第194話 村への意外な訪問者です!

 翌日。

 というかそのまま朝を迎えたその日、寝不足の俺の元に現れたのは意外な人物だった。


 遠くの方から派手な一団がこちらへ近づいてくる。シマシマ模様の派手な服。乗っている馬にも服を着せていて、それも縞模様である。従者らしき人達はそこまで派手な服ではないが、その後方の荷車もシマシマ模様の派手なものである。


「オットーさん⁈」


 なんでここに?


 って思った瞬間、


「ヤバイ、今日は何曜日だ?」


 と言う言葉が口をついて出た。カリンが「に、日曜日です」と不安げに答える。


 だよな。

 すっかり忘れていた。


 いや、どうしよう。日曜の市で取引する約束をしておきながら、忘れていたなんて、どうやっても言い訳できない。


 ……正直に村が魔物に襲われていたと話そう。ああ、せめて誰かに連絡に行ってもらえれば良かったな。今後取引して貰えるだろうか……。


 もやもやと後悔しているうちに、コンスタンティン商会の一団が丘の麓に到着した。俺とカリンは丘を駆け下りて、先頭のオットーさんにお詫びした。


「すみませんっ!今日の取引の事、すっぽかしてしまって……」


 恐る恐る頭を上げると、馬上からオットーさんが鷹揚な笑みを投げかけてくれていた。(怒っててこの笑みだったらすげー怖い)


「むふふ……ちゃんと事情はお聞きしておりますぞ。深緑騎士グリューネ・ヴァルトかたにね」


 ユ、ユリウスー!

 神かお前は。


 オットーさんはそう言ってから、えっちらおっちら、もたもたしながら馬から降りてきた。お付きの人が降りるための足場の台を置くが、上手く降りられない。俺とカリンは唇を噛んで笑いをこらえた。


「やあれやれ、なかなかの距離ですな。馬だからこの時間に到着したが、歩きではさぞ大変でしょう」


 ようやく地面に両足をつけると、オットーさんは親しげ話しかけてくる。


「俺達が市場にいなくて、こちらへ来てくれたんですか?」


 オットーさんは例の口髭の端をつまみながら、「んふふ」と笑う。


「まあ、そうですなぁ。リール村の菓子職人殿とお会いしたくてですな。これは幸いとぐに町を出て来ましたぞ」


 う、そうか。

 表向きは菓子職人が作っている事にしてたんだ(明言はして無いけど)


 オットーさんはリール村を眺めて、


「あそこで菓子を作っているのですかな?」


 と、聞いてきた。




 つづく

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