これがボクの復讐ってね
ヤバいヤバいヤバいヤバい……
目の前に……星子の顔が……く、唇が触れそうで触れない距離まで……
僕は思わず息をのみ目を逸らそうとした。
「駄目だよ咲良君、ちゃんと目を合わせて〜ボクと繋がろうよ。」
目が逸らせない!?
今の星子は明らかにおかしい。星子がこんな事する訳ない。
「星子……気を確かに……は、話をしよう……」
「……っ……」
一瞬、反応した?
しかし駄目だ、星子は低く屈み僕の身体を下から弄り始める。触れた星子の身体が柔らかくて不覚ながら気分が昂ぶってしまう。
何か他の事を考えろ、他の事を、……四葉ちゃん……今頃四葉ちゃんは……
「星子ぉっ!」
星子は僕の身体に覆い被さり膝に対面で座る。再び視線が合う。星子の胸が僕の胸に押し付けられて行き場をなくしている。
星子の鼓動が、直接伝わってくる……
はやい、とても、はやい鼓動……
「……さ……くら……くん……っ……」
「星子!?」
何とかしないと。そもそも原因は……あー、そうだ、原因は僕だ……
僕は星子が好きだった。ずっと、それこそ小さな頃からずっと好きで、多分、星子も同じだ。
今年になって星子は積極的に僕を誘っていた。それは四葉ちゃんを警戒しての事だろう。
そして四葉ちゃんも星子を敵視していたのかも知れない。
星子の茶色い髪がはらりと僕の鼻先をくすぐる。
……星子の茶色い髪……
まさか、そうか。あまり見ない茶色い髮の女の人って、ナツナツが言ってた女の人ってのが四葉ちゃんではなく星子だった?
四葉ちゃんだけではなく、ナツナツや朱里さんの事もマークしていた?
いや、もはやそんな事はどうでもいい。
何らかの力が星子を動かしているとして、原因は……元凶は僕の行動によるもの。
そうだよ、四葉ちゃんは兄妹……それは四葉ちゃんだって分かっていて、だから頑張って遠慮してくれていたのに、僕がまた期待させてしまった。
叶わないのが分かっていながら、良かれと思い。
結果、僕は星子を泣かせ、四葉ちゃんもまた、裏切る事になる。
馬鹿だ馬鹿だ馬鹿みたいだ。
優柔不断……これじゃまるでラノベの主人公だ。
目を覚ましてくれ、星子!
「ほ、星子っ……話をしようっ!」
「…………」
「頼むっ、僕が悪かった……言い訳はしない、でも今は話を聞いてくれ!」
「さく……ら……」
ケジメをつけるんだ。
今、ここで。
「ほしこぉぉっ!!」
「……っ……さ、くら……くんっ!?」
?
「……?」
「星子……!」
「はぁ、咲良君……それは何プレイだい?」
いや、多分これは星子がやったんだろうけど。
「頭がボーッとするよ……おっかしいな〜」
「星子……ごめんな。僕は……」
「あ、いいんだ、言わないで。ボクは気にしてないよ。四葉ちゃんのことは……」
星子は僕に、この先の言葉を断じて言わせてくれなかった。
拘束は解かれ、僕は解放された。
そして、星子は僕に言った。
「行ってあげなよ、あの子には咲良君が必要なんだ。だからボクはいい。いや、ボクの方から願い下げだよ。は、はやく、行きなよ……この、ばか!」
「星子……僕は……」
「聞きたくないね。またご飯は作ってあげるし、今まで通り接してあげる。だから、またボクが変な気持ちに動かされる前に行って。
そうだね、これがボクの復讐ってね。」
「……復讐……ごめん、星子。僕は行くよ。妹が、四葉ちゃんが待っているから。」
僕は走った。星子を横切り、町へ。
その時の彼女の吐き捨てた復讐という言葉の意味を、この後知ることになるとは思いもせずに。
走って、走って、電車に乗り四葉ちゃんとの待ち合わせ場所へ向かう。
星子……僕は本気で馬鹿だな。
でも今は四葉ちゃんだ。今日だけでも……四葉ちゃんの彼氏でいると約束したんだ。いや、これからもずっと四葉ちゃんを守る。
それが僕の出来ることだ。
駅から走って数分、僕はベンチで一人座る四葉ちゃんの姿を見つけた。
「四葉ちゃんっ!」
「お、お兄ちゃんっ……お、遅いよ。」
四葉ちゃんは膨れて頬を赤らめた。
「ごめん……そ、それじゃ行こうか?」
「うん。でもねお兄ちゃん。その前に……」
「その前に?」
僕の頬に激痛がはしる!?
何が起きた?
ほ、星が見えるとはこの事か……!?
「よ……つ、は……ちゃん!?」
再び反対側の頬を四葉ちゃんの手のひらが打つ!
「うぶっ!!」
往復……ビンタ!?
四葉ちゃんの姿がボヤける視界に映る。泣いてる。
「何で来ちゃうの……お兄ちゃん……う、嬉しいけど……何で星子お姉ちゃんを置いて来たの……馬鹿だよ……四葉は妹だよ?」
「……え……?」
「何で星子お姉ちゃんの気持ちを受け取ってあげなかったの!」
ど、どういう、ことですか?
「四葉は強くなる。お兄ちゃんの力なんかなくったって……生きていけるように強くなる……だからね、お兄ちゃん。
四葉はお兄ちゃんとは付き合いません。」
あ……フラれた?
ヤバい……心臓がおかしな事に……動悸と息切れが……救心が必要かも……
落ち着け、落ち着くんだ僕。
四葉ちゃんは言った。大粒の涙を流しながら。
「ほんと、ラノベ主人公……」
そして、こう続けて笑顔を見せた。
「でも……嬉しかったよ。お兄ちゃん、大好き。」
四葉ちゃん……そうか、僕は馬鹿だ。
二人は何処かのタイミングで繋がっていたのか。よくよく考えると……四葉ちゃんと星子が二人だけになるタイミングがちらほらあったような気もする。
結果発表。
僕はクリスマスの日に、二人の女の子にフラれた。
あー……こりゃアレだわ……
そして、時は過ぎ、三学期が始まる。
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