第8話 捨てる神ありゃステルス戦闘機もあり
ごきげんいかがですか?
上の部屋に前のクソガキ、おそらく横浜商科大学の体育会系(あくまで個人の感想です)が逃げ出して以来、十ヶ月ぶりに入居者が来ました。もちろん、何の挨拶もありません。足音などがしなかったので女性なのではと妄想するとともに、静かに暮らせるなと安心したのですが、それは早計でした。午後十一時ごろ、突然に「ドタドタッ」と激しい足音のようなものが聴こえました。わたしは「えっ」と戸惑いました。そしてその音は止むことなく一時間以上続きました。再び、赤い悪夢。
最初は幼児が走り回っているのかと思いました。しかし音を分析すると、ボールを床に転がすような感じがして、それを何者かが、追いかけているようなのです。わたしの思考は結論を導き出しました。「犬だ。それも大型のな」。ああ、なぜ、嫌なことは繰り返されるんでしょうね? なので「雑音聴くより、ミスチル聴こう」とiPod classicを取り出して、やり過ごしました。当分、こういう状態が続くのでしょう。でも大丈夫です。この孤雲庵を内包するアパートのわたしサイドは、おそらく「心理的瑕疵物件」(『視えるんです』より)なので、前のクソガキのように、すぐに逃げ出すでしょう。
さて、みなさんは神と仏、神社と寺院の違いを言えますか? 簡単に言ってしまえば、神様を神主さんらが祀っているのが神社で、仏にお坊さんが経を唱えているのが寺院ですね。当たり前すぎて怒られちゃうかな?
ではミクロ的に言って日本の神と仏の違いは何でしょう? 神は「八百万の神」と言うように、日本に古来からいらっしゃったものです。日本人はなんでも神様にしてしまう傾向があります。天照大神から便所の神様まで、多数。死んだ人間だって神様にしてしまいますよね。思いつくだけでも菅原道真、豊臣秀吉、徳川家康、乃木希典。神社こそありませんが、西郷隆盛だって神格化されています。日本独特の、古来からの神です。
一方、仏教はインドで発生し、中国や朝鮮半島を経由して飛鳥時代に日本に渡って来た外来宗教です。大臣の蘇我馬子が熱心に信仰し、日本初の寺院を建立したとされています。しかし、大連の物部守屋らが、仏教に対して異を唱えて、時の天皇の勅許を携えて寺院を破壊、仏に使える女性たちに辱めを与え、仏像を引きずり出して遺棄してしまいます。
結局のところ、馬子と守屋の権力抗争の一環なのですが、神か仏かという論争はさらに激しくなり、結局は戦争にまで発展します。ここで、馬子の軍に、今は厩戸王という呼称で統一されている、少年、聖徳太子が登場し、馬子軍のシンボル的な存在となります。進軍中に聖徳太子は即興で、手彫りの仏像を作り、馬子軍の士気を盛り上げます。そして戦争は守屋の戦死で集結。馬子の地位をあげるとともに、日本において仏教が公式に認知されていくのです。仏と仏教では呼んでいますが、大きな視点で見れば、元はヒンドゥー教の神の変形ですから、仏も神の一種だと思います。
余談ですが、厩戸王は母君が馬小屋で産気づいたからその名になったと言われています。察しのいい方ならわかると思いますが、西洋にも馬小屋で生まれた方がいます。そう、イエス・キリストです。わたしは思うのですが、古代においても、ヨーロッパのビッグニュースというか情報が日本にも来ていたのではないでしょうかね? 厩戸王のエピソードはもしかして、キリストの伝承を後世の人が聖徳太子のことを書くときにパクった可能性もあります。そうすると、厩戸王という呼称すら実在のものか疑問視されます。わざわざ、馬小屋の王なんて、おかしな名前はつけないでしょう。前に誰かが言っていた蘇我一族の名前は後からつけられた蔑称だという論理と同じことになります。聖徳太子でもなく、厩戸王でもなく、では一体本当はなんなのでしょうか? 聖徳太子は晩年、自分の作った斑鳩宮に一族で引きこもってしまいます。決して輝かしい人生ではなかったのです。
結論を急ぎましょう。本来は神道と仏教はお互いに異教であり、対立するものです。しかし、宗教観が薄い日本人は両方のいいとこ取りをしていますね。別に仏前で結婚しても神道で葬式あげてもいいんですよ。でも、ごちゃ混ぜ。外国人から見たら、クレイジーな状態なのです。
寛容の精神というのですかね。なんでも取り入れるのは日本人のいいところでもあると思います。
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
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