はありませんね。まず持って、迷子になる可能性が少ないです。札幌のコーチャンフォーまで巨大化してしまうとm迷子の鳴子もしれません。それにあそこは店員の知能レベルがエゾリスくらいですから、迷子対策マニュアルなんて作成することすらが想定外なのでしょう。困りますな。


 ええ、若干結論がタイトルと違うきらいがありますが、目をつむってやってください。近年の書店急現象は、恐ろしいことにも、日本人の知的レベルの低下に直結していると思うのです。若者たちに書店内目的なし、ぶらぶら思索散歩の愉悦を教えてあげたいのです。よく聞きなさい、若者よ、くれぐれも万引き野郎を誤解されるような行動などせぬように気をつけてくださいね。防犯カメラが見ているよ。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

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