第26話

「中西に何かあったんですか?」

 デスクに両手を突いたまま受話器を置いた吉田課長に訊ねる。

「いや、まだはっきりとしないんだが、警察の話に寄ると、横浜の青葉区にある『こどもの国』の近くの脇道にうちの営業車が乗り捨ててあったらしい。その車は中西が使っていたのに間違いない」

「中西は?」

「いや、それについては何も言ってなかった。ただ車が放置してあったのを近所の住人が通報したということだけだ」

「そうですか」

 真田はその言葉を聞いてとりあえずほっと胸を撫で下ろした。

 しかしそれで済んだわけではない。

(じゃあ運転をしていたはずの中西はどこへ行ったのだろうか?)

 新しい疑問が泉のように湧き出してきた。

「きょうきみは何か特別な約束があるか?」

「いえ、別にアポは取ってませんからこれと言っては……」

「じゃあ悪いけど、横浜まで行ってくれないかな。俺が行くべきなんだろうけど、やっと纏まりかけた商談があってどうしても外したくないんだ。だから横浜の放置してある車を確認してきて欲しいんだが、だめか?」

「いや、 別にかまいませんが、私でいいんでしょうか」

「大丈夫だ。なに、現場に行ってうちの車に間違いないか見てくるだけでいいんだ。そのあとのことは部長と相談して対処するから。確か1台営業車が空いているはずだから、それを使ってくれたらいい」

「わかりました」

 真田は早速駐車場に行き、ナビに横浜・青葉警察署の場所をインプットすると、首都高3号線を走り用賀から東名高速道路で青葉ICに向かってひた走る。

 真田はハンドルを握り締めながら、中西の安否が気になった。

もし仮に車が盗難に遭ったとしても本人が無事であれば真っ先に会社に連絡してくるはずだし、無断で会社の車を人に貸すということなどまず考えられない。果たして彼はどこに行ってしまったのだろうか。いまとなっては中西が無事であることを祈るより他ない。

 青葉警察署はインターを出てすぐのところにあった。

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