幕間 恋は突然に
1.5-1
少女は、一目惚れをした。
彼はとても弱く、それでいて酷く強欲だった。
綺麗だ、と思う。
人間の感情が爆発する瞬間ほど綺麗なものは他に無い。そして、彼は今まで見てきた中でも群を抜いて輝いていた。本当に、畏怖を感じるほどの美しさだ。
あそこまで醜く爛れ、濁流のように激しく膨大な欲望を持ちながら、免罪人として覚醒するとは。一体どれだけ神々の寵愛を受ければ、そのようなことが起こり得るのか。
芙蓉(ふよう)に命令されて嫌々咎人退治に来たのだが、これは後ほど感謝しなければならない。こうして運命的な出会いを果たしたのだから。
彼はどこか兄に似ている。もちろん兄は免罪人ではなかったし、あそこまで絶大な力とそれを御する覚悟も持ち合わせてはいなかったが。彼も、兄も。弱いくせに欲深く、優しいくせに自己中だ。そして、それがどうしようもなく愛おしい。
彼が欲しい。彼の姉のように、凡人には想像も付かないほどの、彼の愛と執着を自分も受けてみたい。そう思った。
ならば早速、行動に出るべきであろう。
少女は、死に瀕している少年に歩み寄った。
その大きな目を細めて笑う。それは一見屈託の無い笑みのようで。しかし、瞼の奥では感情の見えない虚ろな瞳が、はたと少年を見つめ続けていた。
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