第25話
週が明けての木曜日。
ここ3日ほどまったく中西の姿を見ていない。客先の都合でまれに会社に顔を出さないことがないこともない。だが3日となると首を傾げたくなる。吉田と言う営業課長に事情を訊ねてみることにした。
「最近中西の姿を見ませんが、課長何か聞いてます?」
「いや、こっちがきみに聞きたいと思ってたところだ」
吉田課長はデスクの椅子に坐ったまま顔をしかめて答える。
「無断欠勤ということでしょうか?」
「そうは思いたくないが……。いや、じつは昨日あいつに用があって携帯に何度も電話したんだが全然出なかったんだ。ひょっとして具合を悪くして寝込んでるかもしれんと思って自宅に電話したけど、やはりだめだった」
中西は独身でひとり暮らしなため、何かあった場合本人が連絡するよりない。もし病気か事故だとしても、会社に何がしかの連絡があるはずである。いまだにそれがないということはやはり無断欠勤とするより他ないのだろうか。
真田は、最近ふたりの間で話題になっている、あの会社のことを課長に話すべきか否か逡巡したが、こんな状況で何を子供じみたこと言っているんだ、と鼻先であしらわれるような気がして胸の奥にしまいこんだ。
確かにふたりの間ではブームにはなっているものの、それが欠勤の原因になっているとは考えがたい。結びつけようがないのだ。
「ちょっと待ってください」
真田は手にあった携帯電話を開くと、慣れた手つきで中西に電話を入れた。
「やはりだめですねえ」
真田は残念そうな顔で課長の顔を見た。
吉田課長はさもあらんと言った表情で真田を睨むようにした。
「そうか。真田くんちょっとタバコでも行こうか」
そう言って椅子から立ち上がろうとした時、
「課長、横浜の青葉警察署から電話が入ってます。3番です」と部下の声が聞こえた。
吉田課長は急いで受話器を外すと、急に難しい顔になって受け答えをはじめる。
その様子を見て電話がかかってきた先が警察だったことから、中西の身に何かが起きたと連想した真田の顔色が見る見るうちに土色に変色してゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます