第15話 魔王と呼ばれる転生者7
周りも突然の発言に一瞬だけ静かになった。その静寂を破ったのは魔王軍の中の一体だった。
「何を言ってるんだガザム血迷ったか?人間に手を貸してた奴がいきなり魔王だと俺がこいつを殺してついでに魔王になってやる」
そう言って牛のような魔族が襲いかかって来たが、闇の刃を作りバラバラに切り捨てた。
「他に異議のあるものは魔王様に挑むがいい!もっとも我らの中に勝てるものはおらぬが」
「待てお前俺を魔王にするだと?一体何を考えているんだ」
「失礼しました。私は魔王軍参謀ガザムあなた様のお力を見込んで頼みがあります。新たな魔王となって我が国フォルマを変えていただきたい」
「だからなんでそうなるんだ俺は敵じゃないのか?」
「我々の領土は今危機に瀕しています。食糧難と隣国が我が国へと進軍したのです。これを解決するために遠征すると魔王様が宣言したのですが、ここにいるほとんどのものが反対だったのです。結局進軍は強行されましたが、我々は敗北しました。このまま国に戻っても滅びの道しかない。だから我々を救う新たな魔王様になっていただきたいのです」
「随分都合が良くないか魔王に連れてこられて人間と戦争して勝ったらこの国を植民地化させて負けたら、助けてほしいだと?」
「不快に思われたなら申し訳ありません。私の命で」
「別にお前の命なんかいらないさっさと退却してほしいだけだ」
「あなた様を新たな魔王にするまでは出来ません」
「何がお前をそこまでそうさせるんだ」
「あなた様なら我が国を建て直し救ってくださると確信したからです」
真っ直ぐ俺を見つめるガザムを見てライゼルも決心する。
「さっきお前達が広間に一瞬で現れた転移の魔法あれを使える奴は誰だ?」
ライゼルがそう言うと一体の魔族が前に出てきた。
「気が変わった。転移の魔法を使ってフォルマに行く」
「ありがとうございます新たな魔王様」
魔族達が次々と転移魔法の中に入っていき、残るはライゼルは転移魔法の術者の魔族となった。
「ライゼル待って!いきなりどうしたのよ魔王になるなんて」
「メリシア俺はフォルマに行って魔族の国を変えてくる。それにまた新たな魔王が現れてこの国を攻めてくるかもしれない。俺はせっかく皆で変えたこの国がなくなってしまうのが嫌なんだ」
「駄目よ…魔王になって他の魔族国と戦争したらあなたが死んでしまうかもしれない」
「大丈夫だ俺は死なない。だから頼むこの国の虐げられて来た魔族達のこれからを安心して暮らせるように良い国にしてくれ」
「そんなこと言われなくても、絶対成し遂げてみせるわ人間と魔族が笑って暮らせる国作り上げるわそこにあなたも一緒にいて欲しいの」
「俺は俺で出来ることをする。だから今は行かせてくれ」
「…ライゼル絶対に生きてまたここに戻ってきて」
「約束する」
そう言ってライゼルは魔族国フォルマへと向かった。
「全部君の手のひらの上かい?
「いいや、俺はあの参謀に次の魔王にするならライゼルという半魔の青年がいいよって勧めただけだよ。彼が魔王になったのは彼が決めたことだ」
「でも、すんなりと行き過ぎじゃないか?」
「国が変わったりするのは案外ちょっとした偶然が重なった結果起こるもんよ」
「ふーんまあ俺にはよく分からないや。でも、きっと彼がいい方に行くよう頑張ってるのは分かったよ」
「それは君の勘違いだよ俺は転生者が嫌いだからね」
「そう言っても彼がピンチになったら助けるためにここにいるんでしょだってライゼルが商業ギルドの運送の合間にお姫様の書状を持って各地の貴族達に協力を仰いでいたのをずっと見守っていたじゃないか」
「…彼に魔族国の魔王を倒してもらうのとマグル王国を魔族差別のない国にすることが今回の目的だよ」
「そういうことにしておくよ」
ライゼルが魔族国に行ったのを確認した後俺たちは帰った。
ライゼルが魔族国フォルマへと向かったその日、旧魔王軍と新魔王軍の2つに別れ内乱が起きようとしていたが旧魔王軍を指揮していた魔王軍幹部ビルファーをライゼルが瞬殺し、新魔王軍が旧魔王軍も取り込み魔族国フォルマは新たに魔族国リセラと名前変えライゼルは正式に魔王になった。意外にもリセラに進軍をしていた他の魔族国が新しい魔王を警戒したのかそれとも自国で何かあったのか急な撤退をしたのだった。
魔王になってすぐ俺は村に戻り、母に話をしようと実家へ向かったら、そこには父の姿があった。マグル王国が変わったことで解放された父が生きて村へと戻りライゼルの帰りを待っていた。ライゼルは両親に魔王になったことを報告し、一悶着あったが最終的に俺を送り出してくれた。
それから、1ヶ月が経ち魔族国リセラとマグル王国は互いに同盟関係を結び魔族国の食糧難をマグル王国が一新したことによって減った働き手を互いに補い合い両国の問題は解決されていった。
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