第14話 魔王と呼ばれる転生者6

 黒い穴から現れた最後の一体魔王が喋り出した途端メリシア達に動揺が走った。魔王は気にせず喋り続ける。


「長い間我が国の民が虐げられていたと聞いて俺は助けに来たのだ。人間達はなんと醜いのか俺が来る前は同族同士で争っていたらしいなそんな国はなくなったほうが良い。俺がこの国を支配して良い国にしてやろう勿論人間達も俺の管理下で面倒を見てやるだから抵抗せずこの国を明け渡せ」


 メリシアの兵士達も魔王の言い分に怒り、反発する兵士達すると突然苦しみ出しその場に倒れた。


「抵抗することは無駄だと分かっただろう大人しくしろ」


 動揺し、混乱する兵士達をまとめて欲しいこのタイミングでメリシアは父の死と魔王の登場で心を折れかけていた。


「メリシア君はこの国を変えたかったのだろうその為にお前は父と差し違える覚悟を決めたんじゃないのか?

悲しむのは後にしろ今この国がやっと生まれ変わろうとしていたのに魔王に奪われていいのか?

ちゃんとしろメリシア!」

「いいえ…それはいけないことだわ…目が覚めました。ありがとうライゼル」


 凛と表情になった彼女は立ち上がり魔王に言い返す。


「この国は先程生まれ変わりましたわ勿論魔族国家ではなく人間と魔族の国としてなのでお引き取りをお願いしますわ」

「なら、力尽くで奪い取るまでだ。人間の小娘」


 魔王の言葉を合図に一斉に動き出した魔族達は一瞬で突然現れた闇に覆われる。その闇が晴れた後燃えつきたような魔族の兵士の死体が出来上がっていた。


 ライゼルは魔王の方にカスケードの首を投げつける。


「そうかお前が俺の兵をやったのだな半魔の青年よ」

「だったらどうした」

「お前にも魔王の資格があるようだ。その魔法深淵魔法は昔他の国の魔王が使っていた。俺の右腕にならないか?そしたらこの国をお前の領地にしてもいいぞ」

「断る。やっとこの国は生まれ変わろうとしていた魔族と人が手を取り合える国にそれをお前が邪魔したんだ絶対に許さないぞ」

「魔族と人間が共存など出来るわけがない失敗したからこうなったんだろう現実を見ろ」

「この国を悪くした国王もそれを唆した魔族も消えた今なら同じ失敗はしない」

「俺に逆らう奴は皆殺しだ」


  フォルマは突然体が大きくなり、背中から黒い羽が6枚出てきて、目が4つ開き合計6つの目で鋭利な爪を立て黒く禍々しいオーラを放ちながらライゼルへ襲いかかった。


「ダークトルネード」


 フォルマが背中の羽から風を起こしそれを魔力で強化した魔法を放った。ライゼルは闇の壁を立てる。


「ダークスラッシュ」


 爪で空間を裂き魔力で強化した強烈な斬撃を放つ。ライゼルは腕に闇を纏って正面から防ぐ。

 今度はライゼルから闇の力を球のようにしてフォルマに放つ。フォルマはガードをしたが防ぎきれず羽にいくつか穴を開ける。

 しかし、フォルマは笑みを崩さないでいた。


「小手調は終わりだ。真の力を見せてやるソウルブレイズ・・・」


 奴の右手に魔力とは他に何か別のものが集まっているのが分かった。


「ノヴァ!!!」


 先程とは比べものにならない速さで攻撃が飛んできたが、ライゼルの異能力の闇に飲まれ無力化される。


「これを防ぐか。俺の創り出したこの魔法は魂を奪い取り力に変える。魂を込めれば込めるほど威力は増す。ここには利用できる魂がいくらでもある」

「ここにいる人も魔族もお前の魔法に利用するというのか!」

「俺に使われることは名誉だ。光栄に思うがいい。次はもっと魂を込めてお前を消してくれよう」


 フォルマが今度は特大の透明な力の波が籠った玉を放つ。

 それでも、ライゼルには届かず異能力の闇はフォルマの魔法を防いだ。

 またライゼルが攻撃を仕掛けるフォルマの周囲を覆うように闇が迫る。その闇は、いくらフォルマが魔法を放って打ち消しても次が来る。

 徐々にフォルマの攻撃でライゼルの闇が打ち消せなくなった。


「お前の魔法は利用出来る魂のストックがあるから俺の攻撃を防げていたが、それも終わりだ」

「ありえん…俺の攻撃が全く通じない上にお前の攻撃には魔力を感じない何か別の」


 フォルマはライゼルへ何か言いかけたが闇に捕らわれ闇が晴れるとフォルマは跡形も無く消え去った。


 フォルマとライゼルの戦いが終わり、魔王軍とメリシアの軍も戦いを止め、一瞬の静寂が流れる。


「魔王様が死んだ?」

「じゃあこの遠征はどうなる?」


 魔王軍が混乱しかかったその時声がかかる。

「静まれお前達魔王様は死んだ。ならば魔王様を倒したそこの半魔の青年が新たな魔王様だ」


 一体の魔物がそう言ったのだった。

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