第187話 女神様は語ります!

 グロスデンゲイルを消滅せしめたフォリアは、同時にその生命いのちを失う事となってしまった。


『力を使い過ぎたのだろう。生命を削って戦い続けたのだから、無理もない。だが……』


 その時のフォリアは奴が『負の力』から生まれた事に気がついた。


 人の心から生まれた魔物。


 人がいる限り生まれてくる可能性がある魔物——。


『再び、奴が現れる、そんな予感がしたのだ』


 そして息も絶え絶えに馬を走らせ、彼が待つ出城にかえる。


「他の戦士達は置いて行ってのか?」


『……死ぬ前に、どうしても逢いたかったのだ』


 フォリアはハイランダーだけに想いを伝えたくて、単身たんしん馬を走らせた。


 置いていかれたハイランダー。

 フォリアと共に戦いたかったはずだ。


 いや、もしも彼が共に戦っていたら、フォリアの命が尽きていなかったかもしれない。


 きっと、傷付き死にそうな彼女を見て、彼はひどく後悔したに違いない。


『……そうじゃ。私は自らも彼も傷つけてしまった……彼は私を抱きしめて自らを責めていた……まだ、覚えている』


 フォリアは自分の両の手のひらを見つめながら、遠い思い出を語る。その瞳は少し暗く沈んでいた。


『私は己が力が再び宿る事を感じていた。それは奴が蘇る予感と同じであっだのだ』


 だが戦乙女の身体は最早もはや生命を留め置く事は出来そうになく——。


『別の存在となってこの世界に戻る事となる。そう感じた私は自らの身体を戻るべき指針とするべく、この地に埋めるように彼に頼んだのだ』


「……」


『彼は彼の命尽きるまでその場を離れぬと誓ってくれた。そして——私は息を引き取ったのだ』


 ——?


 そうすると、フォリアの遺体が眠る神殿都市の話はどうなるのだろう?




 つづく

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