第14話 特別講座 エンドレス
ごきげんいかがですか?
今回も「野宿」をしたいのですが、お口が喋りたいと申しておりますので手短に。
横になって本を読んでいて思ったのです。わたしは左利きなのですが、縦書きの本を読む時、本を右手に持ち、左手でページをめくります。すると、めくるページが左手側にありますから、スムースにめくれます。それで考えたというか、疑問に感じたのは多数派である右利きの方たちは、ページをめくるのに不便を感じないのかということです。
似たようなことは書くときにもあります。学生の時分など、手書きのノートに文字を書くとき、横書きの教科では、鉛筆などを用いて左手で字を書くと、書いた字を手のひらの小指下の腹で擦ってしまい、手が真っ黒になってしまいます。しかし、縦書きの国語の場合は逆に白紙の方に手があるので汚れません。日本語は基本縦書きですから、大多数の人が手を真っ黒にしてるというより、かつてしていたのですかね? ひじょうに不合理ではないかと思います。
あと、関係はないのですが、読書中に気の利いた台詞が思い浮かんでしまって、脳の中で文章作りに熱中して、気がついたら、一文字も本の方を読んでなかったということはありませんか? わたしは最近それが多くて困ってしまうのです。
やっと本題です。
たまプラーザ店三年目は店の大改装が行われて、朝六時に店に出て作業。開店したら出勤日は平常業務、公休日ならば一旦帰って休息。閉店したらまた作業して終電終バスで帰るなどという荒業を二週間くらいしたでしょうか。そこで、初めてPOSレジとサーバーがついたので、仕事が劇的に楽になりました。ところが、鬼瓦店長が早期退職制度に乗っかって辞めてしまい、八月の一ヶ月間、店長不在、本部からの応援なしという恐ろしい事態になりました。しかも、わたしは揉め事解決責任者の座をありがたく押し付けられました。わたしはクレーム処理が上手だと思われていたのです。他の人が出て行くと、ことが大きくなることがしばしばあったのです。その度、鬼瓦氏は「お前が行けばよかったんだよ!」とわたしに八つ当たりなのかなんなのかよくわからない叱責をくれたものでした。
本当のわたしは小心者なので、トラブルが起きないようにずっと店頭を見張っていました。それでもコミックをシュリンクする機械が燃えたり、レジがぶっ壊れるなんてしょっちゅうでした。大ごとにならなくて本当によかったです。
九月になって、新店長、ひとりでブーフーウー、または左門豊作店長が赴任してきました。若い店長です。彼はおそらく、わたしのようなタイプの人間が嫌いだったと思います。しかし、わたし以外に店の事情に通じている人間がいなかったので、我慢して重用したのだと思います。鬼瓦氏と違い、左門店長はアグレッシブな反面、キレやすく「店に出られないでスタッフ業務だけをやっているやつはクズだ!」という心に残る暴言を吐かれました。
さて、わたしの青春の掉尾を飾った、たまプラーザ店とお別れしましょう。わたしはお店の先輩、年上の女性と結婚することになりました。なので、自動的に異動となりました。行き先は戸塚店。わたしと入れ替わりに、現衆議院議員柚木道義(いつまで、無所属なんだ?)が異動して来ました。ものすごく、仕事が出来なかったそうです。書店員の仕事がまともに出来なくても、国会議員は出来るのですね。ならば、わたしにも出来るのではないかしら。ああダメですよ。選挙に出るときの供託金が払えません。残念でした。
戸塚店では酷い仕打ちが待っていました。わたしの担当が雑誌だというのです。書籍と雑誌。同じように思われがちですが、全く違うのです。いろいろ違いがあるのですが、決定的な違いは、書籍にはISBNコードがついていて、雑誌には雑誌コードがついているということです。雑貨やらスーパーのレジでピッとやるのはJANコードと言います。要は書籍と雑誌は全くの別物だということです。
わたしは雑誌のことなど何も知らなかったので、新入社員の時以来、久しぶりに勉強しまくりました。特に難しいのがムックという、ガチャピンの相方とは全く無関係のものです。ムックとはマガジンとブックのハーフのことで、雑誌コードとISBNコードが両方ついた二重国籍でわたしの脳みそは混乱します。さらに、もっと恐ろしいのが増刊号で、通常は普通号の雑誌コードの末尾に1を足して偶数にしたものが増刊号の雑誌コードなのですが週刊誌の場合は末尾が発売週を表しているので、末尾が6〜9が増刊号なのです。さらに、本誌とは全く関係のない内容のものが発売されることも多く、お客様向けの在庫検索機でも調べることはほぼ不可能です。もう、これ以上ディープなことを書いても皆さんのお役に立ちませんのでやめましょう。とにかく、私は通常の出社時間よりも一時間以上早く出社していたのですが、古参バイトのコミック担当のシングルマザーも朝早く出勤していて、わたしと彼女は争うように早出をしていました。もちろん一銭にもなりません。男の意地だけでやってました。ところが、そのコミック担当とわたしの反りが全く合わず、さらに、古参バイトにうるさい女性がいっぱいいて、わたしの人誑し術も地に堕ちたようでした。この時点で、かなりメンタルに来ていました。戸塚の女性たちの影に怯えていました。それでも、雑誌担当の間は物量が多くて仕事に集中出来ていたのでよかったのですが、文芸書担当が新規店の小田原店に急遽、移動してしまったため、やむなく文芸書に担当を変わりました。当時の戸塚店はたまプラーザ店と違いかなりヒマだったのです。なので、すぐ担当の仕事が終わってしまい、だんだんとモチベーションが低下して行きました。そこにかつての西口店店長が取締役になって、来店し、社員面接をしました。そこで「お前はこの店にいる必要のある人間か?」と聞かれたので「ええ、いらないと思いますよ」とわたしは答えました。たぶん、この面接のせいで、終焉の地、北里大学売店に左遷されたのだと思います。
次回、悪夢の最終回が待っています。フレッシュマンよ教訓としなさい。
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
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