第28話 また休講日

 ごきげんいかがですか?


 せっかくご足労いただいたのに臨時で休講させていただいております。申し訳ございません。

 正直に申し上げますと、前回の休講は論ずべきテーマが見つからないためのものでした。しかし、今回はいくつかのテーマが思い浮かんでいます。しかし、わたしが思っていた以上に浅学のため、これらのテーマを論じるにはもっと勉強し、ある程度まとまった自論を展開出来なかればおかしな頓知問答になってしまうと思い一旦引かせていただきました。お気づきかもしれませんが、わたしがこれまで述べてきたことは上っ面をさらっただけの薄っぺらい「論理もどき」でした。もともと幼少期から、わたしは奇抜な言葉を使い、あるいは言葉のトリックを駆使して相手をごまかしてしまうという姑息な手段を用いて生きてきた人間です。全てをジョークとダジャレで装飾して、相手が爆笑したら勝ちというギャンブルをしていました。それは真実の自分を知られるのが怖かったのだと思います。実はいまになっても怖いです。わたしの真実は、言うなれば、真っ赤な偽物なのです。

 でも老いぼれて来た現在、このまま死んでしまったら、あまりにも情けないと思い「勉強家宣言」をして、この連載に取り組んでいるのです。ある意味でこれはわたしの奸計に引っかかってしまった、大勢の純真な人々への反省の気持ちです。特に一番心に引っかかっているのは大学の恩師である故堀晋作先生に対してのわたしの振る舞いです。わたしは無意識ではありますが先生を単位獲得のための道具に使っていた気がしてなりません。わたしが教えを受けた教師あるいは教授方の中でもっとも優しかった先生。あの当時は言葉のニュアンスで言えばわたしのスタンスはドライかつビジネスライクであり、よく夏休みに自分の別荘に誘っていただき、住所まで教えていただいたのに、連絡ひとつしなかったという、己の薄情さ。薄情な性格の原因は、わたしの本当の血族に受け継がれた遺伝子および、養父からの強い影響なのですが、先生が亡くなって相当な時が過ぎた今になって、ようやく自分の非に気がつきました。先生の墓所などわかりませんので心の中で祈るしかありませんが、あの頼り甲斐のある長身の背中をまた追いかけたくてなりません。


 さらに大学在学時の学習に対するスタンスにも反省しなくてはなりません。確かに親の強権に屈し、不本意ながら経済学を専攻しましたが、真っ当な人間ならば、気持ちを切り替えて、経済学の知識を真剣に吸収して行くべきでした。しかし、わたしは安易に卒業必須単位数を獲得するためのみの勉強をしたため、現在最も知識のない分野が経済という本末転倒なことになってしまいました。あの時、本当の勉強をして経済学の知識を深く、広く追求するぐらいの気迫を持っていれば、もしかしたら大学院に進み、経済全般の論文や批評文などを書き、そこそこの社会的知名度を得て、そのついでにちょっとお遊び程度に小説を書いて発表する機会もあったのではないかと考えてしまいました。

 まあ、これらの妄言は「負け犬の遠吠え」に過ぎず、万事において遅きに失した愚か者の浅い夢です。


 ただ、老いぼれではありますが知への欲求は未だ衰えてはいません。逆に学生時分よりも増している気がします。「始めるに遅きはない」と言いますので認知症になるまでは真摯な態度で広く勉強して行きたいと思います。わたしは、私称「勉強家」ですから。でも時に若干過激なユーモアを挟むことをお許しください。わたしの脳みそは常にジョークや駄洒落を作り続けているので、逃げ場がないと爆発してしまうのです。


 最後に中央官庁のキャリアという名の世間知らず、特に今回は厚生労働省の某幹部職員に怒りの鉄槌を言葉の暴力に変えて与えてやりたいと思います。先日、国会答弁の折にそのゲス野郎は「生活保護受給者の子どもが大学に進学するのは好ましくない」と発言したそうです。これは公僕の発言していい言葉ではありません。高等教育が当然のようになっている現在において、高校卒という履歴は就職にとって完全なる不利条件です。つまり、正規社員で就職は事実上不可能になり、契約・派遣・アルバイトというたいへん不安定で低賃金な働き口を探すよりほかなく、結局は生活困窮者になってしまい、新たな生活保護受給者を生み出すだけです。だいたい一般の大学生はまともに勉強しているのでしょうか? 極端な例を出せば、アインシュタインが生活保護受給者の子息であっても高校以上の進学は好ましくないのでしょうか? もし本気でそう思っていたら、アインシュタインは生活に汲々としてしまい。相対性理論の構想など絶対に出来ません。こうなったら世界的な大損失ですよね? またはアインシュタインは優れた頭脳を持っているので、原子爆弾を一人で作り上げ、国会議事堂や議員宿舎を消滅させ、罪のない人々まで、命を落とすことにだってなりかねないのです。頭脳明晰なものを激怒させたら日本中のやくざを揃えるよりも、はるかかなた、天文学的数字並みに強い、負の力を発揮し、日本という国をこの世から消し去ることにもなるのです。

 そんな簡単なことにも気づかない厚労省幹部職員など、国民一人一人の顔も気持ちも見ることの出来ない大うつけであり、公務員をする権利すらありません。これから先、あなたの唯一行くことの出来る場所は地獄の底だけです。ゆっくりとリアル熱湯風呂にでも入って全身の皮膚を剥がしてしまうがいいさ。底辺の悲哀が身に染みるでしょうね。ザマアミロ。


 まあ、ここでいくら叫んでも社会的反響が期待出来るものではありませんが、毎度おなじみ、言霊の威力だけは確実に残りますのでね。せいぜい身辺に気をつけるといいでしょう。わたしは一切の許しも与えませんが。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。 ただわたしより社会勉強をし直すべきゲスが多くいるようですが……

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