第8話 転生して初めての…

シルビィと一緒に冒険者を初めて1年が経ち、色々なクエストを受けた俺たちは時に苦戦して俺の能力を使うことはあったがAランクになり、とうとうSランクに昇格するための昇級クエストを受けることになった。


 そのクエストの内容は2週間前にアースライム王国の西のフィルベスター領に現れ村の家屋を焼き払ったドラゴンの討伐または撃退という内容のクエストだ。


 普通のドラゴンの場合だとS級のパーティで連合を組むか実力者でないと厳しいのだが、今回現れたドラゴンが今までに見たことない新種でA級であるワイバーンに近い体格から俺たちのS級昇級試験のクエストになった。


 俺たちは被害に遭った村3件を訪ねて話しを聞き、そのドラゴンが近くにある大きな湖のほとりで眠っていたという情報を得てドラゴンの根城から1番近い村の宿にある食事スペースの一部で作戦を立てていた。


 因みにこのS級昇級クエストで不正がないようにまた不測の事態が起こっても大丈夫なようにギルドからS級パーティの氷の烈華が同行している。


 リーダーは氷の双魔剣シュアルを使う魔剣師ティルだ。他には氷の賢者イルクと治癒師のリアそれから氷の魔弓を使うレンジャーマイラの4人パーティだ。皆S級に相応しい実力者で過去にドラゴンを討伐したことがあるからS級昇級クエストの監督役になったのだろう。


「今回のドラゴンは新種だが小型で村を訪ねて分かったけど、他のドラゴンに比べて炎のブレスの威力もそんなに強くない。」

「その点については、実際他のドラゴンを見たことがある我々から見ても威力は低いと言わせてもらおうだが油断はするなよ」

「ありがとうございます!作戦についてだけど奴が根城にしている場所は湖のほとりで近くに洞窟があるらしく、そこにドラゴンを誘導して討伐もしくは入り口を塞いで閉じ込める」

「私はいつも通り魔法でサポートをするわジェニス」

「確かにドラゴンを洞窟に追いやることが出来れば戦闘はだいぶ楽になるし、最悪洞窟を塞げば良いが問題はどうやるんだ?素直にドラゴンが洞窟の奥に入りはしないだろう」

「それについては俺の固有魔法ってことで納得していただいても大丈夫ですか?」

「なるほどモンドールのギルドで噂に聞くお前の固有魔法が見れるということか、分かった作戦の決行日を教えてくれ」


 その後作戦の日程を決めて軽くそれぞれの戦い方などを話し合いそれぞれの準備のため作戦決行日まで解散となった。


 村にあるお店をシルビィと一緒に回って冒険に必要な物を買ったりして、軽くデートをした。

 そして、ドラゴンとの戦闘の日になった。


 情報のあった湖に行くとワイバーンより少し大きい赤いドラゴンが眠っていた。


 ドラゴンの背後には洞窟最高のチャンスだ。俺は無属性魔法インビジブルを使って透明になり、ドラゴンの背後の洞窟の奥から一定の間隔をとって音や振動が眠っているドラゴンに伝わらないようにして、異能力を付与した杭を打った。


 その後、湖の周辺で待機しているシルビィ達に合図して皆を呼び戦いを始めた。

 シルビィの属性付与魔法を俺の剣に施し、稲妻を纏った剣で眠っているドラゴンの翼を斬りつけたが硬すぎてかすり傷しか入らなかった。


 体を斬られたことでドラゴンが目を覚まして咆哮する。


 ドラゴンの咆哮を受けると怯んでしまうが耐性を付与する魔法をシルビィにかけてもらっていたので、間髪入れずにドラゴンの尻尾を掴んで洞窟の方にジャイアントスイングした。

