第13話 魔王と呼ばれた転生者5

 建国記念の式典が行われるその日、俺たちレジスタンス組織は早朝結果集会を行っていた。


「いよいよ作戦の日だ。今日をもってこの国は生まれ変わる!皆今日はよろしく頼む!」


 カスケードがそう言うと組織の人達は盛り上がった。

 式典会場である王城の広間には一般の観衆もいる。俺たち組織の人間はそこに混ざって時が来るのを待っていた。

 

 俺は、広間に着いてから周りの様子を見ていた。明らかに兵士の数が多く一般の観衆達がいるスペースを囲うようにして配置されている。

 貴族などの上流階級の人達は予め用意されていた観覧スペースの方で俺たちを見下ろす形でいた。

 これから起こる茶番劇をその手に持った酒の肴にするつもりであろう。俺達はまだ裏切られてはいないが、これから裏切るカスケードに対して憤りを覚えた。


 式典が始まり、国王と共にカスケードが現れた。国王は高らかにそしてこの場にいる全員に対して語り出した。


「今日この式典に集まった国民に感謝を伝えたいのだが我の忠臣の1人であるカスケードがこの式典を利用してこの国に害をなそうとする不届き者達の存在を事前に察知してくれたのだ。兵士達よその者達を捕らえよ!」


 一斉に兵達がこちらに動き出す。一般の観衆は訳も分からず混乱していたが兵士達はレジスタンスの人達だけを拘束しようとする。

 それに対してレジスタンスの人達はその場に蹲る者、抵抗する者、泣き叫ぶ者で状況は酷い状態だった。

 俺はレジスタンスの人達がカスケードに言われて付けていた目印をつけなかったため兵士達にスルーされた。

 そこへタイミングよくメリシアと兵士達が現れた。

 突然のことで国王もどういうことだ?と周りにいる臣下に聞いている。

 

「ずっとこの時を待っていましたの国王様いえ、父上。あなたがお祖父様を暗殺した証拠をお祖父様が私に授けてくださった。」

「特別な式典の日にな、何を言うかと思えば我が娘をその先はかわいい冗談じゃ済まないぞ」

「悪い冗談?私は正常ですわ皆様これを見てください。」


 そう言ってメリシアは懐から彼女の言う証拠の魔道具を取り出す。

 そこから映像が映し出される。映像の内容は国王が先代の国王を暗殺する計画をカスケードと相談しているところと場面が変わり、カスケードが闇ギルドの者に指示している映像が流れていた。


「これではっきりしましたでしょう我が父である国王が先代の国王を暗殺したことが」

「そんなものでっち上げだ!娘の姿をしたその不届き者も捕まえてしまえ!」

「不届き者はあなたですわ兵士達よその者を捕らえなさい!」

 

 国王側の兵士達はどうしたらいいか分からずおろおろしていたが、メリシアの兵士達は迷うことなく国王の元へ迫る。

 そこに立ちはだかったのはカスケード率いる近衛隊と一部の兵士だった。


 国王側とメリシアの兵士達がぶつかるがメリシアの兵士達の方が人数有利であったため次々と国王側の兵士を無力化していったが、国王の元へは誰も辿り着けなかった。カスケードが強く徐々にメリシアの兵士達が勢いを失ってきた。

 そこへまた新たな援軍がやって来た。別働隊として魔族の解放に収容所へ向かったメリシア側のコンラル伯爵だ。

 コンラル伯爵は元々王国の中央貴族であったが、若く優秀でそれを快く思わない者たちによって頻繁に小競り合いが行われている国境付近に左遷させられた。前線で魔族の兵士を捨て石のように使っている現場に疑問を抱き、大きな改革を行い魔族の兵士達の負担を減らし、小競り合いを終わらせて戦争を停戦させた有能な人である。 

 だからこそ今回メリシアの要請に協力をしてくれたのだ。コンラル伯爵の兵士達と前線で戦っていた魔族の兵士と収容所にいた兵士の一部を連れて現れた。

 また状況はこちら側の優勢になった。魔族の兵士達は戦闘スタイルが魔力を使って元々高い身体能力を更に底上げするもので、一人一人の強さが別格だった。

 しかし、それでもカスケードを止められない。

 俺はカスケードと戦うことを決意して彼の前に立った。カスケードは俺を見ると喋り出した。


「君はレジスタンスの集会にいた子だよねまさか姫様を唆したのは君かい?」

「姫様を唆してはいないし、これを計画したのは俺じゃない。」


 そう言ってお互い前に一歩踏み出すカスケードが俺に斬りかかって来たが、俺はそれを躱してカスケードの顎に肘打ちを入れ体勢を崩した彼の腹を思いっきり蹴り付けた。カスケードはコロコロとボールのように地面を転がり地面に倒れたまま動かなくなった。

 

 これがきっかけになり、メリシア側の勢いが増し、逃げる国王を遂に包囲した。


「貴様ら我を誰だと思っているのだ。我を国王から降ろしたら、この国は長くは持たんそれを理解しての蛮行か。」


 喚き出した国王にメリシアが国王に近づきながら語りかける。


「この国が変わったら、この国を欲する者たちが手を出してくるでしょう。それでもこの国は私と国民達が終わらせませんわ」

「いいやこの国は終わる」


 国王の背後から突然カスケードが現れ国王を剣で刺した後メリシアに斬りかかる。


 メリシアの兵士達よりも早く俺がカスケードからの攻撃を防いでカスケードを腰に下げていた短剣を抜刀して斬りつけた。

 カスケードの首が飛び、紫色の血が流れた。


「あぁ…お父様!!そんな…」

「メリシア…すまないが俺の後ろにいてくれ。」


 涙を流しながら、父だった国王の亡骸の方へ行こうとしたメリシアを止めて、カスケードを見る。

 カスケードは笑いながら喋りだす。

「カスケードに成り代わって国王から信頼を得て魔族を悪しき者と思い込まし、人間との共存を夢見て魔族領を去った馬鹿どもを粛清し、今度は国王の馬鹿娘を使って人間同士を争わせ疲弊するこの時を俺はずっと待っていたのだ。この国は終わりだ。我らが魔王様の人間界への最初の一歩になるのだ。抵抗は無駄だ広場の方を見ろ!」


 そう言って皆が一斉に広場の方を見る。突如空間が歪み黒い穴のようなものが出来た。そこから、魔物達が続々と出て来る。

 出てきた魔物達は黒い穴の方の横を1列に並んで立った。最後に物凄いプレッシャーを放った一体の魔物がゆっくりと広場に立つ。その一体が出た瞬間穴は塞がり、その空間は元の形を取り戻す。


「まずは挨拶をさせてもらおう俺は魔大陸にある国の一つ魔族国家フォルマの魔王フォルマだ。」

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