二人のリュウ

「焔、どうやって倒します?」

「とりあえず……」


焔は空を翔け燃える腕で殴りつけた。


「攻撃してみたが、硬い。そしてなんだ、魔術や異能へ耐性があるのか、弾かれた」


舌打ちをしながら、焔は地面に着地した。


「カウンターがあったらどうするつもりだったんですか?」

「お前の力なら、止められるだろ」


当然のように言う焔に、頭を抱える。


「信頼は嬉しいですが、だからといって無茶はやめてください」

「わかった。けど、無茶せずどうやって倒す気だ?」

「それは……」


無茶をせずに勝てるほど相手は弱くない。

それどころか無茶をしても負けてしまいそうであった。


「とりあえずお前も一撃入れて来いよ骸」


そういわれてため息を吐きながら、骨を纏う腕で殴りつけた。


…………?


焔の隣に着地すると、自分が殴った場所を見上げる。

少しの間そうしていると、不思議そうに焔が問いかけてきた。


「どうした、傷でもつけれたか?」

「いえ、傷と言えるほどのものでは無いですが、耐性を下げられた気がします」

「そうなのか、なら簡単じゃないか。お前が耐性を下げて、俺が壊す。これで行こう」

「簡単に言いますが、耐性が下げれたとしてあれを破壊するだけの火力なんて」


馬鹿らしい作戦だった。

だが、焔はしっかりと考えられる人間だった。


「腕くらいなら壊せるだろ?」

「……無茶をすれば」

「なら話は簡単だ。俺たちは腕を壊して、次に託す。多少の無茶で次へ繋げられるなら、無茶しなきゃだろ?」


自分たちが託されたように、今度は次の誰かに託し、そして最後には勝利を手にする。


「わかりました。少し無茶をしましょう」


それならばと、骸も渋々賛同した。

骸は深呼吸をして呟く。


「制限解除」


身体から力が抜けるように肩を落とし頭を垂らす。


「肉体の破損を許容。異形、骨竜」


右半身を巨大な骨が覆う。

背には骨で出来た羽が一翼生える。

まるでそこに肉が無いような、骨しかない、骸骨のような、空っぽの眼を光らせ、空を飛ぶ。


「引き裂け、刺し穿て、破壊せよ」


巨大な骨の腕で、さらに巨大な城の腕を攻撃する。

その腕を槍と見立てたように突き出す。

まるで削るように何かを散らせる。

骨の隙間からは血が流れ落ち、音を立て砕かれた骨と共に地上へと落ちて行った。


「後は頼みましたよ、焔」

「任せろ、骸」


焔は全身を燃え上がらせる。


「行くぞ‼」


爆発でも起こったかと思うほどの衝撃を起こし、その中心で炎は熱を上げた。

水のように、静かに緩やかに揺れる炎。

その中心では、右半身を異形の姿へと変えた焔がいる。

龍の鱗、不死鳥の羽、大蛇の尾、その瞳は鏡の様。

左半身は力に耐えられず身を焦がす。

一度の羽ばたきで、天を舞う。

骸の付けた傷を見つけ、構える。


「世界を照らせ」


待とう炎が眩く煌めく。

突き出した右腕は、城へとぶつかる。

小さな傷から、中まで焼き焦がす。

己が身すら厭わぬ攻撃は、終焉をもたらす兵器を相手に、確かに通じていた。

巨大な爆発。

焔を中心に起こった爆発は、城の腕を吹き飛ばした。

崩れ落ちる瓦礫の中、焔は瓦礫とともに落下する。

地面に落ち、その傷が癒えると立ち上がり自分の身体を見る。

焼け焦げた左半身、感覚の戻らない右腕、何も映さない右眼。

終焉をもたらす兵器の腕を人の身で破壊する代償は、あまりに大きかった。


これでは、もう、戦えないか。

こんな怪我をして帰ったら、カレンに、怒られてしまうな。


「骸、腕を壊せたぞ。むくろー」


返事は無く、安心した心を不安が覆い始める。

気絶していた骸は、動けない。

瓦礫をどかしても、血だまり一つ見つけられない。

誰かの足跡も、引きずった痕跡もない。

骸は、忽然と姿を消した。


「骸、どこ行った?いないのか?」


骸を探している間に、焔は自分の身体の違和感に気付いた。


あぁ、そういうことか。

だがまぁ、俺たちに気付いているかどうかはわからないが、託せたのならそれでいい。


焔はそこから突如として消えた。

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