第3話 転生して初めての戦闘

 護衛の騎士たちは遮蔽物をうまく使い盗賊に囲まれないように立ち回っている。1人また1人と護衛が盗賊を斬り倒したり、弓を持った護衛が、後ろでボウガンを構える盗賊を射殺した。

 魔法が使える護衛が合図を出し、近くにいた護衛たちがすぐに後ろに下がる。すると盗賊5人ほどがまとまった場所に炎の竜巻が起きて盗賊達を襲った。


 正直護衛がこんな強いと思わなかった。なにより連携の練度が圧倒的に盗賊よりあり盗賊達は仲間がやられている光景を目の当たりにして恐怖で勢いをなくしている。

 だが、すぐに盗賊達は盗賊のやり方で体勢を立て直した。護衛が剣で盗賊の腹を指したところを味方ごと槍で貫いた。


 それをきっかけに盗賊達は本来の戦い方を逆に護衛相手に披露する。盗賊の1人が護衛に切られながら護衛にしがみつき、他の盗賊が護衛をナイフで刺し殺す。遮蔽物として魔法使いが作った岩を巨大なハンマーで護衛もろとも砕いたり、どんどん状況は悪くなる。


 いよいよミトリさん含め護衛は5人ばかりになってしまった。盗賊はまだ20人ぐらいはいる。


 ミトリさんが呪文を唱えながら走り出す。盗賊達は彼女を捕まえようと手を伸ばすが、盗賊の腕が切り刻まれ千切れ飛ぶその様子を見たロベルトが呟く。

 

「風の精霊の加護か久しぶりに見たぜ、だが俺には通用しねえ」


 そう言って手に持っていた巨大な斧で地面を叩きつける。飛び散った石の礫を斧の腹で思いっきり打った。礫は高速でミトリさんの元に到達するが風の衣のようなものが礫を消し飛ばす。一部大粒の礫がミトリさんの体に掠めた。


 直撃はなかったもののミトリさんの体にはいくつものかすり傷がついていた。それでもミトリさんは止まらないロベルトの元へロベルトは斧を横に振って迎撃する。ミトリさんはジャンプして斧を足場にまた飛び上がりながら、剣で切りかかる。しかし、ロベルトは左脚でミトリさんを蹴り飛ばす。


 俺は疑問に思った。なんで、ミトリさんの風の衣を無視して蹴りつける事が出来たのか彼の破れたズボンから出る左脚を見てすぐに答えは出た。


 「なるほど鉄を纏って蹴りつけたのですね不覚をとりました。」


 ミトリさんはそう言いながら体勢を立て直して襲いかかってくる盗賊達を切り倒す。

 非常にまずい状況だミトリさんはもちろん馬車の周りで戦っている護衛達も満身創痍で馬車のバリアを破って俺たちを襲ってくるのは時間の問題であろう。


 そう考えていたら、1人の護衛が呻き声を上げながら倒れる。そこから1人また1人と盗賊が馬車に攻め込もうとする。バリアに阻まれて手出しが出来なかったが、盗賊の1人がバリアに向かってハンマーを叩きつけバリアが割れる。


 馬車の扉を開かれる時俺は盗賊と戦う覚悟を決めた。馬車の扉が開いた瞬間テティスさんが叫ぶ。

 

「坊っちゃま方私の後ろでしゃがんでいてください!」


 そう言って盗賊の頭を杖でフルスイングして吹っ飛ばし、盗賊達がまとめて馬車から後ろに飛ばされ馬車から少し距離が空いた。


 俺はそこをついて無詠唱でファイヤーボールの魔法を唱えた。馬車の前にいた盗賊達に巨大な火球をお見舞いした。


 それにより盗賊達は残り10人ぐらいになった。しかし、こちらを守る護衛はもうミトリさんしか残っていなかった。そのミトリさんも盗賊の頭の相手で手一杯であろう。


 「お前らも馬車の方に行けガキどもを手に入れれば俺たちの勝ちだ!」


 ロベルトがそう叫び残りの盗賊達が馬車の外に出た俺たちに襲いかかってくる。ミトリさんがすぐに盗賊達の方へ向かい何人か切り倒したがロベルトが斧で襲いかかり、その隙に残りの盗賊達がこっちに迫ってきた。


 俺はすぐに魔法を唱える。見た目じゃ分からない身体強化の魔法をかけ、わざと孤立して木の棒をがむしゃらに振って抵抗するフリをする。見事に引っかかった盗賊が木の棒を払い除けて俺を捕まえようとした。

 その瞬間、盗賊の股間目掛けて蹴りをかます。もろに入った盗賊は叫び声を上げた後、白目を向いて気絶した。


「坊っちゃまお怪我はありませんか!1人にしてしまい申し訳ありません!」


 声がかかり振り返るとテティスさんが兄を狙った盗賊達を倒して兄と一緒にこちらに来ていた。


「いや、全然大丈夫だよ」

「残りの盗賊はミトリさんが倒してきますので、それまではもう私の側から離れないようお願いします」

「ジェニス魔法が使えるけどそれだけじゃ危険だから僕たちの側から離れるという無茶はもうしちゃダメだよ」


 兄からも釘を刺されたのでテティスさんに連れられその場から離れる。歩きながら後ろを振り返ると斧に弾き飛ばされて宙を舞うミトリさんが目に映った。


 俺はその瞬間ミトリさんの方に駆け出した。テティスさんが叫びながら追いかけて来たが、魔法で移動速度を上げて走っているので追いつけない。


 走りながら、ロベルトがミトリさんに追撃をしようとするのをファイヤーボールの魔法を使って阻止する。後ろに引いた盗賊の頭が喋り出す。


「少し魔法が使えるだけのガキ相手にあいつらは全滅したのか使えねえ奴らだ。まあそのおかげで調子に乗ってわざわざこっちに来てくれたから、追いかけて捕まえる手間が省けた」

「お前もすぐに俺に倒される」


 起き上がり、俺の方に走りながらミトリさんが俺に話しかけて来た。


「坊っちゃまいけません私がすぐにこいつを倒しますのでテティスの方へ戻ってください!」

「もう遅い!大人しく人質になりな!」


 盗賊の頭が先に俺の方へと迫る。斧で俺を殴りつけて俺を捕まえようとする。

 俺は斧を木の棒で防いだが、盗賊の頭は俺の腹を殴りつけようとしてきた。俺は腕でガードしたが殴り飛ばされる。そこにミトリさんが盗賊の頭へ切りかかる。


 俺は異能を発動させ落ちてた盗賊の短剣を拾い上げる。短剣を思いっきり、ロベルトに投げつける。不意を突かれたロベルトだが、最小の動きで短剣を躱そうとしたが、急速に軌道を変えた短剣がロベルトの腹に突き刺さる。怯んだ隙をミトリさんが切りつけロベルトはついに倒れた。


「俺がガキにやられるとは…クソ、焼きが回った…」


 そう言ってロベルトは意識を失う。その後テティスさんが呼んだという救援が駆けつけ自分達は屋敷まで護送された。

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