第217話 女騎士のデレを見てしまいました!

 翌朝、筋肉痛で起き上がるのが辛かった。普段使わないところに痛みが走る。


「アイテテテ……なんてこった」


 それでも今日の予定を思い返してベッドからい出した。午前中にジークさんと練習して、午後は子ども達におもちゃを渡すんだ。


 着替えながら昨日子ども達の家を回った事を思い出す。子どもだけ避難させるって事はないだろうし、行き先も用意してあるなら彼らの親もリール村を離れるだろう。


 少なくとも——母親がついて行くとか、誰かの家族が子ども達の面倒みるとか……。


 ドアを開けると冷たい空気にさらされる。もうすぐ冬だ。


 ボロとダズンの住む場所をどうにかしなくちゃならないな。いつまでも野宿じゃ雪が降ったら凍死しちゃうぞ。


「おはよう」


 既にカリンが小屋の外でに火を入れていた。寒くなってきたので、かまどの周りで暖をとりながら、軽い朝食を食べるのだ。


 ボロとダズンもやってくる。


 前の日のパンを軽く炙って温め、

あとはオットーさんからいただいたお茶をれるだけ。


「ボロとダズンは何か予定ある?」


「いえ、何も」


「遊びに行きたいとかないの?」


「あ、遊びィ?俺達が遊ぶなんて酒飲むか博打するかで…」


 それはこの村では無理だな。

 ま、もうしばらくはお仕事してもらおう。


「俺、用事があるからボロとダズンは森で薪集めをして欲しいんだけど」


「へい!お任せくだせぇ」


 カリンは品物を作る為、縫い物をすると言う。


「じゃあ、また後で」





「ふむ、昨日よりはだいぶ良くなったな」


『白い女』ジークさんは相変わらずの無表情で俺を褒めてくれた。


 胸筋が痛いが、この高潔な女騎士に褒められるのは嬉しい。


「それ、取りに行け」


 犬じゃないんだけど。

 練習用の矢を撃ち尽くしたら走って拾いに行くのだ。走りながら「昨日より距離が出たな」とニンマリする。


 息を切らせて戻ると、ジークさんは矢を受け取りながら練習終了を告げる。


「今日はここまでにしよう。もし大鴉が来たら、追い払う事を念頭に置くのだぞ」


「は……はい……」


 疲れた。


「午後は子ども達に会うのだろう?しっかりせよ」


 この言い回し。

 誰かさんにそっくりだ。


「……フォリアに似てんなぁ」


「何ッ?」


 しまった。騎士の前で呼び捨てにすると怒られるんだった。怒鳴られると思って身をすくめると、ガシッと両肩を掴まれた。


「いいい、今何と?」


 あれ?

 ジークさんの口元がにやけている。


 俺は珍しい物を見る目でジークさんを見た。


「えっと…今のジークさんの話し方が女神フォリアに似てたもんで、つい」


 すると彼女は顔をカーッとあかくした。


「ほ、本当か?よく見た目は似ていると言われるが、話し方まで似ていると申すか?」


 いや、むしろ顔立ちは似てないよ。とは言えず、俺はジークさんにガクガク揺さぶられるままにしていた。


「うふ、うふふふ……」


 ジークさんのにやけが止まらない。背が高くガタイのいい女騎士が、堪えてるような堪えられないような笑い方をする。(怖い)


 てかもう俺の肩掴むのやめて。





 つづく

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