第6話復讐日和
彩は零士に、今回の仕事の手はずを順を追って説明した。
「彩———」
「なに?どうしたの?」
「いや、なんでもない。女は怒らせると怖いんだな。新堀に同情する気は
「ふふっ。それが良いかもね。」
零士は、新堀が使うホテルの下見をし、更に彩が指定した港の埠頭の下調べをした。
彩の要求には、人通りのない場所を探しておく要求が含まれており、見つけてた場所に車止めがあれば破壊しておくよう指示が出されていた。
「彩の奴なにを考えているんだ?もし車ごと新堀を海にダイブさせるなら目立つだろうに。」
不満を漏らしながらも零士はオリンピック後に作られる街の為に開発され、1年程前に完成した、新お台場倉庫街に着いた。
新しく開発されたものの、夜はまったく
今は海外からの輸入品や、地方からの発送品を納める倉庫が並ぶだけだった。
深夜に訪れた零士は、彩の要求を満たす場所を見つける。
「ここなら回りからも倉庫が壁になっていて、簡単には見つからないな。問題は———」
そこは細長い倉庫が複数横に並んでおり、零士は車の入口から二番目の倉庫の前に車を止めた。
そこに決めた理由は、大型の重機が車止めにぶつかり、車止めが破壊された後があったのを思い出した為だ。
「まだ修理してなくて助かったぜ。ここなら良いだろう。」
彩の方も準備を終え、ゲンと約束した1週間が過ぎた。ゲンから連絡が入る。
「待たせたな。ご要望の品が届いたぜ。」
ゲンに注文した薬が彩の暮らすマンションの一室に届いた。零士から新堀が明日ホテルに来る事を確認する彩。
「さて、このクソ野郎も明日で終わりね。
「おっかない事を言うもんだな。お前性格変わってないか?」
「ん?私がいつ変わったって?きっと気のせいよ。」
「左様でございますか。」
零士はそれ以上彩とやり取りをする気にはなれなかった。2月1日土曜日、20時45分。新堀はいつも通りの行動に沿ってホテルグランディアーナ東京に現れた。
この様子を零士はホテルの地下駐車場に止めた自分の車から、ホテルの監視カメラをジャックして内部の様子もチェックしている。
これが容易に出来るのは、彼が過去に学んだスキルに寄る所が大きい。
「こんなザル防壁なら簡単に突破出来る。このホテル、国会議員も常宿にしている割りには脇が甘いな。まぁ助かるが。」
2時間程監視していると新堀が宿泊している部屋から出て来た。
出て来た所で、零士が使うPC画面にノイズが走る。
「ん?なんだ急に……まぁ、良いか。おい、彩。新堀が現れたぞ、奴はそのままフレイアに向かっている。」
彩は左の耳に着けたイヤホンマイクから零士の声を聞く。髪の毛で周りからはイヤホンマイクは見えない。
「ええ。こっちは準備出来てる。今からフレイアに入る。ここからは連絡出来ないから、貴方は手はず通り例の場合に向かってて。」
「分かった」
零士は短く返事をした後倉庫に向かった。
ややふらつきながらフレイヤの店内に脚を踏み入れる新堀。
(ふー、今日のはアイドルだったが、なかなか良かったな。さて、次は愛情の糸に出てた、女優の
新堀は心の中で
新堀は半円形のバーカウンターを見付けると、10席ある内の右から3番目の席に腰を降ろした。
「マスター、いつものを頼むよ。」
一言バーテンダーに声をかけると、バーテンダーは馴れた様子で黒色のビールを差し出す。
「またですか。程々にした方が良いですよ。」
「大丈夫だよ。俺に違反キップ切れる度胸のある奴なんて居ないさ。」
そう言った後、新堀はビールをグイッと飲み始める。
彩は黒のスーツ姿だった。
一見色気の欠片も無いように見えるが、これが新堀の好みらしい。
彩は新堀を見付けると、カウンター席の左から2番目の席に座り、バーテンダーにマティーニと言いカクテルを頼んだ。新堀の方は黒ビールを飲み干し、次はどうするか考えようとした時、新堀の視界に彩が入る。
「ん?見ない顔だな。へー、顔は良いな。女優にしても良いくらいだ。スーツ姿だが、体つきも悪くない。よし、行ってみるか。」
そう心の中で呟くと、バーテンを呼び、指を差しながら話しかけた。
「マスターあの席の彼女に、いつものワインを頼むは。」
バーテンは呆れた表情になるが、言われた通りに彩に一杯の高級ワインを差し出す。
「え?頼んでませんよ。」
驚く彩に、バーテンが続けて。
「あちらのお客様からです。」
彩がバーテンが指し示す手の先を見ると、笑顔の新堀が手を振っている。
(なるほど、向こうから声をかけて来ると思ってたけど、早かったわね。まぁ、都合が良いか——)
彩は新堀にぎこちない笑顔を向ける。するとに、新堀は席を立ち、彩に近付いて行く。
「見ない顔だね。この店は初めてかな?」
「ええ、まぁ。それより良いんですが?これ、かなり高級なワインですよ。」
「別に構わないさ。君との出会いの記念さ。」
そう言うと、更に笑顔を新堀は見せた。
必死に表情を造るが、心の中では吐きそうな気持ちになってる彩。
(こいつ恥ずかしくないの?この
今直ぐ殴り倒したい気持ちを押さえて。
「そんな。恥ずかしいです。」
「それより、ここを出て、もっと良い店に行けないかい?普通じゃ入れない店も、俺と一緒なら入れるぜ。」
「えっ?!でもそんな、会ったばかりかの人に.....」
「もしかして俺の事を知らないのかい?実は俺、芸能事務所のヴィーナススターを経営しているんだ。
普段出来ない贅沢を、好きほどさせてあげるよ、それに君、なかなか魅力的だね。色々話をしてみいたいんだけど、良いかな?」
そう言うと新堀は財布から自分の名刺を差し出す。
「えっ、ヴィーナススターの?!..........それって、良いんですか?」
「もちろんだよ。任せて。」
新保は満面の笑顔だ。
「あ、まだ名前聞いてなかったね。なんて名前なんだい?」
「私ですか?
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