第279話 なんだかほっとして!



「ヒロキ!応援に来たよ!」


「村の中に入った鹿は?」


「へへん。みんなで投げ縄して捕まえちゃった」


 カールは得意げに語る。

 結界が再びふさがれたので、中にいた牝鹿めじかは動きを鈍くしたらしい。そこをすかさずカールの指示でロープを投げ縄にし、その捕獲作戦が成功したと言う。


「すごいな!カール!」


「ヒロキこそ!黒狼の浄化してたね!」


 俺達はガシッとヒジを合わせてニヤリとした。


「本当は魔力の矢があればもっと浄化出来るんだけどな。落としたみたいなんだ」


 俺が愚痴ぐちると、その背中をツンツンとつつかれた。振り向けばそこにはエレミアがニヤニヤしながら立っている。


「ふふん、あたし達をなんだと思っているわけ?あたしとカールはヒロキのおり役なんだからね」


 そう言って俺の前に、数本の矢を突き出して来た。


「うわ、危ないなぁ。あ!これ魔力の矢だ」


「土壁のそばに落ちてたわよ。まったく、あたし達がいないとダメねぇ」


 くう、そんなに言わなくてもいいじゃんか。


 俺がへの字口をして顔を歪めたので、カリンまで笑い出した。


「カリン、そんなに笑わないで……」


「すみません。なんでしょう……すごくほっとして」


 わかるよ。

 いつものメンバーがそろったんだから。


 そこへガシャリと軍靴ぐんかの音がした。


「私も行くぞ」


「ユリウス!少しは休めたか?」


「まあな。休息がてらに鹿を水桶に突っ込んで来た」


 おおー。

 やるね!ユリウス。


「よし、ジークさんのところへ行こう!」



 ……なんで、そこで嫌そうな顔をするんだユリウスは……。




 つづく


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