第7話

少し冷たいあの言い方が気になってはいた。

 あまりあの写真好きじゃないのかなぐらいにしか思っていなかった。



 美味しいクロワッサン。

 本当に素敵なカフェだったなぁ。

 また行きたいなぁくらいしかこの時の私は思ってなかった。

 楽しい会話も終わり家に戻る。



 それにしても……どうしよう。

 返さなきゃだよね。


 伝えることの出来なかった、ハンカチ。



 私は慌てて、そのハンカチをクローゼットから引っ張りだし、アイロンをかけた。


 そして急いで、桜の木の下に袋に入れてわかりやすいようにそっと戻した。


 ……手紙はやっぱりなかった。


 私は、ハンカチお返しします。とメモを書いて置いといた。


 あの人ちゃんと取りに来てくれるよね?


 不安な気持ちでいっぱいになった。


 そうだ!

 急に思い出した。

 今日、大好きなお店のセールの日だ。


 買いに行きたいと思ってたんだ!


 カタカタカタカタ。

 よいしょ。よいしょ。


 少し急ぎぎみで、車いすを動かした。


 デパートには、すでに凄い人で溢れていた。



 売り切れてないといいな。


 私は買い物をして、お洒落する事が1番の楽しみだった。


 服や雑貨、アクセサリーを見ながら、あれも可愛い、これも可愛いとついつい買ってしまう。


 ……はぁ。今日も買いすぎてしまった。


 カタカタカタカタ。



 荷物をドッサリと、膝の上に乗せて進んでいたら、

 工事している道路にきてしまった。


 ……何この道、ガタガタじゃない。

 進みにくい。

 私がモジモジと進みにくそうにしていた。


 その時だった……。


 知らない男の人が、後ろからやってきた。


「大丈夫?押しますね。」


「ありがとうございます。」


「買い物しすぎでは?」


「ついつい。」


 余計なお世話よ。

 なんか失礼な人。


 でも助かった。


「ありがとうございました。助かりました 」


「それでは、気をつけて 」


 その人は見覚えのある袋を持っていた。


「あ、あのー!」


 あっという間に男の人は行ってしまった。


 あの袋……。


 私がハンカチを入れた袋だった。

 あの袋、絶対にそうだ!

 自分が入れた袋を間違えるはずがない!!


 あの人……もしかして!!



 それは……突然の出会いだった。


 そして、これから起きる事の始まりでもあった。

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