第184話 いつもと違う夜!
いつもの如く銀聖水を作るためにカリンの小屋を訪れる。
普段ならこの丘はしんと静まっているのだが、今夜はヤツらのイビキが聞こえてくる。
ボロとダズンは疲れているのだろう。俺が渡した羽布団にくるまって、簡易ターフの下で休んでいた。
軽くノックしてカリンの小屋に入ったとき、少しだけ違和感を感じた。
フォリアはいつも通りの白金のフォリアで、着ているものはカリンの青い服だ。
だから俺が感じた違和感はもっと繊細な感覚だ。
なんていうか、予感と言っても良かった。例えば目の前の女子からいきなり告白される直前の空気、みたいな。(されたことはありません)
俺が用意していた水のペットボトルや狩猟用の矢をある程度運び終えると、白金のフォリアはわざわざ俺に休息を取るように勧めた。
「……」
俺は木の椅子に腰かける。
フォリアは床のラグの上に横座りになったまま、手元にペットボトルを引き寄せて1本ずつ光の輪をくぐらせている。
光はフォリアの力だ。
光を宿した銀色の輝きを持つ水は『銀聖水』となる。
『……ヒロキ』
名前を呼ばれて心臓がドキンと鳴る。
「は、はいっ?」
『気になる事があるだろう?』
え?
俺から言うの?
「あるよ。グロスデンゲイルが言ってた事だ」
フォリアも俺の言葉にうなずき返す。
聞いても構わないと言う事なのだろう。
頼むから泣きそうな顔をしないでくれよ。
「奴が言っていた。俺の事を『これがあの男の代わりか』と」
フォリアの紫色の瞳が少し見開かれる。綺麗なアメジストみたいな瞳だ。
こんなにまじまじと女子の顔を見た事なんてない。
きっとフォリアが生身の女子じゃないからできるんだろう。
そういう意味では、俺とフォリアには確かに信頼といえる何かが結ばれているのだ。
見つめても、軽口を叩いても、それを許し合える——そんな『何か』。
『……あやつが言ったのは、200年前の話だ』
フォリアは手を休める事なく、話始めた。
『戦乙女として戦う私の周りに、自然と戦人達が集まり、私と共に戦う戦士団が生まれた。今の騎士団のもとじゃな』
つづく
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