ラブコメ王道の水着回②


 それから僕達は軽くストレッチを挟み水に浸かった。室内なので日射しはない。

 これなら四葉ちゃんも大丈夫、だと思ったけれど……何だろうか、プルプルして中々水に浸かれないみたい。


「四葉姉さん? ここは子供用なので溺れる心配はありません、です。」


 そう、とりあえず慣らす為に極めて浅いプールに集合したのだけど、


「そ、そそそそ、そんなっ、こととっ……」

「四葉ちゃん! えいっ!」

「ひやぁっ?」


 秋野ちゃんの奇襲により敢え無くダイブ。浅いプールでひとしきり暴れた四葉ちゃんは地に足がついた事で、ふぅ、と一息つく。

 勿論監視員のお兄さんにはお叱りを受けた。


 朱里さんは少し泳いでくるとか言って流れていってしまうわ、ナツナツはウォータースライダーループに入るわで自由な同好会メンバー。


「お兄さん、四葉ちゃん、ちょっとスライダーに行って来るよ。じゃねー!」

「あ……彩月ちゃんまでっ……」


 秋野ちゃんもスライダーの誘惑に負けたのか泳ぎの練習中な四葉ちゃんと僕を二人残しその場を去った。


「とりあえず、休憩しようか?」

「大丈夫っ、四葉頑張って練習する!」

「そっか? ならもう一度バタ足の練習だな。ほら、手を放すなよ?」

「はぅ、う、うんっ! お兄ちゃんもっ……ぜ、絶対放さないでね……!」


 そう言って手を握った四葉ちゃんは少し頬を赤らめている。必死に訴える姿が可愛いなぁ。


 そんな四葉ちゃんの練習を見て子供達が集まってくる。いや、あまり見ないでやってくれないかな。


「うー、ばばっ」

「ち、ちゃんと息継ぎしないと……」

「ぶぐぐぐっ……」



 その後、朱里さんに連行されひたすら流れた四葉ちゃんはウォータースライダーで聞いた事ないような声で絶叫した。

 ちょっと怒ってたけれど、それでも楽しそうに笑う四葉ちゃんを見て少し安心した。


「ナツナツ、いったい何回スライダー滑って来たんだ?」

「ざっと二十回は!」

「子供ループ恐るべしだな。」


 とはいえ、ナツナツもいいストレス発散になっているみたいだ。朱里さんは……なんか向こうで一人黄昏てるんだけど……


「朱里さん? そろそろ昼食でも……」

「……」


 あー……


「えっと、朱里?」

「お、おうどうしたんだ高野君?」

「そろそろ昼食でもとろうかと。」

「お、そうだな。巨乳ちゃんのお弁当があるしね。……なぁ高野君?」


 朱里さんの表情が珍しく真剣になる。


「……高野君、巨乳ちゃんのこと、どう思ってんの? 幼馴染なんだよね?」

「ま、まぁ……昔からずっと世話になってるって言うか。」

「なぁ〜んだ、付き合ってるのかなって思った。違うんだ?」

「ぼ、僕と星子はそんなんじゃないって……ただ仲が良いってだけで……」

「……さ、ご飯ご飯〜!」

「あ、ちょっと朱里さん? 何だよ……」




 星子の弁当を食べ、その後も日が暮れるまで遊び倒した四葉ちゃんは帰宅後、シャワーだけ浴びてすぐに眠りについた。

 勿論縛られたが、正直縛られなくても部屋を覗く気はないのだけど。後がこわいしな。



 その時、ローテブルの上に置いていたスマホが鳴る。ラインだ。

 画面を見ると星子からだった。


 ——今日はごめん! めちゃくちゃ忙しくて、アシスタントさん働かせて遊びに行く訳にも行かないからさ。あ、それでさ、良かったら秋頃にある隣町のお祭りに行かないか? ちょうどその日はボクも休めそうなんだ。デートのお誘いだぞっ!


 ……星子からデートに誘われた。

 まぁ、十中八九冗談だろうけれど、何となく胸が躍る気分になった。

 しかし星子と二人きりとなると四葉ちゃんが怒りそうだな。またおっ○い! とか言って。


 悪かったな、僕はおっ○い好きですよ、はい。


 その日は適当に理由つけて出るか。

 おやすみ、四葉ちゃん。


 

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