第10話 魔王と呼ばれる転生者2

 俺は生まれ変わったが、完全に人間に生まれ変わった訳ではなかった。ライゼル・グリシアスという人間と魔族の間に生まれた子供だった。

 母が人間で父が魔族の魔人という種族で人間と姿はあまり変わらず、人間との唯一の違いは角が1本頭から生えてるぐらいだ。

 そんな両親の間に生まれて15年経った。

 

 俺が住んでいる村は魔族達が治めている魔大陸ベオルファーグにある魔族国家フォルマと国境の接している人間達が暮らすファサリテ大陸のマグル王国という国の領土内にあり、人間と魔族が混ざって暮らす村だ。


 マグル王国は数年前に国王が代わり、それ以来マグル王国内の魔族達に重税を課したり国の兵士として戦争に強制的に参加させ、ろくな装備も訓練もやらせないで最前線に送ったり、魔族を差別して迫害を行うようになった。

 

 しかし、同族達が酷い目に合っているというのに、魔族国側はなにも対応をしなかった。

 昔、人間との共存を夢見た魔族と人間との共存は不可能と考えた魔族と一悶着があり、その結果共存を夢見た魔族達は魔大陸の生まれ育った国を出て、人間達の住む大陸に移ったのである。

 そのことがあったため人間達の住む大陸から魔大陸に帰ってきた魔族には手厚く支援をするがそのまま止まっている魔族達には何もしないのだという。


 そのせいで王国の王都付近の貴族や住民は魔族になら何をしても良いと思っており、そのことがさらにこの問題を加速させていた。

 

 村に住む人達はみんな仲良く暮らしており、知り合いには魔族や俺と同じように魔族と人間種のハーフもいるため、国の使者がたまにこの村を訪れる際は魔族と魔族の特徴を受け継いでいるハーフは村長の家の地下で待機して使者が帰るのを待ってやり過ごしていた。

 そんな日々は長くは続かず、ある日不作だった村人が国の使者の甘言に誘われ金と引き換えに村にいる魔族のことを喋ってしまったのだ。

 それにより、村の魔族達は国の使者と共に王都にある兵団に強制的に加えられるか首輪を付けられ貴族達に奴隷のように扱われることになった。

 村の仲間を売った村人は事が明るみになる前にどこか別の村か王都に行ったのか逃げられてしまい後に残ったのは俺のように魔族の特徴がないハーフと人間の村人だけだった。


 だが、家族や友を失った村人達には国に対してどうすることも出来ずただ無事に生きて帰って来ることを祈るしかなかった。

 俺のように過ちを犯した訳ではないただ人と仲良く暮らしていただけの魔族がこんな理不尽な目に会っているのを見過ごせなかった俺はこの時、案内人が言っていたこの世界で俺のするべきことを見つけた気がした。

 俺は元の魔族と人間が仲良く共存する国に変えたいと決意した。

 その後で、彼を探そうと。


 俺は18になり、王都であるカンビアスに村で作った農作物や村の近くの魔の森で狩った魔物の毛皮などを売りに行く村人達に着いて王都に行くために母を説得したり、色々なことがあったがなんとか王都まで来ることが出来た。

 まずは王都で仕事をしながら、王都の情勢を知ることから始めた。

 

 俺は商業ギルドの現世でいうところの運送サービスの配送する荷物を積み込んだり、逆に仕入れたものを倉庫にしまったりする仕事をしていた。

 朝起きて出社する前に本屋で新聞のような情報誌を買ってそれを読んだ後、出社して夕方頃仕事が終わるので帰りに市場に寄っていろんな店主達と話しながら夕飯の食材を買って帰る。

 たまに、夕飯を王都冒険者ギルドの建物に併設されてる酒場で仲良くなった冒険者と一緒に食事をしたりしながら毎日を過ごし1年が経った。

 王都で過ごして分かったことだが、王都の人間は魔族が虐げられていることに関して可哀想だと思っても、助けることはこの国に逆らうことになるため誰も手は出せない。この国の住民達も俺の故郷の村人達と同じなのだ。

 ある時、仲良くなった冒険者の1人アルビからこの国の体制に不満を持っている人達が秘密裏に組織になっていることを教えてもらい更に、その組織の集会に俺を誘ってくれたのだった。


 集会場は国の人間に悟られないように、コロコロ変わるらしく今回は俺も行ったことのある飯屋で行われた。


 集会が始まる30分前ぐらいに集会場に着いた俺はざっと他の参加者を見たが30~40人ぐらい参加していて中には俺の知っている人もちらほらいた。


 少し騒がしかった集会場がある人物の登場で静かになった。俺は小声でアルビに説明を求めた


「アルビあの人が今回の集会を開いた人か?」

「ああそうだ彼はこの王国の騎士団の第二隊長を務めているカスケードだ聞いたことはないか?優秀な騎士で過去に隣国との戦争で隣国の兵士を100人も切り捨てた超強い人で普段は王都を見回り俺たちの悩み事を解決してくれる良い男だ。一個前の集会の時、誰かが彼を集会に呼び俺たちの組織に入ってくれたんだ」


 俺たちが話していたら集会が始まった。


「今回集まってもらったのは他でもないこの国の魔族問題についてだ。この国の先王が魔族との共存を夢見てこの国に魔族を呼んだことが始まりだ。しかし、現王はそれを良くは思っておらず、あろうことか自分の父である先王を暗殺したのだ。」


 事実を知りショックを隠しきれない人達が思わず声を上げるが彼は話を続けた。


「私はずっと証拠を探していた。それが先日遂に見つかったのだ。私はその証拠を持って王に直訴しようと思うだが、恐らく王はこれを認めず黙殺するだろうその時に君達の力を貸してもらいたいそれが出来ない人は集会場から出て今日のことを忘れて欲しい」


「何言ってるんだカスケードさんここにいる人はみんなあんたに協力するよ!」


 参加者の1人がそう言うと、他の人たちも続けて参加を表明していった。


「ありがとう!先王もきっと君たちの忠誠をお喜びになられるだろう」

 

 そう言ってカスケードは計画を話しだした。彼の計画は1ヶ月後に行われるマグル王国の建国祭の日に王城をレジスタンスで固め、カスケードと彼の仲間達が王に直訴する。王がこれを認めなかった時、合図を送りレジスタンス達で一斉に王城を制圧するというものだ。


 話が終わり次の集会の日を言って解散になった。俺は自宅に帰り、今日の出来事について考えていた。あのカスケードという男どうしてか俺は信用出来ないと思った。

 

 王都の民には評判の良い男だが、何か隠しているそんな気がしたのだ。それにこの組織集会をするのは良いが参加者がバラバラで誰が参加してるか正確に把握しきれていない様子だった。もしかしたら王に知られているかもしれないそう思って仕方がなかった。

 次回の集会の時にでもまたアルビに話でも聞こうと考え俺は眠った。

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