第193話 女神様は惑わします!

 だってさ、なんか俺は親とか家族とかいうのが苦手だからフォリアを『姉』ポジションに置くのは嫌なんだよ。


 かと言って恋愛対象じゃないし。


『ないのか』


 何故がっかりするッ⁈


 ないだろ。


 もっと違うんだよなぁ。


「仲の良い先輩?違うな。友達?じゃないよな」


『友達も良いな!それにせぬか?』


「それでも良いけど……」


 女神様の友達。

 悪くないけど、多分違う。


 フォリアが御機嫌なのでとりあえずそういうことにした。


 御機嫌ついでに俺の手を取ってくるりと踊る。フォリア楽しそうな表情の中にカリンの面影を見てドキッとする。


 かわええ……。


 いやいや、これはフォリアだからな。まどわされない様にしなくては。


『白金のフォリア』はくるりと回ると自然と俺の腕の中に入った。


 え?と、思いながら反射的に抱きとめてしまう。


 フォリアは俺の顔を見上げてニヤリと笑った。


『バーカ』


 ええっ?

 待って!このまま帰るな!!


 俺の願いもむなしく、フォリアはカリンから抜けて行った。


 金髪に空色の瞳。


 その瞳に俺が映っている。


 また、アレですか。




 そうして、明け方の丘に可憐な悲鳴が響き渡——らなかった。



 え?


 カリンは無言でそっと俺の胸を押して、離れた。


 俺から目をそらして、頬を紅く染めている。


「いつも——いつも、その、フォリア様が私に宿る時、私が目覚めるとヒロキが、こ、この様な振る舞いをしているのは……」


「いや、あの」


「もしかして、その」


 違うから。


「おふたりは恋……」



 今日、丘に響き渡ったのは、俺の「違うからーッ!!」という、可憐でもなんでもないツッコミだった。




 つづく

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