ラブコメ王道の水着回①


 数日後、


 僕と四葉ちゃん、ナツナツ、そして秋野ちゃんは朱里さんの厳ついハイエースに乗り少し離れた場所に位置する室内プールを目指す。

 四葉ちゃんは太陽があまり得意ではない。そもそも、泳げないからしっかり浮き輪を購入している訳だ。ナツナツは頭をお団子にしてきたみたいだけど、それだけで浮きそうだ。


「ナツナツは泳げるの?」

「当たり前です。泳げない人なんているんですかね?」

「ナツナツの横にいるよ。」


 四葉ちゃんは浮き輪を膨らませようと奮闘中。そんな四葉ちゃんを見て目をパチクリさせたナツナツは何かを察して話題を変えた。


「それにしても星子姉さんは残念でしたね。」

「そうだな、何やら原稿の締め切りが近いってさ。昨日いきなり連絡が来たんだ。」


 すると運転席から朱里さんが、


「それでもお弁当は作って来てくれるんだから、いいお嫁さんじゃないか。おっ○いも特大だしな。」

「朱里さん……顔が……」


 星子は今回も参加ならず、か。

 何かラノベ同好会と過ごす時間が増えた分、星子とあまり会ってないよな。忙しいんだろうな。


「ちょっとお兄ちゃん? 星子お姉ちゃんのおっ○いが見れないからってあからさまに落ち込んだ顔しないでよ!」

「……え、別にそんな事ないよ。」


 落ち込んでる? 僕は落ち込んだ顔してたのか?



「あ! 見えて来ました、です!」


 到着か。既に車が駐車場で渋滞してるな。


「あわわ……」


 やっぱり。四葉ちゃんが震えだした。




 暫く待たされた僕達は駐車場にハイエースを停めると着替えの為一旦別れた。

 室内の入り口で落ち合う事にした僕はロッカーに鞄を置き久々の水着姿になった。周りには家族連れが多い。子供達がありのままの姿で走り回っているのを避けながらプールの方へ足を運ぶ。



 冷たいシャワーを浴びてプール内に足を踏み入れたが、どうやら僕の方が先に着いたようだ。

 女の子は着替えに時間がかかるものなのかな。


 少し待つと朱里さんの声が僕を呼んだ。


「やぁ、待たせたね高野君!」


 僕は振り返って戦慄した。

 朱里さん、ビキニです。真っ赤なビキニ、しかも似合ってるから凄い。

 周りの人達が霞んで見えるんだけど……


 それに秋野ちゃん……

 スカートタイプのヒラヒラ水着が良く似合う。黄色ベースで明るい感じもいいな。それに意外と胸があるんだな。


「ち、ちょっとお兄さん? ジロジロ見過ぎ〜!」


 続いてナツナツ。

 繋ぎの水着が幼女感を更に引き立てていて一部のファンにはぶっ刺さる事間違いなしだぜ!


「……う、事案発生ですか?」


 あれ、四葉ちゃんは?

 朱里さんは後ろを振り返ると手招きしながら四葉ちゃんを呼んだ。

 小さくなりながらゆっくり登場した四葉ちゃん。


 先日切ったショートヘアがフワッとなびく。

 白いビキニにジーンズタイプのホットパンツみたいな水着を着た四葉ちゃんは恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしている。

 少し病的なくらい真っ白な肌、しまったウエストがかなりのパンチ力だ。


 俺の妹、こんなに可愛いかったのか。

 いやいや最初から可愛いのは変わらないけど、


 ……いつのまにか女の子から女性に。



「お、おおお兄ちゃんっ……目がエロい!」

「いや……すまん。あまりにも可愛くて。」

「ば、馬鹿! べ、別にお兄ちゃんの為に、き、着た訳じゃなくて、うっ……か、勘違いしないでよね!」


 そんな四葉ちゃんを見て朱里さんもナツナツも、更に秋野ちゃんまでが口を揃えて言った。


「「「ほんと、ラノベヒロイン。」」」


「……へ?」


「「「で、ほんと、ラノベ主人公。」」」


「……え?」



 何だか視線が痛いな。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る