 投げたと同時に異能力を発動させドラゴンが杭に吸い寄せられる。1本目の杭の近くまで来たら、その先に打ってある2本目の杭に吸い込まれるように能力を使う。


 最終的に洞窟奥の壁面にドラゴン叩きつけて拘束した。


 俺とシルビィは特大魔法ディザスターストームとギガスマイトブリザードを合体させてさらに強力な魔法にしてドラゴンにぶつけた。あまりの威力に洞窟の一部が崩落した。


 ティルさんが思わず叫ぶ。


「お前らやり過ぎだ!威力が高過ぎてこの洞窟がぶっ壊れて、俺たちも生き埋めになるかと思ったわ!」

「そう言いながらもしっかり自分たちの周辺を氷のドームで覆って安全はとってますよねそれに心配には及びませんよ俺もシルビィも

 自分の術で自滅なんてしませんから」


 そう言って俺とシルビィの周囲に風の結界が張ってあることを教えた。


「何にせよお前らは充分S級いや、それ以上の実力がある合格だよ」

「今ので終わりなら心底ガッカリだな」


 声が聞こえた瞬間、目の前が赤くなったと思ったら高温の熱が迸る。


 何が起こったのかはリアの叫び声で分かった。

 ドラゴンが瓦礫の中からブレスを吐きティルさんが吹き飛んだ。


 そこから氷の烈華の対応は早かった。


「お前ら試験は中止だすぐに」


 ドラゴンのいる方向一帯を魔法で氷漬けにして、俺たちに撤退を指示しようとしたイルクさんが話してる途中で吹っ飛んだ。


 イルクさんがいた場所にはこの場の誰でもない人の形をしたものがいた。


 そいつはすぐにリアさんとマイラさんにも攻撃を仕掛けた。俺は割って入ろうとしたが早過ぎて追いつけず、リアさんはモロに回し蹴りを喰らって吹っ飛び、マイラさんが氷の矢を放つがそいつは矢を手で弾いてマイラさんの鳩尾に拳を入れる。


「なんなんだお前は!!!」


 目の前で起きたことに耐え切れず口に出る。


「俺は竜人だよ」


 すぐに返答が返ってきた。


「俺はお前に話がある」

「俺に話だと?」

「その前に邪魔な奴には退場してもらう」

「シルビィ!!!皆を連れて逃げてくれ!!!」

「待って!駄目だよ私も一緒に戦う!」

「こいつは俺に話があるって言ったんだ。それに俺には固有魔法がある。時間を稼いだらすぐに追いつくから」

「分かった…絶対生きて返ってきて!」


 そう言ってシルビィは泣きながら召喚魔法でグリフォンを呼び皆を連れてこの場から離れる。

 その瞬間に俺は竜人に異能力を使って斬りかかる。


「無駄だ」


 そう言って竜人は斬撃を正面から受け剣を破壊する。


「ならこれならどうだ!」


  魔法で硬化させた拳で殴りかかるが、俺の右腕が肘の先から骨が出るくらいにへし折られた。


「ぐああああああああぁぁ」


  余りの痛みで叫びながらその場に座り込む涙も沢山出てくる。

 目が覚める。俺は今竜人と戦ってたはずじゃとそこまで考えていたら話しかけられる。


「起きたか…この程度で気絶するなよ治癒魔法なり痛みを感じなくさせる魔法なり、色々対処出来るだろお前は転生者なんだから」

「なんで俺が転生者だって知ってるんだ。」

「質問しているのは俺だお前は誰に連れてこられた?」

「は?誰って神かなんかじゃないのか?」

「違えよ案内人だ名乗ってただろ」

「案内人は確かファーストって言ってたがそれがどうしたんだよ」

「お前は他所の案内人じゃなくて俺と同じ案内人1《ファースト》に連れてこられたのかよ」

「そういうことだこれから色々話をするまずはジェニスの腕を治す」


 突如現れたファーストは話しながら、俺に近付いて腕を元通りに治した。


「まず最初に言うと、この竜人ドラヴォールをここに呼んだのは俺だ。お前が俺の話をちゃんと聞かず異能力をバンバン使うからモンドールのギルドじゃお前の話が異能力とセットで噂されている。それによって他の案内人と転生者に目を付けられるとまずいから、ドラヴォールを向かわせた結果、何故かこうなってたんだが」

