第186話 女神様はもじもじします!

『まあ、なんというか。お互いそうなのではないかと、思い合うくらいの仲というか』


 プ、プラトニック?

 えー?

 フォリアは真っ赤になって、ラグにのの字を書いている。


 いや、昔の事だしそういものかな。


「いいんじゃないかな。その時はフォリアも人間だったわけだし、好きな人くらいいても……」


 フォリアはパァッと顔を明るくした。


『そ、そうであろう⁈現在の感覚というか…お前の世界の感覚だとおかしくはないであろう?』


「まあ、別にいいと思うけど」


『だが当時は聖なる力を持つ乙女は、その様な俗世のことに触れてはならぬ事になっていてな』


 聖女信仰みたいなものか。清らか少女故に聖なる力が宿る——たいてい、恋をしたり処女おとめでなくなったりすると力は失われるやつだ。


「そういうのは俺の世界にもあるぞ。今では神に使える人でも結婚してたりするけど」


 フォリアは微笑んだ。


『それは幸せな事だ。思い合う人と伴侶になれる事は……』


 フォリアがそんな風に言うと、人間だった彼女が想いを伝えることすら出来なかった悲しみが伝わって来る。


「それで、どうなった?」


『……今のリール村の場所に、小さな出城を作った。そこには彼1人を常駐させる事が、なかば無理矢理に決まったのだ』


 ひとりで……。


 かのハイランダーは戦士団から外され、1人で出城を守る事となった。


 戦士団はここを拠点に更に丑寅の方角へ進む——。


 そして草木の生えぬ岩山へ。(ボロ達が辿りついた場所だと思われる)


『グロスデンゲイルがその瘴気しょうきを濃くした体で、最後の戦いを挑んで来たのだ。辺りはその身体の影響で生き物が住める場所ではなくなっていた』


 実態の無い濃い霧や奴が取り憑いた獣——魔物を倒す為に、戦士達はフォリアを先頭に戦いを続ける。


 弓を引き、聖なる力を乗せて矢を射る。戦士達は剣を取り魔物を倒して行く。


 戦士団も傷付き、毒を受けたように体を病んでしまう。しかし、それは相手も同じ。


 弱り切った奴を倒す為、フォリアは最後の力をふりしぼって、矢をつがえる——!



「倒したのか?」


『その時はな。黒い霧は散り、グロスデンゲイルの気配が消えたのだ。私は——奴を倒したと思った』




 つづく

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