第31話 予兆と妄想

 ごきげんいかがですか?


 ああ、何か雲行きが怪しくなってきましたね。

 ああそうですか。あなたの地方は晴天なのですね。

 もちろん、孤雲庵の窓から見える空も雲ひとつない五月晴れですよ。


 あなたは相当察しがお悪い方のようですね。スマートフォンの画面ばかりを一日中見ていたら人間が本来持っているはずの野生の勘が鈍ってしまい、危険を予知するというすべての動物が普通に使っている力が衰えてしまいます。たまには一日くらいスマートフォンを持たずに暮らしてみればいいと思います。当然のことながら不便ですし、精神的に不安に感じると思いますが、三十年くらい前、そうですよ、ほんの三十年前の人たちにとってはそれがごく普通のことであり、携帯電話を持っているのは酔狂な大金持ちぐらいで、そんな人を町で見たら普通の人たちは「おかしなやつ。没落しな」くらいの悪態をついていたのですよ。外で電話をする必要があれば公衆電話(実際には機体の色がグリーンであっても、通称は赤電話)を探してそれを使用。その他、正確な時刻が知りたいとき、会社に確認事項があったり上司への報・連・相があってもすべて公衆電話を使っていたのです。あなたはお若いようですが「テレフォンカード」をご存知ですか? そうですか、知らないのですね。知らなくても構いませんが、万が一、大規模な通信障害が起こり、スマートフォンなどが使えなくなってしまった時、どうするのでしょうね? 現在でも、法令により一定数の公衆電話は存在しています。いざという時のため、お近くの公衆電話の位置を確認しておいたほうがいいですよ。だいたい駅前や大規模商業施設付近にあります。プッシュフォンがほとんどですが地方によってはダイヤル式の電話しかないことだってあります。基本的な使用方法はマスターしておくことをお勧めします。あなたが若くてお美しい方ならば、この老いぼれが手取り足取り腰取りでレクチャーいたします。


 完全に逸脱いたしました。わたしの勘がひしひしと感じるのは『第三次世界大戦の勃発』の予兆がついにわたしの前に現れてしまったということです。具体的にいえばグレートブリテンその他連合王国のメイ首相の辞任によってグレートブリテンが「合意なきEUからの離脱」をする可能性が格段に高まったということです。グレートブリテンのEU離脱は一見、単に欧州の小さな島国の小さな反抗程度のもので日本には特に影響がないように思えますが、ここで生じたひずみは、トランプの大統領就任をU.S.A.の国民が承諾した瞬間から生じだした世界中のひずみたちを一つの環にしてしまう最後のピースだったとわたしは思うのです。世界はこれから「自国第一主義」「超保護主義」「極右政権の誕生」などドミノたちが雪崩を打つように倒れていき、米海軍空母がノースコリアとイランに派遣されることによって極めて危機的状況になります。客観的に見てイラン首脳は案外冷静に対処できそうですが、ノースコリアの元ロケットマンのお兄さんはプチハートなのでこらえ切れず、トランプもその人生において辛抱など一度もしたことがないでしょうから、炎はここから点火してしまいます。そうすると関税戦争ですでに怒り骨髄に入っている習近平がノースコリアに力を貸すのは自明の理であり、炎は否応もなく日本に飛び火します。ロシアは、第二次世界大戦の際の卑怯極まりない態度を見ても明らかなように、戦局を見極めるため全く動きません。さて、ここでの日本の立場は普通に考えればU.S.A.につくのが当然だと皆さんも思うでしょう。しかし、もし本気で生き残りたいのならば、中国寄りの中立しかありません。U.S.A.につくことを表明した瞬間、習近平はためらいもなく日本へ原爆を複数発射します。日本は瞬時に地球からなくなります。遺書を認める時間もないでしょう。たとえ書いても雲散霧消しますが。


 さて、欧州ですが極右政権が乱立した場合、もともと英・仏・独といった主要国の国民はソリが合わず、潜在的な憎悪が満ちています。ドイツだけではなく、どの国からでも「新しきヒトラー」は生まれかねないのです。ヒトラーの能力のすごさは、人々を魅了し、洗脳する演説力と、裕福な家庭が多かったユダヤ人をターゲットにして徹底的に迫害することである種のスケープゴードあるいはドイツ国民の不満を緩和させるという冷血なしたたかさを持っていたことです。もしかすると、彼はサイコパスだったのかもしれませんね。


 中東はどこにも与せずに原油を高値で売りまくって金儲けに徹するでしょうね。イスラエルは、アメリカに協力したいでしょうが、戦局は極東地域で起こっているので何も出来ません。


 日本が消滅してしまっていたらもう書くこともありません。だって、みんな消えてしまっているのですから。でも、万が一、阿呆首相サイドの人間が一人でもこちらのサイトの会員で、わたしの妄想を読んでいただいているならば、秘策を与えましょう。それは早急に中国と同盟を結んだ上で、迅速に全国民を一旦、中国に移民させるのです。つまり戦争中、日本列島を空っぽにすることで国土を守り、大陸に国民を逃すことで国民を守るのです。トランプと習近平を比較した時、どちらが正常な精神の持ち主か? あまり考えなくとも答えは出ると思います。世界を一瞬のうちに平和的な方向から狂った方向へ移してしまった「悪の権化」は誰かということです。わたしは習近平という人物を全く評価していませんが、中華の人間が古代から連綿と受け継いで来た、大陸的なおおらかさと寛容さを信じているのです。


 極東の戦いで朝鮮半島が事実上崩壊し、U.S.A.が撤退し、敗戦によってトランプが詰め腹を切らされれば、まあいい感じですが、統治者を失った朝鮮半島を中華とロシアのどちらがとるかで戦後の日本が変わっています。ロシアは第二次世界大戦集結間際のあの時と同じように朝鮮半島崩壊の瞬間を狙って形成不利になったサウスコリアに宣戦布告し、行きがけの駄賃で金のデブ野郎を殺してしまうのです。ここは中華の勝利を祈るよりほかありません。甚だ不本意ではありますが他に比較的真っ当な精神を持った指導者がいないので忍ぶよりほかにないでしょう。


 欧州戦争はEUの崩壊と個々の国々の再自立化を促して終わると思います。どこの国から「新しきヒトラー」が生まれたかを明示するのは危険ですし、わかりません。ただ、国民性というかその性格ですね。お硬い国民性のあるお国から出ると考えるのが無難でしょう。


 ここまでの文章はただのぼんやりとした予兆を曲解してわたしが思わず書いてしまった駄法螺です。まさか、真に受けたりする人はいませんね。他人の妄言を安易に信じてはいけませんよ。前に申し上げましたよね。「全てを疑ってかかれ」とね。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

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