「それに関してだが、俺は案内人1《ファースト》に言われて後輩のこいつに忠告をしに来たけど、こいつの呼び出し方が悪かったせいで話をする前に戦闘になっちまった」

「呼び出し方が悪いなんてレベルじゃねえぞ村の民家何件も焼き払ったり、先輩冒険者達をこいつは殺しかけたんだぞ」

「ストップだジェニス確かにお前の言い分も気持ちも分かるがその後ドラヴォールは焼き払った村の周辺の魔物を狩ってわざと死体を村の近くに放置して村の連中の復興の足しにさせてたしジェニスの先輩達と嫁さんは俺が治しただから今度はちゃんと話を聞いてほしい」

「分かった」

「この世界には他にも、案内人がいてそれぞれが呼んだ転生者がいる。そして中には自分が呼んだ転生者以外はこの世界に必要ないと考える案内人が居たりするから、異能力は本当にここぞという時や周りに誰もいない場所だったり、そういう時に使ってくれ後転生したからと言って自分がなんでも出来るわけではない前世と同じように向き不向きがある。お前は剣を使っていたみたいだが、お前には剣の才能がないが転生者特典の身体能力と沢山の魔力でゴリ押しが通じてただけで他の転生者達には通じないしその身体能力もちゃんと鍛えないと勝手に能力が上がるわけではないから成長しない。まあ結局何が言いたいかというとこの世界はそれぞれの人間や異種族が生きているから好きに生きるのは結構だがそのためには前世と同じように自重しなければならない部分もあるということを考えてほしい。とりあえず冒険者稼業は噂が消えるまでしばらくお休みにして、ジェニスは貴族の次男だし兄にでも頼んで領地の経営の手伝いとかしながらゆっくりとこれからのことを考えてくれその上で、冒険者をまだ続けるなら今度は気をつけてほしい」

「俺は今回のことで本当に分かったよ。この世界には俺よりも上が沢山いてラノベやゲームの主人公のようにはなれないって、なるためには努力しないといけないんだね前世の時のように。それに死にかけて情けないけど家族と一度会っとけばよかったとかシルビィをこんな危険な目に合わせてしまったことを後悔したんだ。だから俺は冒険者を辞めて実家に帰るよ」

「そうか俺を呼べるようにこれを渡しておく今度困ったことがあったら、すぐに呼んでくれ俺と俺が呼んだ転生者でなんとかする。本当にこんな目に合わせてすまなかった」


 そう言って案内人1《ファースト》はスマホのような魔道具を渡してきた。


「そいつは俺が呼んだ他の転生者が作った通信端末だ。使い方は簡単そいつをもってかけたい相手をイメージすればそいつの端末に電話みたいにかかる。だから今度はちゃんと連絡を取り合える。」


 案内人1《ファースト》から連絡道具を貰った後、俺は村に戻って皆と再会した。

 俺が生きて戻ってきたことに氷の烈華の皆は驚きシルビィは泣きながら俺に抱きついてきた。


 俺は皆にドラゴンは倒せなかったが、追い払うことは出来たことを報告した。氷の烈華の皆とシルビィは、ドラヴォールの竜人形態のことをよく覚えてないようで、氷の烈華の皆は次に会った時仕留めてやると闘志を燃やしていた。


 それから冒険者ギルドには明日報告に行く約束をして解散となったので、村の宿でシルビィと2人になった時に冒険者を辞めようと話しを持ち出したらシルビィはどうやら俺を置いて逃げたことが心の刺となって深く刺さっているようで、俺はこれからは無茶はしない一緒に普通の生活をしようとシルビィを抱きしめて言った。


 次の日俺はギルドに氷の烈華と言って一応クエストはクリアとなったので昇格したが、冒険者を引退することを受付の人に話して手続きをした。

 

 俺はシルビィと一緒に実家に帰った。


 家族に俺が冒険者を辞めたことと、俺をこの領地で働かせてほしいと頼んだら、兄は快く受け入れてくれたし、家族の皆は怪我や病気はしてないかと心配されて俺は泣きながら俺もシルビィも大丈夫だよと言った。


 それから兄に色々と教えられ3ヶ月が経ち、俺は兄に任された領地の一部に暮らしながら兄の手伝いをして過ごしている。

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