第22話  5

 朝遅くまでベッドの中で真田はずっと昨夜のことを考えていた。

 どう思いを巡らせても1本の線として繋がらない。整理する意味で事の起こりからなぞってみることにした。

 あの会社のことが気になった切っ掛けは別として、客観的に見てもいまだにあの会社のスタンスがよく理解できない。

 確かに業務内容と会社の在り場所に相関関係はないものの、人命を救う架け橋を業務としている(老人に聞いた話)にはあまりにも事務所が貧弱だし、会社の顔と言ってもおかしくない看板が逆にわざと目立たなくしているようにも見える。余計なことかもしれないが、ビルや看板があれでは信用・信頼にも関わるのではないだろうか。

 次に、中西が調べたところでは法人登記はされていないし、電話帳には番号が掲載されてない。それどころか公開さえされてない。あの事務所に連絡を取ろうとするには、もっぱらクチコミか直接聞くより方法がないように思える。

 さらには、まったくの偶然だが自分が行きつけのスナックで、日本臓器製造の責任者とおぼしき「箕浦」と言う人物を知ることになった。そして箕浦を店に連れて来たのは、食品冷凍機械の会社の人間だと聞かされる。箕浦と何か特別な関係があるのだろうか、それとも自分の思い過ごしで、中西の言ったようにただの知り合いといったところだろうか――。

 突然寝室のドアがノックされた。

「パパ、いつまで寝てるの? 早くご飯済ませてよ。急がないといい品物がなくなっちゃうじゃない」

 恵理子は休みくらいゆっくりさせてやろうと気づかってこの時間まで催促を控えていたのだが、とうとう痺れを切らして寝室に顔を覗かせた。

「わかったよ」

 真田はベッドから脱け出しながら、3日前に恵理子がイオンのバーゲンに行きたいから車に乗せてって欲しいと言っていたのを思い出した。

「子供たちは?」

 ダイニングで朝刊を拡げながら真田は、キッチンで目玉焼きを焼いている恵理子の背中に訊いた。

「正也は部屋にいるけど、明日実は公園」

「そうか」

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