第5話 史料整理法暴論
ごきげんいかがですか?
前回の発言が言霊でしょうか、こだまでしょうか、金子みすゞでしょうか? 『もののけ姫』でしょうか? 自分でもよくわかりませんが、急に告知もなく、上の部屋に業者が来ました。新しい入居者でも来るのでしょうかね。出来ればか細くて抱きしめたら壊れそうな。それでいて情の深い、デビュー当時の中森明菜のような美人よ来たれ! と強く念じています。ええ、隙あらばなんとやらです。わたしは聖人君子ではありません。欲にまみれた餓鬼畜生です。
それはそうと、業者は挨拶もなくやって来て、やかましいこと、この上ないです。まるで、天覧相撲や台覧相撲の時に観られる、いつもと違う幕内土俵入り、要は、土俵の周りを囲んで、ちょんちょんと腕だけを使った、形ばかりの四股もどきで済ますのではなく、力士が四本の縦列を作って、四股名を呼ばれれば、陛下か殿下に立礼して行き、最後に本気の四股を踏む、アレですよ。あれを何回も稽古されているような有様で、わたしはこう見えても、といっても皆さんには見えませんが(北欧のテニスプレーヤーなどをイメージして欲しいです。あんこ型の力士はダメですよ)、ものすごく強烈に短気なんです。だから、よほど二階に上がって怒鳴りつけようかと思いましたが、理性と弱気の虫がバランスよく反応したので、ふて寝をしました。そうしたら、妙に気温が心地よくて全然、起きられなくなりました。えへへ……
マクラが少々長すぎました。まあ、前回同様「日本史はフィクションかもしれない」という……そんなことわたしは言ってませんか? ええと、そういうニュアンスで行きます。
日本と中国の歴史で、最も大きな違いはなんだと思いますか。それは日本の天皇家が、まあちょっと微妙なんですけれど、古代から現代まで連綿と続いていることに対し、中国は一つの帝国が滅びて、新しい帝国が生まれるということです。始皇帝の秦からスタートし、漢・晋…(以下省略)…明・清まで、五胡十六国という分裂時代もありますが、基本的に一つの帝国が衰えて来たら、新しい帝国が勃興するというシステムです。
ですので、皇帝の家にも姓があります。ヨーロッパだって神聖ローマ帝国のハプスブルク家みたいにちゃんと姓があります。あとはわかりません。すみません。
古代の日本、倭の国と言いますが、その最初期は強国というか、強いグループの集まった、連合国家で、天皇の原型である大王はその時一番強かったグループの首領がなったと思います。だから、姓もあったはずです。それが次第に今の天皇家に一本化されて行きました。その間何があったかは想像にお任せします。そして、次第に天皇家が家臣のように姓があるのは畏れ多いとして、消えて行くのです。たぶんですよ。天皇家の姓がわかったら超ビッグニュースですね。あくまでも私見ですが、古代天皇家はシャーマンであったのではないかと思われます。
前置きが長くなりました。取り急ぎ、結論を話します。中国の帝国には前の帝国の記録を詳細に書く習慣がありました。それが一時期を除き、最後まで続きます。それを正史と呼ぶようです。当然前政権のことを現政権の人が書くので恣意的な部分も多数あるでしょうがこれらが一級の資料になります。
翻って日本でも当初は『古事記』『日本書紀』を編纂するなど中国に倣って、正史を作っていましたが、すぐに廃れてしまいます。そうすると、在野の人やヒマ人な貴族、筆まめな人、僧侶、本当にただのヒマ人、ああ、わたしかこれは。とにかくそういう人の古書を複数冊探して、ある事柄を調べなくてはならず、とても手間がかかります。なので、わたしは史実に基づいた歴史小説は書きません。いえ、書けません。
平将門公など、もし『将門記』がなかったら、坂東八ヶ国を支配したり、新皇を名乗ったことすらわからなかったそうです。この『将門記』は最初の表紙や数ページがなくなっているそうです。だから、著者もわかりません。乃至政彦は著者を推測し「将門の比較的そばにいて古典籍に明るい、おそらく僧侶」としています。さあ、皆さん『将門記』の完本を見つけ出しましょう。
正史がないということは、やっぱり恣意的な文書に頼らなければならず、ますます、わたしのいうところの「日本史は出鱈目」説が……多くの人がすでに言っているんですか。ああ、そうですか。じゃあ、わたしはノーベル歴史賞をとって、ノルウェーで優雅にダンスを踊れないんですねえ。残念。はあ? ノーベル歴史賞そのものが存在しないのですかあ。この燕尾服、返品は効きませんかねえ、サカゼンさん?
ではごきげんよう。また勉強して来ます。
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