　ごきげんいかがですか？

　わたしは珍しく、布団から起き上がって多目的ゾーンのプレートを勉強室に変えて、口を半開きにしたまま、沈思黙考しはじめました。日ごろから、考えることはたくさんありますが、バカバカしいことではありますが、生きて行く上で必要な考え事ということは、ほぼ皆無です。

　まず最初の課題は、自分の記憶力の急速な衰えについてです。元来、わたしは記憶力が良くて「記憶力だけなら、アインシュタインに勝るかも知れないし劣っていた方が無難かな？」とわたし一人で思うほどでした。それがために、メモを取ったり、手帳を買ったりする習慣が頭にないのです。メモを書いてもどうせですね達筆すぎて、他人は当然のこと、自分でも全く読めませんし、手帳というものは学校から支給される無料のものと、学生でいた間は信じて疑っていませんでしたので、書店員になって初めて「こんなもんに金払う人がいるんだ！」と心底びっくりしました。しかし、忘れもしません２０１２年の暑い夏、あの宿痾を発症したのち、どうにもこうにも、脳細胞が在庫僅少になってしまったようで、最近では、朝にせっかく思い浮かんだかなりいいアイデア（駄洒落）を昼には失念してしまうのです。一度消えたいいアイデア（駄洒落）は思い出せない夢と同様、二度とこの世に生を受けることはありません。しかし、わたしの書いた文字は、古代言語学者でも解読不能というお墨つきおよび太鼓判を頂戴しているのでわたしは、ついつい「iPad mini欲しいなあ」と現実味のない無駄なことを考えては自己嫌悪に陥るのです。

　わたしだけの神社の名前を『涼晴社』から『涼良社』に変更しようと思います。まだ区役所に届けていないので法令上の問題はありません。「晴」はとてもいいイメージの漢字ですが、わたしに縁もゆかりもありません。あえていうならば、安倍晴明が主人公の映画をテレビで観た程度です。しかし、彼は陰陽師ですので力が相当に強い。いや、強すぎます。わたしのところは仏側にはすでに不動明王という強力な仏がおりますので安倍晴明を迎えてしまった時に反発しそうでとても怖いのです。なので穏かな性格でした亡き実母から一文字頂戴することにしたのです。本人に了解を得るのは来月末の通院日ですからまだ相当、先ですけれど、別に悪用する訳ではないので、しばらく無断使用しましょう。ただ亡母は仏様になったので神社にはあまりふさわしくではないのですよねえ。でも、俗名から頂戴したのでいいですかね。あとの心配として、天国から著作権料とか年間使用料とか専属独占契約料、万事永代利用料など、弁護士、閻魔大王経由で来るとひじょうにねえ……でも、閻魔大王は判事ですよね？　退職して大手弁護士事務所と契約ですと。ではこちらは毎度おなじみの弘中惇一郎弁護士にお任せしましょう。変なところで親子決戦になってしまなあ。何としても回避したいですね。

　先日、悶えるほど苦しんだ『武蔵坊弁慶』の完全版DVDの件なのですが、本日、篤志家の方が現れて「こちらにおままごとのような姿を装った、強大な能力を有するパワースポットがあるというお噂を聞き、不躾ながら参りました」果たして、どこの誰がそんな噂を流せるのでしょう？　この前の個人情報漏えいと出元は同じ穴のトトロでしょうか？　もうさあ私見ですけど、心当たりのある犯人の名前を言いましょう。犯人はお隣の松本酒店の血族のうちの誰かです。しかし、あちらさんはこの辺りの顔役のようですから、容易には手出しできませんので、あえて自らは動かず、公権を上手に利用して、血族滅亡に追い込みましょうね。真綿でさあ、ゆっくりと……うしし……。

　ああ失念しておりました。篤志家さんがずっと、玄関で直立不動しています。これでなにかトラブルが起きたら「不法侵入」の疑いでお巡りさんが呼べますけれどね。ここはまあ「どうぞ、あなたの思う存分お祈りください。でも飛んだり跳ねたり手持ちの太鼓叩いてお題目というのはよしてくださいね。簡単に鳥居などが落っこちまして壊れてしまってはもう二度と『鳥居戻すことが出来ませんから』……ええと、あまり笑えないご心境ですかね。そういうオーラを感じます。視えはしませんが。鉤括弧で強調までしたのですが。まあしかし、ここに強大な力を出せるという話は、あなたの買いかぶりだと思いますよ。もしくは過大評価ですかね。仏サイドはかなりのベテラン揃いですが、御神体にいたっては発行年から鑑みるに、いまだ未成年で、お神酒も差し上げられないと自分自身に記入されているのかどうか……」

