第4話 その後の話

 あれから私は、夕食のお弁当を二つ買い、息子を連れて家に戻りました。

 あの日、主人は出張で留守だったんです。ですから、私の職場に電話がかかってきたときは、どうしようかと思いました。

 「何でこんな時に出張なの?」って思いました。

 でも、これは私の勉強なのかな?と思いなおし、すぐに駆け付けました。

 職場が遠いので、警察がいたらスピード違反で捕まっていたかも知れません。それほど私は後先を考えず、夢中で車を飛ばしたのです。

  これは私の勉強なんだ。

  本当の親になれるか、試されているんだ。

  こんな時、本当の親ならどうするんだろう?

 コンビニに着くまで、色々なことを考えながらハンドルを握っていました。

 本当の親ならきっとこうするんだろうな、って考えていたからかも知れませんが、コンビニに着いたときはとっさに、土下座をしていました。

 店長さんのご配慮で、何とか穏便に済ませて頂き、息子と二人で家に戻ったのですが、帰りも、家に戻ってからも、息子とは一切言葉を交わすことはありませんでした。

 コンビニで買ったお弁当を食卓の上に並べましたが、息子は見向きもせず、二階にある自分の部屋へ閉じこもってしまいました。

 私も、せっかく買ったお弁当ですが、手を付けることはありませんでした。

 何にも考えられず、ただボーっとして、食卓の椅子に座ったまま、時間だけがどんどんと過ぎて行きました。

 何時ごろだったでしょうか、多分12時は過ぎていたと思いますが、ドンドンドンと階段を下りてくる音がして、はっと我に返りました。

 振り向くと、息子が立っていました。

「お母さん、ごめんなさい」

 驚きました。息子が「お母さん」と呼んでくれたんです。

 それまで一度も「お母さん」と呼んでくれたことがなかった息子が、「お母さん」と呼んでくれたんです。

 涙がどっとあふれてきて、私は思わず息子をぎゅっと抱きしめてしまいました。

 息子も泣きながら、何度も何度も「ごめんなさい、お母さん」と、繰り返してくれました。

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