第233話 新しい仕事!

 グスタフさんは嬉しそうに「パン!」とでを叩いた。分厚い職人の手だ。


「まずは支度したくからです。久しぶりなので仕事場を綺麗にしてから作業に移ります」


 俺は掃除の手伝いにボロとダズンを呼んでこようと借家へ向かう。引越しといっても布団くらいしか荷物がないので、すでに運び終わっていた。


 ところがユリウスとボロが何か言い合っている。どうやら俺がボロ達に渡した銀のスプーンが原因らしい。ボロがスプーンを振り回しながら熱弁している。


「どうしたんだ?」


 俺が声をかけると、2人が振り向いた。


「ヒロキの旦那!この人が御守おまもりにケチをつけやがるんで」


「ケチをつけるとはなんだ、ケチとは!」


「文句をつけたじゃねえですか!」


 まあまあ。

 ボロが言うには、胸から銀のスプーンをぶら下げていたら、それに目を留めたユリウスが「どうやって手に入れた?」と始まり、そのあと「本物か?」となったらしい。


「わかったよ。ユリウス、これは本物の銀で、昨夜女神・フォリアに力を宿してもらった御守りだ」


「おいおい、昨日の今日でどうやってこんな立派な銀製品を手に入れたと言うんだ?」


 私ですら小さなチャームしか持っていないのに、と彼は付け足した。


「実はそのことなんだけど……」





「なんで早く言わないのだ!」


「俺もカリンも気がつかなくて……あはは」


 笑ってごまかそうとしたが、ユリウスににらまれた。自分より大きな銀の御守りに不服なのかもしれない。


「これを武器にしようとしていて……あ、忘れてた。ボロとダズンはグスタフさんの家を手伝って欲しいんだ。いま鍛冶場の片付けをしてるから、一緒に来てくれ」


 そう言いながら、ユリウスも連れて行く。


「とりあえず、矢尻を作ろうと思ってて。武器の事だからお前にも見て欲しいんだ」


「それは良い考えだが、私も作る事に関しては詳しくないぞ」


「いてくれるだけで心強いんだよ」


「そ、そうか?」


 最後にはまんざらでもない様子になってくれた。




 グスタフさんの鍛冶場に着くと、俺達は水汲みを頼まれた。ボロとダズンが井戸へ向かう。


「ヒロキ様、あのお二人をお借りしてもよろしいでしょうか?この後も手伝って欲しいのです」


 願ってもない。

 この村で仕事があれば、ボロとダズンも居付いつきやすいだろう。


「こちらこそ、あの二人をよろしくお願いします」


 良かったぁ。


「あと、残りの材料も持ってきます!」


 それを聞いたグスタフさんが目を丸くする。


「そ、そんなに銀があるのですか⁈」





 つづく

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る