　わたしの渾身のダジャレに耳を傾けず、篤志家さんはかなり長いことお祈りをしていました。よっぽどわたしがご相談に乗った方がいいと思うのですが、まあ、他人様の信仰の自由を妨げては本末転倒ですので、じっと黙っておりました。

　ようやく目を開いた篤志家さんは、わたしにご寄進を申し出て来ましたので、わたしのポリシーにより「ウチは金儲けの商売をしている訳ではないので金銭の授受は固くお断りいたします」と強硬に拒否したのですが「これをお受けいただかなくては、私の必勝祈願が成り立ちません！」と言うや否や、上半身裸になると、その背中一面に「現行日本国憲法万歳」というタトゥーでしたか？　なんでしょうね。漢字の意味を知らずにデザインの好みでタトゥーを彫っちゃった外国人観光客でしょうか？　その半年後、Yahoo!ニュースに「日本やくざ初のエベレスト単独登頂成功の高倉さん」という記事がありまして、あの時の篤志家さんの画像はイメージですとあり、こちらは神経ヘベレケストに盗聴しました。（変換ミスではありません。混乱した心象を表現しましたといちいち書いた方がよかったでしょうか？）ちなみに画像とは英語でなんと書くのでしょうか？　重要なことを、忘れていました。節約に節約を重ねて、計算上二万円を捻出し、それに高倉さんにいただいた五千円を足して、早々に注文してしまいました。悩み無用。即断即決の心意気です。ものがいつ来るのかは全くわかりませんが、もはや人生に一片の憂いなし？　ではなく悔いなしのつもりで書いているのですが。あの、購入後七年のロートル文士のMacBook Proさん。手前勝手におかしな変換をしないでください。最近とみに増えてます。まさか、魂宿りました？

（この時点で、タイトルの説明は無理と知れましたので、誠に申し訳ございませんが、読者の皆さんにおかれましては、ここから先は立ちあがって、足踏み青竹踏みなどしつつ、本稿をお読みくださいませんか。なんらかの健康効果が出ますのでそれが、長寿のために必要ということで当座はご勘弁ください。近々にそのネタで一席努めさせていただきますので、どうぞ、お見限りにならずご贔屓ください）

　どうもですねえ『涼宮ハルヒの陰謀』に乗り切れません。今日あたり、上の階の、凶悪な怪獣はシーンとしてるのですがね。ようやくもって念願の、オーナーさんからのご叱責でもありましたかね？　それとも、単に猛獣使いが高額時給の性風俗的なアルバイトにでも行っているのですかね。夜になればわかりますかなあ。そういった類の、実に不潔で、いかがわしいアルバイトをしているのなら、今夜にでも、謝罪のためにここを訪れてですね。『虎屋の羊羹』一竿とアルバイト先の『無料一日体験優待券』を百枚くらい持ってきてくれましたらね。こちらとしても「店まで行くのもなんですか億劫ですから、わたしの部屋でデモ販代わりに、一発、ヤッテもらいましょうか……ああ、ヤルのはわたしの方で、あなたはウケる方ですね。日本語は正しく使いませんと人間としての品位が下品になります。なんにしても、一つ屋根の下のゲスな男女のアリエッティーですから、快楽の海に溺れて死にたいくらいですよ」などと言いながら、口にも出せず文章にも出来ないような、お下品で朝まで貫通ではなくて貫徹などということがありましたら、ある意味で奇跡ですね。

　ああ、これでまた読者が減少しようがしまいがもはや関係なく、単純に書ければ幸せ、円鏡のハッピーカムカム、とか言っても誰にも理解されないのですね。インターネットがあと百年前からあれば、もうちょっと、順風満帆な人生でしたのに波乱万丈なバンジョーの弾き語り法師でございました。演目は「かなり大変記」でございました。こちらは、おなじみの栃木ラジオ。全宇宙に向けてお送りしているつもりです。

　ではごきげんよう。また勉強して来ます。