第3話 法要

 そんなことがあってから五日後のこと、お坊様は浮かない顔をして独り言を呟いた。

「どんな顔して訪れたらいいんだろう・・・」

 以前から決まっていたとはいえ、その日はその子の実母と祖母の法要が予定されていたのである。

「どんな言葉をかけたらいいのか・・・」

 出かける準備が整うと、お坊様は頭を抱えながらその子の家へと向かった。

 家について、恐る恐る「こんにちは」と声をかけると、「はーい!」と、奥からとても明るい声が聞えてきた。

「ようこそご住職様、お待ちしておりました。どうぞお上がりになって!」

 想像を裏切る明るさである。てっきり落ち込んでいると思ったのだが、何の憂いも感じられない。

〈どうしたんだろう? なんか変だ。気が変になってしまったのだろうか? いや、そんなことはない。挨拶はまともだし、立ち居振る舞いも整然としている〉

 違和感を覚えながらも、お坊様は案内されるがまま、仏壇の前の座布団の上に座った。そこへご主人が、「いつもお世話になり、ありがとうございます」と、顔に笑みを浮かべながらやってきた。続いて例の男の子も、とても清々しい顔をして仏間に入ってきた。

〈はて、これは一体どうしたことか?〉

 三人の様子が気になったが、そこはさすがお坊様、経を唱える調子は絶好調であった。

 読経が終わると、別室に豪華な食事が用意されていた。そのご馳走を頂きながら歓談したお坊様は、来た時とは正反対に、とても晴れやかな顔をしてお寺に戻って行った。次のような『その後の話』を伺って、違和感を払拭することができたからである。

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