第13話 特別講座の続きの続きの続きかな?

 ごきげんいかがですか?


 さあ今回も「野宿」といきましょうと言いたいところですが、あまりに面白い話があるので書きます。なお、このくだりにはわたしの大好きな「下ネタ」が含まれます。注意喚起はしますが、激しく嫌悪感を感じる方は読まないでください。わたしの心の中には官能小説の大家川上宗薫先生の魂もいらっしゃるので仕方がないのです。いっそ、官能小説家になりましょうか? しかし、実体験は少ないし、この場所で書くとB A Nされてしまいますね。やめときましょう。

 面白い話ですよ。例の見城徹対津原泰水のバトルで、高橋源一郎が津原擁護のコメントを出しました。しかし、よく考えてください。過去において、津原の弟子というか愛人だった室井佑月を高橋が略奪して結婚したうえ、離婚までしているじゃありませんか。つまり津原と高橋は(ここから下ネタです)「穴兄弟」(下ネタは以上です)なんですよ。どっちが兄でどっちが弟かはわかりませんが、実に麗しき兄弟愛ですよね。ははは。


 本題です。

 言い忘れましたが、わたしは異動前の西口店時代にセールスリーダー試験に受かっていまして、実は立場的には能面冠者と同格だったのです。いまにして思えば、わたしの異動前から、もう一人いたリーダーが産休だか育休のため不在で、能面冠者は一人で責任の大部分を負わされ、やっと補充が来たと思ったら、アルバイト以下の知識しかない学参バカのわたしだったので、がっくり来たのでしょう。能面冠者の気持ちもわかりますね。最近は縁遠くなりましたが、わたしが結婚していた頃は妻だった人と能面冠者が懇意だったので、外で食事に同席したりしましたし、普通に話せましたよ。彼女も彼女なりにプレッシャーと戦っていたのでしょう。わたしもそこまで気遣ってあげられる度量がなくて申し訳ないと思います。今はですけどね。


 たまプラーザ店二年目。わたしを拾ってくれた店長と、優しくて頼り甲斐のあった課長が異動した上に、たまプラーザ店の課長制がなくなってしまい、店長の直属はリーダーになってしまいました。リーダーは能面さんとわたしと西口の時一緒に働いていて、とても嫌いだった先輩男性が来ました。イヤな気分でした。

 そして、二十年近く経ってもあの光景をはっきりと思い出します。新店長の登場シーン。朝礼をしている途中に、やくざみたいなおっかないオヤジが、本当のやくざ並みのゆっくりした歩みで、棚をじろっと見回して店を検分しているんですよ。恐怖のあまり、わたしはオヤジの存在をなかったことに脳内変換しました。

 しかし、やっぱりですねえ、オヤジは存在していたのです。新店長は開口一番、わたしに「就職本の棚はなんで傾いてんだよ!」と恫喝しました。就職本はアルバイトさんの担当というか、わたしはその日、初めて学参でない担当になったばっかりだったのですから答えようがありません。とりあえず、視線を下げました。頭を下げたように見せたのです。

 翌日、わたしの持病、十二指腸潰瘍が叫びをあげ、会社を休みました。


 恐れおののきながら、一日で復帰すると、店長は「もう、来れたの?」と案外優しげな声を出しました。この店長は顔面こそ、鬼瓦か、沖縄のシーサーかという恐ろしい怪獣でしたが、本を売る嗅覚が別の意味で恐ろしくて「この本百冊注文して」と言われ、注文して入荷すると、今ははどこの書店でもやっている多面陳列をして、それがまた、飛ぶように売れるのです。びっくりしました。これが経験値というものかなあ。いや才能かもしれません。その前の店長は優しかったですが、考えがネガティブで、在庫を減らすことは考えても売り上げを伸ばすことは端から諦めていました。対して鬼瓦店長はポジティブでした。売れるなら在庫が多くてもいい。いずれ売れて在庫は減るという感じでしょうか。あと、店のメンバーのモチベーションを上げるために、POP講座やPOPコンテスト、クリスマスギフト包装講座を開き、本なのに形が三角という書店員ごろし絵本『サンタさんたすけて』の包み方を教えてくれました。もちろん、もう忘れました。

 そして、なにかというとわたしを外に連れ出して、出版社巡り、人文会(お堅い本を出している出版社の営業さんの集まり)の飲み会で溜池山王まで連れていかれました。その時同席した厚木店のアルバイトさんがえらく美人だったので、仲を取り持ってくれるのかと期待しましたが、これっきりでした。地元の岡山に帰ってしまったとのことでした。本当にいい娘さんでしたので、いまも残念です。それからお茶の水の日販本社や、同所で行われた「新春を祝う会」にも連れ出されました。日販の営業どもはわたしに無理やり酒を飲ますので、お返しに日販のお手洗いで嘔吐してやりましたよ。ははは。この時点で、わたしはまだ自分の酒量の限界をわかってなかったのですね。二十代の終わりだというのに。

 連れ回してくれた一方で、リーダーの中で最年少のわたしにはものすごい仕事量を与えられました。たぶん、わたしのことを期待して、鍛えてくれていたのでしょうが、本当に不公平でしたよ。たまプラーザ時代はガスター10と鎮痛剤常用ですね。ただし、普通のバファリンは強すぎてお腹が余計に痛むので、生理痛用の優しいのを買っていました。メンタルの脆いわたしがなぜここで壊れなかったのかがちょっと不思議です。

 一番辛かったのは、毎日のガントチャート作りを一年間、一人でやったことですね。戦力の調達とグループごとの時間調整でへとへとになり、さすがに二年目は分担制にしてもらいましたが、他のリーダーはガントチャートを作るのが下手でした。あとは経理業務までやらされたことですかね。朝の荷物上げからレジ締め、入金まで全部やりました。

 そして、クライマックスは、能面さん突然の経理課異動のイレギュラー人事発令。深読みすると、鬼瓦店長がわたしの動きやすいように能面さんを排除したのかもしれません。能面さんは悔しくて大泣きしたらしいです。全て憶測ですよ。自分本位すぎる考えですかねえ? 自慢話になってますか? そのうち凋落しますので。


 残念ながら、長期連載決定です。だってまだ、たまプラーザ店から抜け出せませんから。

 ではごきげんよう。また勉強して来ます。

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