四葉プンプン丸
あれから一週間、四葉ちゃんは今も僕と会話すらしてくれないと来た。基本的に部屋から出ない。食べるのも部屋。シャワーの時だけ僕を縛る。
そんな毎日だ。こりゃいよいよまいったな。
まさか四葉ちゃんは本気で僕のお嫁さんになるつもりだったのか?
それにしてはいつもツンしてたよな。いや、しかし最近はデレ気味だったような気もする。何とか四葉ちゃんの機嫌をなおさないと。
朱里さんに相談したら、そりゃ高野君が悪い、と一蹴されてしまうし、ナツナツには、ハッキリしない男は事案です、とか意味不明な事言われるし。
秋野ちゃんには白い目で見られる始末。
あれ?
皆んな四葉ちゃんの事、知ってたのか?
このままじゃいけない。
星子には勿論言えないし……そ、そうだ。
アイツなら相談に乗ってくれるかも知れない!
……
こうして僕は日曜日、一人アパートを出ては隣町へ向かった。暫く歩くとマイナーなファーストフード店が見えて来た。
尾姐咲町にファーストフード店が出来たのか。これなら夢咲モールに行くより近いかも。いや、どっちもどっちかな?
と、思考を巡らせていると僕に声をかけて手を振る女の子が視界に入る。
「せーんぱーいっ、こっちこっちー!」
満面の笑顔でブンブン手を振る後輩、木野に僕は相談を持ちかけたのだ。妹に告白されたんだけど、何とかならないか、と率直に。
すると彼女は一度話そうと持ちかけてきた訳だ。多分、ハンバーガーを奢ってもらいたいだけだろう。
こうして無事に待ち合わせ場所まで到着した僕は、少しばかり周囲を気にしながら店内へ。
いらっしゃいませ〜、と女の子の店員さんが出迎えてくれた。僕は「店内で。」と一言伝え、メニューに目を通した。
木野も覗き込むようにしてメニューを見る。やけに近い、木野はあまり気にしないタイプだけど僕が気にするって話で……何というか、とりあえず離れよう。それがいい。
「どうしたんですか先輩?」
「木野、お前は女の子なんだから……」
「あれ、もしかして〜意識しちゃいました〜?」
「茶化すなって、ほら、何にするんだ?」
「先輩、シェイクも付けていいですか?」
「ハイハイ、お好きにどうぞ。」
「やったぜぃ!」
本当、昔から変わらないな木野は。元気が有り余ってるんだな。部活もないみたいだし。
一階は子供連れでいっぱいだな、二階で食べるか。
何とか席についた僕達はとりあえずコーラを一口飲み、一息つく。
「で、先輩。四葉ちゃん、どんな感じなんですか?」と木野が本題に入る。
「それがさ、全然口も聞いてくれないんだ。」
「あれま……あの子がね。いつも先輩にくっついてたイメージだから想像つかないや。でも、兄妹間での恋愛感情は色々とヤバいですよね……」
そうなんだよ、色々ヤバいよ。
「先輩的に、四葉ちゃんはやっぱり妹ですか?」
「あ、当たり前だろ。」
「例えば……そう、四葉ちゃんを女として意識した瞬間とか、あったりします?」
「そ、そんな事ある訳……」
ある訳……ないって、言えない?
何度もあった。四葉ちゃんがもう子供じゃなくなってきてるって、何度か思った事がある。
でも、それは別の話だ。
「……恐らく、四葉ちゃんは先輩の事を男として見てるんでしょう。兄として、ではなく、一人の男として。つまり、アレですよ。彼女はヒロインなんですよ、きっと。」
「……ヒロイン?」
「はい、物語のヒロインですよ。女の子ですな!」
ヒロインね。僕のした約束を健気に信じてただけはあるな。でも、やっぱりな。
「でも、それは禁断の、です。いけない事、ですよね、先輩。」
「……そう、だよな……」
「分からせてあげないと……」
「もし……もしさ、二人の血が……」
言いかけた言葉を遮るように、木野は断言した。
「血が繋がってなくても、駄目ですよ。
……兄妹、なんですから。」
僕はその表情に言葉を飲み込んでしまった。
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